徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

生誕130周年 松園と美しき女性たち@山種美術館(その1)

2005-11-30 | 美術
生誕130周年 松園と美しき女性たち @山種美術館(その1)
2005年10月8日から11月27日まで

 26日に、松園の作品18点を展示した「生誕130周年 松園と美しき女性たち」に見に山種美術館に行ってきました。過去何度か松園をフィーチャした展覧会はあったと思いますが、私自身はまとめて観覧するのは初めてです。
 上村松園(1875(明治8)-1949(昭和24)、鈴木松年や竹内栖鳳などに師事。新文展招待展出品「序の舞」(重文 東京芸術大学保管)が代表作)1948(昭和23)女性として初めて文化勲章を受章)

 「つれづれ」(昭和16年)「春のよそをひ」(昭和11年)「夕べ」(昭和10年 第一回五葉会展)と淡青をベースとした無地の着物の作品がつづきます。並べてみると微妙に色合いは違います。「盆踊り」(昭和9年)。
 「牡丹雪」(昭和19年 芸術院会員陸軍献納画展)「娘」(昭和17年)は、萌黄色の無地の娘姿。「庭の雪」(昭和23年)は、「牡丹雪」と同じく雪を愛でる娘姿の作品です。
 「新蛍」(昭和4年 昭和5年ローマで開催された日本美術展に、「伊勢大輔」とともに出品された)は、「蛍」(後述)「夕べ」や簾越しの作品。
 「砧」(1938(昭和13) 第2回新文展)は、謡曲「砧」から題材をとった作品。松園は本図について「都にある夫を想いながら空の一角を仰いで月を見、これから砧を打とうというところの妻女を、肖像のような又仏像のような気持ちで描いて見たものです。」と説明している。という。
 「折鶴」(昭和15年頃)、「夏美人」(昭和17年頃)は、どちらも娘を描いた作品。「夏美人」は澄ました感じで戦時中の作品とは思えない小品です。「杜鵑を聴く」(昭和23年)。「春風」(昭和15)は、えび茶の無地の着物がきれいでした。「夕照」(大正初期)、「桜可里」(昭和1頃)。
 そして、「蛍」(大正2年 第7回文展)。先般、ホテルオークラで開催された ヨーロッパと日本 ~きらめく女性たち~で最近みた作品。浴衣姿で蛍を眺める女性の一瞬の美しさをとらえます。「春芳」(昭和15年 本山幽篁堂展)芳(かぐわ)しい花の香りを楽しむ女性。
 どの作品も、女性の一瞬の立ち居振る舞いの美しさ、四季を愛でる女性の細やかさを描きます。今回見た作品は、着物はあくまでも無地をベースにしている作品が多く、それは清澄さを念願とする松園の理想とするところでしょう。それにしても、やはり京都生まれ、無地の着物の微妙な色合いの違いは、普段着物を見慣れ、着付けている雅な空間で生活する京の女性ならではしょう。

上記の松園の作品の作品の画像は、すべて山種美術館のHPでみれます。すごい。
松園以外の作品はその2でかきます。

展覧会の説明から: 美人画の第一人者として名高い上村松園は、明治8年京都の四条で葉茶屋を営む家に生れました。それから、明治、大正、昭和、そして平成と130年のときが経ち、女性を取巻く社会は激動の歴史と共に大きく変化してまいりました。
 松園は京都府画学校に学んだ後、鈴木松年、幸野楳嶺、及び竹内栖鳳に師事し、早くから内国勧業博覧会などで評価を得、文展で受賞を重ね、昭和23年には女性として初めて文化勲章を受章しています。「私は大てい女性の絵ばかり描いている。しかし、女性は美しければよい、という気持で描いたことは一度もない。一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである。」と近代日本画の理想を述べていますが、芸術に対するその真摯な態度こそが松園作品に凛とした美しさを与えているのではないでしょうか。
 本展覧会は当館所蔵の松園作品をご覧頂くとともに、女性を描いた作品ばかりを展示し、「女性の美」を追求致しました。本展をどうぞ心ゆくまで楽しんで頂けましたら幸甚でございます。

その2へつづく
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やまとうた-美のこころ @宮内庁三の丸尚蔵館

2005-11-27 | 美術
やまとうた-美のこころ @宮内庁三の丸尚蔵館
平成17年10月8日(土)~12月11日(日)
 前期:10月8日(土)~11月6日(日)
 後期:11月12日(土)~12月11日(日)

 20日のNHKの日曜美術館で五島美術館を中心に古今和歌集の世界が紹介されたが、その最後にちらっと三の丸尚蔵館でも展示していると。別に古今和歌集に凝っている訳ではありませんが、古今和歌集1100年を記念した展覧会とあれば、生きているうちにそうは一堂に会することもないと思えて、慌てて、出光美術館五島美術館に引き続き、三の丸尚蔵館の 「やまとうた-美のこころ」に行ってきました。電車の宣伝以外は、日経の記事ぐらいしか読まず、最近みなさんのBLOGは大変参考になっているのですが、それでも、三の丸尚蔵館の展示は、新聞社の後援も何もないので、見落としてしまいますね。
 残念ながら、もうすでに後期で、図録も売り切れているという状態。「本阿弥切本古今和歌集 伝小野道風 1巻」(京都国立博物館にある別の巻は国宝です。現在展示中です。)「粘葉本デッチョウボン和漢朗詠集 伝藤原行成 2帖」 や「井手玉川・大井川図屏風 狩野探幽 六曲一双 江戸時代」などは終わってしまっていました。(パンフレットにはこれらの写真がでています。)
 それでも、「大江切本古今和歌集 伝藤原行成 1巻」「巻子本和漢朗詠集 伝藤原公任 2巻」など素晴らしい書です。(といいながら、伝藤原行成 伝藤原公任は、この一ヶ月さんざん見ましたが区別がつきませんが。)後者は色が異なる料紙を継いであります。
 「古歌屏風(左隻) 智仁親王 六曲一隻 桃山時代(16~17世紀) 」は、金屏風にいきなり墨で筆を走らせるという庶民にはとても勇気がいってできない代物。「三十六歌仙色紙形写 智仁親王 1巻 桃山時代、慶長4年(1599) 書陵部」「三十六歌仙絵入冊子 智仁親王 1冊 桃山時代(16~17世紀) 書陵部」は、特に絵入り冊子は、愛嬌のある絵で、屏風とあわせて人柄が偲ばれます。
 「二十一代集 1具 桃山~江戸時代初期(16~17世紀) 書陵部」。三井記念美術館でも源氏物語の箪笥を見たが、和歌集の冊子をいれる箪笥があるということ自体がすばらしい。
 「宸筆伊勢物語絵巻 断簡(関守) 伏見天皇 1幅 鎌倉時代(13~14世紀) 御物」伏見天皇は書体を使い分けるが、この書風は伊勢物語らしい雅な書風で見とれてしまう。
 「伊勢物語(絵本) 3冊 江戸時代(18世紀) 書陵部」右のページには美しい手書きの絵、左のページには優雅な書風で書かれた冊子の絵本。近世の物ですが、すでに版木で庶民は本を読んでいた時代に、美しい手書きの絵本です。
 「西行物語絵巻(巻第一・巻第2) 尾形光琳」は先般根津美術館で拝見したのは別の箇所でした。
 「秋野図・佐野渡図屏風 六曲一双 江戸時代(18世紀)」は古今和歌集を画題とした屏風。

 次回の展覧会は「花鳥ー愛でる心、彩る技」(平成18年3月25日から9月10日)です。紀宮清子さまの作品も展示されるのでしょうか。(追記:結局若冲の展覧会でした。記事はこちら

 三の丸尚蔵館のあと小堀遠州の造園の二の丸庭園を一寸散策。紅葉がきれいでした。カメラを忘れたのが残念。ガマズミやムラサキシキブが実をつけていました。写真は携帯で撮ったムラサキシキブです。

(11月26日)
三の丸尚蔵館第39回展開催要領 概要から

 やまとうたは,人の心を種(たね)として,よろづの言(こと)の葉とぞなれりける。世の中にある人,ことわざ繁(しげ)きものなれば,心に思ふことを,見るもの聞くものにつけて,言ひ出(いだ)せるなり。

 四季が巡る豊かな風土に恵まれたわが国では,人々の鋭敏で繊細な豊かな感受性が培われ,それをわずか三十一文字(みそひともじ)の和歌に表す文化が発展してきました。紀貫之による『古今和歌集』序文冒頭のこの文章は,今日まで最も良く和歌を定義づけた言葉として知られています。
 今年は,この『古今和歌集』が成立して1100年,『新古今和歌集』が成立して800年という節目の年に当たります。和歌は,日本文化のあらゆるものに多大な影響を与えてその様相を豊かにしてきましたが,とりわけ『古今和歌集』と『新古今和歌集』は,『万葉集』と共に和歌の世界の中心として広く親しまれてきました。
 『古今和歌集』は,醍醐天皇の勅命のもと,紀貫之らによって編集された最初の勅撰和歌集です。およそ千百首の歌が,春夏秋冬や賀・恋などの分類に整理され,この項目は以後の和歌集編纂の規範ともなりました。また,後鳥羽院の下命による『新古今和歌集』は,藤原定家らによって撰されたもので,約二千首の和歌が収められました。『万葉集』等の古典作品に基づく象徴的な表現には,余情妖艶(ようえん)の美を創り出す本歌取りの技法が多く用いられ,この歌風は連歌や能楽に影響を与え,和歌研究を活発にしました。
 今回の展覧会では,『古今和歌集』『新古今和歌集』を通して,和歌を詠(よ)む心,それを学ぶ心,鑑賞する心,意匠化する心など,和歌に接する様々な想いから生み出された言葉(ことのは)の美,装飾美を紹介します。“やまとうた”の心に触れ,わが国が育んできた独自の文化の美しさを再認識していただければ幸いです。
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北斎展(後半) @東京国立博物館

2005-11-26 | 美術
北斎展(後半) @東京国立博物館

25日、北斎展(前半)(観覧期はこちらこちら)にひきつづき、後半に行ってきました。金曜日の夜間は多少は空いていると東京国立博物館のホームページに書いてあるのですが、1830頃に上野駅に到着すると国立博物館に向かう人が可也います。凄い人出。会期も後半ということもあるのでしょうが、混雑々々です。空いているところを探して2周しましたが、冨嶽三十六景は、2回とも混んでいてまともに見れない、20:00の閉館間際にもう一度最後の「画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)期」を鑑賞しようとしたら、それはそれで混んでいるという凄い有様です。空いていたのは19:30過ぎた時点の第一室から第二室ぐらいでした。2日金曜日を狙っていく方は、仕事をなるべく早く切り上げて、16:00過ぎに行ってみてはどうでしょうか?

関連BLOG:世界美術館紀行 フリーア・ギャラリー

第1期 「春朗(しゅんろう)期」 20歳~
  • 2 ふく清女ぼう 中村里好 細判 東京国立博物館
     女性のポーズは、ちょっと反った姿勢で肉筆画と同じです。
  • 15 新板浮絵化物屋鋪百物語の図 横大判 ボストン美術館
     よくみると化け物屋敷。楽しい気分。
  • 21 風流男達八景 文七の落雁 中判 シカゴ美術館
     典型的な浮世絵の構図。窓の外に飛ぶ雁が風流。
  • 8 渦ケ渕勘太夫 高嵜市十郎 間判 シカゴ美術館
  • 9 鬼面山谷五郎 出羽海金蔵 間判 東京国立博物館
     相撲絵です。膝の力瘤の表現はこのころからあります。
  • 28 (五代目市川団十郎の暫)色紙判摺 ケルン東洋美術館
     摺物です。

    第2期 「宗理(そうり)期」 36歳頃~
  • 48 風流無くてなゝくせ ほおずき 大判 メトロポリタン美術館蔵
     前期の「遠眼鏡」と同様の美人大首絵です。海老茶が斜めに走る背景が目に入りますが、襟のピンク、着物の薄茶の柄のグラデーションが粋です。
  • 58 新板浮絵忠臣蔵 第八段目 横間判 東京都江戸東京博物館蔵
     舞台ですが、舞台背景が風景画のようです。
  • 62 王子 横大判 シカゴ美術館蔵
  • 63 上埜 横大判 ベルギー王立美術歴史博物館蔵
     前期の亀井戸開帳、蟻通明神とともに、ベルギー王立美術歴史館のこのシリーズは発色がすばらしいです。
  • 93 鱗彌引札 東京国立博物館蔵
     前期にも見ましたが、黄色が鮮やか
  • 71 たかはしのふじ 横中判 房総浮世繪博物館蔵
     冨嶽三十六景を髣髴とさせる構図の「たか」げたの「はし」の向こうに「ふじ」の構図。なまこ壁の表現が妙。
  • 72 賀奈川沖本杢之図 横間判 墨田区蔵
     この作品も、後年の冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏の構図につながります。
  • 97 亀図 色紙判摺物 葛飾北斎美術館蔵
     朱鮮やか
  • 99 門前の往来 横長判摺物 東京国立博物館蔵
     叙情性のみちた女性。このあと何点か発色のいい作品がならんでいましたが省略。
  • 125 『美やこ登里』 狂歌絵本 シカゴ美術館蔵
  • 126 『はるの不尽』 狂歌絵本 フリーア美術館/アーサー・M.サックラー美術館図書館蔵
     この2点は、発色がすばらしい。特に後者の状態のよさは秀逸。これが同じ「狂歌絵本」?といいたくなる。往時もてはやされたのが色合い偲ばれます。

    第3期 「葛飾北斎期」 46歳頃~
  • 169 仮名手本忠臣蔵 三段目 横大判 東京国立博物館蔵
  • 170 仮名手本忠臣蔵 五段目 横大判 東京国立博物館蔵
     この2点も発色がよかった。
  • 202 五美人図 絹本着色 細見美術館蔵
     五人も美人が所狭しと描かれていて華麗
  • 209 大黒に二股大根図 紙本着色 葛飾北斎美術館蔵
      画題とおり剽軽な作品
  • 217 鯉図 紙本着色 埼玉県立博物館蔵
     水面の様子描いた作品。前期にあった379游亀や後出てくる488流水に鴨図につながる。

    第4期 「戴斗(たいと)期」 51歳頃~
  • 225 『北斎写真画譜』 絵手本 フリーア美術館/アーサー・M.サックラー美術館図書館蔵
     前期と違って彩色のページでなく残念。
  • 242 列子図 絹本淡彩 ミネアポリス美術館蔵
     風を描いた作品。

    第5期 「為一(いいつ)期」 61歳頃~
  • 289 冨嶽三十六景 山下白雨 横大判 シカゴ美術館蔵
     とにかく混んでいて、 冨嶽三十六景は楽しめず。この1点は、前期と違って、摺り色が最高です。
  • 320 千絵の海 絹川はちふせ 横中判 東京国立博物館蔵
  • 321 千絵の海 五島鯨突 横中判 東京国立博物館蔵
  • 322重美 千絵の海 甲州火振 横中判 東京国立博物館蔵
  • 324 千絵の海 総州銚子 横中判 千葉市美術館蔵
     前期の展示の千絵の海より、水しぶきの表現が特徴的な作品が並んでいます。「絹川はちふせ」には久慈川あたりで現在も行われている漁法を思い出した。五島鯨突は、その土地柄を思い出せる画題。総州銚子は、神奈川沖浪裏にも似た構図だが,富士が見えないのが残念。
  • 349 小禽に虻 中判 東京国立博物館蔵
  • 350 雀に朝顔 中判 葛飾北斎美術館蔵
  • 351 波に千鳥 中判 葛飾北斎美術館蔵
     鳥の表現は、秀逸です。この表現が472柳に烏図などにつながります。
  • 354 鯉 団扇絵 ギメ美術館蔵
     鯉の画題は多いです。
  • 357 西村屋版横大版花鳥シリーズ 芥子 横大判 墨田区蔵
     日経に紹介されていた作品。芥子が風に吹かれるさまを捕らえる。
  • 366 西村屋版横大版花鳥シリーズ 百合 横大判 シカゴ美術館蔵
     背景の水色の発色のよさ。それにしても艶かしく画面中央を横切る百合
  • 436 寒山拾得図 絹本着色 墨田区蔵
     伝統的な画題に赤い紅葉が画面のアクセント
  • 437 歌占図 紙本淡彩 大英博物館蔵
     文政丁亥十年正月筆始。歌で新年を占うという正月らしい画題。
  • 438 堀川夜討図 絹本着色 個人蔵
     着物が豪華な画面。人物を三人縦に重ねて描く。

    第6期 「画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)期」
  • 465 前北斎卍筆 肉筆画帖 (蛙とゆきのした、塩鮭と鼠、蛇と小鳥、鰈と撫子、桜花と包み)
     この作品だけは並んでもゆっくりと鑑賞したい作品。蛙の片足上げた様や、蛙とゆきのしたの繊細な描写、そして画面横切る赤い枝の構図。塩鮭と鼠と笑みをさそうかと思えば、蛇と小鳥と緊張感。見事に描かれた鰈とアクセントをそえる赤い撫子。透明な包みに桜の花を包んで持ち帰るというはかなさ。どれも繊細な描写と画題が呼び起こす感情があわせて訴えかけてくる素晴らしい作品。
  • 465 春日山鹿図 絹本着色 氏家浮世絵コレクション(鎌倉国宝館内)蔵
     淡色の春日の山に鹿が二匹。よくみると鹿が素晴らしい。かなりデフォルメされて意匠と繊細な筆致によるボリューム感。
  • 475 桜に鷲図 絹本着色 氏家浮世絵コレクション(鎌倉国宝館内)蔵
     何でこんなに大きくそしてリアルに描くの。本当に怖いです。
  • 481 鍾馗騎獅図 紙本着色 出光美術館蔵
     騎獅にまたがり空を飛ぶ鍾馗。躍動的に空を飛ぶ。そして爪をむいた騎獅の威圧感。よくみると騎獅の肌は丸でデザインされています。
  • 483 羅漢図 紙本着色 太田記念美術館蔵
     244羅漢図と同じ構図。こちらは丹念に描かれている。人物の表現は筋肉質。煙のようすは、すすける様が見事。そして赤い稲妻が小さく光る。
  • 487 柳に燕図 紙本着色 墨田区蔵
     長らく所在が不明だった作品だそうだ。向かいに展示されている472柳に烏図には秋を感じたが、こちらの作品には明るい春風を感じる。
  • 488 流水に鴨図 絹本着色 大英博物館蔵
     217 鯉図から表現を追及した水面が墨色で表現されている
  • 495 富士越龍図 絹本墨画淡彩 北斎館蔵
     嘉永二年正月辰の日の絶筆とされる作品。この年の四月に北斎は亡くなる。黒雲の濃淡の表現そして緻密な龍の筆致は最後まで衰えない。

    最後に。何周も回ると晩年の作品に初期の画題から発展していくのが垣間見れ、北斎が堪能できました。

    P.S.本棚から93年に東武百貨店で開催された大北斎展(朝日新聞社)の図録がでてきました。まったく覚えていませんでした。ぱらぱらとめくると、今回の冨嶽三十六景は、やはり発色がすばらしいです。そして、肉筆画も充実しています。逆に版画のシリーズは、大北斎展では展示されていたものも多少あるようです。とにもかくにも、BLOGで記録するという行為と東京国立博物館らしい年代順の展示が私の北斎への理解を深めたといえるでしょう。次の北斎展はまた十年後でしょうか。
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    特別展 やまとうた一千年 @五島美術館

    2005-11-24 | 美術
    特別展 やまとうた一千年
    -古今集から新古今集の名筆をたどる- 
    五島美術館
    2005年10月29日から11月27日
    本年は『古今和歌集』の成立から千百年、『新古今和歌集』の成立から八百年の節目にあたる。この記念すべき年に際し、その間の勅撰和歌集とともに、写本や古筆断簡を一堂に展示し、和歌の魅力と特色を探る(期間中一部展示替あり)。主催=財団法人五島美術館/財団法人大東急記念文庫/朝日新聞社、協力=財団法人冷泉家時雨亭文庫/和歌文学会。

     先々週の出光美術館に引き続き、古筆の展覧会です。23日にNHKの日曜美術館を見て慌てて表記に行ってきました。そのためか観覧者が多く、入場制限が出て15分ほど待ってようやく入場させてもらいました。館内もかなりごった返していました。
     今回の展覧会は、古今和歌集、後撰和歌集、後拾遺和歌集、金葉和歌集、詞花和歌集、千載和歌集、新古今和歌集の八大集の名筆をたどる展覧会。和歌集別に展示されています。

  • 1.重要文化財 上畳本三十六歌仙絵 紀貫之像 五島美術館蔵
    2.歌仙絵 壬生忠岑像 五島美術館蔵
     まず、古今和歌集の撰者二人の像から展覧会は始まります。(古今和歌集は、延喜五年(九〇五)の醍醐天皇の命により、紀貫之(きのつらゆき)・紀友則(きのとものり)・凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)・壬生忠岑(みぶのただみね)が撰者となり、成立)
  • 12.継色紙 伝小野道風筆 重要文化財  五島美術館蔵
     継色紙の伝小野道風の書は、素晴らしく優雅です。継色紙(つぎしきし)・寸松庵色紙(すんしょうあんしきし)・升色紙( ますしきし)は、三色紙と称されるそうだが、今回その美しさが理解できたのは、継色紙まで。
  • 4.高野切 第一種 伝紀貫之筆 重要文化財 五島美術館蔵 (画像はこちら
    11.高野切 第一種 伝紀貫之筆 重要文化財 東京国立博物館(画像はこちら
     高野切は、第一種から第三種までが展示されています。比較してみると、第一種は、特に墨の継ぎ方がかなり明瞭なのがよく分かります。関戸本古今集切、寸松庵色紙、本阿弥切と続きます。
  • 31.唐紙本新古今集切 伝藤原行成筆 個人蔵
    「よみびとしらず ちりねれば こふれどしるし なきもへを へふこそ桜 おらばおりてめ」
    わずかにこの断簡のみが知られる。斜めに散らした書風。
  • 32.国宝 元永本古今和歌集 下巻 藤原定実筆 東京国立博物館蔵
     一葉に一和歌が書かれています。今回展示の箇所は白地に雲母刷りの唐草模様の美しい豪華な本。
    別のぺーじですが、写真。平安時代/12世紀 彩箋墨書、縦21.1 横15.5、2帖、三井高大氏寄贈、『古今和歌集』の仮名序と20巻を完存する最古の写本が,この元永本である。数種の染紙にさまざまな型文様を刷り出した料紙を表とし,その裏側は金銀の切箔・野毛・砂子などを撒いた豪華なものである。秀麗な書は藤原行成の曾孫・定実(?~1077~1119~?)の筆と推定されている。

  • 34.巻子本古今集切 藤原定実筆 重要文化財 個人蔵
     うすい藍地に唐草文様
  • 43.堺色紙 伝藤原公任 五島美術館蔵
    44.大色紙(唐紙)伝藤原公任 重要美術品 個人蔵
     一句一句を色紙に書いている。
  • 66.右衛門切 伝寂蓮筆(224.手鑑「露の香」個人蔵から)
    「やまざとは あきこそことに わびしけれ しかなく音に 目をさましつつ 壬生忠岑」
  • 46.下絵古今集切 伝藤原定頼 五島美術館蔵
    「みちのくは いづくはなれて しほがまの 浦こぐ舟の 綱でかなしも 東歌」
    とても長い「し」が印象的
  • 77.佐竹本三十六歌仙(後撰和歌集)清原元輔像 重要文化財 五島美術館蔵
  • 藤原定家筆が4点並ぶ。圧巻。
    71.伊達家本古今和歌集 藤原定家筆 重要文化財 個人蔵
    72.国宝 古今和歌集(嘉禄二年本)藤原定家筆 京都・冷泉家時雨亭文庫蔵
    92.国宝 後撰和歌集(天福二年本)藤原定家筆 京都・冷泉家時雨亭文庫蔵
    116.拾遺和歌集(天福元年本)藤原定家筆 個人蔵
     定家の筆跡も、晩年はうまく手が動いていない様子が見て取れるという。
  • 83.重要文化財 二荒山本後撰和歌集 藤原教長筆 栃木・二荒山神社蔵
     色変わり染め紙に飛雲と金銀揉箔を散らした美しい料紙。天海が二荒山神社に寄贈したもの。
  • 137.後拾遺和歌集 伝光厳天皇筆 個人蔵
     さすが宸翰。料紙が豪華。
  • 130.131.粽切(ちまきぎれ)伝西行筆 個人蔵
     一部に柄の紙を用いた独特の美しい料紙。
  • 155.詞花和歌集切 藤原俊成筆 東京書芸文化院蔵
    163.164.日野切(千載和歌集)藤原俊成筆 個人蔵
     俊成は、止めがきいた筆跡  
  • 190.重要文化財 隠岐本新古今和歌集 京都・冷泉家時雨亭文庫蔵
     後鳥羽上皇が隠岐で、さらに新古今和歌集を撰りすぐっていたかと思うと感慨ひときわ。
  • 熊野懐紙
    200.熊野懐紙 後鳥羽天皇筆 国宝 京都・陽明文庫 
    202.熊野懐紙 藤原定家筆 重要美術品 個人蔵
    203.熊野懐紙 寂蓮筆 国宝
    205.熊野懐紙 藤原家隆筆 国宝 京都・陽明文庫
     先般、三井記念美術館「美の伝統 三井家伝世の名宝」(前期)で国宝「熊野御幸記」藤原定家筆(を鑑賞した。そのときに直筆でしたためた署名入りの懐紙(正確には後鳥羽天皇は署名がないので、後鳥羽天皇の宸翰と判る)。伝寂蓮でなく、寂蓮筆です。感動的です。
  • 勅撰和歌集の享受のコーナー
    215.色紙帖 本阿弥光悦筆 伝 俵屋宗達下絵
     豪華な金箔をベースにした色紙に本阿弥光悦の一寸太目の筆が走ります。
    216.新古今集抄月詠歌巻 大東急文庫
     藤、鹿、橋の文様の雲母刷りに、闊達な書風の印刷物

    今後のお楽しみ
  • 33.国宝 古今和歌集仮名序 藤原定実筆 東京・大倉集古館蔵
    NHKでも放映されていた一葉ごとに違う色の料紙を用いた豪華な仮名序は、前期のため見れず残念
    このほかに国宝の古今和歌集は、
     古今集伝藤原清輔筆  東京・(財)前田育徳会
     古今集第十九残巻(高野切)・東京・(財)前田育徳会
     古今和歌集巻第十二残巻(本阿弥切本)(京都国立博物館保管)
     古今和歌集巻第五(高野切本)東京・個人
     古今和歌集巻第廿(高野切本)東京・個人
     古今和歌集(色紙)(曼殊院本) 京都・曼殊院
     古今和歌集巻第八(高野切本) 防府毛利報公会
    がある。
  • 国宝の熊野懐紙は他に、京都・本願寺に後鳥羽天皇宸翰以下十一通がある。
  • 藤原定家の国宝は、今回のものと、「熊野御幸記」の他に、
     土佐日記藤原定家筆 文暦二年五月十三日奥書 東京・(財)前田育徳会
     源氏物語奥入藤原定家筆・京都・個人
  • 寂蓮の国宝は、この他に、一品経懐紙(西行、寂蓮等十四枚)(京都国立博物館保管)
    がある。
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    ブルクハルト「美のチチェローネ―イタリア美術案内」

    2005-11-23 | 美術
    新刊発売 ヤーコプ・ブルクハルト「美のチチェローネ ―イタリア美術案内」

    美のチチェローネ―イタリア美術案内

    青土社

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    美のチチェローネ―イタリア美術案内
    ヤーコプ・ブルクハルト (著), Jacob Bruckhardt (原著), 高木 昌史 (翻訳)

    高階秀璽先生の書籍を読んでいると、ヴァザーリとともしばしば引用されるブルクハルトの「チチェローネ」絵画編の邦訳が出版された。原書は、建築、彫刻、絵画の3部に分けて1000ページ、絵画編だけで330ページもあるそうで、その約1/3が抜粋訳されている。(原著の流れが分かるように、有名画家を網羅、図版が日本でも容易に参照できることとが基準で抜粋されている。ダヴィンチ、ミケランジェロはほぼ訳出されているが、ラファエロは原書が長いため、重要箇所に絞れているいる。)完訳でないのが残念だ。逆に、ヴァザーリの日本語訳は約8000円を三冊も購入しないとの比べれば、非常にもとめやすい価格の2310円。丸善で平積みにされていたので購入。丸善では、本書の手前にウンベルト・エーコ(ボローニャ大学人文科学部長で記号論の教授。世界的ベストセラーとなった『薔薇の名前』をはじめとして、『フーコーの振り子』など、フィクション、ノン・フィクション双方に多数の著書がある)の「美の歴史」というカラー図版の書籍が並んでいたが、8400円ということで、こちらはとりあえずは断念。でも、あまりに美しく面白そうな書籍だったので、購入してしまうかも。紀宮清子さま監修「ジョン・グールド 鳥類図譜 総覧」も20,000円で限定800部で予約中とのポスターも。

    P.S.「チチェローネ」でBLOG検索すると、帝国ホテルのイタリアンレストランばかり。

    目次

    編訳者によるまえがき


    古代絵画
    初期キリスト教絵画とビザンティン絵画
    ロマネスク絵画
     チマブーエ、ドゥッチョ
    ゲルマン(ゴシック)絵画
     ジョット、オルカーニャ、フラ・アンジェリコ
    十五世紀絵画
     マザッチョ、フィリッポ・リッピ、ボッティチェリ、マンテーニャ
    十六世紀絵画
     レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ・ブオナローティ、ラファエロ、コレッジョ
    ヴェネティア派
     ジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ
    マニエリストたち
     パルミジャニーノ、ポントルモとブロンズィーノ
    近代(バロック)絵画
     グイド・レーニ、カラヴァッジョ

    資料
     「チチェローネ」絵画編総目次
     テクスト/参考文献/図版一覧/年譜/関連地図
    解説
    あとがき

    チチェローネ 建築篇―イタリア美術作品享受の案内

    中央公論美術出版

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    美の歴史

    東洋書林

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    ジョン・グールド 鳥類図譜 総覧

    http://www.tamagawa.jp/research/museum/info.html
    著者:紀宮清子編
    出版社:玉川大学出版部
    B4判上製・288頁 定価 :20,000円(税込)
    発行年月 :2005年11月
    ISBN :ISBN4-472-12000-3 C3037
    ジャンル :自然科学
    19世紀の画家・鳥類学者グールドが制作した図譜は、総数3千点に及ぶ。世界各地の鳥類の生態が生き生きと描かれ、歴史上最高級の図譜と賛美されている。本書は図譜全巻のリストを作成し、現在の学名・英名・和名を対応させたもの。口絵に各図譜の代表作80点を掲げ、索引を充実させた。清子内親王殿下の研究の成果である。

    主な目次
    グールドについて
    ヒマラヤ山脈百鳥類図譜
    ヨーロッパ鳥類図譜
    オオハシ科鳥類図譜
    キヌバネドリ科鳥類図譜
    Icones Avium:鳥の図譜
    オーストラリア鳥類図譜
    アメリカ産ウズラ類鳥類図譜
    ハチドリ科鳥類図譜
    アジア鳥類図譜
    イギリス鳥類図譜
    ニューギニア及びパプア諸島鳥類図譜
    参考文献
    あとがき
    索引  現学名索引/現英名索引/和名索引


    ヤーコプ・ブルクハルトの他の書籍
    イタリア・ルネサンスの文化〈1〉

    中央公論新社

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    目次
    2 個人の発展(イタリア国家と個人
    人格の完成
    近代的名声
    近代的な嘲笑と機知)
    3 古代の復活(前置き
    廃墟の都市ローマ
    古代の著作者
    十四世紀の人文主義 ほか)〔ほか〕

    イタリア・ルネサンスの文化〈2〉

    中央公論新社

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    4 世界と人間の発見(イタリア人の旅行
    イタリアにおける自然科学
    風景美の発見 ほか)
    5 社交と祝察(身分の平等化
    生活の外面的洗練
    社交の基礎としての言語 ほか)
    6 風俗と宗教(道徳性
    日常生活における宗教
    宗教とルネサンスの精神 ほか)
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    世界美術館紀行 フリーア・ギャラリー

    2005-11-22 | 美術
    世界美術館紀行 フリーア・ギャラリー 
    -友情が生んだ日本美の殿堂-

    先般、来年北斎展 *1 が米国ワシントンDCにあるフリーア美術館 (Freer Gallery of Art)に隣接するサックラー美術館にて開催されることを紹介した。そのフリーア美術館についての紹介番組が放映された。シカゴの鉄道王フリーアのコレクションによる東洋美術の美術館。彼はまず米国人のホイッスラーの版画に興味をもち、英国滞在中のホイッスラーに会いに行く。ジャポニズムに傾倒していたホイッスラーにより、日本美術に感化され来日したとのこと。原三渓等とも交流があり、審美眼の高い作品を米国に持ち帰っている。

  • 光琳 群鶴図屏風(画像はこちら
  • 北斎肉筆画 冨士と笛吹き童子(画像はこちら
  • 宗達 松島図屏風 (画像はこちら)テレビで画面でも分かるすばらしい宗達らしい波の表現。もともとは堺の寺にあったそうだ。

    また、フリーア美術館には、ホイッスラーの多数の作品の中には、孔雀の間という、彼のジャポニズムの傑作といえる部屋もある。

    *1 北斎展(前半)@東京国立博物館 その2から:「フェノロサが「北斎最晩年期最大の逸品」と絶賛したのが「雷神図」(1847年、ワシントン・フーリア美術館蔵)(画像はこちら)(この作品は隣接するサックラー美術館で来年3月4日から開催される「北斎展」に出展される。)」(なお、「北斎展(前半)@東京国立博物館その1」はこちら

    [詳細] 世界美術館紀行◇全米屈指の東洋美術を収蔵したスミソニアン協会の博物館群の一つ、フリーア・ギャラリーを訪ねる。同館は日本美術が特に充実しており、平安時代の「如意輪観音像」や俵屋宗達の「松島図屏風」など日本にあれば国宝や重要文化財になるほどの名品が並んでいる。ギャラリーの創設者はデトロイトの鉄道王、チャールズ・ラング・フリーア。19世紀末に初めて訪日した彼は原三渓や益田鈍翁といった好事家と出会ったことで日本美術に魅入られ、審美眼を磨いた。また、彼はジェームス・マクニール・ホイッスラーに浮世絵や日本の陶磁器の魅力を教わり、さらに造詣を深めていく。

    11月19日10:00からNHK教育テレビにて放映。
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    平安の仮名、鎌倉の仮名 @出光美術館

    2005-11-20 | 美術
    古今和歌集1100年・新古今和歌集800年記念
    平安の仮名、鎌倉の仮名 ―時代を映す書のかたち―
    2005年11月5日~12月18日
    出光美術館のHPから:平安時代と鎌倉時代の仮名。どちらも今日の私たちからみれば美しい仮名ですが、印象はずいぶん異なります。平安の仮名はたおやかで優雅、鎌倉の仮名はかっちりとして厳格。本展では、仮名が主に和歌を記した文字であるという視点から、それぞれの時代に和歌がどのような場で用いられたのかを考えながら、文字の美しさの違いを探ります。今年は平安時代と鎌倉時代を代表する勅撰集『古今集』、『新古今集』の成立から1100年、800年の記念の年です。平安と鎌倉の仮名の形を通して、それぞれの時代の和歌や文化に触れてみたいと思います。
    永青文庫のあとに(つまり11月13日に)出光美術館の「平安の仮名、鎌倉の仮名」を見てきました。出光美術館は、数年前に開催された中国の書の展覧会以来。書は分かっていませんし、和歌についてはもっと理解していませんが、つらつらとリストします。

    今回の展覧会は出光美術館の収蔵品の他、国宝二点を含む書が展示されていました。

    十一世紀のかな
    まずは、おなじみ 高野切(こうやぎれ)第一種(伝紀貫之 平安時代 重要美術品)からです。巻頭は昔、五島美術館で見たことがあります。(画像はこちら)。「高野切」は『古今和歌集』の最古の写本として知られています。3人の手になると分類されていて,第1種、第2種、第3種と称されます。「高野切」の名は,豊臣秀吉が高野山の木食応其にその断簡を与えたことにちなんで名付けられとのこと。(国立博物館の第3種はこちら。高野切の解説は、たとえばこちら。)

    国宝「歌仙歌合(伝藤原行成 一巻 和泉市久保惣記念美術館)」。上下二段にわけて詠み人毎に十首ずつ歌が書かれています。連綿とした「かな」で書かれていますが、その長い巻物にまったく同じ調子で和歌が配されている様は見事としかいいようがありません。
    和泉市久保惣記念美術館のディジタルアーカイブの解説紫と藍の大ぶりの飛雲を漉き込んだ料紙9枚に30人の歌仙の歌を10首、または2~3首ずつ、計130首を上下に番えて書写している。このために歌仙歌合と呼ばれるが、題を欠き原本の書名は不明である。1首を三行書に揃え全体の配置は均整であるが、効果的な墨継ぎによる濃淡の変化が全体に動勢ある階調を生み出している。書写量が多いためか字間が狭くなりがちであるが、筆勢が効き、字形もよく整って流麗な趣さえある。かなの円熟期をさほど降らない頃の書風であろう。洲浜形を連想する様な飛雲は、紫と藍の繊維を漉き込む際の疎密や重なりによって、色調に微妙な変化と質感が滲み出している。歌仙の名は、書写順に人麿、貫之、躬恒、伊勢、良僧正、在中将、家持中納言、敦忠中納言、公忠辨、敏行、友則、忠岑、重之、興風、信明、清正、順、深養父、小町、是則、元輔、小太君、仲文、能宣、名多、兼盛、中務となる
    同じく伝藤原行成の「貫之集切」(常盤山文庫)紫の料紙。「あしひきの」「ひくらし」のそれぞれの「し」の字が流れるように美しい。

    「香紙切」(伝小大君 一葉)は、風で舞うような字体と感じました。
    「風吹きをり中つかさ
    はきのえのいろつくたにもある物を
    こゝろほそくもかせのふくかな
    をかむらの天皇の御返
    ゆふくれはをくらのやまにすむし」
    十一世紀のかな
    石山切が3点。「石山切」は『本願寺本三十六人家集』(白河上皇への献上品とされる。1112年)のうちの『伊勢集』と『貫之集』下の二冊を、昭和四年に断簡したもの。石山本願寺の旧地に因んで名付けらた。伊勢集 断簡(伝藤原公任 一幅)を2点と貫之集下 断簡(藤原定信 一幅)を出光美術館が所蔵。
    特に伊勢集断簡の1点は、連綿とした書もさることながら、三色の染紙と雲母刷りの料紙が美しい。
    「ゆふるなみたの きえるなるへし
    人に物いひて猶つゝましかりけるころ
    あひみてもつゝむおもひのわひしきは
    人まにのみそねはなかれける
    よそながらおもひいてける人の
    おとりなかりければ」

    倭漢朗詠抄 巻下 伝藤原行成 一巻 出光美術館」はじめてみました。

    伝西行が数点。「光孝天皇集切 一幅 個人蔵」「和泉式部続集 一幅 個人蔵」「重要文化財 中務集 一帖 出光美術館」など。「中務集」は、連綿とした書体。13.1x 15.2cmの小さな冊子ですが、塗りの箱に入っています。「光孝天皇集切」は、先週根津美術館で見た伝 西行の大名物 落葉の筆に近い書体と(記憶はあやふやですが)見ました。

    定頼集 藤原定家 一帖 出光美術館」これは定家の真筆です。

    鎌倉の仮名
  • 「重要文化財 広沢切 伏見天皇 出光美術館」まるでペンで書いたような書体。画像はこちら
  • 伝 寂蓮の書が多数。「手鑑 若竹」。「田歌切」「大色紙」「関谷集切」「栄華物語切」など。伝寂蓮の字は一つの一つの字がきちんと分離しているとのこと。
  • 「重要文化財 正嘉三年北山行幸御会歌(金沢文庫本)伝冷泉為相 一巻 東京国立博物館)」薄茶の料紙に雲母刷りが一葉一葉異なり美しい。字体も温和。
  • 「筑後切 伏見天皇 一巻 出光美術館」(国立民族博物館の所蔵品はこちら)先ほどの広沢切と違っておおぶりで温和な字体です。

    最後に国宝「古筆手鑑 見努世友(みぬよのとも)」(一帖 出光美術館)古筆家が作成したそうです。すごいです。

    「時代を映す書のかたち」。美しい書体が尊ばれた平安時代とそれ以降ということでしょうか。
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    COURRiER JAPON創刊号

    2005-11-17 | Weblog
    ボジョレ・ヌーボー解禁日の本日、COURRiER JAPONが創刊されました。とりあえず購入してみました。パラパラとめくると「ベビーブームです」という記事。パンダが16頭勢揃いで写った見開きの写真がありました。記事は今日はまだみていません。面白い記事があれば後日紹介します。それにしても、TVのCMから、地下鉄の広告からすごいです。(通りかかった)霞ヶ関駅には専用の広告がありました。
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    「永青文庫の近代日本画―細川家に集った巨匠たち」

    2005-11-13 | 美術
    特別展「永青文庫の近代日本画―細川家に集った巨匠たち」

    何人か方のBLOGやとらさんのHPをみて気には留めていたのですが、今朝、青色通信のアイレさんからのTBを受けてBLOGを拝見していたら、あれ、今日13日までならば永青文庫で菱田春草「黒き猫」を鑑賞できると、はっと気がつきました。

    一ヶ月ほど前に健康診断を受けていて、待合においてあったのが、かなり古い数冊のアサヒグラフ(?)。一冊ずつ一画家の画集になっている。その中の1冊が菱田春草。初期から晩年までの作品が大判の印刷で眺められるグラフ誌の解説で、特に晩年の数年の作品が高く評価されていました。「黒き猫」の他に「落葉」(これも永青文庫所蔵とのこと)とか数点のイメージが蘇ります。(「黒き猫」は記念切手にもなっていましたね。)

    永青文庫のHPを見ると、
    「重要文化財 黒き猫 菱田春草筆[明治43年] 紅葉した柏の樹と猫をみごとに調和させて描いているこの作品は、明治42年発表の『落葉』とともに、菱田春草(1874~1911)の代表作となっている。明治43年第6回文展に出品され話題を呼んだ。熊本県立美術館寄託。 」とあるではないですか。いつもは熊本か。これは今日やはり行くしかない、と終に思い立って行ってきました。チラシ一枚だとなかなか腰が重いのですが、皆さんのBLOGやHPを拝見しているとついつい行きたくなります。

    永青文庫は、細川家に伝来する歴史資料や美術品等を所蔵する美術館。訪れるのは初めてです。目白台の椿山荘、東京教区カテドラルのすぐそばにある元の細川家の屋敷跡のちょっと鬱蒼とした樹木のなかに永青文庫はありました。

    今回の特別展では、侯爵16代護立公によって収集されたものが主に展示されていました。

    富岡鉄斎で展示は始まります。
    中村岳陵「輪廻物語」(1927) 第8回院展出展。調和と統一は31歳とは思えぬ成熟したぶり。力量を認めれた作品*1。また「魔女」(1960)「摩耶夫人」(1960)など岳陵が四天王寺金堂壁画を製作していたころの作品。同じモチーフなのだろう。「摩耶夫人」の背景の青緑の斑模様の筆の使いが摩耶夫人の白い顔と表情を引き立たせています。
    下村観山「鷹」十四歳の作品。鷹の緻密な表現。ちょっとびっくりです。
    横山大観の勅題画「池辺鶴」(1935)「海上雲煙」(1936)「朝陽映島」(1939)。特に最後の1点には小品ながら勅題画を描くという画家の気迫を感させます。(それが「とらさん」の戦争画へのopinionにもつながるのでしょうが。)
    安田靫彦「聚楽茶亭」(1905)。第6回紅児会展出展。武人らしくも茶を嗜むという秀吉の姿が描かれています。
    小林古径「鶉」(1913頃)。古径の描く動物はいつも素晴らしいです。鶉の羽毛の様子など秀逸。先般古径展(感想はこちら)にもでていた「孔雀」(1934)も展示されていました。
    鏑木清方「抱一上人」(絹本3面)(1909)。烏合会第19回展出展。中央に三味線を奏でる抱一上人。両側に細長い構図で着物姿の女性を一人ずつ配置。「市民の風雅に遊ぶ」ことを鏑木は目指していたと説明にありましたが、左の少しうつむいた若い女性の表情、手のしぐさが江戸風俗の女性の風雅の一瞬を表しています。表装の金の模様も凝っています。鏑木清方が書いた手紙も展示されていました。
    横山大観など5人の「鳥尽」。杉戸に5人の画家が一羽ずつ鳥を描いています。大観のフクロウは可愛らしいくも、堂々と描かれています。
    そして、最後に菱田春草「黒き猫」。黒き猫の毛並みはふわふわ。朦朧体を極めた春草ならでは。黄葉は、空気の澄んだ秋らしく、くっきりと描かれています。そして、木肌の様子は、まるで本当の樹木を見ているかのようで、それでいて意匠化されています。斜めに横切る枝、樹木という構図に、黒き猫が画竜点睛として画面の重心に収まってこちらを向いていました。ちょっと腰を屈めると、掛け軸として丁度よい高さで鑑賞できます。

    それにしても、永青文庫の現在の建物は旧細川公爵家の家政所(事務所)として昭和初期に建設されたものとのことですが冬は冷えますね。美術品にはいいかもしれませんが、鑑賞者にとっては。。。

    *1 生誕百年記念中村岳陵展 図録(平成2年) の河北倫明氏の解説による。
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    国宝燕子花図 -光琳 元禄の偉才- @根津美術館

    2005-11-10 | 美術
    特別展 国宝燕子花図 -光琳 元禄の偉才- @根津美術館

    何故か足を運んだことがなかった根津美術館に、久々に国宝燕子花図が出展されるというので、会期間際の5日(土)に行ってきた。国宝燕子花図を目当てにいったのだが、まずは第二室の方から鑑賞。

    お茶道具が秋の茶会のイメージで展示。ご婦人方がお道具についてメモを取っている。例えば、
  • 大名物 落葉の色紙 伝西行
    「寺落葉 せきてらや 人もかよはず なりねれば もみじちりしく にはのをもかな」
  • 茶入 中興名物 瀬戸玉柏子 銘村雨
  • 副茶碗 古志野 銘あさか山 松平不昧公所持

    また、
    乾山の「錆絵楼閣山水文茶碗」。国立博物館の「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」(観覧記はこちら)では、乾山はピンとこなかったが、この作品は錆絵の茶色と地はだの色の対比、口の金の装飾となかなかの趣を感じた。そのほか呉須恵が何点か特集展示されていた。

    さらに第4室は
    中国の商時代の青銅器、トウテツモンカ 饕餮文斝(「饕餮」は中国の怪獣、斝は酒器の一つ)とか饕餮文○という名称の様々な種類の青銅器が展示されていた。「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」の「交趾じこう香炉」(奥田頴川)は中国の青銅器を模した作品であり、なんとも中国の想像の動物たちは可愛らしいとおもったが、ここの「饕餮」たちが元祖。これが紀元前11世紀の造形かと思うほど素晴らしい。根津翁が好んで集めたというのも納得。青銅器の説明はその場にもあったが、たとえば、このサイトにも詳しい。



    そして、第一室の「特別展  国宝 燕子花図 - 光琳 元禄の偉才 -」(後期)
    前期後期あわせて、44点あまりが展示された一寸した光琳展。最近、光琳、琳派については近年たびたび展覧会が催されていたが、全く鑑賞していなかったので、今回初めて光琳の世界を俯瞰できた。
  • 西行物語絵巻 紙本著色 四巻のうち二巻 宮内庁三の丸尚蔵館
    白い空間を生かし、暖色を多用した明るい色調かつ清楚なイメージの絵巻物。書は全く理解しないが、達筆と見た。献上品に相応しい。(宮内庁所蔵の作品は御下賜されないと重要文化財にも国宝にも指定されない。)
  • 国宝 八橋蒔絵螺鈿硯箱 東京国立博物館
    おなじみの硯箱
  • 四季草花図 紙本金地著色 六曲屏風 一隻 個人蔵
    草花がこれでもかこれでもかと生えている。近づいてみるとどの草花も意匠をこらしていて不思議な世界。アンリ・ルソーのジャングルではいいすぎだが、それを空いたようなデザイン。
  • 槇楓図 紙本金地著色 六曲屏風 一双 東京藝術大学美術館
    こちらは、一寸離れてみると楓の赤が映えます。
  • 国宝 燕子花図
    光琳四十四歳代中ごろの比較的初期の制作とのこと。大きな作品は、やはり実物に接すると違う。左右の屏風で群青、緑青の燕子花の色が異なるとは。
    「伊勢物語」からということだが。
     らごろも
     つつなれにし
     ましあれば
     るばるきぬる
     びをしぞおもふ
    という歌を思い出さないといけなかったが、勿論失念していた。…昔教科書にあった折句の技法。次回の機会には、恋というキーワードで、そのつもりで見ないと。分かっていませんでした。光琳の屏風は、あとMOA美術館「紅白梅図」の金箔に騙されるか否か確認しに行かねば。Juliaさんによれば、メトロポリタンにも「八ツ橋」があるとのこと。「国宝」によれば、戦後に海外に流出した作品

    陶磁器で目が言ったのは、
  • 錆絵山水図四方火入れ 大和文華館 乾山作・光琳画
  • 重要文化財 寿老図六角皿 大倉集古館 乾山作・光琳画
    (この作品は、11/8からは「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」にて展示。)
  • 錆絵寒山拾得図角皿 二枚 個人蔵 乾山作・光琳画
    これらの作品も、「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」にはピンと来ていなかったが、なかなか錆絵はいい。光琳画の威力。前述の乾山と比較してみればよかったと思ったが、後の祭り。

    さらに
  • 重要文化財 白綾地秋草模様小袖 光琳筆 一領 東京国立博物館
    小袖に模様を筆で描いたのか。染でも織でもなく、直に描いたと見た。淡い色合いがでて面白い。保存状態もよい。
  • 何幅かの掛け軸と意匠帖

    思いがけずも、巻物、屏風、画幅、漆工、陶磁 など光琳の幅広い活躍の一端を窺える展覧会だった。逆の言い方をすれば、根津美術館のサイトはもうすこし詳しいとうれしいですね。



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