見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

鎌倉あじさい散歩

2017-06-25 23:55:07 | なごみ写真帖
このところ業務イベント続きで忙しかったので、ぐったり気味だった週末。

気分転換に鎌倉散歩に行ってきた。アジサイの季節に訪ねるのは久しぶりである。あちこちで花を見たが、いちばん美しいと思ったのは、鶴岡八幡宮の参道(段葛)から鎌倉駅に向かう交差点、井上蒲鉾店の前のアジサイ。

 車道と歩道を隔てる植え込みにアジサイが1株だけあって、信号待ちをしながら見ていたら、白っぽい制服のおばさんが何本か花を切り取って、束にして店の中に持っていった。あまりに自然なふるまいで、びっくりしたが、蒲鉾屋さんが通行人の目を楽しませるために植えて、育てているのかもしれない。

ガクアジサイの八重で、あまり見たことのない、工芸品のように美しい品種。花嫁のブーケにもなりそう。





それから鎌倉駅前の豊島屋がパン屋併設になっていた。2階はイートインスペース。散歩の前に軽く腹ごしらえをしたいときによさそう。



来週は、たまっている記事を書く余裕があるといいのだけどなあ。

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新潟週末旅行:食べたもの

2017-06-21 00:22:16 | 食べたもの(銘菓・名産)
初日のお昼は新潟駅で野菜天へぎそば。蕎麦好き江戸っ子として、蕎麦はこうあるべき!と膝を打ちたくなるくらい美味しい。お店は「長岡小嶋屋」と言って、新潟の本家小嶋屋から独立した関係にあるらしい。



夜は寿司。これも駅ビル内の手軽な寿司屋なのに美味しかった。

昼食を抜いてしまった2日目は、帰りの新幹線でかつサンド。



前日、コンビニで見つけて試したエチゴビールが気に入ったので、また購入。1缶は持ち帰り用。これ常備用にしたいくらい美味しい。ホームページを見たら、東京でも売っているらしいので、覚えておこう。

大満足。
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アイスショー"Fantasy on Ice 2017 新潟" 2日目+千秋楽

2017-06-20 22:56:46 | 行ったもの2(講演・公演)
Fantasy on Ice 2017 in 新潟(2017年6月17日 14:00~;6月18日 13:00~)

 週末、新潟でアイスショーFaOI(ファンタジー・オン・アイス)を見てきた。FaOIは私の一番好きなアイスショーである。チケットは高い(SS席 21,000円)上に、近年、争奪戦が激しくて定価で入手できた試しがない。しかし大枚を投じても、それを後悔したことはないのだ。

 FaOIの会場は年によって変わるが、私は新潟の朱鷺メッセが一番好きだ。仮設会場のため、観客席の段差が小さく、前が見にくいという欠点はあるが、リンクと客席の高低差も小さいので、選手がとても身近に感じられる。2日目の終演後、羽生くんが「ここの氷はとても滑りやすい」と言っていて、なんだか自分がほめられたように嬉しかった。

 今年の出演スケーターを記録しておく。羽生結弦、宇野昌磨、本田真凜、織田信成、安藤美姫、鈴木明子、以上は先月の幕張公演と同じ。坂本花織、荒川静香が加わった。海外スケーターは、プルシェンコ、ステファン・ランビエール、ジェフリー・バトル、ジョニー・ウィア、ハビエル・フェルナンデス、エラジ・バルデ。新潟には、ラトビア男子のデニス・バシリエフスとロシア女子のメドベージェワが参加。アイスダンスもパパダキス&シゼロンに交代。エアリアルはチェスナ夫妻、それにいつものアクロバット二人組。ゲストアーティストは杏里、藤澤ノリマサ、そしてピアノ演奏とヴォーカルの木下航志。

 しかし何から書けばいいのだろう。土曜も日曜も楽しかったけど、やっぱり千秋楽は弾けるなあ。オープニングの羽生くんは猫耳をつけて登場し(杏里の「キャッツ・アイ」で群舞のため)、腹チラどころか、ガバッとシャツをめくって、会場に悲鳴を巻き起こした。衣装は色違いのキラキラTシャツ。羽生くんはブルー。織田くんも猫耳装着でステージに飛び乗り、杏里とダンスでコラボしてた。

 群舞のあとの一番手は坂本花織ちゃん。カッコいい「007」プロ。次がデニスだったと思う。イギリス映画に出てきそうな正統派美少年で、師匠のランビ先生を思わせる滑り。好きなスケーターだけ書いていくと、プルシェンコは肉襦袢スーツの「Sex Bomb」と「東日本大震災の被災者に捧げる」プログラム。私は両日とも北側だったので、「Sex Bomb」でプルシェンコが観客席に乱入してくるのを近くで見ることができて楽しかった。こういうプロは、朱鷺メッセみたいな小さい会場だとほんとに楽しい。ただ、幕張公演では肉襦袢スーツできれいなジャンプを決めていたのに比べると、疲れのせいか、キレが落ちていたように思う。千秋楽、南側の舞台袖で大きな団扇のようなものを振ってる人がいるのは見えていたのだが、「プルさま」の団扇(ファンの差し入れ)を振る羽生くんだったというのは、あとで知った。

 ランビエールは前半がしっとりした「Sometimes It Snows In April」。後半は「Slave To The Music」というのか。アップテンポの曲に乗って、黒の上下にキラキラの黒のジャケット、片手だけ白銀(?)の手袋を閃かせて、躍る、回る。片手をあげた低い位置でのスピンの美しさよ。ジョニーは大胆衣装の「How it End」と、藤澤ノリマサさんとのコラボで「アメイジング・グレイス」。後者は幕張の、肩にふわふわ羽根つきの優雅な衣装。千秋楽は、2015年のFaOIで披露した「クリープ」を衣装もそのままに再演。両性具有(アンドロギユノス)な雰囲気がジョニーにぴったり。FaOI常連のこの二人については、個人的に「もう一度見たいプロ」が他にもたくさんある!

 ハビエルは、木下航志さんとのコラボ「A Song for you」が珍しく真面目なイケメンプロですごくよかった。あと1つ、2日目は海賊プロ(パイレーツ・オブ・カリビアンか?)で、椅子に座って寝呆けている親分(実は安藤美姫ちゃん)の腰から引き抜いた剣を持って、くるくる舞う所作が武侠ドラマみたいで笑った(具体的にいうと琅琊榜の藺閣主を思い出していた)。千秋楽は、だぼだぼのオーバーオール姿でチャップリンプロ。また、安藤美姫ちゃんの「Eres tu」に途中からス~と入ってきて、後半はコラボで滑ってくれた。

 初めて生で見たメドベージェワは、テレビの中だと「手足が長すぎる」印象があったが、リンクではその長い手足の映えること。荒川静香さんの変わらぬ身体能力の高さには驚嘆した。織田くんよかったなあ。特にランビ振り付けの「To Build A Home」(The Cinematic Orchestra)は美しかった。ミスもなく完璧。

 そして羽生くんのバラード1番は、幕張3日目ほどの完成度ではなかったけど、楽しかった。満場の観客が心をひとつにして固唾を呑んでる感じがすごく気持ちよかった。2日目のアンコールは、幕張と同じ「Let's Go Crazy」。千秋楽もアンコールがあることは分かっていたけど、ステージ上でギター生演奏が始まったときは会場騒然。「パリの散歩道」のサビで、バラード1番の衣装のまま(腕まくりして)羽生くん登場。踊りまくって、北側はヘランジ(笑)を正面でいただきました。

 その興奮も冷めやらぬフィナーレは「希望の歌(第九)」。衣装は銀のTシャツに黒の襟付きジャケット、胸の正面に青いリボンが付いている。女子は上下キラキラの青。羽生くんは、猫耳ならぬ「プー耳」をつけて登場。よく見ると、他にも猫耳をつけたスケーターがたくさんいて楽しそうだった。スケーターが全員退場したあと、羽生くんのマイクパフォーマンスで「人生で、そんなに長い人生じゃないけど、一番楽しい梅雨でした」という発言に拍手。FaOIに戻ってきてくれてありがとう。東京に帰りついたときは雨が降り始めていたけど「人生で一番楽しい梅雨でした」が胸に残っていたので、寂しくなかった。

 なお、新潟のプログラム(冊子)は、バトルのインタビューと羽生結弦のインタビューを掲載。読み応えあり。むかし、アイスショーのプログラムって、写真しか載っていなくてつまんないんだなーと思ったことがあるが、FaOIは、このへんも観客層のニーズをよく分かっている。
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新潟散歩/北方文化博物館・新潟分館+旧斎藤家別邸

2017-06-18 23:58:46 | 行ったもの(美術館・見仏)
新潟に行ってきた。恒例のアイスショー「ファンタジー・オン・アイス(FaOI)」を見るためで、今年は土日公演のチケットを取っていた。今日(日曜)は午前中に少しだけ市内観光をした。

北方文化博物館・新潟分館

今年は初めて駅前でなく市の中心部のホテルを取ったので、ぶらぶら歩いて同館に行ってみる。住宅街に残る古いお屋敷。ここは明治末期に北方文化博物館の七代目伊藤文吉氏が取得した建物で、会津八一終焉の地でもある。

会津八一は新潟古町の生まれ。早稲田大学を卒業後、新潟に戻り高校教員となるが、早稲田中学校の教員として再び上京、東京で暮らしていた。昭和20年、戦災にあった八一は新潟県に疎開、郷里の友人の奔走により、伊藤文吉の持ち家であった新潟別邸に寄寓し、晩年を過ごした。



邸宅は一続きの広い日本家屋と小さな洋館からなる。日本家屋の2階には「潮音堂」の額が掛かっていた。東側と南側は全面がガラス戸で眺望がいい。



実は1階も座敷の東側と南側は広い濡れ縁があり、その外側に土間があり、ガラス戸で囲まれている。これって冬の雪風を防ぐための造りだろうか。新潟の郊外で、同じような造りの近代住宅を見た記憶がある。



なお館内には、会津八一旧蔵の良寛の書が多数展示してあり、「天上大風」が見られたのが嬉しかった。

旧斎藤家別邸

北方文化博物館分館の受付で「斎藤さんのお宅にも行かれますか?」と聞かれた。は?と戸惑ったが、そういう観光名所があったことを思い出して、共通券を購入した。両者は歩いて2、3分の距離にある。会津八一旧居もなかなかのお屋敷だと思ったが、ここは全く規模が違うということが、足を踏み入れてすぐ分かった。南北は短く、東西に長い屋敷(風遠しをよくするため)で、広い回遊式庭園を構える。↓庭園の奥から家屋を見たところ。



池の背景は、程よい目隠しになるくらいの小高い丘になっていて、鬱蒼と松が茂っている。これは砂丘と、防風林として植えられた松林そのものなのだそうだ。「ブラタモリ」新潟編を思い出す。砂丘の途中から水が湧き、滝が流れている。



ここは、豪商斎藤家の四代目・斎藤喜十郎が、大正7年に別荘として造ったもの。庭園は東京の庭師、二代目松本幾次郎と弟・亀吉による。戦後は進駐軍による接収を経て加賀田家の所有となった。新潟に本社を持つ建設会社・加賀田組のことだと思う。この屋敷を非常に大切に使ってくれた、とボランティアの方の話。

しかし、その後、さらに別の会社(横文字の社名を言っていた)に所有が移り、解体してマンションに建て替える計画が持ち上がった。これに対して、保存を願う市民有志の運動が起こり、署名・募金・請願などが実を結んで、新潟市による公有化が実現した。いい話だなあ。戦後の所有者であった加賀田組が「旧斎藤家」の名前を了解したというのも奥ゆかしい。公開が始まったのは、平成24年(2012)からとおっしゃっていたと思う。まだ新しい観光名所なのだ。



それにしても解体されなくて本当によかった。板戸に見事な牡丹孔雀図が描かれていて「紫煙」という署名があった。調べたら、岩手県生まれの画家・佐藤紫煙というらしい。いろいろ発見の半日遊だった。
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13億人の指導者/習近平の中国(林望)

2017-06-17 22:34:55 | 読んだもの(書籍)
〇林望『習近平の中国:百年の夢と現実』(岩波新書) 岩波書店 2017.5

 むかしから中国には一定の関心があるので、その指導者に対しては素朴な好き嫌いがある。朱鎔基、胡錦濤さんなどはわりと好き。習近平は、早くから優秀なリーダーと聞いて期待を寄せていたのだが、習政権が誕生すると、言論や市民運動に対する締め付けが一気に強まり、やれやれ、この政治家は嫌いというのが、私の第一印象だった。だが、少し冷静に習近平の中国を俯瞰的に見てみると、好きにはなれないが、そんなに悪い指導者ではないかもしれない、と思うようになってきた(同時代の世界の政治リーダーにどうしようもないのが多いせいもある。特に日本)。

 習近平は、2012年11月、党総書記に就任し、2013年3月、国家主席に選出された。2016年10月、中国共産党は「習近平同志を核心とする党中央」という言い回しを含むコミュニケを発表した。これは習近平の権力が最高レベルに達したことの現れである(知らなかった)。かつて共産党の「核心」と呼ばれた総書記は、毛沢東、鄧小平、江沢民の3人しかいないという。本書は、2011年3月から5年余り、朝日新聞社特派員として現地に滞在した著者が、中国で起きたことと、中国が目指す方向について、分析・記述したものである。

 第1章は外交が主題。習近平の中国は、本気で国際秩序の構築に参画しようとしている。著者はその意思を「世界のあり方をデザインしていくことへの意欲」とも呼んでいる。確かにこの点は、これまでの中国とは一線を画す変化が起きているように思う。当然、最も重要なのは対米関係であるが、相手が前例にないアメリカ大統領トランプというのは、習にとって吉と出るか凶と出るのか。

 習は、鄧小平の「韜光養晦」(能力をひけらかさず力を養う)路線を転換して、積極的な「奮発有為」を掲げている。その強硬路線(特に海への野心)は周辺国とさまざまな摩擦を呼んでいる。尖閣諸島問題もそのひとつだ。しかし中国は、そもそも対日関係にそれほどの関心を持っていないのではないかと思う。

 中国共産党が、抗日戦争での勝利を「統治の正統性の基礎」としてきたことはよく知られている。興味深いのは、第二次大戦の終結から70年目の2015年、中国は、抗日戦争を米英ソとともに戦った「反ファシズム戦争」の枠組で捉えなおすとともに、長らくタブー視してきた国民党の功績に光をあて、「オール中国」の戦いと勝利に位置づけなおした。中国の志向する国のかたち、そして世界の中のポジションが変わりつつあることを示す証左ではないかと思う。

 第2章は内政。改革開放の進展によって、一部の人々は素晴らしく豊かになり、多くの人々が「小康」と呼ばれる状態を享受するようになった。しかし、環境汚染、地位や財産を失う不安、不公平感、モラル崩壊など、さまざまな社会のひずみが生まれている。そしてまだ全国で七千万人が「貧困」状態にあるという。山積する課題の中、十三億人をおおよそ食わせ続け、生活レベルをじりじり上げているのは、まあ指導者としてよくやっているほうかもしれない、と考えたりする。

 著者の友人の中国人は、旅行先のエジプトで「強いファラオを戴いていることをもっと喜ぶべきだ」と言われたという。2011年、中東諸国で起きた民主化運動は独裁者たちを追いやったが、その後に政治的混乱や宗教的対立を招き、民衆は穏やかな暮らしを失ってしまった。それに比べたら、中国は幸せだというのだ。これには一理ある。しかし、一方で趙紫陽の政治秘書だった鮑彤(たん)が語る「(政権は)権力を失ったら共産党は瓦解して、中国はバラバラになると恐れている」「(しかし)国民党が下野しても台湾はそこにあ(った)」というのも示唆に富む言葉である。

 第3章は党について。習近平は「毛沢東でもあり、鄧小平でもあろうとしている」という政治学者・李凡の言葉が印象的だった。毛沢東の時代とは、つまり文革という災禍に襲われた時代であるが、そうした「回り道」も含めて今日の中国があると習は表明している。これは「回り道」をなかったことにする、という意味ではあるまい。このへんも、中国という国家が、一皮向けて次の段階に進んだことを示しているように思う。

 習近平政権が言い始めた「中国の夢」というスローガンは、空疎な感じがして仕方ないのだが、もうひとつの「百年の夢」という言い回しには、むしろ中国人の実感が伴っているように思う。アヘン戦争に始まり、新中国が成立するまでの苦難の百年に対して、共産党の指導の下、再び世界の大国となるまでの百年。私は中華人民共和国の建国百周年(2049年)を見られるだろうか。そのとき、習近平がどのように評価されているかも興味がある。

 複雑な中国の政治事情を豊富な情報から冷静に分析した良書。同じ題名の宮本雄二『習近平の中国』(新潮新書、2015)もよかったけど、本書も大変面白かった。
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近代の名所絵いろいろ/名所絵から風景画(三の丸尚蔵館)

2017-06-15 00:46:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
三の丸尚蔵館 『名所絵から風景画へ-情景との対話』(2017年3月25日~6月25日)

 出光美術館を見た帰りに、ふらりと寄った展覧会だが、面白かった。いろいろ知らなかった作品に出会うことができた。逸名(雲谷派)の『唐土名勝図屏風』(江戸中期)は八曲一双の大画面。絹本墨画、小さな人物のみ胡粉(?)で彩色して際立たせている。右隻は西湖周辺、左隻は金山寺周辺の風景を描くというが、展示は右隻だけだった。「霊隠寺」「銭塘門」などの地名が書き付けてあった。唐俊筆『太崋山図』(清代)も巨幅で、舶来もの。やはり中国の風景は大画面がよろしい。

 『青緑耶馬渓真景図』(斎藤畸庵、明治13年)は緑したたる耶馬渓、『耶馬渓図』(塩崎林浄、大正4年)は紅葉の耶馬渓を描いたもの。どちらも横長の図巻様式で、次第に山奥に入っていく様子が描かれる。羅漢寺の洞窟らしきものも。かつて耶馬渓を訪ねたときの記憶がよみがえって楽しかった。当時、人気沸騰の行楽地だったのだろうな。『金剛秋色図巻』(福田眉仙、大正11年)は、朝鮮半島の金剛山を描く。これも「九龍淵」「彩雲峯」などの地名が書き入れられており、「字が書いてある」と不思議がっているお客さんがいた。自然の美しさの捉え方は、西洋近代の「風景画」ふうであるけれど、まだ地図や観光案内の要素を含んだ「名所絵」なんだなと気づく。

 『石脳油産地之真景』(児島果亭、明治43年)三幅対は、一見、よくある墨画の山水画だが、日本の石油産業の祖である石坂周造が献納したもので、石油の採掘地を描いている。1枚目はよく分からなかったが、2枚目と3枚目には、柱を組んだ逆三角形の石油汲み上げ櫓が小さく描かれ、淡い朱を差した旗が立っている。ただし、それ以外は、人の姿もなく、のどかな(むしろ荒涼とした?)山間の風景である。

 『北海道忍路高島真景』(野村文挙、明治43年)は、皇太子(大正天皇)の北海道行啓を記念して、小樽区から献納されたもの。青い海に面した夏の忍路、月に照らされた雪景色の高島岬が描かれている。札幌から小樽あるいは余市へ鉄道で日帰り旅をしたときの車窓の記憶がよみがえって懐かしかった。近代になっても日本画の「風景画」は、どこか「名所画」の要素があって、「地名」の情報とセットで味わうものだと思う。

 その点、洋画は「地名」に頓着しない。山本森之助『夾竹桃』は、葉山あたりの海を思い浮かべていたが、あとで図録を立ち読みしたら、瀬戸内の風景らしかった。しかし、そんなことはどうでもよいと思えるのが近代の風景画である。
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皇居東御苑のハナショウブ

2017-06-12 00:08:55 | なごみ写真帖
皇居東御苑の三の丸尚蔵館を見てきた。ふと菖蒲田があったことを思い出して、行ってみたら満開だった。



花菖蒲はアヤメ科のノハナショウブをもとに改良された園芸品種で、江戸系、肥後系、伊勢系の三系統があるが、ここには江戸系が植えられているそうだ。白、水色、紫と、さまざまな色調が隣り合って、錦をさらしたような風情である。







でも、こういうのは人工の庭園ならではの風景で、ほんとは同一品種が群生するほうが多いのだろうな。光琳の『燕子花図』みたいに。
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画家の目で選ぶ/雑誌・BRUTUS「死ぬまでにこの目で見たい西洋絵画100」

2017-06-11 00:05:44 | 読んだもの(書籍)
〇雑誌『BRUTUS』2013年8/15号「人気画家・山口晃の死ぬまでにこの目で見たい西洋絵画100」 マガジンハウス 2017.6

 山口晃画伯が選ぶ西洋絵画1000。実際には91番目までが画伯のセレクションで、あと9点は美術ジャーナリストの鈴木芳雄氏と藤原えりみ氏が選んでいる。時代、分野は幅広く、ポンペイで発掘された紀元前のフレスコ画から20世紀の抽象画まで、中世の時祷書や写本も入っている。1人1作品と限っていないので、複数作品が選ばれている画家もいる。

 画伯は西洋絵画の見方について、「何が描かれているか」よりも「どう描かれているか」を見る方が良い気がします、と語っている。大いに同意するのだが、私はなかなかこれができない。私は絵の見方が下手なのだ。しかし、そんな私でも「何が」を忘れてしまう作品に出会うことはある。画伯のセレクションはとても自由で、はっきり言うと、全体のバランスを考えている感じがあまりしない。まあ本人が「私としては好きな画家の複数枚を見たい。自分の好みを人に押し付ける気はない。死ぬまでにとは大仰だ」と企画趣旨に全面的に反対するような発言をしているくらいだから、気楽にページをめくって楽しめばいいものだと思う。

 楽しいのは各作品につけられた画伯のコメントである。老眼にはつらい、小さな文字だが、全て読ませてもらった(そのあとに付いている美術辞典的な解説は、ほとんど読んでいない)。カルロ・クリヴェッリの描く女性について「私はついメーテルやエメラルダスを思い浮かべてしまいます」というのは、図版を見てにやにやしてしまった。ボスの『最後の審判』についても「何が」より「どう」描くかに着目し、「あやふやなものを素早く皮に包み込んでプリっと現前させる」と、独特の言い回しでその腕前を称賛する。ブリューゲルの『バベルの塔』については、明暗の諧調付けや刷毛目の効果に注目し、画家ならではの解説をしている。「次の筆が前の筆のリカバーになっている」って、もう少し詳しく教えてほしい。

 作家別でいうと、リューベンスは3点も選ばれていて(ただしどれも習作)よほど好きなんだと思う。一方、ラファエロは1作品選んでいるが「何処がそんなに評価されているのかいま一つ分かりません」という。クールベ、ゴーギャン、ゴッホは選ばれず。ルソーもなかったと思う。セザンヌはお好きなんだなあ。選ばれている作品は、ブリヂストン美術館所蔵の『サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール』。ゴヤのことも端的に「ゴヤは好いですね」と述べていて嬉しい。ピカソのキュビズム絵画『アヴィニョンの娘たち』については「これをイカしてると思う自分の心証は水墨にシビれる心持ちの反映なのです」と気になることを述べている。

 フラ・アンジェリコの『受胎告知』(コルトーナ司教区博物館)については、天使の翼の金箔と彩色による表現(いやー確かによく見ると超絶技巧だわ)を称賛したあと「満足したなら近くにあるテアトロと云う料理屋に行って生ポルチーニのパスタをやるのです」「白ワインが実に合うのです」という。ときどき、こんな耳寄り現地情報が付いているものもあった。また、ヤコボ・ダ・ポントルモの『十字架降下』という作品は薄暗い小さな教会にあるそうで、「電灯に照らされると死ぬ絵もある」というコメントに共感した。

 関連特集として、いまブリヂストン美術館コレクションの名品展がフランスのオランジュリー美術館で開かれており、山口画伯によるレポート(文章+出張版「すずしろ日記」)が掲載されている。名品展は、モネ、ルノワールなどの西洋絵画と、藤島武二や坂本繁二郎などの日本洋画で構成されており、最初、オランジェリー側は日本洋画の展示に難色を示したが、最終的に理解を示され、展示に至ったという。面白いと思った。
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江戸のエンタテイメント/馬琴と国芳・国貞(太田記念美術館)

2017-06-09 23:03:23 | 行ったもの(美術館・見仏)
太田記念美術館 企画展『馬琴と国芳・国貞 八犬伝と弓張月』(2017年6月2日~25日)

 なんと今年は曲亭(滝沢)馬琴(1767-1848)の誕生250周年なのだそうだ。初めて知った。他にどこかの博物館や文学館で記念企画展はないのだろうか。ないとしたら嘆かわしいことだ。本展では馬琴の代表作『南総里見八犬伝』と『椿説弓張月』にかかわる浮世絵約80点を紹介する。どとらも小説(読本)として読者を獲得しただけでなく、歌舞伎の題材にもなった。武者絵を得意とした歌川国芳と、役者絵で人気を博した歌川国貞の作品が最も多い。

 まずは『八犬伝』から。最もよく描かれるのは「芳流閣」の場面。三層の物見櫓の屋根の上で、犬塚信乃と犬飼見八(現八)が、賊と捕り手として相まみえるシーンである。縦長の画面に遠近法を利かせた、月岡芳年の『芳流閣両雄動』は大好きな作品。赤い破風がつくる鋭角な三角形、その流れ下るような稜線と、足を踏ん張ってのけぞる見八の体の軸との交差が、めちゃくちゃカッコいい。芳年の作品のもとになったと思われるのが、歌川国芳の『八犬伝之内芳流閣』で、舞台仕立てはよく似ているが、国芳にしてはあまり面白くない。国貞は、物語の一場面というより、歌舞伎の舞台として描いたらしく、人物(役者)の顔立ちに気をつかっている。『八犬伝』に歌舞伎作品がある(スーパー歌舞伎以外に)ということを知らなかったので、へええと思った。

 犬坂毛野(毛乃)もよく描かれている。智略にすぐれ、女性とも見紛う美貌の持ち主。犬田小文吾とペアで描かれたものが多いと思ったら、女性として小文吾に結婚を申し込んだエピソードがあるのだな。八犬士以外にも、伏姫、玉梓、浜路、網干左母次郎など、『八犬伝』の登場人物がだいたい分かるのは、私が1970年代の人形劇『新八犬伝』を見て育ったためである。その後、ずいぶん大人になってから、岩波文庫の『八犬伝』全10冊も読んだ。正直に言って前半はものすごく面白いが、後半は失速する。さんざん勿体をつけて登場する八犬士の最後のひとり、犬江親兵衛が全然魅力的でないのだ(個人の感想です)。長編小説ってこういうものかなあと思っていたけど、もしかすると「仁」(親兵衛が体現する)は小説にならない、と馬琴は言いたかったのではないか、とも考えるようになった。

 『椿説弓張月』は原文を読んだことがないが、かなり忠実な全文訳を読んでいる。史実と創作の混ぜ込み具合が絶妙で、最後まで小説の結構が崩れない、見事な小説だと思っている。国芳の『讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」は、浮世絵の名作だが、どんな場面を描いたものかが分かると、一層味わい深い。どんなに離れても切れない、讃岐院(崇徳院)と為朝の絆の強さに泣けるんだなあ。ほかに好んで描かれた「為朝強弓図」は、伊豆大島に流された為朝が、数万騎を乗せて攻め寄せた軍勢を一矢で射返した場面。為朝の側から遠くの軍船を描いたものもあれば、逆の構図もあり、絵師の工夫が感じられて面白い。あと、アメコミみたいに派手な表現が大好きな国貞の『蒙雲国師』が見られたのも嬉しかった。もっと馬琴は読まれてほしいなあ。面白いんだから。
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夏涼を感じる/江戸期の民藝(日本民芸館)

2017-06-06 23:32:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
日本民芸館 特別展『江戸期の民藝-暮らしに息づく美-』(2017年4月4日~6月18日)

 なんかこう、理屈の要らない展覧会が見たくなって、日本民藝館に行ってきた。「江戸期の民藝」というのは、ずいぶん直球なタイトルだなと思いながら館内に入る。正面玄関、階段下の左の展示ケースには塗物や螺鈿、右には素朴な染付の白磁。視線を上に向けると、踊り場の中央にも展示ケース。ここは焼き物各種。さらに上には、大きな木彫の仮面が掛かっていた。大きくてぶ厚い、見るからに重たそうな「竈面」で、たぶん人が被るためのものではなく、大きな眼を見開いて、広い厨房に睨みを利かすためのものだろう。その左右には藍染の着物。左は吉祥の熨斗柄(?)、右は蝶柄だった。

 いつものように、2階の大展示室から見始める。一瞥して、やっぱり陶磁器と布製品が多いという印象。いちばん奥に、半纏のような丈の短い着物が5点並んでいて、茶系のものが多かったので、へえ珍しい染色だなあと思って近寄ったら、すべて革羽織だった。背中に印を入れたものや、全体に絞り文様を散らしたものもあった。そのほか、三春人形、鴻巣人形などの泥人形、小さい絵馬、籠、色ガラス容器、鉄瓶など、あらゆる素材の品物が並んでいた。金唐紙の煙草入れも。筒描きの近江八景図を貼った屏風は涼しげで素敵だった。旗印屏風も楽しい。毎日見てたら、自然と覚えるだろうなあ。廊下には、泥絵や大津絵など。

 もう1室が関連展示で、司馬江漢の『巨蟹図』の掛軸仕立てや丹緑本、異時同図法で物語全体を描いた『曽我物語図屏風』など。『陣羽織図』に、白地に赤富士というデザインがあって、特攻服みたいだと思ってしまった。「朝鮮陶磁」と「朝鮮工芸」が1部屋ずつあって、取り合わせの書画も楽しめた。石造の羅漢、如来、道人像などがあり、つやつやした濃茶色を見て木造?と思うと「石」と書いてある。朝鮮半島は古い木彫仏が残っていない、と聞いたことがあるが、やっぱりそうなのだろうか。「河井寛次郎と濱田庄司」の部屋では、河井のピンク色の釉にときめく。

 1階、「明治・大正・昭和時代の陶器」では「うんすけ」「ちょか」「行火(ねこ)」「うるか壺」などの知らない用語に目を見張る。「ここ不親切よね」とこぼしていたおばさんもいたけど、説明のないのが、民藝館のいいところだと私は思っている。塩笥(しおげ)というのは、塩や味噌を入れるための小型の壷だそうだが、黒っぽい球体の側面に口が開いているものがあって、すごく気に入ってしまった。そっけなさの極地みたいで好きだ。逆に、十字の手裏剣みたいに四方に注ぎ口のついた「ちょか」には笑った。どういう発想なのか、まるで見当がつかない。

 「アフリカの造形」は、かなり珍しい特集だと思った。仮面が多く、動物の特徴を模した巨大なものもあれば、能面みたいに小さくて無表情なものもある。小さな木製の枕が、古い日本の箱枕に似ているのが面白かった。最後に「ベトナムの染織」は、北部山地や中部高原に住む民族の衣装で、濃い藍染と華やかなパターン文様の組み合わせが美しい。中国の少数民族とも共通する感じだった。
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