徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

11月の記録と12月に訪れたい展覧会

2006-11-30 | 美術(Index)
11月の記録と12月に訪れたい展覧会

展覧会(日付は鑑賞日)
今月は、10月までに比べると余裕がないので、少なめ気味(?)でした。相変わらず、感想をかけていない展覧会がいつかありますが

  • 5日 秋季展 中国宋元画の精華 夏珪 牧谿 梁楷...日本人が愛した伝来の絵画 畠山記念館 国宝 国宝 煙寺晩鐘図(終了、12/10まで)

  • 7日  國立故宮博物院 (台北)
  • 11日 浦上玉堂展(前期) 千葉市美術館(前期終了、後期11/21より12/3まで)
        関連記事:NHK新日曜美術館「浦上玉堂 画を写して画家たるを恥ず」
  • 11日 美術館ボランティアが選ぶ千葉市美術館コレクション展(江戸から現代まで)

  • 24日 仏像 一木(いちぼく)にこめられた祈り 東京国立博物館(12/3まで)
         国宝 十一面観音菩薩立像(滋賀・向源寺蔵)
  • 24日 浮世絵 特集陳列「写楽」東京国立博物館(12/3まで)
  • 24日 中国絵画 明清画精選 東京国立博物館(前期は終了 後期は12/27まで)
  • 25日 特別展 中国陶磁 美を鑑るこころ 泉屋博古館 分館(12/10 まで)
  • 25日 開館40周年記念 出光美術館名品展II―競い合う個性―等伯・琳派・浮世絵・文人画と日本陶磁―(前期);(絵画)、(陶磁器)(12/3まで)
  • 25日 ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」江戸東京博物館: (感想1)(感想2)(12/10まで)
  • 26日 秋季展 中国宋元画の精華 夏珪 牧谿 梁楷...日本人が愛した伝来の絵画 畠山記念館(12/10まで)

    行けなかった展覧会
  • 南方熊楠 -森羅万象の探求者- 10/7-11/26 @国立科学博物館 みどり館地下1階展示室

    書籍
  • 田中親美「平安朝美の蘇生に捧げた百年の生涯」

    12月に訪れたい展覧会

  • 浦上玉堂展(後期)千葉市美術館(後期11/21より12/3まで)
  • 明治神宮外苑創建80年記念特別展
    「小堀鞆音と近代日本画の系譜 -勤皇の画家と『歴史画』の継承者たち-」明治神宮文化館宝物展示室(10/21-12/3)
  • 市政90周年記念 現代日本画名作展 9/29-12/10 @八王子市夢美術館

  • 花鳥画への誘い 後期10/31-12/23 @松岡美術館
  • 中国絵画 明清画精選 東京国立博物館(後期)(11/28-12/27)
  • 揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに 東京国立近代美術館(11/07-12/24)
  • 所蔵作品展 近代日本の美術  東京国立近代美術館(10/21-12/24)

  • 開館40周年記念 出光美術館名品展II(後期)(12/8-12/24)

  • 館蔵 茶道具取り合わせ展 五島美術館 (12/9-2/12)(展示替予定未定)
  • 漆芸界の巨匠 人間国宝 松田権六の世界 東京国立近代美術館蔵(12/19-2007/2/25)
  • 川崎小虎と東山魁夷展 三越百貨店 日本橋本店(12/28-1/14)

    1月ですが、
  • 生誕120年 富本憲吉展 世田谷美術館(2007/1/4-3/11)

    映画、Video
  • イルマーレ The Lake House (2006) @JL (11/18)
    Directed by Alejandro Agresti
    Starring
    Keanu Reeves .... Alex Wyler
    Sandra Bullock .... Kate Forster
    GOO, imdb.com

  • プラダを着た悪魔 The Devil Wears Parada (2006) @JL (11/18)
    Directed by David Frankel
    Starring
    Meryl Streep .... Miranda Priestly
    Anne Hathaway .... Andy Sachs
    GOO, imdb.com


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    開館40周年記念 出光美術館名品展II(日本陶器など)

    2006-11-28 | 陶磁器
    開館40周年記念 出光美術館名品展II(日本陶器など)
    ―競い合う個性―等伯・琳派・浮世絵・文人画と日本陶磁―
    前期:2006年11月11日~12月3日
    出光美術館

    黄瀬戸、美濃、古九谷、仁清、柿右衛門、乾山、板谷波山などに陶磁器の優品は眩いばかり。唐津も味わい深い作品もあると認識しました。

    灰釉など
    名品展にならぶ壺はちょっと博物館の壺とは違う。奈良、鎌倉の壺など。工芸品として作陶されたものではないのではと思うが、ちょっとした美意識が漂う。その美意識がこの壺たちを現代まで伝来させたのだろうか?

    灰釉短頸壺 猿投窯   奈良時代
    灰釉牡丹文共蓋壺 瀬戸窯   鎌倉時代後期
    鉄釉蕨文広口壺 瀬戸窯   鎌倉時代後期
    灰釉壺 信楽窯   南北朝時代
     
    黄瀬戸、美濃窯
    黄瀬戸茶碗 銘 春霞 美濃窯   桃山時代
    志野山水文鉢 美濃窯   桃山時代
    織部蓬莱山文蓋物 美濃窯   桃山時代;兎の耳がながーい。

    奥高麗茶碗
    奥高麗茶碗 銘 秋夜 桃山時代;松平不昧公伝来 雲州蔵帖には「古唐津 秋夜」とある。 
    奥高麗茶碗 銘 さざれ石 桃山時代;腰のところは、たしかにさざれ石。  

    唐津
    唐津焼といえば、日用陶器が多いようですが、絵唐津柿文三耳壺など素朴な土の膚合いの中に美意識が。はじめて唐津の優品を拝見しました。

    重文 絵唐津柿文三耳壺(水指) 桃山時代

    絵唐津丸十文茶碗     桃山時代
    絵唐津葦文水指     桃山時代  
    朝鮮唐津耳付六角花生     桃山時代

    古九谷
    焼き物をまじまじと鑑賞し始めたは、昨年の東博の「華麗なる伊万里、雅の京焼」(記録はこちら)から。どうもその時には古九谷は大胆すぎて好きになれないでいたのですが、今回の古九谷は細部までキチンと仕事がされた優品です。やはり陶磁器の優品は個人が所持しているのですね。

    色絵亀甲獅子花鳥文大皿 古九谷   江戸時代前期
    色絵菊文大皿 古九谷 江戸時代前期
    色絵山水文大皿 古九谷 江戸時代前期
    色絵花鳥文大皿 古九谷 江戸時代前期
    色絵梅花鷽文富士形皿 江戸時代前期

    仁清
  • 重文 色絵芥子文茶壺 野々村仁清   江戸時代前期;仁清の壺は、茶壷だったのですね。この夏、徳川美術館(記録はこちら)で拝見した唐物茶壺 銘金花 銘松花 (大名物、信長所持)に比較しても、茶道具と捉えるとかなり派手な美意識ですね。面白いですね。

    柿右衛門
    柿右衛門の乳白色はいつみてもいいです。
  • 重文 色絵花鳥文八角共蓋壺 柿右衛門   江戸時代前期

  • 色絵花鳥流水文蓋物 柿右衛門   江戸時代前期 流水文がなかなかお洒落です。
  • 色絵花鳥文角瓶 柿右衛門 一対 江戸時代前期
  • 色絵狛犬 柿右衛門   江戸時代・元禄壬申(1692)銘;如何にも神社の前に座ってそうです。

    乾山
    優品揃い。
    重文 銹絵染付金銀彩松波文蓋物 尾形乾山   江戸時代中期
    色絵芦雁文透鉢 尾形乾山 江戸時代中期
    色絵阿蘭陀写花卉文八角向付 尾形乾山 五客 江戸時代中期
    色絵定家詠十二ヵ月歌絵角皿 尾形乾山 十二客 江戸時代中期
    銹絵竹図角皿 尾形乾山 絵/尾形光琳   江戸時代中期
    銹絵秋草図角皿 尾形乾山 絵/尾形光琳 江戸時代中期

    ●春日野蒔絵硯箱 柏に木菟蒔絵料紙箱 小川破笠   江戸時代中期

    色絵鳳凰文皿 鍋島藩窯 六客の内 江戸時代中期;鳳凰文の目出度い文様。

    色絵楓文透彫手焙 古清水   江戸時代中期;古清水の透彫りは優美です。  

    板谷波山
    葆光彩磁草花文花瓶 板谷波山 大正時代中期
    葆光彩磁花卉文花瓶 板谷波山 昭和時代初期
    彩磁桔梗文水差 板谷波山   昭和28年(1953);意匠が面白い。文字で説明しても要を得ないが、白地の花の花びらの間の三角の空間に小さく桔梗を描く。
    彩磁延寿文花瓶 板谷波山   昭和11年(1936);青地の磁器が美しい。
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    開館40周年記念 出光美術館名品展II(絵画など)

    2006-11-27 | 美術
    開館40周年記念 出光美術館名品展II(絵画など)
    ―競い合う個性―等伯・琳派・浮世絵・文人画と日本陶磁―
    前期:2006年11月11日~12月3日
    出光美術館

    出光美術館の名品を総覧するのは今年がはじめて。判りやすい名品ばかりが並びうろうろしてしまうほど。とはいえ出光佐三(1885―1981)氏の個性もところどころ光る。唐津、仙、小杉放菴といった素朴な作品。板谷波山、ジョルジュ・ルオー、田能村竹田も多くを所蔵しているようだ。特に、小杉放菴、田能村竹田については出光美術館の全所蔵品を網羅した厚手の図録が特価で販売されていた。その所蔵品数の多さが知れる。

    さて、展覧会。

    屏風絵
  • 西王母・東方朔図屏風 狩野光信筆 六曲半双 桃山時代; 金屏風の状態がよく、松の緑青の表現も美しい。画題についていえば、実は「西王母」絵を興味深く見ているが、今回の光信の作品では、西王母と東方朔が見つめ合っているようだという解説。きちんと故事を勉強しないといけませんね。
  • 桜・桃・海棠図屏風 狩野長信筆 八曲一隻 桃山時代
  • 唐人風俗図屏風 狩野尚信筆 六曲一双 江戸時代

  • 松に鴉・柳に白鷺図屏風 長谷川等伯筆 六曲一双 桃山時代;叭々鳥の代わりに日本固有の鴉を題材にした絵とのこと。
  • 重文 祇園祭礼図屏風 筆者不詳 六曲一双 桃山時代

    琳派
  • 月に秋草図屏風 伝 俵屋宗達筆 六曲一双 江戸時代  
  • 伊勢物語 武蔵野図色紙 俵屋宗達筆 一幅 江戸時代  
  • 伊勢物語 若草図色紙 俵屋宗達筆 一幅 江戸時代
    伊勢物語は、益田家旧蔵品の36枚組みの二つ。
  • 重美 禊図屏風 伝 尾形光琳筆 二曲一隻 江戸時代;この恋多き男の「禊」という感覚が興味深いです。怨念でも恐れたのでしょうか?
  • 十二ヵ月花鳥図貼付屏風 酒井抱一筆 六曲一双 江戸時代; 何組かあるようですが、優品ですね。十二ヶ月揃って展示されるといいですね。
  • 蔬菜群虫図 鈴木其一筆 一幅 江戸時代;
  • 重文 西行物語絵巻 第一巻 画/俵屋宗達筆 詞書/烏丸光広筆 一巻 寛永7年(1630):西行物語絵巻のこの写本は、出光美術館所蔵4巻本(毛利家旧蔵、ただし巻三は散逸)と渡辺家旧蔵6巻の二組の摸本があるそうで。


  • 一行書 「賓中主々中賓」 江月宗玩筆 一幅 江戸時代前期  
  • 月に萩・蔦下絵古今集和歌巻 書/伝 本阿弥光悦筆 下絵/伝 俵屋宗達筆 一巻 江戸時代
  • 尾形乾山筆 一巻 元禄5年(1692)  
  • 「枯朶に」発句短冊 松尾芭蕉筆 一幅 延宝8年(1680)句作  
  • 「ふる池や」発句短冊 松尾芭蕉筆 一幅 貞享3年(1686)句作; これって本当に発句したときの短冊なのでしょうか?あとからサインしてコピーしたものなのでしょうか?どうも理解できていません。オリジナルだとすると、貴重なものなのですが。。。

    仙
  • 箱崎浜画賛 一幅 江戸時代後期
    秋の夜ハ唐まて月の外に又  
  • 坐禅蛙画賛 一幅 江戸時代後期
    坐禅して人か佛になるならハ 
  • 龍虎画賛 双幅 江戸時代後期
    是何曰龍、人大笑吾亦大咲、猫乎虎乎、将和唐内乎

    文人画
    池大雅、与謝蕪村、田能村竹田と谷文晁と精緻な筆致の文人がずらっと並ぶ。渡辺崋山は蟄居中の画ということで、自然を見る目に身の上が重なっているような静寂さ。
  • 山居観花図・高士観泉図・南極寿星図・江上笛声図・雪天夜明図 池大雅筆 五幅対 宝暦11年(1761) 
  • 重文 山水図屏風 与謝蕪村筆 六曲一双 宝暦13年(1763)
  • 重美 田能村竹田筆 一幅 天保5年(1834)頃
  • 重美 芦石鴛鴦図 立原杏所筆 一幅 文化11年(1814)  
  • 重文 青山園荘図稿 谷文晁筆 一冊 寛政9年(1797)  
  • 鸕鶿捉魚図 渡辺崋山筆 一幅 天保11年(1840)頃  
  • 布曳飛瀑図 山本梅逸筆 一幅 弘化2年(1845)  
  • 高士弾琴図 富岡鉄斎筆 一幅 大正12年(1923)

    肉筆浮世絵
  • 江戸風俗図巻 菱川師宣筆 二巻 江戸時代  
  • 重美 野々宮図 岩佐又兵衛筆 一幅 江戸時代; 淡彩で優美に描かれた野々宮図。劇画のようですね。
  • 遊女歌舞伎図 筆者不詳 一幅 江戸時代
  • 立姿美人図 懐月堂安度筆 一幅 江戸時代
  • 重文 更衣美人図 喜多川歌麿筆 一幅 江戸時代;造形美を描いたというところでしょうか?  
  • 月下歩行美人図 葛飾北斎筆 一幅 江戸時代
  • 雪月花図 冷泉為恭筆 双幅 江戸時代;王朝美を再現した冷泉為恭という表現がよく当てはまります。

    小杉放菴
  • 天のうずめの命 小杉放菴   昭和26年(1951)

    ルオー
  • [受難] 1 受難 ジョルジュ・ルオー   1935年
  • [受難] 2 聖顔 ジョルジュ・ルオー   1935年
  • [受難] 13 「私はあなたの影に寄り添って走ります」 ジョルジュ・ルオー 1935年
  • [受難] 22 「燃ゆる灯火の芯のごとく…」 ジョルジュ・ルオー   1935年
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    ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」(2)

    2006-11-26 | 美術
    ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」
    2006年10月21日から12月10日
    江戸東京博物館

    (承前)

    喜多川歌麿
    27  遊女と禿図 喜多川歌麿 寛政年間(1789-1801)初期 掛幅一幅 絹本著色

    46  三味線を弾く美人図 喜多川歌麿 文化元年~ 3年(1804-1806)頃 掛幅一幅 絹本著色


    鳥文斎栄之
    12.隅田川渡舟図 鳥文斎栄之 文化年間(1804-1818)頃 掛幅一幅 絹本著色

    16.柳美人図 ・桜美人図 ・ 楓美人図 鳥文斎栄之 享和~文化前期頃(19世紀前半)掛幅三幅(三幅対)絹本著色

    33.画巻 「象の綱 」鳥文斎栄之 文化年間(1804-1818)巻子一巻 絹本著色
    59.見立三酸図 鳥文斎栄之 文政4年(1821)掛幅一幅 絹本著色


    見立三酸図が武士出身の鳥文斎栄之らしくて好みです。

    窪俊満
    60  玄宗楊貴妃遊楽図 窪俊満 天明末~寛政初頃(18世紀後半)掛幅一幅 絹本著色

    61  見立高砂図 窪俊満 天明末~寛政初頃(18世紀後半)掛幅一幅 絹本著色

    62  砧打ち美人図 窪俊満 天明年間(1781-1789)後期頃 掛幅一幅 絹本墨画淡彩


    玄宗楊貴妃遊楽図は豪華です。

    歌川豊春
    7  向島行楽図 歌川豊春 天明後期~寛政前期(18世紀後半)掛幅一幅 絹本著色

    遠景まで描かれた作品で奥行きのある画面、見てて楽しい。

    コメント (1)
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    ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」

    2006-11-26 | 美術
    ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」
    2006年10月21日から12月10日
    江戸東京博物館

    江戸東京博物館に「江戸の誘惑」がやってきました。神戸、名古屋と経て、漸く江戸への里帰りです。

    土曜日夕方は、夜間7時半まで開館しているのでと、4時過ぎに入場しましたが、やはり人気で落ち着いては鑑賞できませんでした。ガラスと作品の距離が短いのは、作品がよく見えていいのですが、混んでくるとこれが問題になります。一人がある作品の前に立ち止まると、周りの人は全然見た気にならないので、ピタッと列が動かなくなるという訳です。それでも後ろから作品を覗きながら鑑賞しました。

    構成は、
    1. 江戸の四季  雪月花をめで、四季の風物を楽しんだ江戸人の暮らしぶりを紹介。
    2. 浮世の華   吉原を筆頭とする遊里ではぐくまれた、独特のあでやかな文化。
    3. 歌舞礼讃   江戸の大スターである歌舞伎役者を描いた姿絵や、芝居小屋の絵看板。
    4. 古典への憧れ 有名な古典を当世風パロディとして置きかえた機知的な「見立て絵」。
    となっているわけですが、やはり北斎が圧巻です。

    私の好みは、「4.古典への憧れ」の上品な作品。
    以下、画像はボストン美術館へのSRCリンクです。

    葛飾北斎
    13. 鏡面美人図 葛飾北斎 文化二年(1805)頃 掛幅一幅 絹本著色

    14. 大原女図 葛飾北斎 文化末から文政初(19世紀前半) 掛幅一幅 絹本著色

    17.朱鍾馗図幟 葛飾北斎 文化二年(1805)幟絵 木綿地朱彩

    18.鳳凰図屏風 葛飾北斎 天保6年(1835)八曲一隻 紙本著色・金切箔・砂子

    63.李白観瀑図 葛飾北斎 嘉永2年(1849)掛幅一幅 絹本著色

    64.月下猪図 葛飾北斎 文政年間(1818-1830)掛幅一幅 紙本墨画淡彩

    67 提灯絵 龍虎 無款(葛飾北斎)文化年間(1804-1818)頃 提灯 紙本著色

    68 提灯絵 龍蛇 無款(葛飾北斎)文化年間(1804-1818)頃 提灯 紙本著色


    朱鍾馗図幟とか、提灯絵とかは、よく江戸の風俗を伝えています。提灯絵までも北斎のような売れっ子作家が描いていたのですから、すごいことです。鏡面美人図も、鳳凰図屏風もチラシに掲載されるだけのインパクトがあります。しかし、李白観瀑図の滝の描き方のモダンな感覚がやはり北斎で、お気に入り。

    William Sturgis Bigelowコレクションの「柳に烏図」は昨年来日。記事はこちら


    菱川師宣
    18. 芝居町・遊里図屏風 菱川師宣 貞享~元禄年間(1684-1704)六曲一双 紙本著色・金箔
    19  遊女道中図 無款(菱川師宣)  天和年間(1681-1684)頃 掛幅一幅 絹本著色

    東博にも「歌舞伎図屏風 6曲1双 菱川師宣筆 江戸時代・17世紀 A-11084」 (2006/10/31~ 2006/12/6)が展示されていましたが、踊る人物など同じモチーフです。出光美術館では「江戸風俗絵巻」(2006/11/11-12/3)が展示されています。揃い踏みですね。

    勝川春章
    8.春遊柳蔭図屏風 勝川春章 寛政年間(1789-1801)前期 六曲一双 紙本著色

    (部分)
    44.石橋図 勝川春章 天明7, 8(1787、1788)年 掛幅一幅 絹本著色

    57.見立江口の君図 勝川春章 天明5, 6年(1785、1786)頃 掛幅一幅 絹本著色

    58.見立松風村雨図 勝川春章 天明3, 4年(1783、1784)頃 掛幅一幅 絹本著色


    石橋図は見事。見立江口の君図も好きです。

    (続く)
    (25日)

    コメント (2)
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    特別展 中国陶磁 美を鑑るこころ @泉屋博古館分館

    2006-11-25 | 陶磁器
    特別展 中国陶磁 美を鑑るこころ
    2006年11月3日から12月10日
    泉屋博古館分館(東京)

    実はこの飛び石連休の期間に訪れた5つの展覧会の中でも、随一といっていいぐらい、予想を裏切る素晴らしい展覧会でした。「青磁の美―秘色の探求― 出光美術館」(記録はこちら)、「インペリアル・ポースレン・オブ・清朝 静嘉堂文庫美術館」(記録はこちら)と比較してということではありません。今月台北の故宮博物院(記録はこちら)で中国陶磁の名品ばかり見てきたあとの感想なのですから、この素晴らしさを判っていただけるでしょうか?

    泉屋博古館分館で開催されているので、いつものように住友コレクションが展示されているかと思いきや、多くの個人蔵の作品を含む陶磁器が展示されています。「鑑賞陶器」蒐集の過程で形成された中国陶磁コレクションの中で、日本人の高い美意識にあった作品を選んだとのこと。コレクターの愛蔵品や現代的な視点が加わっているいるからでしょうか、本当に優品ばかりです。

    展示室2は小品が、展示室1は優品が展示されています。まず素直に、(というか殆んど説明もないので)陶磁器自身に向かい合います。鑑賞陶器というだけあり、発色やデザインなど、引き込まれるようです。そして、(世界で数十点しかないという)汝官窯の青磁盤が1点あると気がついて、多分はじめて見るその深い色合いに感嘆。展示室にある図録を見ると、川端康成氏旧蔵品といいます。五彩龍鳳文六角瓶 明・万暦(在銘)は、梅原龍三郎旧蔵品。流麗で美しい川端文学と、賑やかな色彩の梅原作品を見るようだ、という解説。いとをかし。

    図録は購入しないまでも、会場でぜひ目を通されることを薦めます。展示説明が不親切なだけに、個々の作品に関して逸話は面白く書かれています。カラー印刷の再現性もなかなかです。

    以下、特に目に付いた優品を。
    3. 灰釉加彩官人俑 北魏 個人; 静謐な精神性を持つ北魏の俑。
    4.灰釉加彩駱駝 北斉 中国陶瓷美術館; 黄味を帯びた質感といい一寸上を向いた造形といい優品
    5.青磁蓮弁文五連燭台 南北朝 出光美術館;米国フレデリック・メイヤー氏旧蔵品、1974年売り立てにより将来。「青磁の美―秘色の探求― 出光美術館」(記録はこちら)でも展示されていた。印象的であったが、そのような来歴とは。
    6.褐釉貼花文瓶 隋から唐;貼花文が目を引く。
    10.重要美術品 三彩貼花文鳳首水注 唐 個人; 正統的な唐三彩とはすこし違った、釉薬をかけ流している。そこがまたモダン。

    29.青白磁牡丹唐草文瓶 北宋 景徳鎮窯 個人; 美しい青白磁の色、牡丹唐草文の浮彫りが幻想的な雰囲気、花びらのような瓶口の造形も見事。景徳鎮窯は、北宋時代の中期ごろは薄い白磁胎に青みの強い透明釉をかけて青白磁を完成させたという。

    13.青磁輪花碗 一対 耀州窯 北宋
    14 青磁波濤文盤 耀州窯 北宋;波濤文が見事
    15.青磁鳳凰唐草文枕 耀州窯 北宋 静嘉堂文庫美術館;なんて優雅な枕でしょうか。

    16.青磁盤 汝官窯 北宋 個人;北宋汝官窯は、1937年にパーシヴァル・デビッド卿が文献、作品を調査し、青色の釉薬が全面にかかった端正な造形の青磁を抽出し、汝官窯と提示。1980年代になり窯跡が河南省宝豊県清涼寺から発見され、推論が証明された。という。

    30.重要文化財 青磁輪花鉢 南宋官窯 南宋 東京国立博物館;大きな貫入が文様の大振りの輪花鉢。古来からの将来品。昭和9年に尾山得二氏の売り立てにより横河民輔コレクションに。とのこと。
    31.青磁管耳瓶 南宋官窯 南宋;こちらも大きな貫入が美しい。
    32.青磁瓶(米色青磁) 南宋官窯 南宋;米色青磁が2点。青磁は鉄分を還元して青や緑色の発色をさせるが、釉薬がとけるときにやや酸化気味になったときに、淡褐色の色調になる。米色青磁と呼ばれる。
    33.青磁洗(米色青磁) 南宋官窯 南宋 常葉山文庫
    32.33は、作風からいって南宋官窯と考えたいという解説もうなずける優美な造形と美しい色合いと貫入。

    34.青磁形瓶 龍泉窯 南宋(12から13世紀)
    35.青磁腰袴香炉 龍泉窯 南宋(12から13世紀)泉屋博古館
    36.青磁鉢 龍泉窯 南宋(12から13世紀);こちらも川端康成氏旧蔵品
    37.青磁鉢 龍泉窯 南宋(12から13世紀)
    さらに龍泉窯(12から13世紀)の美しい緑色の青磁が4点。

    青花も優品がならびます。
    39.青花双魚文盤 景徳鎮窯 明・永楽 大和文華館
    41.青花唐草文碗 景徳鎮窯 明・永楽 個人 
    44.青花龍濤文盤 景徳鎮窯 明・宣徳(在銘) 個人

    五彩など。典型的な明晩期の様式。故宮での勉強の成果でよく判ります。
    52.五彩魚藻文盤 景徳鎮窯 明・嘉靖(在銘) 大阪市立東洋陶磁美術館
    56.紅地黄彩雲龍文壺 景徳鎮窯 明・嘉靖(在銘) 大阪市立東洋陶磁美術館
    57.黄地青花彩花唐草文瓢形瓶 景徳鎮窯 明・嘉靖(在銘)イセ文化基金
    59.五彩龍鳳文六角瓶 明・万暦(在銘) ;梅原龍三郎旧蔵品

    単色釉磁器の優品
    63.桃花紅団龍文鉢 景徳鎮窯 清・康煕(在銘)
    64.白磁団龍文鉢 景徳鎮窯 清・康煕(在銘);この2点は色合いといい、龍の浮彫の文様といい、とても上品。
    65.黄釉輪花盤 景徳鎮窯 清・雍正(在銘)イセ文化基金

    67.琺瑯彩西洋人物連瓶 景徳鎮窯 清・乾隆(在銘)永青文庫

    このほかにも素朴な味わいの風情の陶磁器、また私の趣味ではないですが、
    48.重要美術品 法花蓮池水禽文瓶 明 イセ文化基金
    61.重要美術品 五彩龍鳳唐草文合子 明・万暦(在銘) 個人
    など。

    古来、先進文化としての憧憬に加え、茶の湯という一つの世界観を加味して形成されてきたわが国の美術蒐集の歴史の中に、欧米風の美術品鑑賞のスタイルとして中国陶磁器を純粋に鑑賞の対象として賞翫する見方が導入されたのは大正中期頃からと考えられます。そして昭和初期には「鑑賞陶器」という言葉も生まれ、中国陶磁の蒐集が美術愛好家の蒐集対象の主たる一分野となりました。

    さらに戦前の本格的な鑑賞陶磁器コレクションを礎として、引き続き戦後においても蒐集は盛んに行われ、コレクターの増加とともにいくつもの優れたコレクションが形成されました。それはわが国の蒐集家たちが深い見識をもって接し、その崇高な美の世界を追求してきた成果に他なりません。

    今回の展覧会では、「鑑賞陶器」蒐集の過程で形成された中国陶磁コレクションのなかから、「コレクタ-ズ・アイ」ともいうべき観点に立ち、作品が鑑賞されてきた一側面を提示し、その奥深さや幅広さ、美質を堪能し、さらにそれを可能とした日本人の高い美意識、いうなれば美を鑑るこころを感じ取って頂ければ幸いです。
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    特別展 仏像 一木(いちぼく)にこめられた祈り (後期)

    2006-11-24 | 美術
    特別展 仏像 一木(いちぼく)にこめられた祈り (後期)
    2006年10月3日から12月3日
    東京国立博物館

    滋賀・向源寺蔵(渡岸寺観音堂所在)の国宝 十一面観音菩薩立像(平安時代・9世紀)を拝見しに、後期にいってきました。

    瞑想するかのような慈悲深い表情、ふくよかな胸や腹の肉付け、腰を捻って立つすらりとした肢体などその類いまれな美しさから、日本に現存する十一面観音像の白眉ともいえる像である。
     顔の脇、頭上や後頭部に十の面を大きく表し、その姿は非現実的であるが、それをまったく違和感なく、美しい調和の中にまとめあげている。柔軟な肉体やそれを覆う衣の薄く柔らかな質感表現も見事である。
     頭部と体部から台座の蓮肉(れんにく)、さらに両腕から本体を離れて台座に垂れる天衣も含めて針葉樹の一材から彫出しているが、全く破綻がなく、木彫に習熟した仏師の高度な技術がうかがえる。
     本像を安置する観音堂は、かつてこの地に栄えた渡岸寺の跡地にある。同寺廃絶後、本像と堂は長年土地の人々によって護られてきたが、明治以降は向源寺の管理下に置かれている。これまで門外不出とされてきた本像は、向源寺の飛地境内の観音堂の本尊として伝来しており、この場所は、かつて天台寺院の渡岸寺の跡地であったと伝えられている。
     渡岸寺は、聖武天皇の勅願によって当時都に流行していた疱瘡(ほうそう)の厄除け祈願をこめて十一面観音像を刻んだことに始まり、その後最澄によって再興されたといわれている。元亀元年(1570)の姉川の合戦に際し、寺は焼失したが、観音像は村人の手により土中に埋められ難を逃れたとのことである。


    とのことですが、写真で見る限り、やはりどう素晴らしいのかはなかなか想像できません。しかし、実際に拝見してすぐに納得。まずは、お顔の慈悲深い表情。そして、腰を捻って立つすらりとした姿に目が行きます。しかし、細部をみれば、頭上の十面の表情も見事。後頭部は暴悪大笑面を後ろに回って拝見。細部に目を凝らして見てると、二の腕など飾りなど衣も見事。ライトアップの仕方はちょっと眩しく見づらいといえば見づらいのですが、仏像の美しさを際ださせています。



    もう一度いくつかを拝見しなおす。

  • 国宝 薬師如来立像  奈良~平安時代・8~9世紀 奈良・元興寺蔵
    一寸遠くを見つめる眼差し、正面から見ると一寸太め、側面から見ると薄い。左右の側面の衣文が腕から垂れ下がる様など柔らかい質感がある。

  • 国宝 地蔵菩薩立像 1躯 平安時代・9世紀 奈良・法隆寺蔵;三輪山西麓に鎮座する大神神社の神宮寺の一つ大御輪寺に伝来。きちんとした姿勢のよさが目を引く。肩幅も広く質量感がある。

    なた彫りの
  • 重文 十一面観音菩薩立像 1躯 平安時代・11世紀 神奈川・弘明寺蔵 ;この立像は、ちょっと傾いで立つ。ケヤキが材料。削り後はランダムの荒々しい。
  • 重文 聖観音菩薩立像 1躯 平安時代・11世紀 岩手・天台寺蔵;こちらは桂の木。お顔はつるっと、頭部の冠は縦に短い文様で頭部を一周。ほぼ全身に基本的には横方向に文様を鉈で入れる。リズミカルなイメージさえあり、モダンな印象を与える。
    この2体は対照的な印象をあたえるなた彫り。

    P.S. 昼前に平常展をみて出る時には、20分待ちとアナウンスしていた。前半の展示が詰まりすぎですね。


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    國立故宮博物院

    2006-11-22 | 陶磁器
    國立故宮博物院 

    何年ぶりかに台北にある國立故宮博物院を訪れる機会を得ました。2回目です。

    國立故宮博物院は、現在は改装中で半分のスペースしか空いていません。しかし2006年5月18日の東側リニューアルオープンしたため非常に高級ホテルのロビーのように広々として綺麗です。入口には「八千年歴史長河」と垂れ幕がかかっていて、中国三千年ではなく、八千年の歴史です。

    今回展示されていたのは、ほぼ常設展のみ。特に明から清時代の陶磁器などの工芸品の傑作が展示がハイライトです。清代の陶磁器は、たまたま静嘉堂文庫美術館でインペリアル・ポースレン・オブ・清朝で少し理解が深まっていたので、世界最高の傑作を見るとその美しさと技巧に感動も新たです。また明代の陶磁器も美しい。また中国漆器も最近興味をもって東京国立博物館で鑑賞していたのですが、木質が違うのでしょうが、レベルの違い、特に清の漆器は精密な細工のされた漆器は、驚くべきものでした。書画は,一室だけ特別展示されていたのですが、時間がなくて鑑賞できず残念。

    なお、12・25に全館リニューアルオープンの予定で、記念特別展「大観」(12/25-3/25)も同時に開催される予定。 大観─北宋書画特別展、大観─北宋汝窯特別展(北宋時代の汝窯が宮廷の御用窯だったのは、1186年から1106年の20年間という短い期間で、世界で70点も現存しないという汝窯の作品のうち、故宮に収蔵されている21点全てが展示。イギリスからも3点の汝窯が展示されるそうだ。)がテーマです。

    さて、國立故宮博物院のWEB http://www.npm.gov.tw/はすぐれものです。
    「現在の展示内容」は、展示のガイドとして。「コレクション」は、個々の作品のガイドとして。
    (旅々台北www.tabitabi-taipei.com/youyou/200605/index.html というサイトも日本語公式ガイドとしてある。)

    「音声ガイド」150元はお勧め。リストをもらえるのでメモがとれます。夕方15時過ぎに訪れたら、これだけはお勧めだという赤いチェックをしたリストをもらえたので、さらに精選して優品を短い時間の中で鑑賞できました。ただ、「現在の展示内容」、「コレクション」「音声ガイド」は、微妙に内容が異なり、今回、「音声ガイド」の作品を中心に見たのですが、「現在の展示内容」の写真にある作品や、「コレクション」に掲載されている作品を見落としていました。どうしても急いで回ると見落としてが出てきてしまいます。また、写真撮影禁止(6月1日から禁止になったそうだ)なのも、ガイドブックがないだけに不便ですね。

    団体旅行やガイドの人に案内してもらうと、それはそれで、最近この作品はオークションでいくらだったというような博物院では表立っていえないような情報が得られるわけですが、やはりじっくり見るには一人で回るしかありません。まあ、日本語の団体向けの説明は、そこらかしこで立ち聞きはできますね。

    今回は、時間がなくてタクシーで乗り付けて、タクシーで戻りました。片道250元弱でした。帰りは白タクに色々声をかけられるのですが、まあその手には乗らないほうが無難でしょう。また、ホテルの場所によるのか乗車拒否もされるので、いろいろなタクシーに声をかけるしかありません。




    さて、3階は、時間がなくてじっくりは見ていないが、
    古典文明-銅器時代 (1600-221B.C.E.) では2点の、文字を刻んだ銅器が特に自慢の品だそうだ。

    西周晩期 毛公鼎

    銘文は、「周宣王が即位した際、政治を充実させようと思い、おじの毛公を招いて国家内外の大小の政務にあたらせたところ、自らの利益にこだわることなく勤勉に務めたので、その結果として厚く褒賞した。毛公はそれを子々孫々に伝えるためにこの鼎を鋳造した。」とのこと。

    春秋中期 子犯和鐘1-12

    八点の鐘により構成されている。それぞれに銘が刻されており、合計132文字、晋文公(重耳)が流浪の末、19年後に晋に帰り政権を掌握、晋楚城濮之戦などの重要な史実が記されている。製作者は子犯、即ち晋文公(重耳)のおじの狐偃である。


    新装飾の時代-明代前期の官営工房 (1350-1521)
    まずは、青花がずらっとならびます。「明代における青花磁器の製作は、洪武時期の過渡期を経て、永楽と宣徳の両時期に最盛期を迎えた後、成化に至り細緻化が進み、青花磁器は景徳鎮官窯の中心となった。」とのこと。「明永楽 青花穿蓮龍紋天球瓶」などが中央のガラスケースにいれて特別に展示されています。

    今回、すごいとおもったのはこの「顏色釉及釉上彩」のコーナー。「洪武紅釉、永楽甜白、釉裡紅、緑釉、紫釉、黄釉、孔雀緑釉など、各種の色釉は、明代の官窯に新しい風潮を生じさせ、後世の五彩や豆彩誕生の基礎となる。 釉下彩である青花はしだいに釉上単彩、双彩、三彩などと結び付いて多様な展開を見せ、五彩や豆彩など史上例を見ない各種の新しい技法が完成した。」とのこと。

    まずは、紅釉の名品。モダンなデザインの磁器で現代の北欧のデザインを見ているようです。
  • 明宣 祭紅霽青刻花蓮瓣滷壺一對

  • 明宣 宝石紅僧帽壺

    そして、豆彩(鬥彩)豆彩とは高温で青花で絵の輪郭をつけて焼いたあとに、低温で絵の内部にカラフルに彩色して焼く技法。釉下の青花と釉上彩の色合いは鮮明な対比をなします。清朝の豆彩は静嘉堂文庫美術館で拝見したが、今回のものは、明成化時代の豆彩。
  • 明成化 鬥彩雞缸杯

  • 明成化 鬥彩葡萄杯
  • 明成化 鬥彩花鳥高足杯 

    官民競技的時代-明晩期(1522-1644)
    世宗嘉靖(1522-1566), 穆宗隆慶(1567-1572),神宗万暦(1572-1620),熹宗天啓(1621-1627)思宗崇禎(1628-1643)年間。色彩美と吉祥紋様の流行, 文人が先導した古典趣味と収蔵の風潮,商業繁栄下の独立工匠と民間窯業のテーマで展示されている。

    吉祥紋様の流行のところには、お馴染みの龍とか鳳凰デザインの陶磁器がならぶ。
  • 明 嘉靖 嬌黄緑彩鳳凰方洗


    盛世の工芸-清代 康熙・雍正・乾隆 (1662-1795)
    そして、康煕(1662-1722),雍正(1723-1735),乾隆(1736-1795)時代の工芸。陶磁器だけでも、唖然とする精緻さ。

    漆器:「乾隆時代の剔紅は、明代の伝統的な技法を継承し、細やかな地紋とすっきり明瞭な主紋、重ねられた漆の層の色彩変化を下地に、主題の図案が強調されています。このような重なる彫刻の層をはっきりとさせた技法はしだいに連続した紋様や立体感の強調、始まりと終わりがぼかされた自然な線などの新しい風格へと変化していきました。」ということ。明代の漆器を東京国立博物館でみていて、故宮博物院の明の漆器は、彫りが深いと思いましたが、さらに、この清の漆器は、さらに精緻を極めています。

    陶磁器として、
  • 清乾隆 粉紅錦地番蓮碗;
    全体に紙の如く薄く、錦のように華やかな紋様、色彩は淡く上品で、線はくっきりと描かれており、乾隆官窯の代表作とのこと。ピンクの底釉が華やか。

  • 清雍正 画琺瑯蟠龍瓶;黄色は皇室を象徴し、牡丹は富貴を表しているのでしょう。

  • 清雍正 琺瑯彩花鳥図碗;有田など比べると琺瑯だけあって精緻な文様です。


  • 清乾隆 黄釉粉彩八卦如意転心套瓶; 何と回転します。


    走向現代-清晩期(1796-1911)
    このコーナーには、前回訪問のときに記憶のある有名な作品「肉形石 」「翠玉白菜」などの玉器や「象牙鏤彫提食盒」などどうやって制作したのといいたくなるような象牙による工芸品が並びます。「光緒 緑地魚龍図花式瓶」「嘉慶 紅釉描金蕃蓮罐」など色彩鮮やかな陶磁器も。

    画像はSRCリンクです。
    (11月7日)
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    田中親美「平安朝美の蘇生に捧げた百年の生涯」

    2006-11-20 | 美術
    鴨脚さんにコメントいただいて、表記の本を図書館で探して読んでみました。益田翁などの逸話も多く大変面白い本でした。流転にかかわるところのみ抜書きしました。



    田中親美
    平安朝美の蘇生に捧げた百年の生涯
    名宝刊行会編
    展転社
    1985年

    初出一覧
    田中親美翁聞書 竹田道太郎(美術評論家、元女子美術大学教授、明治39年生まれ)「芸術新潮」昭和35年1月号から12月号
    田中親美翁昔語り 伊藤卓司「陶説」昭和31年1月号から昭和32年5月号
    (田中親美著述)
    月影帖目録略解「月影帖」明治41年7月
    岡田為恭之伝「為恭画集」明治44年
    根津家本「鎌倉(新)因果経」跋文 昭和11年4月
    久能寺経秘話「久能寺経」昭和26年6月15日
    古筆と荘厳経 大東急記念文庫・文化講座シリーズ12巻 昭和32年
    古筆の鑑賞 大東急記念文庫・文化講座シリーズ8巻 昭和35年

    座談会 一年祭を迎えて田中親美翁を偲ぶ

    田中親美(1875-1975)は、住吉如慶以来の住吉派直系として有職故実と日本古典美術研究の血統を継ぎ、古絵巻、古筆の第一人者であった。

    <田中親美略年譜>から
    田中有美、いとの長男として生まれる。本名茂太郎。
    父有美は大和絵の天才、冷泉為恭(1823-1864)の従弟でその門人。宮廷画家として絵所に出士していた。
    12歳で当時のかな書道の第一人者、多田親愛に入門。
    1893-1894 秋元本紫式部日記を模写。続いて秋元本寝覚物語絵巻、蜂須賀家本紫式部日記を模写
    1900 益田孝の知遇を得て、入手早々の益田本源氏物語絵巻第一巻の模写。
    1902 大口周魚蔵「為恭筆画帖」装てい(巾偏に貞)
    1902-1907 本願寺本三十六人家集の三十五帖を模写
    1906 元永本古今和歌集 上下を模写
    1908 古筆名跡集「月影帖」(木版)を刊行
    1910 藍紙本万葉集模写
    1911 為恭画集を発行
    大正初期 益田本久能寺経三巻を模写
    1920-25 平家厳島納経の模写
    1922 佐竹本三十六人歌仙絵巻二巻(木版)により刊行
    1926-31 尾張徳川家蔵源氏物語絵巻三巻を模写
    1928 手鑑「ひぐらし帖」を刊行
    1932 本願寺本三十六人家集の解体に際し、伊勢集、貫之集下を再模写。
    1948-52 久能寺経のうち、鉄舟寺、武藤家蔵の分を模写
    1955-60 大阪四天王寺より依頼をうけてかねてより作成していた料紙作成に着手していた法華経三十三巻が完成。有志の浄写を了わり同寺に奉納。
    1960 芸術院恩賜賞受賞。皇太子宮家の依頼により新東宮御所に扇面三本を完成して納入
    1964 勲四等旭日小じゅ(糸偏に受)章を受賞
       自らの発意にゆり、かねてより料紙を作成した慈光寺補写経五巻を有志の浄写を了わり奉納

    田中親美翁聞書 竹田道太郎から
  • 三十六人家集の模写
    本願寺本三十六人家集。鳥羽帝時代の宮廷制作によるもので、1252年に蓮華法院の宝蔵に収められていたことが知られているので、おそらく後白河法皇が御相伝になり、後奈良帝より証如上人に御下賜される。1896年により大口鯛二氏により、再発見。西本願寺の大谷家の蔵の中から。
    1932年の伊勢集、貫之集下の解体は希望価格が百万円が64万円で。三百数十頁を一人十枚ずつとして三十二組に分け抽選でくじ引き。一組2万円程度。

  • 源氏物語絵巻の流転。
    前博物館長の町田久成さんのもとには四天王とよばれるひとがいた。元は徳川普請方をしていた美術鑑識家の柏木貨一郎、図案家の岸光景、書家の多田親愛、尚古家の蜷川式胤の4人。

    尾張徳川家にあった源氏物語絵巻がなぜ徳川家と蜂須賀家に分かれたかは不明。徳川家と蜂須賀家の何かの縁組の時についていったのだろう。
    現存する源氏物語絵巻は、徳川家三巻と益田家一巻とあと詞書だけの断片。
    第15帖 蓬生  
    第16帖 関谷
    第17帖 絵合(詞書のみ)
    第36帖 柏木
    第37帖 横笛
    第38帖 鈴虫
    第39帖 夕霧
    第40帖 御法
    第44帖 竹河
    第45帖 橋姫
    第48帖 早蕨
    第49帖 宿木
    第50帖 東屋

    38,39,40が益田本、他が徳川本。
    このほかに田中家に写しはよくないが古写の源氏三巻(これは益田本一巻と徳川本一巻に相当)。それと同じものが国学院にある。

    明治維新の大変動の際に蜂須賀家にあった隆能源氏は、蜂須賀家が江戸屋敷を引き払って国許に帰る折りに流出。商人言い値で蜷川式胤が7円で購入。それを柏木貨一郎が40円で購入。(柏木氏は、鳥獣戯画残欠も所有した。鳥獣戯画残欠については、7年前に買い損ねて値上がりして手に入れた事情を面々とつづった手紙がある。柏木氏がかいたものを多田氏が清書。さいごに「ふくはうち、かねはそと」という一首がある。その残欠と手紙は益田氏から現在某氏所蔵に)(麻布画山水も奈良の古美術商柳生彦蔵が益田氏みせたあとに柏木氏が買取り、その後5倍の値段で益田氏が購入。現在は五島美術館に。先日拝見した。)一時、益田氏が地獄草子2巻と源氏物語1巻を担保として所蔵。しかし、返済の際に、担保を返せ、返せぬのはなしとなり、結局地獄草子1巻は益田氏のもとに残る。柏木氏が急逝後、益田氏は、隆能源氏一巻、地獄草子、猿面硯を五千円で譲り受ける。3000円、1500円、500円の値踏み。3000円は米価換算で260万円。(昭和35年)。それからまもなく親美は模写。

  • 徳川本源氏物語絵巻を写す
    田中親美氏は、模写の過程から、隆能源氏は、久能寺経と平家納経の間と推定。現在、絵画様式的には、最も近いとされるのは、西本願寺三十六人家集下絵(1112年)、久能寺経薬草喩品見返絵であり、料紙からいうと久能寺(1141年)より後の康治久安年間(1142-51)、書風からいうと西本願寺三十六人家集から平家納経(1164)にいたる中間期といわれている。

  • 生涯を決定させた紫式部日記の模写、紫式部絵巻をめぐる争奪戦
    秋元本紫式部日記絵巻は、寝覚物語絵巻とともにもともと旧館林藩領主秋元興朝子爵家の世襲の宝。秋元家が後水尾天皇から拝領した家宝。秋元家は、原富太郎から、担保として、2つの絵巻とその他の担保にした狩野元信「滝」などで、金を借りた。世襲財産をとかれて売りたてされるので、返却をもとめたが、寝覚物語だけを原家にとって、紫式部日記絵巻は返した。これは入札の結果、藤田家へ。寝覚物語は現在は、大和文華館。藤田家本の第五段は、竜頭鷁首(げきす)(はてなへのリンク)の船の絵だが、そこの詞書(伝良経書)は2枚の一枚が掛け物になって秋元家に残った。関東大震災で秋元家の蔵が焼け落ちて消失。親美翁の写本のみとなる。その写本の写しを藤田家に差し上げたが、東京の別邸(現在の椿山荘)で戦災で消失。

    紫式部絵巻は、藤田家本全五段のほかに、蜂須賀家本全八段、久松家本四段、森川家本五段が残存している。(現在の所蔵者は久松家本は日野原家、森川家本は益田家を経て一段が大倉亀氏、三段が五島家、一段が森川家)。久松本は写しはなく、蜂須賀本、藤田本の親美翁の写しは、田中家に残る。森川本の写しは、詞書のない絵だけ写しが住吉家に伝来し、現在田中家に所蔵。(この住吉家の模写を岡田為恭は漸く借り手模写した逸話がある。しかし、関東大震災で焼失)森川家本はもともとは伊予西条藩主松平家伝来。

    いまの皇太子(現在の天皇陛下)がご生誕のおりに、益田氏は宮様方をお迎えしてお茶会を催したが、そのとき森川本第三段、殿の上(倫子)が若君を抱いていざり出でさられたさまをところを掛け軸にしたてて席の床を飾った。現在の持ち主大倉亀氏も、本年の浩宮ご誕生の折には、床にこれをかけて3月26日にお祝いした。本こそ異なれ紫式部日記絵巻は、美智子妃殿下(現在の皇后陛下)とゆかりの深い館林藩(皇后陛下の祖父・父の出身地)に伝来したもので、皇子誕生のこの春に語るにふさわしい心地がした。

  • 截金技術の発見
    金沢名刹称名寺の源実時建立1269年より以来の本尊という弥勒菩薩像。精緻な透明な天冠、天衣に施した截金(きりかね)模様など全体にすこぶる美麗な装飾を凝らし偉容堂々タリ。といわれる。同寺には京都嵯峨清涼寺の釈迦をもしたという裁金入りの木造の釈迦立像や本尊の弥勒像とにた作風の十一面観音像がある。

    その弥勒仏の胎内から反故紙につつんだ針と篠竹をわった片(きれ)端がでてきた。裁金の手法は鎌倉時代を境にして、それ以降の仏像には使われなくなっていた。この道具を再現し、親美氏は苦心の上、利用法を発見し、裁金の手法を再現した。そしていとも簡単にこの手法が使えるようになった。新東宮御所に収めた扇面にもこの手法が用いられている。

  • 平家納経に取り組む、平家納経の完成
    益田孝氏は弘法大師を尊敬し、大師会を御殿山自邸で毎年命日に開催し、名士を招くのを常としていた。大師会のご本尊は弘法大師の座右の銘、十六字。狩野探幽が高野山宝亀院に鶴亀の絵を描いた時に、同院所蔵の大師の座右銘、零残女六家のうち初めの十字を切って、後の十六字を所望してもらい受け、爾来狩野家に伝世した家宝。明治維新節に流出し、益田氏のものになった。

    平家納経は、写本はつくりには、益田氏などが発起人となり寄付5万円を集めて実施された。関東大震災の折にも、渋谷桜丘の翁の蔵は焼けず、つくづく平家納経の名巻の利益、写経の功徳を感じたという。経巻の箱には秘密があって、納める順番にきまっていてまちがえても納まらないように仕組んである。との話も。帝室博物館で披露の際に貞明皇后が(女人成仏を説いた)提婆品をお取りなりなったとこと。

  • 戦後に写した久能寺経
    久能寺経。もとは法華経28巻に開結の無量義経と観普賢経の二具をあわせた一具のものあったらしいが、現在は欠けて、鉄舟寺に伝わるのが待賢門院の奥書のある譬喩品(ひゆほん) 、美福門院の奥書の提婆品など19巻、東京国立博物館に、法師品、安楽行品、無量義経、武藤家に薬草喩品、随喜功徳品、湧出品、勧発品、五島家に序品、法師功徳品が伝わる。故三井八郎次郎氏の南三井家に寿量品一巻があり、写真も残っているのに行方不明。この経の奥書には「一院鳥羽院」といわれるやかましいものではあるが、残念ながら奥書の写真すらない。五島家の二巻を除いて、他の経巻には、すべて待賢門院など知名人や後宮夫人の名が見えて一品結縁経であることをしめしている。料紙、見返し絵に王朝時代の情趣が単純な色彩の中に漂っており、時代的に絢爛たる平家納経などの先駆をなす。現存するしかも大部分そろった最古の玉軸彩牋。

    明治44年ごろ醍醐の山伏上りの丹治竹次郎が巻物8巻を200円で入手。そのなかから4巻を朝吹英二氏を9000円で買った。それが現在武藤家に伝わる。朝吹さんの紹介で三井八郎次郎さんが購入したのが、現在行方不明の寿量品。残りの3巻は、4500円で親美氏のところに売りに来たが結局益田孝氏の所蔵になる。現在五島家にある2巻は、翌年益田さんが別人から入手。五島家の2巻については、奥書がなく、他の久能寺経にはどれにも奥書署名があるので、やかましくいえば2巻は果たして久能寺経といっていいか疑問とされている。私(親美氏)は法師功徳品は料紙からいっても文様からいっても、たとえ奥書がなくともまちがいないと思うが、序品には、疑問がある。元来、平家経にせよ、慈光寺経にせよ、序品は開巻最初に位するだけに料紙は殊に結構なのに、五島家の序品はそれはお粗末である。そこに疑問がある。しかし、書や料紙の時代は確かに当時のもので、まことに立派である。

    寺に伝わる久能寺経は19巻だが、その全部が旧国宝に指定されていたが、よく調べてみると勧発品と陀羅尼品の2巻は明らかに鎌倉時代の別の経巻を補足したもので奥書もない。なのにもかかわらず、新指定の国宝になるときに、改めず19巻とも指定した。

  • 古筆のルネッサンスから
    20歳のころ新古書店斎藤琳琅閣から購入した古筆には、東大寺八幡経(安貞の年号の奥書)3巻を4円50銭。天平経の二月堂の焼経を1巻(一行10銭)。俊忠卿筆の二十巻歌合を一巻250円。
    多田先生経由で俊頼筆民部切を45円で手に入れていただいた。

    高野切の書体に三手があり、古来古筆界では、この異なる三手を一様に紀貫之の筆といっている。この三種はいずれも、現存のかな文字中で、筆力迺勁、姿勢優美で品位の高きこと随一である。第一種は厳正、端麗なかな文字、第二種は力のこもった連綿体で堅実に、第3種は、筆を豊かに働かせ、才をふくんで乱れずといったものだ。

    元暦万葉が、浪花の俵屋から新宮城主水野家にいったという記録から、水野家に問い合わせ、見つかったという逸話も。明治43年のこと。800枚以上なので、水野家から古河家に6万円で売られた。昭和30年に文化財保護委員会で買い取る時に立ち会って、14冊あるこの元暦万葉が一千万円が希望価だったが、評価委員の評価はそれより高かった。親美氏は、明治末に、一ページを御歌所寄人筆頭の阪正臣氏から50円で譲り受けたことがある。

  • 明治のコレクター
    明治、大正から昭和前期にかけての古美術界の大立物をあげれば、井上馨侯、田中光顕伯、益田孝氏、原富太郎氏らの名を逸することができないが、田中親美氏翁はこれらの四氏と親交があった。

    藤原時代の蓮の蒔絵の厨子が2枚と毘沙門天の1枚を、道具屋が初めに3枚百円で原富太郎氏に最初に見せたが、それがいろいろ見せるうちに一万円以上になって益田孝氏のものになった。

    益田氏があるとき、三吉という経師屋から行成筆関戸古今集切、和泉式部集切、公任筆下朗詠集切、俊頼筆東大寺切、西行筆白川切の5点を手に入れた。ところが、親美氏が俊忠卿筆の二十巻歌合を所蔵しているとしると、益田孝氏から所望され、まず1000円+行成の古今集と交換。ところがお蔵番の奥村氏がでてきて、交換はチャラにして、逆に、親美氏が350円で5点の古筆を手に入れることになった。しかし、朗詠以外は、350円以上で他氏に譲った。このうち西行の白川切は梅沢という別の道具屋に流れ、そこから益田氏が500円で購入することに。そして再び三吉に表装に出すことになった。益田氏がひどい目にあわされたという話。

  • 名品名筆の思い出
    藤原末期の仏画の国宝「孔雀明王像」は、原富太郎さんが、井上侯のところから鳩居堂(熊谷信吉)の口ききで原家に納まったもの。これが1点一万円という値がついた初めだったということ。熊谷は、この他に伝教大師の久隔状も多和文庫から原さんにいれている。井上侯のところにはもう1点、藤原期の十一面観音の仏画もあったが、これは3万5千円と値をつけられたので、原さんも躊躇、その間に益田氏のもとに。現在は、日野家に。

    高野切古今集の第五は、明治末年ごろは田中光顕伯所蔵だった。これは、親美氏が光顕伯から借り、写真に撮り複製頒布した。
    *もともとは本田子爵家にあった。巻八は毛利家、巻二十は山内家にある。


    田中光顕伯にあった高野切、藍紙本万葉集*、行成の掛け物、清滝権現像などは、横浜ニューグランドホテルの野村洋三氏の口ききで、原家に納まった。
    清滝権現はもと高雄も鎮座され、延喜三年(903)醍醐寺の開山理源大師によって醍醐寺の守護神として祀られ寛治二年(1088)から三宝院の始祖勝覚によって上醍醐の守護神として祀られた神である。原家の清滝権現像はこの本尊ではないが、元久元年(1204)の題記がある。もと額装だったとき裏面にあった墨書銘には弘長二年(1262)とある。醍醐寺三宝院の執事だった玉園快心というひとが、何のためか田中光顕さんに献上したもの。(玉園はほかにもいいものを持ち出している。赤星家にはいった目なし経や弘法大師筆の金剛般若経解題なども彼が持って来たもの。)ある日、田中光顕伯に玉園に病気療養の治療に困っているから清滝権現像をお返し願いたいとの手紙がききた。伯は親美氏に原氏に譲った時の値段3000円を包んで病床の玉園に送った。藍紙本万葉集の2巻あるうちの短い方は、原氏から親美氏は譲ってもらい、原氏のものとあわせ複製を刊行、明治43年ごろ。
    * 古筆了仲がもともと所蔵していたもの。

    大正4年に、芦舟の屏風をはがしたしたまくり6枚を伊藤大好堂から購入。原氏にお目にかけたら、ご執心だったが結局売らなかった。しかし、原夫人が「この先も縁があるのじゃないかしら」と漏らした言葉を親美氏は忘れられず、令息善一郎氏と団琢磨令嬢の縁談の調った時に、お祝いにした。すると一遍上人絵伝の市屋道場二巻(鎌倉期)と升色紙、さらに実朝筆の中院切がお返しに。原氏は値切るのが癖だったが、けちでしているのではないということが明らか。

    田中親美翁昔語り 伊藤卓司から

  • 宗達の伊勢物語
    団琢磨氏は4枚を二万円で中村好古堂から購入。益田家にある36枚は、昔、北岡から千円でかった。いまはバラバラに所蔵されている。

  • 有楽井戸の茶碗
    藤田家の第二回入札のとき、親美は益田氏、松永氏の両方から相談されて困った。ほとんど15万円で中村、伊丹の両道具屋が落札。交渉の末松永氏が購入。


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    NHK新日曜美術館「浦上玉堂 画を写して画家たるを恥ず」

    2006-11-19 | 美術
    NHK新日曜美術館「浦上玉堂 画を写して画家たるを恥ず」

    2006年11月19日放映

    先週、鑑賞してきた浦上玉堂展についての番組。テレビで細部まで色彩がよく判り(地上波ディジタルです)、見落としているところが多々あるのに気づく。山紅於染図など、展示の説明で黄色の部分があるというにも関わらず、見つけらずにいたが、テレビの画面でようやく判明。

    さて、今回の番組では、琴士 作曲編曲家の 坂田進一氏が出演していた。氏によると、山雨染衣図など、横の線が顕著で目に飛び込んでくるという。一定のリズムを刻んで木々を描いていることは、琴のビブラートの奏法と、筆法と、無意識のうちに(所作が)つながっているのではという。琴には絵画的な手法もあるという。「遊魚擺尾勢」という奏法は、手を撥ねるようにして弦をたたく手法だそうだ。
    岡山県立美術館学芸課長 守安収氏も、玉堂絵画の音楽的な面として、濃淡、潤いにみちた筆遣いと乾いた筆遣い、繰り返し、時々浮かぶ白い空間などの間を挙げていた。

    また、国宝 東雲篩雪図は、脱藩出奔後の会津藩で冬を過ごしたときを思いだし描いたのだろうという。東雲とありますが、凍雲という意。

    千葉県立美術館でも四文字または五文字の題をきちんと味わいながら鑑賞すれば、ベストだったと。でも、全部それをすると作品点数が多すぎますので要注意。
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