岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

裏白葉を従えて厳つく無骨に咲く黄白色の小さい花 / リンゴ園となった草山は私の春の日の翳り(2)

2008-04-05 05:33:00 | Weblog
(今日の写真はタデ科オンタデ属の多年草「ウラジロタデ(裏白蓼)」である。花名の由来は葉の裏に白い綿毛が密に生えていることである。北海道・本州(東北、関東、中部)に分布し、高山・亜高山の砂礫地に生える。草丈は約40cm、花期は8~9月である。

 秋の始まりの大沢で、仄かな赤に染まったオニシモツケと別れてまた登り続ける。両腕で体を支えて、日陰になっている大きな岩を前向きで躱す。またまた、大型の植物が登場する。葉の裏の白さを風にひらひらと「点滅」させながら、茎上部に円錐花序をつくり、黄白色の小さい花を沢山付けているものだ。
 錫杖清水で喉を潤す。真夏ほどの「冷たさ」を感じないが、いつ飲んでも、ここの水はおいしい。今日もまた、岩木山の命の「水」を恵んでもらった。また、登り始める。種蒔苗代の上部を登り切って、お御坂に取り付く。さっき見た「黄白色の小さい花」をつけていた植物の背丈が、がくんと低くなり、岩の上を匍うようにして花を咲かせていた。何と厳つく無骨な風情だろう。しかし、よく見ると、背丈が引き締まり、全身に命があふれているようではないか。やはり、沢で出会ったものは、この近縁種であるイタドリ属のものだろう。
 これは高山の岩礫地に生える多年草。ウラジロタデである。花被片は深く五裂し、雄花には雄しべが八個と退化した雌しべがある。葉は長楕円形で先は鋭くとがっており、表面は深緑色でほとんど毛はなく、裏面は綿毛が密生して白っぽい。これは、若い茎を生で食べることが出来るそうだ。)

●● リンゴ園となった草山は私の春の日の翳りとそれに関わること(その2) ●●

 …北海道に渡った頃だ。島尾敏雄の「春の日のかげり」を読んだ。その時、もう一度あの草山に登りたいと懐かしい思いが、私を強くとらえた。
 そして、主人公と中学生の頃の自分に共通することがあるなあと思ったが、それは「軟弱な自分の変革を目指して」柔道部に入ったということ、加えて、中国西湖の景色に似ていることから名付けられた長崎の「唐八景」のなだらかな丘が続く草山が、私がよく出かけた草山の風情に似ていることだけであった。「春の日のかげり」の主題である主人公が抱いた何ともみじめな「翳(かげ)り」とは関係がなかった。
 だが、その頃は気づかなかっただけで、私は青春の「翳り」の中にいたのだろう。だからこそ、春になるのを待ちわびて、草山に一人で何回も出かけたのではないだろうか。
 自分の翳りを明るく開けた草山に透かして、自分の将来を「彼方」に求めていたのだろう。

 現在、その雑木林も草山もすべて「リンゴ園」になってしまった。春のオキナグサも消え、秋のツルボの花も見られない。昭和の大合併時の弘前市からは、ほぼ「里山」は消失した。逆に増えたものは「リンゴ園」で使用する農薬使用量だけである。
 「唐八景」も今は、旅行者や市民には、縁のないところになっていて、「果樹園や畑」にはなっていないものの、芝地も引き剥がされ、廃れてしまっているという。
私にはたった1枚だけ、この草山で写してもらった写真がある。恐らく、友人K君が写してくれたものだろう。高校1年生の5月上旬、草山に登り、遠くと麓の村を眺めているものだ。履き物は下駄である。すべてが懐かしい。(終わり)

 さて…正直、私は歩いたり、自転車で行けるところに、昔懐かしい芝地の「草山」がほしい。
 かつて、岩木山には広大な芝地が存在した。その代表が長平地区上部である。西海岸地区の住民はそこを春、夏、秋と「憩い」の場として利用していた。
 だが、現在「ゴルフ場」となり、「ゴルフ族」という「特定」の人たち、しかも「使用料」を支払うことが出来る人たちだけが利用出来る場所になってしまった。「不特定多数」の人たちにとっては「利用不可」なのである。
 現在、岩木山には「芝地草原」はない。青森市は芝生草原として八甲田山麓に「萱の茶屋高原」を持っていて、市民から愛されている。弘前市は、市民のための「芝地草原」を持っていない。
 本会は「弥生スキー場跡地」を「自然に任せた復元を図りながら、自然観察地」として利用することを提唱している。
 しかし、私個人としては、現在の植生を生かしながら、「島尾敏雄」の作品「春の日のかげり」に描かれた長崎市南部の唐八景のような、「なだらかな草原、草山」、つまり、「芝地市民公園」として、若干の「整備改変」して市民に開放してもいいのではないかと考えている。「芝」を張るので費用はかかるが「最少」から始めて年々「増やして」行く方法を採るべきだ。
 「跡地」からは、弘前市街地、黒石、青森方面、さらに八甲田山、県境の山、白神山地、陸奥湾まで眺望が可能である。「芝地草原」であるから、弘前方面からの「自然景観」としても違和感はない。
 トイレや駐車場は「いこいの広場」のものを借用することで可能であろう。それとも、「跡地」は自然観察のための場所としてそのまま維持して、現在の「いこいの広場」を「芝地市民公園」とする方法もあるだろう。より高台にあるので見晴らしはずっとよくなるはずだ。