・制海権は国家盛衰の要点であり 中国は海洋にむかわねばらならい(中文、環球日報)
「阿片戦争以来今日に至るまで、中国人は制海権の意味を正しく理解しているとはいえない」から始まる寄稿文。随分大上段に振り被るものだが、寄稿者は「北京航空航天大学戦略問題研究センター教授」の肩書きをもつ張文木氏。肩書きを見ても、文章を読んでも『制海権』を正しく理解しているとは思えない。
筆者の理解として、制海権とは「好きなときにその海を航行できる権利」であり、人間以外に資源をもたない海洋国家において、それは死活問題となる(太平洋戦争において、日本が敗戦した理由を考えてみればよい)。基本的に重要なのは「自由航行権」であり、「制海権」はそれを保証する手段にすぎない。
この教授が制海権をどのように理解しているか、また大陸国である中国がなぜ制海権を必要だとするのかよく分からない。西-英-米などをイメージして、世界帝国には制海権が必要だと思ったような気配はあり、教授の考える海軍は沿岸海軍の枠は出ていないようだ。
大陸国の場合はまた事情が違ってきて、基本的に輸出入に頼らなければならない事情が、海洋国家ほど切実ではない。ところが、第二帝政ドイツとか帝政ロシアとか戦後のソ連とか、大陸国が国力をつけてくると海軍力を増強する事があり、そうなると海洋国家との間に軋轢が生じたりする。海洋国家側にしてみたら、金持ちの船遊びではなく生活がかかった話なので、歴史を鑑にすると大概戦争になっているようだ。
報道姿勢が極端に民族主義的とはいえ、環球時報は立ち位置的には人民日報の運営している国際問題専門紙であり、決してイエローペーパーではない。その新聞がそれなりの肩書きを持った人間の寄稿文として、当然日米との緊張を高めるような文章を載せるというのは、まあ、その通りの意味なのだろう。