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ジェイ B.バーニー『企業戦略論(中)』ダイヤモンド社

2009-05-03 15:28:57 | 経営戦略
リアルオプションとは、工場設備、流通ネットワーク、または技術といった実物資産に設定されるオプションである。例えば、ある企業が新規に工場を建設する際、その企業はその新工場を操業する機会を得るだけでなく、将来いつの時点かでその工場を拡張する権利をも得るのである。・・・・ある特定の投資が最終的に価値を有するかどうかが非常に不確実である場合、戦略的柔軟性を最大化する統治選択を考慮することが重要になってくる。
(p.34)

ファイナンスのオプションを戦略的意思決定に持ち込んだのが、リアルオプションだが、数量化することが目的ではない。不確実性が高い選択のなかで、意思決定の柔軟性とその成功の可能性を見える形にするために数量化するのだろう。
柔軟性のタイプには、遅延、成長、縮小、閉鎖・再開、放棄、拡張などのオプションがある。

中巻では「リアルオプション」が中心概念だが、第10章の「暗黙的談合」も面白い。

バーニーは競争戦略も戦略の一つに上げているが、ジョイント・ベンチャー、ライセンス協定、流通協定、供給協定とならんで、「談合」(明示的談合・これは違法と暗黙的談合)を取り上げて、その経済的価値や裏切りのパターンも解説している。
価格を軸に行われるベルトラン型裏切り、供給量を軸に行われるクールノー型裏切りにかかわらず、談合関係の裏切りは企業のパフォーマンスを低下させる「競争を強化する力」を解き放つことになる。(p.244)
そのため、「こちらは裏切らないよ」というシグナルを相手に送る投資行動として、4つを上げている。

・可愛い子犬作戦(puppy-dog ploy)  非攻撃的な立場を維持する 
・太った猫効果(fat-cat effect) 競合相手が脅威に感じないような投資行動をとる
・勝者の強気戦略(top-dog strategy) もし攻撃的な行動に出ると報復を受けると脅す
・飢えた狼(lean-and-hungry look) 攻撃的で戦略的投資を行う能力を保持し、相手のインセンティブを減少させる 

バーニーの戦略論の魅力は、企業戦略を業界構造、競合関係、財務、人的資源、組織など企業の内外を取り巻く環境全体から導く方法だろう。VRIO、リアルオプションなどのフレームワークという分析概念の枠組みだけでなく、現象を数量的に捉えることもいろんな場面で応用できそうだ。

ただ数量化の過程で意図をもって条件設定するときはきわめてあいまいな要素が入り込むのも現実だろう。

川島蓉子『ビームス戦略』PHP研究所

2009-05-03 15:27:44 | 経営戦略
セレクトショップのことをあまり知らないので、南馬越和義というカリスマバイヤーがどういう人かも知らなかった。ユナイテッドアローズとビームスとの関係もこの本で初めて知った。
ビームスはアパレル・流通業界のセレクトショップという印象だったが、今やライフスタイル自体を提案する会社になっていることがわかる。
アパレルのマーケット区分を年齢やテイストではなく、流行に気づくタイミングで区分し、「サイバー」「イノベーター」「オピニオン」「マス」「ディスカウンター」と呼ぶと、ビームスは「オピニオン」を中心に、「マス」の一部をターゲットにしているらしい。