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立花隆、佐藤優『ぼくらの頭脳の鍛え方』文春新書

2009-12-30 23:08:52 | 教養・時事
 佐藤氏は教養についてこう言っている。
 「教養は<知>の世界に入るための入場券だと思います。・・・北朝鮮で<全人民の教養><全人民のインテリ化>といったスローガンがありますが、北朝鮮の教養と言ったら、要するにチュチェ思想の体系的な知識のことです。その社会で生き残っていくための基本的な<知>が教養なんだとわかった。」
 教養をその社会の上部層がもつ高級な知識のように捉えられる風潮もある。けれどそれは上層部に属する人間が上層部で生き残るために必要な「知」なのである。それぞれの社会に「教養」があり、その社会のなかでも階層によりその内容は違う。教養をある集団におけるサバイバルのための知識ととらえると、「教養の低下」だとか「現代の教養を疑う」などという批判がくっきりした輪郭をもった問題として見えてくる。どの集団の「知」を基準にして語るのかが大事なのだ。

 この本のサブタイトルは「必読の教養書400冊」となっている。しかしここいう「教養」は、あくまで立花氏や佐藤氏にとっての教養だ。政治から科学まで幅広いジャンルの第一線ジャーナリストとしてサバイバルするための「教養」であり、また外交のインテリジェンスの世界でスパイのようにサバイバルするために必要な「教養」なのである。
 ここで語られる本のジャンルの広さには驚くが、リストをよく見ると佐藤氏の本は外交上のものが多く、立花氏のものは記録ものが多いという傾向も読み取れる。紹介されている本は、DNA発見者のトーマス・ワトソンからユング、ヒトラー、ヘロドトス、ヴィトゲンシュタイン、レーニン、ハイエクから西郷隆盛、カフカから近松門左衛門まで幅広い。それだけでなく、スパイ小説で世界のダークサイドを知れ、という教養主義に対する忠告もある。
 この本のリストだけでも、立花隆が「知の巨人」と呼ばれ、佐藤優氏が「知の怪物」と呼ばれる理由がよくわかる。
 「古典の読み方、仕事術から、インテリジェンス、戦争論まで21世紀の知性の磨き方を徹底指南」という本の帯のコピーはこの本の特徴をホントに言い当てている。

 佐藤氏はスパイ容疑で逮捕されたとき、ソ連の粛正の記録である『夫ブハーリンの思い出』や『山椒魚戦争』などのSF小説を読んでいたことが、自白から逃れるのに役立ったという。危険な外交官としてソ連崩壊の人間模様を見た体験と日頃からの読書体験が獄中で自白の誘惑から救ったというのだ。この人にとっての教養は本当にサバイバルのための「知」である。

 教養は自分が属したいと思う集団で生き残るための知識である。自分がどの集団(国家、組織、階層など)に属したいのかという問題こそ重要なのだ。


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