映画『ビューティフル・マインド』でラッセル・クロウが演じるノーベル賞受賞者のジョン・ナッシュは統合失調症だった。大学院時代から存在しない人間の幻覚に悩まされていた。入院も経験したが、妻の愛情のや友人のおかげもあって教壇に復帰する。ノーベル賞を受賞した時も幻覚は消えていなかった。「あの幻覚はもう消えないだろう。だが、幻覚を無視すれば、向こうもそのうちあきらめてくれる。そうやって生きていくさ」とジョン・ナッシュはいう。ルームメイトの親友が実は幻覚だったり、政府から来たというスパイの上官が幻覚だったりということはジョン・ナッシュにしかないことだろうが、われわれもときには幻覚と現実の間に生きている。醜い現実を美しい幻覚が助けてくれることもある。薬物使用ではなく。