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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

佐藤隆『ビジネススクールで教える メンタルヘルスマネジメント入門』ダイヤモンド社

2008-07-20 23:08:39 | 人材マネジメント
経営者や管理職の視点でメンタルヘルスを考える本。
メンタルヘルスの本といえば、精神科医やカウンセラーが診断と対応について書いた心理学書が多く、こういうコンセプトの本は少ないように思う。
メンタル不調による休職や生産性の低下、それが原因で引き起こされる自殺や労働災害によって、企業は大きなリスクと向き合っている。著者は現代を「ハイパー・チェンジ・エイジ」ととらえている。つまり、リストラや成果主義などにより職場は大変革の時代となっているのだ。経営者や管理職もこの変革が従業員にどのようなメンタルな影響を及ぼし、どのようにリスクを減らすかを考えないといけない。
ラインケア、セルフケア、職場のカウンセリングに加えて、会社と独立した専門家へのアクセスという4つのメンタルヘルスケアが必要であるということはよく理解できる。ラインケアも個人的な努力でなく組織的な対策がなければ問題は解決しないのだろう。

小室 淑恵『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』 ダイヤモンド社

2008-07-07 00:04:26 | 人材マネジメント
この著者をよく雑誌で見かける。
興味があったのは著者本人の生活ももちろんだが、ワークライフバランス王子である夫はどんな人なのか。
この本によると夫・ヒロシ君は貯金もロクにせずに著者にプロポーズした。
MBAのためにアメリカに留学したときには奥さんである著者に支援してもらったらしい。残業の毎日だったが、著者に子育てと仕事の両立で泣かれてから子育てなどにも関わるようになった。
著者の履歴は、日本女子大在学中に1年間アメリカ留学し、資生堂に入社。
2年目に社内ビジネスプランコンテストで優勝。そのプランが育児休業者の支援プログラム。そのアイデアをもとに起業して成功した。その上、容姿端麗。
とても恵まれた家庭環境とキャリアのような気がするが、この本を読んでみると都会で必死に暮らすひとりの女性の姿がわかる。
早く帰るために周りに感謝のことばを毎日言う工夫や夫と子どもとの散歩とジョギングを組み合わせる工夫。毎日の小さな努力がワークライフバランスを会社や世間に広める道なのだろう。

城繁幸『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』

2008-01-23 23:36:14 | 人材マネジメント
若者はなぜ3年で仕事を辞めるのか? その答を著者は年功序列を温存したままの雇用制度が大きな要因と考える。また最近の就職難のなかで起こった新たな現象ととして、厳選採用のために学生の用意した明確なキャリアプランが実際に就職した会社とギャップがありすぎるために生まれるミスマッチを上げる。まあ、確かにそういうこともあるだろう。
でもマクドナルドの原田社長がいうようにその転職が現実逃避なのかより充実した仕事につくためなのかを本人が自問するほうが大事なのではないか。上司が気に入らない、組織が古い体質だ、同僚にやる気がないなどというだけではどこにもユートピアは見つからないだろう。今起きている問題に対して、正面から向き合うことがどこでも必要だろう。そのためには5年間は改革や改善のために頑張ってみることが大事なのではないか。
転職しようとする若者に組織が古いんだからしょうがないよね、もっといい同僚がいるところへ行かなくちゃね、ということが最善策ではない。
この著者は富士通の成果主義を批判する本を退社後に書いて注目された。しかし、その富士通も一時期の極端な成果主義をやめている。この著者の書く本に今やどれほどの価値があるのかも疑問だ。

三枝匡『V字回復の経営』

2008-01-10 00:28:39 | 人材マネジメント
三枝氏の凄いところは単なるコンサルタントではなく、停滞した会社の中にずっぽりと浸かって、その会社の一員として戦うところだろう。組合が経営者と闘うのとは訳が違う。経営トップとしてもっと孤独で、改革のための熱い魂をもち、ときには船を沈めないために足かせになる人員もカットするクールな精神も必要だ。
ジョン・コッターの企業変革の理論と通じるところが多いが、コッターの本より熱く、描写があまりにリアルなので、読みながら思わず涙ぐんでしまうところもある。フィクション仕立てにしたのはモデルとなった企業の機密を守るためらしいが、小説にすることによって逆にリアルさが増している。
スタンフォードでMBAを取得し、BCGでコンサルタントをしていた三枝氏はどこでこんな粘り強さと人としての魅力を身につけたのだろうか。

三枝氏は改革の8つのステップを示している。
①成り行きのシナリオを描く
②切迫感を抱く
③原因を分析する
④改革のシナリオをつくる
⑤戦略の意思決定をする
⑥現場へ落とし込む
⑦改革を実行する
⑧成果を認知する
そして愚直に実行すること。

私の経験からは企業変革では次の5つが重要だと思う。
①改革チームを慎重に編成する
②チームで成功シナリオをつくり、揺るがない信念と突破力を共有する
③志で仲間を増やし、情を伝える
④立ち止まらず、次のステップをめざす
⑤改革の過程で組織の意識としくみ自体を変える

しかし、一番大切なのは、過去の成功体験にとらわれないことだろう。
成功イメージを繰り返し思い浮かべるのは大切だが、過去の成功はその状況下で成功したのであって、環境が変われば成功法則も変わるのだ。

また改革に抵抗するのも人間だが、改革に協力するのも人間だ。
最初強く反対していた人が、途中から自分は初めから賛成だったと言ったり、自分の予想通り成功したと言うこともある。それはそれで人間なんだから心変わりもあるだろうという広い心も大切だ。
人を恨むために改革をしているのではなく、その人を含めて組織をよくするために改革を進めているのだから。

沼上幹『組織戦略の考え方』

2007-07-28 09:46:48 | 人材マネジメント
具体的な企業名など一切出てこないのに、この本に描かれている組織にはとてもリアリティがある。
「ルーチンワークは創造性を駆逐する」(計画のグレシャムの法則)の通りにルーチンワークで忙殺されている組織は、忙しいことに満足して実際には背後にある構造的な問題に気づいていないという。「貧乏暇なし」や「木こりのジレンマ」(忙しくて、切れない斧を研ぐ時間もないという木こりの話)でも当てはまるが、実際によく出会う現象だ。
著者はマズローの欲求段階説の解釈の常識も疑っている。マズローの欲求段階説ではピラミッドの一番上に自己実現欲求があるが、これを裏付ける実証的研究の結果は出ていないらしい。しかし根強くこのピラミッドの上の自己実現欲求に人気があるのは、この考え方が美しく安上がりだからという。自己実現では報酬はいらないし、自己実現というとあいまいだが人を尊重しているようにみんなが思う。しかしモチベーション管理の有効性を考えると、自己実現欲求より「承認・尊厳欲求」が重要らしい。承認・尊厳欲求は本人が組織で必要だと自覚させる効果がある。これを満たすためには、たんにポストを与えるとかだけでなく、成功体験をさせるためにプロジェクトをまかせるとか、成果をほめるとか組織運営に重要であることを示すいくつかの方法がある。
この本で鋭い分析だと思ったのは、「組織のフリーライダー論」と「トラの権力、キツネの権力論」である。頑張る人の努力に乗っかって、自分は野党的に適当に批判したりして安全な楽な立場にいる人のことを「フリーライダー」という。これが増えると組織を腐らせるもとになる。この問題の解決法は責任感の強い人を採用し、企業の運命と自分の運命は一心同体だと思う人を育てることだ。
組織内の奇妙な権力の一つに「厄介者の権力」がある。これは「人前ですごんだり、大騒ぎしたりする」という育ちの悪さを基盤としている。こういう大人気ない行動をとる「厄介者」が権力をもつのは優等生の多い組織に特徴的だそうだ。大企業や省庁が典型。こういう厄介者が騒いだとき、そこで叱り飛ばす人がいれば厄介者が権力をもつことはないのだが、優等生たちが「騒ぎだされたら収拾がつかなくなる」と大人になればなるほど厄介者が権力を握ることになる。
キツネの権力とは「トラの威を借るキツネ」のことである。社長が好まないからとか、重要取引先が要求しているからとメンッセンジャーの役割を担う人がこの権力を握る。ひどい場合は架空のトラをつくることもできる。キツネの権力の温床も優等生の集まりだそうだ。本当に対決しなければならない権力との対決を避け、調整に委ねれば委ねるほど、トラの威を借るキツネが暗躍する。これらの奇妙な権力が育つのは組織が衰退しているときの象徴だそうだ。役員が多すぎて調整事項が多すぎたり、ヒソヒソ話が起きやすい環境ができるととくに奇妙な権力が生まれるという。これを防ぐためには役員数を減らし、面と向かって討論するようにすることだ。そうすれば根性のないキツネが権力を握ったりすることはない。
花形の成熟事業部に優秀な人材を集めることも内向きの仕事を増やすばかりだという。成熟事業部に優秀な人が集まると実際には成熟市場に対する仕事がないのに、余計な仕事(やたらと完成度の高いプレゼン資料や報告書など)ばかり作るようになる。これを外向きの組織にするためには、古いルールはトップダウンでなくしてしまい、成熟事業部から優秀な人を引き抜き、新規事業部につけるとか若手を抜擢することなどが有効らしい。
この本は組織をロジカルに分析した良書だ。ときどき読み返したい。

ケビン・フライバ-グ/ジャッキ-・フライバ-グ『破天荒-サウスウエスト航空-驚愕の経営 』

2007-07-02 00:09:21 | 人材マネジメント
サウスウエスト航空の成功はシェアにこだわらず、コストを抑えて最大限の利益をあげるビジネスモデルにある。多くの航空会社がシェアを追求して失敗しているが、元CEOのケレハーはシェアを上げることは売上を伸ばすかもしれないが、利益を上げるわけではないと考えた。サウスウエスト航空はニッチ市場(短距離路線)には合わない市場セグメントには見向きもせず、シェアではなく利益率に焦点を合わせることによって基本戦略に徹してきた。1978年の規制緩和以来、ほとんどの航空会社がハブ・アンド・スポーク方式を採用したが、サウスウエウト航空はハブ・アンド・スポーク航空方式を採らなかった。ハブ・アンド・スポーク方式ではそれぞれの地方都市から乗り継いでくる客を待つため、飛行機の地上待機時間が長くなり、稼働率が下がりコストも上がる。ゲートの準備、機内食の用意、燃料補給に要する地上要員など飛行機の地上待機時間が長くなればなるほど無駄な時間が増えコストが増えるためだ。使う飛行機はボーイング737のみ。一機種方式により訓練も単純化でき、保守部品も少なく管理しやすくなり、コストが抑えられる。それに航空機を導入する際の商談も有利になる。チケットはレジで打ち出したレシート。機内食は出さない。規制緩和以来200近い航空会社が倒産したが、サウスウエスト航空は今や全米5位の航空会社にまでなった。売上でなく利益を追求するビジネスモデルと顧客よりも従業員を大事にするという企業文化。結果的にはこの企業文化が顧客サービス重視を支え、結局顧客満足度を上げている。
サウスウエスト航空は短距離路線にこだわるビジネスモデルとコスト抑制、サービスを重視する企業文化が要因となって成功している。しかしケレハーの不屈の精神や元秘書のコリーンの社員重視の姿勢は創立期に困難を乗り越えたことがエネルギーになっているようだ。会社設立直後、航空機を飛ばすまでの何年にもわたる訴訟。ライバル航空会社によるサウスウエスト航空を破産に追いやる作戦にも初期の社員は打ち勝ち、これらの危機を乗り越えた。このときの教訓が会社を家族主義的にし、愛に満ちた職場にしているのだろう。サウスウエスト航空の現在のホームページを見るとCEOコリーン・バレットの写真がある。カリスマ経営者と呼ばれたケレハーの後を継いだのは元秘書だったこともこの会社の組織としての強さを表しているように思う。

梅森浩一『面接力』

2007-07-01 23:43:04 | 人材マネジメント
面接にはストラクチャード・インタビューとアンストラクチャード・インタビューというのがあるそうだ。ストラクチャード・インタビューとは、面接官の役割や聞く内容が計画されていることで、アンストラクチャード・インタビューとはいきあたりばったりで無計画の面接。外資系出身の著者にはストラクチャード・インタビューが当たり前だったそうだ。しかし計画された面接にも欠点があり、各分野に精通した面接官でないと面接者の本音を引き出せない場合もあるらしい。日本では計画性のない面接が多いという。たしかに重役や上司に質問の主役を譲るような日本の会社では、面接の役割や内容を割り当てるような合理的な面接は少ないだろう。そのほかこの本には面接者に欠点を質問された時に、いかにプラスイメージに表現するかの指南もある。「がんこ」というのは「一生懸命なところがあり、首尾一貫しているといわれる」と表現するのがよいとか。この著者の『「クビ!」論』は衝撃的だったが、その後出版される本はインパクトの点では見劣りしてしまう。面接力を説くこの本も著者がには申し訳ないが、面接者としても面接を受ける者としてもあまり得るところがない。種本はアメリカで出版されている本のようだ。

鈴木敏文の組織論

2007-04-14 07:24:37 | 人材マネジメント
日経新聞の私の履歴書にはセブン&アイホールディングス会長の鈴木敏文氏が登場している。2日前には組合と広報部門の組織について面白い記述があった。鈴木氏は東販時代に組合の書記長も経験しているが、経営側としてイトーヨーカドーの労組結成に際しては2つ注文したそうだ。ひとつは組合費を安くすること、もう一つは専従の数を抑えること。これには上部団体も怒ったそうだが、各組織で決める原則なので実現したそうだ。組合費を安くするのは組合活動を抑えるというより、組合費を高くすると、組合員が過剰な期待感をするから。専従を多くすると、善意の発露として専従が頑張って過剰に組合員の期待感を煽るからとか。いずれも組合側と会社側が認識を共有する妨げになるそうだ。広報部門の人数を増やさなかったのも同じ理由とのこと。人数が多いと情報収集や発信で余計な仕事にまで拡大しがちになる。人数が限られれば何が本質かを考えるようになるとのこと。仕事と人数規模の関係は難しい。ルーチン業務では、ある程度の人数が必要だが、政策を考えたり、創造性を発揮する仕事は結果が規模に比例するとは限らないのかもしれない。確かに少数精鋭のほうがモチベーションも成果も上がることが多いような気がする。

ジョン・コッター『企業変革力』

2007-03-27 00:52:26 | 人材マネジメント
コッターの近著『企業変革ノート』と読む順序が逆になった。先に書かれたこの本もいちいち頷く所が多い。最も納得したのが、第2ステップの変革チームの作り方。キーパーソンを巻き込まないと変革のパワーにならないが、チームに入れてはいけない2種類の人がいるという。そのうちの一種類はエゴが強すぎる人である。経営トップは誰しもエゴが強いものだが、それを自覚せずチームから信頼が得られないような人は変革チームには害になるだけとのことだ。もう一種類はコッターが「蛇」と呼ぶ種類の人だ。チームのあるひとにはAといい、、違う人にはBといってチームを混乱させる。チームに最も必要なのはある方向へベクトルをそろえることであり、何より信頼しあえることである。そういう気がないとか、混乱させようとすることしかできない人はチームにとって百害あって一利なしということだ。
第1ステップで危機感を高め、改革のベクトルを同じ方向性にしていないと改革が挫折することが多いのも同感だ。第6ステップの短期的結果を軽視しないというのも教訓的だ。第7ステップの変革の停滞を打破することも大事だ。停滞の理由が、戦略に合わない昔ながらの組織構造や報酬システムということもある。最後の第8ステップが変革を企業文化に根付かせるということもよくわかる。組織文化の変革は最後の課題なのだ。企業文化が変革を邪魔するのでできないとか、文化を先に変えないと変革はできないというのは間違いである。変革を成功させ、停滞を打破し、さらに進めるなかでしか企業文化を変えることはできない。コッターは企業人ではないのに実務の理解にリアリティがある。おそらくコンサルタントとして、また調査で企業の事例と企業人以上に取り組んでいるせいだろう。



チャールズ・オライリー他『隠れた人材価値』

2007-03-25 20:01:28 | 人材マネジメント
組織は戦略に従うというように、まず戦略があり、組織を適合させ、人材を鍛える経営だけが成功するといわれている。しかしこの本に取り上げられた企業は確かにそれとは違うようだ。サウスウエスト航空のように、まず社員が第一という企業の強固な価値観があり、従業員重視の経営をしており、経営陣が管理者でなくリーダーとなり高業績を上げているいくつかの会社が紹介されている。シスコシステム、SASも業界は違うが、似たような成功する要因があるようだ。一方、ピープル・エクスプレスやリーバイ・ストラウスも同じような価値観、従業員重視、企業文化の重視を標榜している。しかし実態は官僚的運営や従業員無視などが見られ、事業の成功に結び付かないらしい。だが、サウスウエスト航空などはそれだけでなく、マネジメントやオペレーションも優れているように思えるし、戦略もはっきりしている。顧客重視で乗継ぎ路線はなく、直行便のみの運行。フリードリンクはあるが、機内食を一切出さない。機種はB737だけでメンテを統一、空港で15分以内の折り返し飛行などコスト意識が高い。人材採用も企業理念に合う性格のものだけを採用する。給与は多少他社より安いが超過勤務で補う。むやみに路線拡大しない戦略などビジネスモデルとしては考え抜かれている。従業員重視というのは価値観の同質化した従業員に対して、満足度を上げる家庭的な処遇をしたほうがマネジメントしやすいという見方もできる。けれど従業員の満足が顧客満足につながるというのはサービス産業では大事なことかもしれない。笑顔の裏に会社不信があったりすると、そのサービスが本物でないことは客にもわかるだろう。