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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

グロービス『MBAファインナンス』ダイヤモンド社

2010-04-05 01:05:34 | 財務・会計
実務に役立つかどうかはわからないが、ケースを解く授業には向いているテキスト。

ファイナンスの中核部分は「企業価値とは何か?」を考えることだと思う。
要するにファイナンス的にいうと以下のことであり、この式を覚えていないと話にならない。

企業価値=株式時価総額+有利子負債

企業価値は将来企業が生み出すキャッシュフローの現在価値の合計と等しい。

■DCF(Discount Cash Flow)法:資産が将来生み出すキャッシュフローをそのキャッシュフローのリスクの大きさに見合った割引率で現在価値に引きなおす方法。
企業価値を計算する場合は、将来企業が生み出すキャッシュフローを資本コストで割り引き、現在価値を算出する。

DCF法による将来生み出すキャッシュフロー(FCF)の現在価値の求め方

EV=Σ(p期間のFCF/(1+WACC)のp乗)

*WACCで割り引く意味:企業にとっての資本コストは株主や債権者にとってのリターンになるため

<分子の求め方>

FCF=EBIT×(1-税率)+減価償却費-設備投資-ΔWC

■EBIT:(Earnigs Before Interest and Taxes)支払利息、税金控除前利益
■WC:運転資本(Working Capital)=流動資産-流動負債(有利子負債除く)

<分母の求め方>

WACC=rE×E/(E+D) + rD(1-t)× D/(E+D)

■WACC:加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital)
■rE:株主資本コスト
■rD:負債コスト
■E:株主資本(時価)
■D:有利子負債
■t:実効税率

<rEの求め方>

rE=rf+β(rm-rf)

■rf:リスクフリー・レート(多くは長期国債を適用)
■rm:マーケットの期待収益率
■β(ベータ):市場の感応度(市場全体のリターンが1%変化したときにその株式の
リターンが何%変化するかを表したもの)

この本ではDCF法が、D/E比率を固定しているという弱点を補ったAPV法の解説もある。

<APV法>

APV法(調整現在価値:Ajusted Present Value):

将来のキャッシュフローが無借金の状態で得られると仮定して、現在価値を計算した上で、借入れをすることによるキャッシュフロー増加分(利払いにかかる節税効果)をプラスして価値算定する方法。

APV=EVu+PV(ITS) 

■EVu:無借金(アンレバード)での企業価値
■ITS:インタレストTAXシールド

 APV= FCF/Ra + (D×rD×T)/rD

  Ra:rf + βAU×(rm-rf) 

■βAU:無負債状態での資産のβ。
 Dがある状態の資産ベータはβALと呼ぶが、βAUとβALは、PV(ITS)ぶんだけ異なる。

國貞克則『財務3表一体分析法』朝日新聞出版

2009-12-28 22:22:09 | 財務・会計
この本は『財務3表一体理解法』の分析版である。
財務分析をする上で大切なこととして、書かれていることはシンプルだ。

どのようにお金を集めてきているか
それを何に投資ししているか
投資した資産をいかに効率よく活用して売上高をつくっているか
売上高をどのように利益に変えているか
事業全体のプロセスで現金がどのように動いているか

ROE
レバレッジ比率
総資本回転率
当期純利益率

企業は利益をあげるために存在しているのか
企業にとっての利益は、人間にとっての水のようなもの
人間は水なしに生きられないが、水を飲むことが目的で生きているわけではない


また、ライブドアの財務分析をすると「企業は利益を上げることだけが目的だ」と思っている人は必ず失敗するのが見えてくる、という。

人間は水なしに生きられないが、水を飲むことが目的で生きているわけではない

企業は利益なしに存続できないが、利益を生むことが目的で存立しているわけではないからだ。本業は何なのか、何のために存立しているのか企業は絶えず考えるべきだということが、財務分析からもわかる。



ロバート・C・ヒギンス『新版 ファイナンシャル・マネジメント』ダイヤモンド社

2009-05-11 23:28:41 | 財務・会計
この本を評価できるほどファイナンスの知識があるわけではないが、学者による入門書というより実務家による「チャート式」のような感じの本である。理論が展開されるよりも、実際のケースに応用する際には何に留意すべきかについて詳しく書かれている。この本を読んでいるときは本当にわかったような気持ちになる。

ファイナンスは、事業・企業の現在価値を求めることが基本である。

事業・企業価値=Σ(p期間のFCF/(1+WACC)のP乗)

この式でフリーキャッシュフローをもとめ(分子部分)、リターンとリスクが織り込まれたWACCで割り引く(分母部分)。

この分子部分の説明では、第7章の「DCF法」がとてもわかりやすい。キャッシュフローの算定方法やNPV法、IRR法の説明はこの本が一番よい。
実際のWACCの計算は第8章の「投資の意思決定におけるリスク分析」が参考になる。余計なことは考えずにこうすればよいというような書き方ではあるが。

実務で財務などに携わっていない者にとってファイナンスは本当に難しいと思う。

入門者には『ざっくりわかるファイナンス』→『道具としてのファイナンス』→『MBAファイナンス』→『ファイナンシャル・マネジメント』→『コーポレート・ファイナンス』という順序で本を読むのがよいと思う。

しかし、覚えても数ヶ月でファイナンスの知識は忘れてしまっている。
その度に上の順序で本を読んで思い出すことにしている。というよりいつも『ざっくりわかるファイナンス』のレベルで止まっているようにも思う。

ファイナンス音痴の悩みは深い。

西山茂『入門ビジネスファイナンス』東洋経済

2008-10-13 00:05:26 | 財務・会計
西山氏の本ではグルービスのアカウンティングのテキスト『MBAファイナンス』やもうちょっと詳しい『戦略財務会計』『戦略管理会計』がわかりやすかった。同じ著者なのでファイナンスの入門書もかなり期待していたが、『道具としてのファイナンス』のほうがわかりやすいと思う。ファイナンスの基本を知った上で要点を押さえるにはよい本かもしれないが。

國貞克則『超図解 「財務3表のつながり」で見えてくる会計の勘所』ダイヤモンド社

2008-06-30 23:56:39 | 財務・会計
『財務3表一体理解法』と同じ著者の本。もっと簡単でわかりやすい。しかし、勘所である減価償却費や棚卸資産などは十分に解説してある。
3表一体理解法は簿記に慣れていない者にはとてもわかりやすいが、簿記が身に付いている人にはまどろっこしいのかもしれない。
決算で必要になるP/Lの当時純利益とB/Sの株主資本のつながりくらいで十分なのだろう。
経理実務をしないけれど財務分析をする必要がある者にとってはとてもよい本だ。

J・スターン他 伊藤邦雄訳 『EVA 価値創造への企業変革』日本経済新聞社

2008-06-22 21:46:41 | 財務・会計
EVAは業績指標として使われるが、ソニーなどグローバル企業は早くから導入している。
企業のキャッシュ利益からこの利益を生み出すのに必要であった資本コストを引いたもので、経済的価値を創造した場合はこの値がプラスになり、マイナスだと資本を浪費したことになる。
EVAを出す計算では負債コスト、株主資本コストを計算するのでWACCが出てきたり、ファイナンスの概念を知らないと理解できない。
EVAはスターン・スチュワート社が開発したものなので、EVA自体に商標権があり、EVAという概念を使う本には必ず「EVAはスターン・スチュワート社の登録商標である」という一種の宣伝が入る。実際のEVAを出すときには広告宣伝費や教育訓練費などを調整する。これはスターン・スチュワート社が考えたものだが、この工夫に意味があるようだ。
EVAは営業コストから資本コスト、財務コストをマイナスして価値を見るので、キャシュフロー計算書が営業CF-投資CF-財務CFで当期に生んだキャッシュを導くのと考え方が近いともいえるそうだ。

R・キャプラン、D・ノートン(櫻井通晴訳)『戦略バランスト・スコアカード』東洋経済新報社

2008-06-22 19:35:57 | 財務・会計
BSCがよくわかる本。特にモービルについてはキャプランがHBSのケースにも使っているように成功例らしい。
キャプランはクーパーと標準原価計算の欠点を補うためにABC(活動基準原価計算)を考案した。その後、コンサルタントのクーパーといっしょにBSCを考案した。これは、業績評価が財務に偏重しており、戦略との整合がとれていないことを考慮して新たな業績評価方法をつくったものだ。
BSCの最もよいところは、戦略マップにより構成員全員が戦略と自分の関係を意識して仕事が出来ることだろう。確かに一枚の図で戦略と自分の関係が分かるのはよい。そして、業績評価表でも戦略を意識して評価のウエイト付けが出来る。
しかし、財務、顧客、内部プロセス、学習と成長という4つの指標は互いに相関するが、遅行指標である財務の指標は外部要因の影響を受けやすいので、必ずしも先行指標と相関しない場合がある。また不完全なBSCなら組織が混乱するだけなので、やらないほうがましらしい。
最近、九州大学がBSCを使うというニュースがあった。営利企業だけでなく非営利組織にもBSCは応用できるらしい。九州大学では誰がBSCの導入を考えたのか知らないが、BSC導入に当たってはその組織に合う方法をとことん考える必要があるだろう。

キース ヴァン・デル・ハイデン『シナリオ・プランニング』ダイヤモンド社

2008-06-22 19:12:05 | 財務・会計
シナリオ・プランニングはもともと第二次大戦中にアメリカ軍の作戦演習から考え出されたもの。企業経営で役に立ったのは1970年代のオイルショックの時だという。シェルはシナリオ・プランニングによって急激な変化に対応して危機を切り抜けた。この時以来、石油や電力などエネルギー産業ではシナリオ・プランニングの考え方が当たり前になったらしい。
 現在、シナリオ・プランニングは企業経営や研修でも用いられているが、経営計画でも管理会計として利用されているらしい。
 その際に何をシナリオドライバーにするかが重要な問題。起きる可能性は低いが、起きると経営に重大な影響を与える要素をシナリオドライバーとして取り上げるのがポイント。意思決定留保が前提だが、中期経営計画ではPL、BSにまで落とし込むことが必要。
 財務とは関係なく、実際にシナリオ・プランニングが役だった例としてアパルトヘイト時代のアフリカ民族会議(ANC)でのグループ作業が書かれている。政治的に対立するグループが互いに悲劇的な未来と夢のある未来を考える中で妥協点が見いだせたそうだ。
 財務で使うシナリオ・プランニングの欠点として経営企画室だけで行い、視点が偏りがちになるそうだ。ANCの例のように対立する派閥や労使が共にシナリオ・プランニングに取り組むのは面白いかもしれない。

国友隆一『京セラ・アメーバ方式』ぱる出版

2008-06-22 18:18:53 | 財務・会計
京セラはアメーバというミニ・プロフィットセンターで時間当たり収益性(時間当たり付加価値計算と呼ばれている)を測り、業績評価をしている。プロフィットセンターを単位とした責任会計システムだが、京セラが普通の会社と違うところは、この業績評価と報償が連動していないところだ。
こんなことをすると普通はやる気を失う社員が出てくるものだが、京セラは稲盛哲学でこれを克服しているとのこと。「敬天愛人」という経営理念、つまり他人のため、働き社会を豊かにすることが幸せにつながるという考え方を浸透させ、業績と報償を連動させなことにしている。といっても業績のよい人はみんなの前で表彰されるらしいが。
一種の宗教とも思える稲盛哲学がこの会社を支えているようだ。