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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

諸星裕『大学破綻』角川書店

2014-12-29 10:52:43 | 大学事情
ずいぶん前に読んだ本の感想を書いていなかった。
著者は桜美林大学の教授。アメリカの大学院を修了した後、現地で勤務し、ミネソタ大学の日本校の学長も経験した。
アメリカの大学の経営に深く関わった視点から日本の大学の問題点を指摘する。
最近流行の大学事情をおもしろく書くジャーナリストとは違う角度の見方ではある。

花崎正晴『コーポレート・ガバナンス』岩波新書

2014-12-28 22:12:47 | マネジメント・ガバナンス
コーポレート・ガバナンスとは、一般的には企業経営の非効率性を排除して、企業価値を高めるメカニズムを指し、企業統治と訳されたりする。
コーポレート・ガバナンスの原点は、エージェンシー・コストの発生を抑制することによって、経営者が株主に対してその投資に見合った適正な収益を還元する制度的な仕組みを整えることにある。
という定義から、この本ではアメリカのコーポレート・ガバナンス、日本企業のガバナンス、銀行のガバナンス、アジア企業のガバナンスなどを実証的に分析していく。
いま日本はアメリカ型のコーポレート・ガバナンスをモデルにしているが、西欧、アジア、日本の企業のガバナンスの構造は歴史的に異なっている。
株主利益を考える場合に日本は系列銀行、系列企業による株の所有により、外部株主によるガバナンスが働きにくくなっている。
アジアと西欧は家族企業による株の所有の企業が多いという共通点はあるが、外部株主に対して西欧企業は配当を大きくして、情報の非対称を補っている。

最近大学のガバナンスが問題になっている。
この本を読んで、コーポレート・ガバナンスと大学のガバナンスは次元の違いがあると思った。
企業のステークホルダーを株主だけでなく、顧客や取引先、従業員とした場合、企業のガバナンスは外部と内部の情報の非対称をどう埋めて、経営効率化を図るかのテーマである。
それに対して大学のガバナンスは組織内部で経営の意志が教授会という従業員の意向に優先して決定権を持つかという問題である。
そもそも統治の構造がないところでの問題なのだ。
では大学のステークホルダーに対して、利益を優先するためには何が必要なのだろうか。
そもそも収益を目的にしていない大学にとって、利益ではなく何を優先すべきなのかが問題になるのだろう。

最後にこの本の著者はCSRやSRIの問題に触れたうえで、コーポレート・ガバナンスにおいても「企業とは何か」が問題になると書いている。
では大学のガバナンスを考える上で、大学とは何か。その大学にとってステークホルダーは誰なのか。
出資者がいないので企業のようにエージェンシー・コストという考え方は成立しないだろう。私立大学にとって出資者は寄付者となるが、リターンを求めている寄付者はいない
では誰の利益を優先すべきか。
学生、学資負担者、教職員、卒業生というステークホルダーの利益だろう。
大学が継続し発展することをステークホルダーは望んでいる。
経営者はその思いを託されている。社会的に不名誉なことをすれば責任をとらないといけない。
経営者は緊張感をもって経営をしなければならない。
そのために理事会、監事、評議員会という組織を義務づけている。
今問題になっている学長と教授会の責任と権限というのはあくまで内部問題である。
学長も教授会も外部のステークホルダーの利益を意識した行動が求められるのだ。

冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』PHP新書

2014-12-14 23:17:53 | 経済・金融
グローバル(G)とローカル(L)はそれぞれ違う経済原理で動いている。それを理解して経済政策を立てないと何の効果もない。
特にグローバル経済を中心に成長戦略を立てていると、ローカル経済には利益が回らないという主張だ。
リーマンショック頃からトリクルダウンというグローバル企業の利益がローカル企業に回るという減少は起きなくなった。
グローバル企業は製造業中心であるが、ローカル企業はサービス業中心である。サービス業の供給者は消費者の近くにいなければならず、労働集約的である。
グローバル企業は世界で競争している。そのためには、法人税の引き下げとか雇用のダイバーシティが必要である。
それに対して、ローカル企業は世界企業ほど競争がなく、中小企業が多い。賃金が低く、慢性的な人手不足に悩まされている。
しかし、淘汰が起きにくいのでゾンビ企業が残っている。
そのために最低賃金の引き上げとゾンビ企業が退場しやすい制度改革を著者は提案している。
これでローカル企業の人手不足は減少し、経済効率の良い企業が地域で再生する可能性がある、というのが著者の主張だ。

さて、G型、L型という分け方や経済原理の説明は説得力がある。
著者が産業再生機構COOを経験し、今、東北でみちのりホールディングスという交通関係の企業の再生に関わっているので浮ついた経済学の理論説明ではない。
G型、L型と分けるとすっきりすることが多い。
供給者と消費者がどこにいるのか、世界を市場の対象とすることで経済効果が上がる企業とそうでない企業。
教育産業もローカル産業なのだということをハーバード大学を例にして言っている。
ただ、教育産業はすべてローカル産業かというとそうでもないのかもしれない。
テンプル大学などが典型だろう。しかし、グローバル化の効果を上げていないのも事実だ。

著者はこのG型、L型で、いろんな産業の整理を行っている。
日本の大学もG型、L型で分けて教育内容を整理せよと言っている。
しかし、このG型、L型の間にある大学もある。
自らをL型と規定したくないだろう。
分類化してしまうことで競争力を失うという判断があるからだろう。

文部科学省の類型化より単純なこの分類で大学が整理されるとは思えない。
処方箋はあるが、それを実行できないのは経営者が冷静な判断をできないからか、
それとも消費者がグローバル化に憧れる幻想をもっているからなのか。

『関ヶ原合戦までの90日 勝敗はすでに決まっていた!』小和田哲男(PHP新書)

2014-11-30 21:29:53 | 歴史
関ヶ原には今年の6月に行った。
地元の歴史家が史料館を作っていて、等身大に近い変な武士の人形を並べていた。
とてもさびれた街という印象だった。

1600年の天下分け目の関ヶ原。
上杉征伐の名目で、石田三成に挙兵させた徳川家康の知略。
その後、西と東で勢力を集めた決戦。
九州では黒田如水の戦もあった。
各地での戦が関ヶ原に兵力を結集するのを妨げたとも言えるようだ。西軍のほうがその影響が大きかったんだろう。
態度の煮え切らない小早川秀秋に業を煮やした徳川家康が威嚇射撃をした。
それで小早川は東に味方し、勝敗が決した。
そのことが有名で僅差での東軍の勝利という印象があったが、関ヶ原だけでなく日本のあちこちが戦場だったのだ。

その中心地が関ヶ原。それを思うとあの奇妙な史料館にまた行きたくなる。

『石田三成 「知の参謀」の実像』小和田哲夫(PHP新書)

2014-11-30 00:06:51 | 歴史
NHKの大河ドラマ『軍師 官兵衛』で描かれる石田三成は悪役である。
豊臣家のことしか考えない官僚で、戦は下手だが、謀略や計算には長けている人物として描かれている。
そんな人物がどうして徳川家康と互角の兵力を集めることができたのだろうか。
それが最大の疑問だった。
この本を読むと、あのドラマの描かれ方の通りだと思うところと、ドラマの三成像は関ヶ原の勝者である徳川史観なのだと思うところもあった。

千利休切腹事件などは、明らかに光成が権力を獲得するために利休を嵌めたようだ。このあたりから策謀ばかりを考えているというイメージができたようだ。
しかし計数の才があったので、同じような計数の才がある者が集まったこととか、博多の街作りの基礎を作り、町を繁栄させていった手腕などプランナーとしての手腕もあったのだと思う。

秀吉との出会いである三献茶のエピソードがある。初めは秀吉がの鷹狩の疲れを癒すためにぬるいお茶を入れ、だんだん熱いお茶を出したという逸話。この話などは秀吉が信長のわらじを温めたのと同じように、細かな心遣いができる人間であることを示している。
また、皮膚病を患っていた大谷吉継との友情などは泣かせる。情の熱い一面のある人間だったのではないかとも思わせる。
歴史上、謎が多い不思議な武将である。

『プロ法律家のクレーマー対応術』横山 雅文 (PHP新書)

2014-11-29 22:54:52 | 法務
お客様は神様、クレームは改善のための宝として接することがよいことだといわれる。
一般的にはそうであるが、そうでない場合もある。
「悪質クレーマー」と呼ばれる人々との対応だ。
「お客様は神様、クレームは宝」を貫くと顧客が消費者より常に強い関係になる。
悪質クレーマーはこの関係を利用するのだ。
この本によると、悪質クレーマーが増えたのはは2000年代に入ってからだという。
その要因は、消費者保護法の施行によって、消費者意識が高まったこと、企業の不祥事がマスコミで大々的に報道されて、消費者が企業にものを言いやすくなったこと、消費者がインターネットで企業の対応のまずさなどをすぐに広められるようになったことが背景にあるようだ。

この本には、顧客と悪質クレーマーの見分け方が書かれている。
悪質クレーマーを見分けるポイントは5点。
(1)欠陥・瑕疵ないし過失の存否
(2)損害の存否
(3)欠陥・瑕疵ないし過失と損害の相当因果関係
(4)損害と要求の関連性
(5)クレーマーの行為態様

製品の不具合などについて顧客がクレームをいうのは当然だが、苦情・クレームに名を借りて、執拗に不当な要求や嫌がらせを繰り返すとか、事実根拠がおかしかったり、どうみても法的に不当なことを要求してくると悪質クレーマーとしての対応が必要になる。
著者は悪質クレーマーについて、4つに分類して対処法を解説している。

性格的問題クレーマー
精神的問題クレーマー
常習的悪質クレーマー
反社会的悪質クレーマー

特に問題なのが、性格的問題クレーマーかと思う。
性格的問題クレーマーの目的は、極端に強い自尊心から自己中心的な欲求を満たすためにクレームで相手がひれ伏すまで行動を続ける。
お金が最終的な目的ではないので、理不尽さに窓口対応担当者などが疲弊したり、精神的に病んだりしてしまうこともある。
しかし、会社が間違った対応をしたために、普通の顧客のクレームから悪質クレーマーに変えてしまうこともあるので要注意とか。

法律改正や権利意識によりクレーマーが増えたということもあるが、ストレスなどにより精神的に病んでいる人が多くなったことも要因のような気がする。

『強豪セールスの秘密』奥城良治(サンマーク文庫)

2014-11-24 23:13:18 | 人間学
1993年に出版された本。
著者は日産で16年間連続トップのセールス記録を持つ奥城良治。
一昔前に流行ったモーレツ・サラリーマンの啓蒙書である。

「奥城・鬼十則」の第十条にこうある。
トップ・セールスマンとは、最も多くの侮辱と屈辱を受けた男である。
トップ・セールスマンとは、最も多くの断りを受けた男である。
トップ・セールスマンとは、最も多くの失敗と敗北を喫した男である。
しかし、トップ・セールスマンとは、この侮辱と敗北の苦しみを、敢然と乗り越えた勇者である。
(p.190)

先輩の技を盗み、他業種のトップセールスマンに同行させてもらい秘中の秘を学ぶ。
やがて、ただ売り込むだけの限界を感じて、客の喜ぶ話題を提供することを覚える。
学歴のない著者は、客との話題作りのため、がむしゃらに教養知識を吸収し、客との話題を豊富にした。
ラジオの教養講座を録音し、興味のある本はバイトを雇ってテープに吹き込み、車での移動中に聴いた。
休みの日も散歩には広告と名刺を持参して、あちこちの車のフロントガラスにはさんだ。
売るために、一分一秒を無駄にせず、ひたすら目標に邁進した。

今となっては時代遅れのやり方かもしれない。

しかし、不思議に心を打つ。

侮辱と敗北の苦しみからしか成功は生まれない。
30年前も今も同じなのだ。

何度かの引越しでも捨てられずに、何度も繰り返し読む本になった
哲学、宗教、歴史の本より低俗なのは否定できないが、僕にとっては一番心に響くことが書かれている。

諸富祥彦『自分に奇跡を起こす心の魔法44』三笠書房王様文庫

2014-01-13 22:41:49 | 心理学
タイトルのいかがわしさとは反対に心理学者の書いたまじめな本。
でも魔法が40紹介されていて、読むだけでも魔法にかかったような気分になる。

毎朝10回、ガッツポーズで「やった~」と叫ぶ。
「私は嫌われても構わない」と一日100回つぶやく。
わたしはあなたの期待に応えるためにこの世の中にいるわけではない、というゲシュタルトの祈りを唱える。
一日5分、自分スペースを見つける。
not to do リストをつくり、自由時間を増やす。

などすぐに実行できることもある。

幸福は目的でなく結果である。
成し遂げたいことをやった結果として訪れるものであり、目的にすると得られない。

ユングのシンクロニシティやチクセントミハイのフローなんかもさりげなく紹介されていて、著者の奥の深さを感じる。

とにかく魔法40をかけてみよう。
そんな気にさせる本だ。

究極のワーク

地球上で一番好きな場所で大地のダンスをして、気づかなかったメッセージを受け取る。

なんかはちょっと理解不能だが、トランスパーソナル心理学って興味がわく。

映画『リンカーン』

2013-12-31 17:00:40 | 人間学
監督:スティーヴン・スピルバーグ
主演:ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド
2012年アメリカ

リンカーンはどんな人物だったのか。
奴隷解放、人民の人民による人民のための政治。
南北戦争を終結させ、奴隷解放の憲法修正条項を成立させた。
そして暗殺された。

リンカーンはときに黒人兵士とも直接話し、戦地に赴き、兵士を慰め、あるいは鼓舞する。
野党議員と一対一で魂の話しをする。
一方で議論に終始する閣僚には、権力者として命令し、実行させる。
そういう人物に描かれている。
大統領なので独裁者のようになるときもあるだろう。
でなきゃ切り開けない局面もある。

この映画で印象に残ったセリフがひとつだけある。

リンカーンは戦争で長男を亡くしている。次は次男が軍隊に志願するという。
リンカーンも反対だったが、半狂乱になって、リンカーンを責める妻。
次男を愛していない、長男のときもそうだったとわめく。
リンカーンは「長男が亡くなった時に、お前を精神病院に入れるべきだった」と怒鳴る。
ひとしきり怒鳴りあった後、感情を抑えて、リンカーンは妻に
「自分も毎日嘆いている。一日中嘆きたいときもある。君と同じだ」と言う。

「われわれは重荷を背負いながら、決断しなければならない。そして、耐えなければならない。
我々は自分の重荷を軽くしていかねばならない。或いは、それに押し潰されるか。君次第だ」

われわれは歳を取れば取るほど、いつのまにか重荷を背負っている。
しかし、そのなかで決断しなければならない。
そしてどんな結果になろうとも耐えなければならない。
重荷は自分で軽くしていくしかない。
そうでなければ押しつぶされるだけだ。
誰も助けてはくれない。
自分の重荷なのだから。
たとえ夫婦であっても。

スピルバーグらしいドラマだと思う。
皮肉ではないが、道徳の授業にも使えそうな映画だ。
誰でも一度は見る価値がある。

佐藤優『人に強くなる極意』青春新書

2013-12-30 17:13:22 | 人間関係学
人に強くなる極意として佐藤氏は、「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りしない」ことを上げている。
否定形での教えだが、怒ること、断ること、あきらめること、先送りすることの見極めも大事だとも述べている。

怒らないためには、日頃ストレスを溜めないこと、怒りを昇華させるためによい小説、よい映画を読むことを薦めている。

びびらないこと。佐藤氏が拘留514日を経ても、自白させられなかったのは、検察のハッタリや脅しが通じなかったかららしい。
エリートは「お前は社会のクズだ」「犯罪者だ」などどなじられるとそれまでの自信を一気に失って、検事の言いなりになるらしい。これを検察は「相手を自動販売機にする」と言ってるとか。
佐藤氏はインテリジェンス経験者として検察官よりもハッタリや脅しには慣れていた。
相手にびびらないためには、相手を知ること、相手の内在的論理を知ったり、いろんな体験からあらゆる場面をシミュレーションしておくことが重要だと。体験が少ない場合は、小説や映画などで想像力を働かせることなのだそうだ。

侮らないためには「内省ノート」で毎日の相手の行動の分析をすること。
断らないことは、自分に力をつけるために必要だと。
佐藤氏は、毎月本を300冊読み、原稿を1000枚以上書いているが、それはだんだん自分の容量を増やしていったからだ。
知の怪物と呼ばれる由縁だ。

最後に時間感覚について、うつ病や統合失調症の人は、「取り返しがつかなくなった」「もう終わってしまった」という感覚が強いらしい。時間に対する柔軟性、いつでもやり直しがきくんだという感覚が大事だそうだ。
それは先送りする、しないの見極めにも通じる。

佐藤優の顔を思い浮かべるだけで、人に強そうな気がする。
だが、この本を読むだけで、人に強くなるなんてことはない。
佐藤氏が拘留中も強い気持ちでいられたのは、大学で神学を深く学び、考える芯を築き、外務省でスパイもどきの目の前の仕事を誠実にこなし、修羅場を論理的に見極めていった成果であり、鈴木宗男を裏切らないと誓った情熱からだろう。
この本を読むと、ムネオハウスも世間とは違って見える。