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●(東京新聞社説)《死刑制度には普遍的な人権問題が潜み、その廃止・停止は、もはや世界の潮流となっている》…死刑存置でいいのか?

2022年01月03日 00時00分32秒 | Weblog

[※ 安田好弘さん 《「死刑反対。死刑をおかしい」と言うこと自体が、異端者になってくる》 (2018年7月28日 報道特集)↑]


/ (2021年12月26日[日])
東京新聞の【<社説>死刑廃止論 世界の潮流を見据えて】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/126201?rct=editorial)。

 《米国が連邦による死刑執行を一時停止すると表明した。死刑制度には普遍的な人権問題が潜み、その廃止・停止は、もはや世界の潮流となっている。日本でも廃止に向けた議論を進めるべきだ》。

 なんでも《米国》に従うのにね。《バージニア州は今年三月に「死刑は不公平で効果がなく非人道的だ」として、南部の州として初の廃止州となった》。消費税制が無いことや死刑停止・廃止には従わないのね。ニッポンは、死刑存置でいいのですか? 《アムネスティ・インターナショナル…はこうした現状を「世界は死刑という残虐かつ非人道的で、品位をおとしめる究極の刑罰を過去の遺物に葬り去ろうとしている」と説明している》。
 《普遍的な人権問題》としては、冤罪者を死刑にしてしまうこと。「飯塚事件」で死刑が執行された久間三千年さんが思い出される。罪なき人に対しての《国家による殺人》。政権が罪を認めるはずも無いし、最早責任の取りようもない、国家が無辜の人を殺したのですから。

   『●冤罪で死刑執行、あってはならない!!
   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
                飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行

    「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
     2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
     2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
     ……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
     久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日
     DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
     だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」

   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」:
                    無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」
    「リテラの伊勢崎馨さんによる記事【飯塚事件、なぜ再審を行わない?
     DNA鑑定の捏造、警察による見込み捜査の疑いも浮上…やっぱり冤罪だ!】」
    《冤罪が強く疑われながら死刑が執行されてしまったのが、1992年に
     福岡県で起こった「飯塚事件」である。そして、この飯塚事件にスポットをあて、
     冤罪疑惑に切り込んだドキュメンタリー番組が放送され、ネット上で話題を
     呼んだ。3日深夜に日本テレビで放送された
     『死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻』だ》

   『●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の再鑑定で
           死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行
    「西日本新聞の二つの記事【死刑下した裁判官が関与 飯塚事件の
     再審請求審 識者「公正さ疑問」】…と、【飯塚事件再審認めず 
     福岡高裁 「目撃証言信用できる」】…」

   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)

 別件ですが、…アクセスジャーナル山岡俊介さんの記事【<主張>“生涯弁護人”は正義の味方か!?】(https://access-journal.jp/63465)によると、《弘中惇一郎弁護士(76)がつい最近出した書籍が話題を呼んでいる…。同じく著名な弁護士なら、弱者保護を主張し、死刑が求刑された事件の刑事弁護を数多く担当する安田好弘弁護士(74)の方がはるかに正義の味方と感じる。安田弁護士には、武富士に訴えられた記事で弁護してもらい、反訴して武富士側は認諾し本紙・山岡側は完全勝訴した》。

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』: 
      バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(1/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(2/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(3/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(4/4)
   『●『特捜検察の闇』読了(1/3)
   『●『だまされることの責任』読了(1/3)
   『●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評

 小嶋麻友美・小澤慧一両記者による、東京新聞の記事【「探しましたが、いませんでした」再審請求中の死刑執行…世界では約7割が廃止か停止】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/150291)によると、《2年ぶりの死刑執行に、日弁連や人権団体などからは批判や落胆の声が上がった。日本政府はあくまで死刑制度存続の方針だが、世界では約7割の国が死刑を廃止か停止している国際的な潮流に逆行する日本さらに厳しい視線が集まるのは必至だ》。

   『●『死刑』読了
   『●死刑廃止集会
   『●「死刑制度 国民的な議論を活発に」…
      「死刑制度存置派驚異の8割の我国」では全くそんな気配なし

   『●「彼を赦したわけではない。
      しかし死刑にして問題が解決するわけではない」

   『●NNNドキュメント「死刑囚の子 殺された母と、殺した父へ」
   『●和歌山毒カレー冤罪事件: 安田好弘弁護士と林眞須美被告
   『●「新宿西口バス放火事件」: ある被害者の心の軌跡
   『●「殺すなかれ…」…「彼らを処刑することが「社会正義」なのだろうか」?

 《赤坂自民亭》の酔いちくれぶりや、一部マスコミの異常なハシャギぶり、思い出すだけでも気分が悪い。《死刑を忠実に実行しているのは日本だけ》、本当に何もかも嫌になるニッポン。さらには、飯塚事件久間三千年さんにどう責任をとるつもりなのか?

   『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国
   『●善良な市民には関係ない?? 
      死刑制度存置派驚異の8割の我国では全く揺るがず!?
   『●《死刑を忠実に実行している》のはニッポンだけ…
      飯塚事件でも、《十三人の死刑執行》でも揺るがず…
    《今年七月、オウム真理教の死刑囚十三人全員の刑が執行された。
     世界で死刑廃止の流れが進む中、大量執行は国内外に大きな衝撃を
     与えた。だが、国内ではその後、死刑制度の存廃を巡る大きな議論
     にはつながっていないこのままでいいのか。関係者を訪ね歩き、
     考えた》

   『●「死刑のスイッチ」を強制する裁判員制度:
      「やった人でないと、この苦しみは分からない」
   『●「7人に死刑を執行する前日に乾杯する総理大臣と法務大臣
            …これがこの国のグロテスクな現状なのだ」

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/126201?rct=editorial

<社説>死刑廃止論 世界の潮流を見据えて
2021年8月23日 07時47分

 米国が連邦による死刑執行を一時停止すると表明した。死刑制度には普遍的な人権問題が潜み、その廃止・停止は、もはや世界の潮流となっている。日本でも廃止に向けた議論を進めるべきだ。

 米国のガーランド司法長官が先月、連邦による死刑執行を停止し、死刑政策や執行方法を検証することを明らかにした。

 バイデン大統領はもともと大統領選の公約に、連邦レベルでの死刑廃止を掲げていた。州をまたぐ犯罪など連邦法に違反する事件について、である。

 連邦法以外に各州法による死刑もあるが、全米五十州のうち現在二十三州が廃止三州が執行を停止している。バージニア州は今年三月に「死刑は不公平で効果がなく非人道的だ」として、南部の州として初の廃止州となった。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると今年四月現在、十年以上死刑執行のない国も含めると、世界百四十四カ国・地域が事実上、死刑を廃止している。死刑のない国は既に世界の三分の二以上を占めている

 先進国に限れば死刑制度を存続・執行しているのは日本米国だけだが、米国内で存続しているのは二十四州で半数に満たない。アムネスティはこうした現状を「世界は死刑という残虐かつ非人道的で、品位をおとしめる究極の刑罰を過去の遺物に葬り去ろうとしている」と説明している。

 日本は、国連の国際人権(自由権)規約委員会から死刑制度の廃止を考慮するよう何度も勧告を受けている。確かに世論調査では死刑に肯定的な意見は多いが、情報開示の不十分さゆえに国民の議論が熟さないのではないか。

 生命を奪う究極の刑罰でありながら、誤判や冤罪(えんざい)の恐れが排除できない執行されれば取り返しがつかず、他の刑罰と本質的・決定的に異なる。二〇一八年の国連総会でも死刑の廃止・停止を求める決議が圧倒的多数の賛成を得た

 日本と外国との捜査協力・司法協力の壁ともなっている。日本が犯罪人引渡条約を締結している国は韓国と米国のみで、拡大しない理由は日本に死刑制度があるためとも考えられている。

 死刑の存廃を巡り、日本では活発な議論が交わされてこなかったが、各国が人権尊重の観点から次々と死刑の廃止・停止に踏み切ってきた潮流を見据えたい。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/150291

「探しましたが、いませんでした」再審請求中の死刑執行…世界では約7割が廃止か停止
2021年12月22日 06時00分

 2年ぶりの死刑執行に、日弁連や人権団体などからは批判や落胆の声が上がった。日本政府はあくまで死刑制度存続の方針だが、世界では約7割の国が死刑を廃止か停止している国際的な潮流に逆行する日本さらに厳しい視線が集まるのは必至だ

 「小野川さんを探しましたが、いませんでした」。21日午前、東京拘置所で小野川元死刑囚への接見を申し込んだ弁護人の岩井信弁護士に、職員は淡々と告げたという。再審請求中の死刑執行に裁判を受ける権利の侵害裁判は『ない』ということだ」と怒りをあらわにした。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本は「外交では人権を守り抜くとしながら人権をないがしろにする岸田政権の姿勢の表れ」と批判。アムネスティによると、死刑を実質廃止した国は昨年までに約140に上り存置する55カ国でも実際に執行しているのは中東、東アジアなど毎年20カ国程度にとどまる

 米バイデン政権は今年、連邦レベルの死刑執行の停止を発表。州レベルでも、2009年から今年までに計7州が死刑を廃止した。

 国連人権理事会からも再三、死刑の廃止や停止を求める勧告を受ける中、古川法相はこの日の記者会見で、国内世論の支持をふまえ死刑を廃止することは適当ではないと明言した。日弁連の土井裕明副会長は「世論を言い訳に居直るべきではない死刑もやむを得ないという質問文に賛否を尋ねる世論調査の手法にも問題がある」と指摘する。

 8歳の次男をひき逃げ事件で亡くした「被害者と司法を考える会」代表の片山徒有さんは「人は反省し、立ち直ることができる生身の人間の命を国が奪うことはあってはいけない」と主張。「遺族にとっては動機を知ることが永遠にできなくなる対話の機会をつくらないまま改善の余地なしと執行するのはあまりに乱暴だ」と訴えた。(小嶋麻友美、小澤慧一)

【関連記事】米、連邦の死刑執行停止 執行方法などを検証 有色人種への偏り懸念
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●『誘蛾灯 二つの連続不審死事件』(青木理著)読了…マスコミの《愚にもつかない〝情報〟の大洪水》の中…

2019年01月20日 00時00分00秒 | Weblog

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51BkZRUDQlL._SX350_BO1,204,203,200_.jpg



『誘蛾灯 二つの連続不審死事件』(青木理著)読了(2019年1月3日)。講談社+α文庫、2016年1月20日第1刷発行。



https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51BkZRUDQlL._SX350_BO1,204,203,200_.jpg


 不謹慎ながら、爆笑した青木理さん〝メイン〟の『大竹まこと ゴールデンラジオ』での本書についての爆笑話。お相手は、室井佑月さん。


『大竹まこと ゴールデンラジオ! 2018年10月26日』
https://youtu.be/9TuWVrAx1TQ
http://radio-life.blog.jp/archives/29240779.html


   『●『日本の公安警察』読了(1/2)
   『●『日本の公安警察』読了(2/2)
   『●青木理さん「供述が立証の柱…もっと物証が欲しい。
         「通信傍受を縦横無尽に使いたい。司法取引も」と…」
   『●《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的…代用監獄…人質司法》
                          …さらに、司法取引まで投げ渡す大愚
   『●青木理さん「特定のメディア組織に属してはいても、
      記者が本来奉仕すべきは、広い意味での読者や視聴者」
   『●青木理さん『情報隠蔽国家』…「客観的な事実すら隠蔽し…
                ねじ曲げて恥じない為政者たちの姿」を報じも…
   『●青木理さん「テロは確かに怖いかもしれないけれど、
      国家の治安機関の暴走はテロよりはるかに怖い」
   『●「紛争地での取材やメディア、ジャーナリズムの原則論」…
               「政府高官が建前でも原則論を口にできぬ国」

 《彼女たちに騙されていたのは》…、青木理さんも、そうだったのかも。自省も含め、マスコミ報道の在り方への批判…〝ファッションチェック〟など、《かわりに伝えられるのは、愚にもつかない〝情報〟の大洪水だった》(p.489)。
 随所に青木さんらしい視点。裁判員裁判への懐疑。黙秘権の理由(p.344)…《検察や警察には強力な捜査権限が付与され、膨大な人員とカネを投じて証拠等を収集し、…一個人にすぎない被疑者、被告人=被訴追者の立場はあまりに弱く、その力の差は圧倒的である。…証明する責任は全面的に訴追機関の側が負い、…立証することが求められる。それができなければ無罪。…疑わしきは被告人の利益にの原則である》。その意味で、和歌山毒カレー事件の和歌山地裁判決への疑問(p.346)。林眞須美氏の有罪にも疑問。
 黙秘権を批判する裁判員…《黙秘権の意味と重要性…この程度の認識の者たちが裁判員を務め、一段高い法壇から判決を宣告…私は暗澹たる気持ちになってしまう。その発言に適切な疑義を突きつけず、あたかも真っ当なことを言っているかのように垂れ流したメディアも批判されてしかるべきだろう》。素人裁判員に死刑を宣告させる愚策。死刑のスイッチを押させる国策。
 死刑制度への疑問など。

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https://www.amazon.co.jp/dp/4062816393?_encoding=UTF8&isInIframe=0&n=465392&ref_=dp_proddesc_0&s=books&showDetailProductDesc=1#product-description_feature_div

誘蛾灯 二つの連続不審死事件 (講談社+α文庫)
文庫 – 2016/1/21
青木理  (著)

内容紹介
上田美由紀、35歳。小柄で肥満、鳥取のスナックのホステス。彼女の周りで6人の男が死んだ。この事件の背景には、木嶋佳苗事件とは別の深い闇がある。
――美由紀に騙されていたのは、あなただったかもしれない。

2009年秋、30代の太った女二人が、それぞれ男と関係を持ち、カネを貢がせ、死に追いやっていた――。木嶋佳苗事件との共通項の多さから、世間の話題を集めた鳥取連続不審死事件。筆者は鳥取に通い、上田美由紀と面会し、彼女に騙された男たちに取材を重ね、二つの事件は似て非なるものだと確信する。
鳥取の事件の背景にあったのは、日本の地方をじわじわと覆う闇――人が減り、町が廃れ、仕事を失い、生活が立ちゆかなくなった田舎で生まれる、弱者が弱者を食い物にする状況――だった。

木嶋佳苗が獄中ブログを始めるきっかけとなり、「私の事件を取材してくれていたら…と思い続けたジャーナリスト」と言わしめた一冊が、大幅加筆のうえ、文庫化!

2009年秋、当時35歳の木嶋佳苗の周囲で、複数の男性が不審死した事件が話題を集めていた。同時期、別の連続不審死事件が浮上する。現場は鳥取、主役は上田美由紀、スナックのホステスだった。
二つの事件には驚くほど共通点があった。主役はどちらも30代半ばの小柄な肥満体型の女で、亡くなった男たちと肉体関係を持ち、多額のカネを貢がせていた。美由紀に惚れ込んだ男たちのなかには、刑事や新聞記者もいた。
しかし、二つの事件の背景はまったく異なるものだった。佳苗が高級マンションに住み、外車を乗り回し、セレブ相手の料理教室に通い、婚活サイトを利用して男を物色していたのに対し、美由紀は過疎の進む鳥取で5人の子どもとボロ家に住み、場末のスナックでターゲットを探していたのだ。
筆者は、事件現場、スナックに通い、裁判を傍聴する。美由紀に惚れ、貢ぎ、騙された男たちをみつけ、話を聞く。そして、拘置所にいる美由紀とも面会を重ねる。
そうして、木嶋佳苗事件からは決して見えてこない、この事件の深層――地方の貧困との関係があらわになっていく。人が減り、町が廃れ、仕事を失い、生活が立ちゆかなくなる。そこで生まれる、弱者が弱者を食い物にする犯罪。それは、いまの日本社会に覆いかぶさろうとしている闇だ


内容(「BOOK」データベースより)
上田美由紀、35歳。小柄で肥満、子ども5人を抱える鳥取のスナックのホステス。彼女の周りで6人の男が死んだ。この事件の背景には、木嶋佳苗事件とは別の深い闇がある―。なぜ男たちは騙され、カネを貢ぎ、それでも彼女を愛したのか?美由紀と面会し、取材を続ける筆者のもとに木嶋佳苗からのラブコールが届き、事態は新たな展開を見せる!鳥取連続不審死事件と、首都圏連続不審死事件―彼女たちに騙されていたのは、あなただったかもしれない


著者について
青木理
1966年、長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクションライター。慶應義塾大学卒業後、共同通信社に入社。警視庁公安担当、ソウル特派員などを務めた後、2006年に退社、フリーに。2000年に発表した『日本の公安警察』(講談社現代新書)は公安警察の内実を赤裸々に描き、ベストセラーとなった。主な著書に『絞首刑』(講談社文庫)、『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』(小学館文庫)、『増補版 国策捜査 暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(角川文庫)、、『青木理の抵抗の視線』『ルポ 国家権力』(ともにトランスビュー)、『抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)など。テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活動している。


著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)
青木理
1966年、長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクションライター。慶應義塾大学卒業後、共同通信社に入社。警視庁公安担当、ソウル特派員などを務めた後、2006年に退社、フリーに。テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000208043

目次
序章
第1章 太ったホステス
第2章 一人目の男
第3章 二人目の男
第4章 三人目の男
第5章 県警の蹉跌、男たちの蹉跌
第6章 なぜ溺れたのか
第7章 ウソツキだけど可愛い女
第8章 「真犯人」は誰なのか
第9章 「真犯人」の証言
第10章 美由紀との対話
第11章 「みちづれ」
第12章 ラブ・レター
第13章 松江にて―美由紀との対話2
第14章 男のウソと女のウソ
終章 美由紀と佳苗―二つの連続不審死事件
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●「東電元幹部の罪と罰」 『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号)についてのつぶやき

2014年09月23日 00時00分19秒 | Weblog


週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号)について、最近のつぶやきから、AS@ActSludge。

 今週のブログ主のお薦めは、明石昇二郎木野龍逸畠山理仁さん【「悪の凡庸さ」は彼らにあてはまるのか 勝俣・武黒・武藤の各氏 起訴相当議決の3被疑者はいま】。

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■①『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 『福島第一原発事故を防げなかった東電元幹部勝俣、武黒、武藤の各氏の罪と罰』。木野龍逸さん【原発事故の調書めぐり「誤報」認めた『朝日新聞』 「誤報とは言えない」との声も】、「「原発報道」委縮を懸念」。『朝日』の犬HK化が心配(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/fd17f09a886a3b53315797304b4c033e

■②『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 布施祐仁氏【福島原発事故めぐり東電や元請企業の責任を問う 現役の作業員が初めての提訴】、「危険手当・・・・・・下請け企業らがピンハネすることは許されない・・・・・・即時撤退しなければならないほど放射線量の高い環境下で作業に従事」。「コスト優先」、「命は二の次」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/71f48168ef21050af72cdd5b7f0b11e5

■③『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 藍原寛子氏【自民党の相乗り、抱きつきでドタバタ劇 福島の知事選は「県民不在」】、「自民党・・・・・・本部は「原発再稼働」を最優先に位置づけているが、県連側は「県内原発全基廃炉」を主張・・・・・・矛盾はさらに際立つ」

■④『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 永野厚男氏【教科書採択めぐり神奈川県教委 〝実教ゼロ〟の不可解】、「卒業式等での国歌斉唱について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」などと記述した実教出版・・・・・・の教科書・・・・・・選定した高校が〝ゼロ〟」。強制しておいて「規制」するとはね!(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/8adfc28e3a834d65c8088d41cd74d9cb

■⑤『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 編集部【「南京事件」めぐる誌上討論 藤岡信勝氏が受託】、「『週刊文春』編集部は・・・・・・同紙と本多勝一・・・・・・との書面による公開討論を受けたい」。「【・・・・・・「公開質問」】(リンクはココ)、「『朝日』叩きに邁進する雑誌も急増中で、次の矛先は・・・・・・「南京事件」の否定に」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/bf8e2cfb8450175bfb74e85bfbbdd52f

■⑥『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 本多勝一さん【風速計/「吉田調書」の本質とはなにか】、「チャイナシンドローム・・・・・・東日本壊滅・・・・・・とりわけ日本のような地震大国での原発の恐ろしさ、原発は原爆と同じであること・・」。『朝日』潰しに夢中、だけでいいのか?(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/0ad03769634c7f275309a1c6eac3a866

■⑦『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 能川元一氏【「性奴隷」と認めない日本政府とメディアの独善 日本軍「慰安婦」問題で恥をさらしている安倍内閣】、「メディアの・・・・・・『朝日』叩きに上機嫌の安倍首相は・・・・・・国連の報告書に対し「反論」するという。だが、・・・・・・歴史的事実だ。・・・・・・歪曲だらけの週刊誌・・・・・・「誤報」の政治利用」

■⑧『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 白石草さん【環境省専門家会議で何が起きているか 無視される福島の子どもたち】、「国会の全会一致で成立した「子ども・被災者支援法」に基づき設置されながら、同法でうたわれた子どもたちの予防原則に立った健康調査に後ろ向き・・・・・・「現実を見て下さい」・・・・・・増える甲状腺がん・・・・・・また同じ過ちを」

■⑨『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 武藤類子氏【これでも罪を問わないのか】。明石昇二郎さん【東電関係者の「不起訴」理由 検察は、いかに原子力ムラに丸め込まれたか】、「告発人として主任検事から詳細な説明を受けていた筆者が、その詳細を暴露する・・・・・・御用電力学者の言い訳を鵜呑み・・・・・・原子力ムラにしてやられた検察」

■⑩『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 明石昇二郎木野龍逸畠山理仁さん【「悪の凡庸さ」は彼らにあてはまるのか 勝俣・武黒・武藤の各氏 起訴相当議決の3被疑者はいま】、「自らに下された「起訴相当」の議決をどのように受け止めているのか。心境を尋ねるべく、・・・・・・3人の自宅を訪ねた」

■⑪『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 浅野健一さん【戦前回帰の安倍政治変えよう 小沢一郎氏大阪公演】、「私は・・・・・・「2009年3月に『読売新聞』のスクープで始まり・・・・・・陸山会事件捜査は世界の歴史でも例を見ない検察の政治介入だった。検察と記者クラブメディアが小沢首相実現を潰した」と述べた」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/3db2bee7c3b33adb5aa8d5dc1f627158

■⑫『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 青木理さん【司法を正す第10回 北海道警に裏金を認めさせた記者高田昌幸氏 記者は、警察ではなく読者に信頼されるべき】、「調査報道史に残る金字塔・・・・・・「サツ回り」を廃止せよ」。フリーランスを経て、現在は高知新聞の記者に。「「発表もの」しか書くなと言う「道警裏金追及」地裁判決」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/daa3231ad45f0192d319b047a2c593bf

■⑬『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 太田昌国氏【死刑囚が描いた絵をみたことがありますか】、「「死刑廃止のための大道寺幸子基金」が運営する死刑囚表現展・・・・・・「表現」に市井の人が接する機会は、簡単には得られない」。「一貫して無実を主張している」林眞須美さんら

■⑭『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 【佐高信の新・政経外科第13回/前略 池上彰殿】、「居丈高に『朝日』を叩く『読売』や『産経』は、では過去に同じような間違いをしでかしていないのか?・・・・・・私は寡聞にして、『読売』や『産経』がこうした記事を載せたことを謝罪したり・・・・・・」

■⑮『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 【佐高信の新・政経外科第13回/前略 池上彰殿】、「・・・・・・訂正したりしたという話を聞いたことがありません。両紙とも『朝日』に謝罪や訂正を迫るなら、まず、北朝鮮礼賛記事を取り消すことから始めなければならないのではありませんか。・・・・・・」

■⑯『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 【佐高信の新・政経外科第13回/前略 池上彰殿】、「私が池上さんに大きなクエスチョンマークをつけるのは特定秘密保護法にはっきりと反対の意思表示をしなかったこと・・・・・・TPPに賛成・・・・・・NHK的な「公正中立」を装いながら、結局は、体制寄りの本音を出すのですね」

■⑰『週刊金曜日』(2014年9月19日、1008号) / 村上朝子氏【『金曜日』で逢いましょう/日印原子力協定の行方を憂慮する反原発のインド人映画監督】、「元原発研究者が、福島原発よりも古いタラブール原発の問題を取材し、映画化。・・・・・・映画『ハイ・パワー 大いなる力』」。原発輸出反対(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/66f5a2196a4f81beca19c6d209106909
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●「食を哲学する」 『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号)についてのつぶやき

2013年12月23日 00時00分20秒 | Weblog


週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号)について、最近のつぶやきから、AS@ActSludge。

 今週のブログ主のお薦めは、佐高信さん【抵抗人名録27 西山太吉】と宇都宮健児さん【風速計/あきらめない!!】。

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■①『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 「食を哲学する」。北方農夫人氏【消費者を〝脅す〟東電の再建計画 一六年までに全七基を再稼働】。企業倫理とか環境倫理とか東電には無いのかね? 正気じゃない(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/0dd82d07a543e6525d6e982763ebc6e1

■②『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 満田夏花氏【特定秘密保護法の公布に官邸前で抗議の声続々 民主主義を踏みにじるな!】、「安倍首相・・あなたはウソつきだ。・・野党の質問に答えて、『原発は安全だ』といって何の対策も取らなかった。そんなあなたを誰が信じますか?」

■③『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 片岡健氏【カレー事件の林眞須美さん 前例なき国賠を提訴】、「大阪拘置所に接見を違法に制限・・安田好弘弁護士」。和歌山毒カレー冤罪事件(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/2d453d51ac165ff784049f039ae886b4

■④『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 中村ゆうき氏【地元民が原子力規制委に質問状 問題山積の東海村】、「施設を所有するJCOは周辺住民に焼却炉着工に反対する者はいないというが、それは間違い」。原子力「推進」委員会(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/976cc2457ab8d171c1c6f19c9a356899

■⑤『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 宇都宮健児さん【風速計/あきらめない!!】、「・・秘密保護法の廃止を求める運動を国家安全保障基本法とと集団的自衛権行使容認に反対する運動につなげていく必要」。ウソつき達に一泡吹かせたい(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/8fd0e08da47a39ece1e0e2455b85d940

■⑥『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 野中大樹氏【辺野古強制へと自民党本部が策動する名護市長選まであと1ヵ月 基地利権派たちのもくろみと大誤算】、「基地容認派がふたり立候補してしまう天変地異が起きた名護市長選・・」。『戦場の村』(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/fd058d8517aa8e656646c79d09fa4ab7

■⑦『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 【村岡和博の政治時評/「日本を取り戻す」と叫ぶ安倍首相とその政権から「民主主義を取り戻す」年に】、「・・秘密保護法への抗議運動は思想・政策を越えた一点共闘が可能であることを示した」。最悪法(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/8fd0e08da47a39ece1e0e2455b85d940

■⑧『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 俵義文さん【歴史をわい曲する教科書の「国定」化 異例づくしの文部科学省の検定基準改定案】、「・・事実上の「国定教科書」化の問題点を・・」。愛国を無理強いして何になる?(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/8adfc28e3a834d65c8088d41cd74d9cb

■⑨『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 【新-わたしと憲法シリーズ 日野範之 宗教者の戦争責任を自覚する真宗大谷派前僧侶】、「「殺さない、殺させない」は各宗教の共通の教えであり それは九条の精神にも通じる」。戦争できる狂った国へ(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/28f2776c14d6c2da79a0c4220d510a79

■⑩『週刊金曜日』(12月20日・1月3日合併号、973号) / 佐高信さん【抵抗人名録27 西山太吉】、「西山の妻、啓子・・西山は・・仕方ないというふうに唇を開いて、「あり・・・」・・「がと」と付け加えた。精一杯の表現だったという」。ウソをつく人々に翻弄(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/4050be4c99dbf746cd59c296f5c40688
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●和歌山毒カレー冤罪事件: 「正しい」鑑定結果が冤罪を生んだ

2013年09月03日 00時00分13秒 | Weblog


神保哲生さんのvideonews.comの記事【和歌山カレー事件の鑑定ミスはなぜ起きたか】(http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/002926.php)。

   『●和歌山毒カレー冤罪事件: 安田好弘弁護士と林眞須美被告

 和歌山毒カレー冤罪事件の三つのヒ素試料が異なることについては、上記で既報の通り。ようやく今回の記事で背景が理解できた。当初の鑑定結果は「正しく」、「誤っていはいなかった」のだ。検察の鑑定依頼の内容に不備があった訳である。誤った鑑定依頼内容に、正しい鑑定結果が報告され、裁判所は見抜けず、マスコミはそれに便乗して冤罪を生み出してしまった。

 したがって、この冤罪を晴らす「カギ」となる人物は東京理科大学の中井泉教授かも。当初の鑑定者・中井教授が、自身の誤解(検察に誤解させられた)と検察の依頼内容の(意識的?)不備について、さらなる踏み込んだ証言・提言をしてくれるかどうか?

   『●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と
                     和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度
   『●『創(2009年7月号)』
   『●『創(2009年6月号)』(2/2)
   『●『冤罪File(No.06、2009年6月号)』

 それにしても、安田好弘弁護士の主張からすでに3、4ヶ月・・・・・・この重要な主張や鑑定結果についてマスコミは沈黙を続けているように見えるが?

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http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/002926.php

ニュース・コメンタリー (2013年08月31日)
和歌山カレー事件の鑑定ミスはなぜ起きたか
報告:神保哲生

 事件に使われたヒ素の再鑑定によって、既に死刑が確定している和歌山カレー事件に冤罪の疑いが出てきていることは、4月にこの番組で報道した(マル激トーク・オン・ディマンド 第628回・2013年04月27日「やはり和歌山カレー事件は冤罪だったのか」)ところだが、このほどなぜそのような問題が起きてしまったのかがより鮮明になってきたので、改めて報告したい。

 夏祭りの炊き出しで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、4人の死者と63人の負傷者を出した「和歌山カレー事件」は、林眞須美被告が否認・黙秘を続ける中、2009年4月に最高裁で死刑が確定している。4月の番組では、その裁判で林氏の犯行と断定される上での決定的な証拠となっていた「亜ヒ酸の鑑定」において、新たな事実が明らかになったことを、林氏の弁護人である安田好弘弁護士をスタジオに招いて、お伝えした。
 その内容はこんなものだった。この事件では犯行に使われたとみられる現場付近で見つかった紙コップに付着していたヒ素(亜ヒ酸)と、林氏宅の台所のプラスチック容器についていたヒ素、そしてカレーに混入されたヒ素を鑑定にかけた結果、その組成が同じものだったことがわかり、それが林氏の犯行と断定する上での決定的な、そして唯一の物証となっていた。判決でもこの「組成が同じものだった」とされていたが、京都大学の河合潤教授が、鑑定のデータを再評価するために不純物をより詳細に調べた結果、実際はこの3つの資料の間には重大な差違があることがわかった。
 犯行が林氏によるものとした最高裁の判断は、林氏以外にヒ素を入れられる者がいなかった、氏が鍋の中を覗くなど怪しい動きをしていたといった、状況証拠やあやふやな証言に基づくものが多く、3つのヒ素が一致したとする鑑定結果は林氏の犯行と断定する上で決定的な意味を持っていた

 今回の取材で明らかになった問題は、東京理科大学の中井泉教授による当初の鑑定が間違っていたのではなく、そもそも検察が依頼した鑑定の依頼内容とその依頼に対する中井教授の理解そしてそれが報道や裁判で誤った形で一人歩きしていってしまったということだった。中井氏は、依頼された鑑定の内容は、林氏自宅のヒ素と紙コップのヒ素とカレーのヒ素の3つにどれだけの差違があるかを証明することではなかったと、雑誌「現代化学」の中で述べている。中井氏は検察から依頼された鑑定の内容を、3つの資料の差違を見つけることではなく、3つの資料を含む林氏の周辺にあったヒ素のすべてが同じ輸入業者の手を経て入ってきたものだったかどうかを調べることだと理解し、それを鑑定で確認したに過ぎなかったという。
 目的をそのように解釈した中井教授は、有罪の決め手となった3つの資料の差違を詳細に分析はせず、3つの資料を含む10の資料のヒ素がすべて同じ起源を持つものであったことを確認するための鑑定しか行っていなかった。しかし、実際に林氏が自宅にあったヒ素を紙コップでカレーに入れたことを裏付けようというのであれば、その3つのヒ素の起源が同じであることを証明しただけでは明らかに不十分である。その3つがまったく同じものでなければならない

 弁護団から鑑定結果の再評価を依頼された河合教授がその点を疑問に思い、3つの資料について不純物を含めてより詳細にデータを再評価したところ、そこには大きな差違があることがわかったのだという。

 どうやら問題の本質は中井氏の鑑定そのものにあったわけではなく、検察から依頼された鑑定内容に対する中井氏の解釈と、中井氏の鑑定結果は3つの証拠が同じものであったことを証明しているわけではないにもかかわらず、あたかもそのような報道がなされ、実際に裁判でもそのような解釈が行われていたところにあるようだ。
 和歌山地検から中井氏に送られた鑑定嘱託書には、中国の鉱山で採掘された亜ヒ酸の輸入ルートに沿って1から10まで資料に番号が振られ、その1から10までのヒ素の「異同識別をして欲しいとしか書かれていなかった。これを受けて中井氏は、1から10までのすべてが同じ起源の亜ヒ酸であると判断できるとの鑑定結果を出した。しかし、これは林氏の自宅にあったヒ素と紙コップに付着していたヒ素とカレーに入っていたヒ素が、不純物まで含めてまったく同じの組成を持つものであり、よって林真須美氏がそのコップを使って自宅に保管していたヒ素をカレーに入れたといする仮説を裏付けるものとはなり得ない。河合教授は論文の中で、それらは「別のものであったと結論できる」としている。

 河合教授は8月26日に京都の龍谷大学で開かれたシンポジウムで、鑑定嘱託書に鑑定の目的が書かれていなかったために、中井氏が鑑定すべき内容を誤解してしまったとの見方を示した。何の目的で鑑定を行うかによって鑑定の内容は当然変わってくるからだ。すべてのヒ素が同起源であることを証明するための鑑定と、その中の3つが不純物を含めて全く同じものだったかどうかを確認するための鑑定では、当然鑑定の中身は変わってくる。後者を証明するためには、不純物を含め、より詳細な分析が必要となる。林氏を有罪にするための証拠集めのための鑑定と、無罪の可能性を探るための鑑定の違いと、言い換えることもできるかもしれない。

 長らく自白偏重主義がまかり通ってきた日本の刑事司法の下では、捜査当局は確かな物的証拠の積み上げにより被疑者の犯行を立証する手法に疎いことが次第に明らかになってきている。取調室内で当たり前のように横行する自白の誘導や強要などを隠したいがために、検察は取り調べの全面可視化に頑なに抵抗しているようにも見える。
 今回の事件でも、鑑定結果が林氏の犯行を裏付ける確たる証拠にはならなくても、メディアがそれをもっともらしく報道すれば、被疑者もいずれは自白するだろうし、裁判所も納得してくれるだろうという甘い計算があったのではないか。
 しかし、林氏が最後まで否認を貫いたために、中井氏の鑑定結果の証拠としての有効性が問われる事態となった。ところが、今回の鑑定はあまりにも専門性が高いものだったために、それが林氏の犯行を証明する上で不十分な内容のものであることが、別の専門家である河合教授が再評価をするまでわからなかった。これが今回の問題の顛末ではないか。
 こうなると次なる課題は再審である。安田弁護士は最高裁判決の直後から林氏の裁判の再審を求めているが、今回明らかになったヒ素鑑定の結果を追加した再審補充書を早速提出したという。確かに、今回明らかになった新事実を前にすると、最高裁が判決で述べているような「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」と言えるかは非常に疑わしい唯一の物証だった「ヒ素の同一性」が崩れてしまったのだ

 しかし、日本では再審の壁はとても厚い。日本の司法界の構造として、裁判官が検察の訴えを退けてまで無罪判決を下すのには相当な重圧がかかるからだ。
 またこの事件は元々メディアが主導した劇場型事件の性格も有していた。捜査当局が動く前にメディアが林夫妻の自宅を取り囲み、当初から夫妻がカレー事件の犯人であるかのような報道が乱れ飛んでいた。そのため、ここに来て、冤罪の可能性が現実のものとなってきているにもかかわらず、この問題に対するマスメディアの動きは至って鈍い事実上自分たちが犯人に仕立て上げ、最終的に死刑判決まで受けた人物が、実は無罪だったかもしれないというニュースを、その可能性段階で報ずるのは、難しいと見える。
 和歌山カレー事件で死刑判決の決め手となった鑑定結果をめぐり見えてきた日本の刑事司法の根本的な問題点と、今回の問題の中に、遠隔操作ウィルス事件とも共通した「司法と高度技術」の問題が見て取れる点などについて、ジャーナリストの神保哲生の報告を受けて、神保と社会学者の宮台真司が議論した。


関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第628回(2013年04月27日)
やはり和歌山カレー事件は冤罪だったのか
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林眞須美死刑囚主任弁護人)

マル激トーク・オン・ディマンド 第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林真須美被告主任弁護人)

インタビューズ (2009年04月25日)
「ヒ素は自分で呑んだ。真須美はやっていない」
真須美被告の夫・健治さんが最高裁判決の不当性を訴え


ニュース・コメンタリー (2013年07月13日)
遠隔操作ウィルス事件続報
検察の証拠には「拍子抜けするほど中身がなかった」
遠隔操作ウィルス事件・佐藤博史弁護士記者会見
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●和歌山毒カレー冤罪事件: 安田好弘弁護士と林眞須美被告

2013年05月15日 00時00分05秒 | Weblog


神保哲生さんのvideonews.comの記事(http://www.videonews.com/on-demand/621630/002750.php)。

 林眞須美林真須美)氏に関して、警察・検察・裁判所・マスコミが一体となって「「目撃」証言も非常に恣意的、曖昧であるにもかかわらず、そんないい加減な「状況証拠」だけで」死刑にしようとしている。

   『●『冤罪File(No.06、2009年6月号)』
   『●『創(2009年6月号)』(2/2)
   『●『創(2009年7月号)』
   『●『ドキュメント死刑囚』読了(1/2)
   『●『創(2009年11月号)』読了
   『●『創(2010年4・5月号)』読了
   『●『創(2010年8月号)』読了
   『●『創(2010年9・10月号)』読了
   『●冤罪(その1/2): どんな力学が働いているのか?
   『●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と
                   和和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度

 一方、元大阪〝ト〟知事に罵声を浴びせられ、マスコミから死刑廃止論者と烙印を押され、警察や検察に忌み嫌われている『死刑弁護人安田好弘さん。

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』:
         バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(1/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(2/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(3/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(4/4)
   『●『特捜検察の闇』読了(1/3)
   『●『だまされることの責任』読了(1/3)
   『●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評
   『●政治的なトドメかな・・・・・・マスコミや裁判所によるこんなことが許されていいの?

 唯一と言っても良い証拠らしきものも揺らいでいるらしい。
 「カレーにヒ素を混入するために使われたとされる紙コップに付着していたヒ素と林さん宅にあったヒ素をより詳細に検証した結果、両者の間には明らかに異なる不純物が見つかったという。河合教授は両者を「別のものであったと結論できる」としている」。
 「しかし、日本では再審の壁はとても厚い。日本の司法界の構造として、裁判官が検察の訴えを退けてまで無罪判決を下すのには相当な重圧がかかるからだ。/今回の新事実を、司法はどう判断するのか」? 司法の哀しい状況を見れば、再審開始など望めそうもない・・・・・・。冤罪被告を死刑にするようなことがあれば、・・・・・・裁判所やマスコミの責任はあまりにも大きい。

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http://www.videonews.com/on-demand/621630/002750.php

マル激トーク・オン・ディマンド 第628回(2013年04月27日)
やはり和歌山カレー事件は冤罪だったのか
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林眞須美死刑囚主任弁護人)

 和歌山カレー事件で新たな事実が明らかになった。もしかすると、これは決定的な新証拠になるかもしれない。
 夏祭りの炊き出しで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、4人の死者と63人の負傷者を出した「和歌山カレー事件」は、林眞須美被告が否認・黙秘を続ける中、2009年4月に最高裁で死刑が確定している。今回、その死刑判決の重要な判断材料の一つだった「亜ヒ酸の鑑定」において、新たな事実が明らかになったのだ。
 今回問題となっている証拠は、犯行に使われたとみられる紙コップに付着していたヒ素(亜ヒ酸)と、林氏宅で見つかったヒ素とが同じ組成のものだったとする鑑定結果。林真須美氏の夫の健治さんがシロアリ駆除の仕事をしていたことから、林氏の自宅には普段からヒ素が保管されていたという。この鑑定結果は林真須美氏を有罪とする上で最も重要な証拠の一つだった。
 亜ヒ酸の鑑定については、当時最先端の大規模研究施設「SPring-8(スプリング・エイト)」を使った鑑定によって、科学な裏付けがなされたと考えられてきたが、今回、それを否定する新たな検証論文が京都大学の河合潤教授によって発表された。河合教授が『X線分析の進歩44号』に発表した論文によると、カレーにヒ素を混入するために使われたとされる紙コップに付着していたヒ素と林さん宅にあったヒ素をより詳細に検証した結果、両者の間には明らかに異なる不純物が見つかったという。河合教授は両者を「別のものであったと結論できる」としている。
 この事件はもともと物証に乏しく、犯行に至った動機も解明されていない。林氏の弁護人を務める安田好弘弁護士によると、主な間接証拠も詳細に検討していくと必ずしも信頼性の高いものばかりではないという。安田氏はこの事件は最初から警察による事件の見立てに間違いがあったのではないかと言う。そして、メディアによるセンセーショナルな報道などもあって、捜査当局もそれを修正できないまま殺人事件として突っ走ってしまったとの見方を示す。
 安田弁護士は最高裁判決の直後から林氏の裁判の再審を求めているが、今回明らかになったヒ素鑑定の結果を追加した再審補充書を早速提出したという。確かに、今回明らかになった新事実を前にすると、最高裁が判決で述べているような「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に(林さんが犯人であることは)証明されている」と言えるのかどうかは明らかに疑わしくなっているように見える。しかし、日本では再審の壁はとても厚い。日本の司法界の構造として、裁判官が検察の訴えを退けてまで無罪判決を下すのには相当な重圧がかかるからだ。
 今回の新事実を、司法はどう判断するのか。事件の新事実をもとに、再審の問題、司法の裏側などについて、ゲストの安田好弘弁護士とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。


関連番組

マル激トーク・オン・ディマンド 第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林真須美被告主任弁護人)

インタビューズ (2013年04月27日)
裁判所はなぜ決断できないのか
インタビュー:木谷明氏(弁護士)

インタビューズ (2009年04月25日)
「ヒ素は自分で呑んだ。真須美はやっていない」
真須美被告の夫・健治さんが最高裁判決の不当性を訴え



プロフィール


安田 好弘やすだ よしひろ
(弁護士・林眞須美死刑囚主任弁護人)
1947年兵庫県生まれ。75年一橋大学法学部卒業。77年司法試験合格、80年司法修習修了。オウム真理教麻原彰晃被告の主任弁護人、山口県母子殺害事件・被告少年の主任弁護人、和歌山カレー事件・林真須美被告の主任弁護人などを務める。著書に『死刑弁護人生きるという権利』など。
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●冤罪(その1/2): どんな力学が働いているのか?

2013年02月09日 01時00分16秒 | Weblog


山岡俊介さんのアクセスジャーナルの記事(http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/、2012年12月29日)で、和歌山毒カレー事件の林眞須美(林真須美)氏について。魚住昭さんの『魚の目』(http://uonome.jp/)に出ていた守大助氏の冤罪に関する一連の記事(http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2677http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2692http://uonome.jp/category/article/uozumi-wakimichi)で、こちらはまだ継続中。

 和歌山毒カレー事件林眞須美林真須美)氏にしろ、仙台の筋弛緩剤混入事件守大助氏にしろ、なぜ有罪が確定しているのか、理解できない。真面目に裁判官は審議しているのか? 妙な力学か、妙な思い込みか? 分析を委託された大阪府警科捜研の酷さ? 守大助氏についての冤罪の背景は魚住昭さんの記事で、今後、明らかになってくると思う。

   『●『週刊金曜日』(2012年10月19日、916号)についてのつぶやき
   『●冤罪: 筋弛緩剤事件の守大助氏
   『●兵庫県警調書捏造など諸々についてのつぶやき

 和歌山毒カレー事件事件の無茶苦茶ぶりは以下の通り。

   『●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と
                     和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度
   『●『創(2009年7月号)』
   『●『創(2009年6月号)』(2/2)
   『●『冤罪File(No.06、2009年6月号)』

  「日本の司法の歴史は、絶え間ない冤罪の歴史」であり、それをそれを修正する力があまりに弱い。

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http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/、2012年12月29日】

2012/12/29
<記事紹介>「和歌山カレー事件に新展開!?  鑑定担当者が『証拠捏造』で退職」(『週刊朝日』1月4・11合併号)
執筆者: Yamaoka (6:40 pm)

 自治会の夏祭りに出されたカレーを食べた住民4名が死去したこの事件、林眞須美(51)の死刑が確定している(再審請求中)が、未だ謎が多いのも事実。
 林死刑囚は一貫して無罪を主張しているが、その最大の証拠とされるヒ素の鑑定を担当した科学捜査研究所の主任男性研究員が12月17日、証拠品の鑑定結果を捏造したとして書類送検されると共に、懲戒3カ月の停職処分を受け、同時に、依願退職したと『週刊朝日』が報じている。
 誤解のないように断っておくが、書類送検などの対象になったのは2010年5月以降の7件で、和歌山カレー事件のものは含まれていない。
 しかし『週刊朝日』は、この研究員は一連の捜査で、カレー事件の捜査時期に当たる98年から03年にかけての19件でも捏造があったことが発覚しているとして疑義を呈している。

・・・・・・。
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http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2677

わき道をゆく第11回
2013 年 1 月 10 日 魚住 昭

 仙台の筋弛緩剤混入事件を読者は覚えておられるだろうか。
 00年ごろ、仙台市の北陵クリニックで点滴溶液に筋弛緩剤が混入され、入院患者ら十数人の容体が相次いで急変したとされる事件である。

 宮城県警は01年1月初め、北陵クリニックにひと月前まで准看護師として勤務していた守大助氏(41)を逮捕。仙台地検は5人の患者(うち1人死亡・1人意識不明の重体)に対する殺人・殺人未遂罪で守氏を起訴した。
 この間、テレビはもちろん新聞も「背筋凍る“恐怖の点滴”」「20人近く容体急変 うち10人が死亡」などと大々的な報道を繰り返し、前代未聞の病院内無差別殺人に日本中が騒然となった。
 守氏は逮捕当日、犯行を認める調書に署名し、「待遇に不満があった 」「副院長を困らせたかった」と動機も供述したとされるが、3日後から全面否認に転じた。
 彼は裁判で一貫して「僕はやってない」と訴えたが、1審の仙台地裁、2審の仙台高裁ともに有罪を認定。08年2月、最高裁の上告棄却で無期懲役が確定した。
 それから4年後の今年2月、守氏の弁護団は新証拠を携えて仙台地裁に再審請求した。弁護団長の阿部泰雄さん(仙台弁護士会)は「この再審は勝てる。私たちが新たに出した科学的データで守君の無実を証明できる」と語る。
 もともとこの事件には不審な点が多かった。犯行の目撃者がいない。動機もはっきりしない。そして何より、患者の血液や点滴液から筋弛緩剤を検出したとする鑑定に重大な疑問があった。
 私は再審請求書を読んで 強い説得力を感じた。新証拠には有罪判決を揺るがす力がある。日本の司法の歴史は、絶え間ない冤罪の歴史だ。今も獄中で身に覚えのない罪科に呻吟する人が数多いはずだ。筋弛緩剤事件の真相を問い直す作業も無意味ではないだろう。
 何はともあれ新証拠の内容をご説明したい。が、その前に裁判で浮上した鑑定の疑問点を2つ挙げておこう。1つは筋弛緩剤を点滴ボトルに混入させるやりかたで果たして人を死に至らしめることができるのかという疑問だ。
 筋弛緩剤(マスキュラックス)は手術時などに静脈注射するもので点滴投与を想定していない。そのうえすぐに血中から排泄される(半減期11分)から、点滴でゆっくり投与した場合に効くかどうか、実際にはわからない。仮に効くとしても、膨大な量が必要だと専門家は指摘する。
 だが、裁判所は東北大名誉教授の「効くと思いますの証言だけで効果を認定した。本来なら効果が出るのに必要な量と時間の科学的立証がなされるべきだろう。
 もう1つの疑問点は鑑定のやり方そのものだ。宮城県警の依頼を受けた大阪府警の科学捜査研究所は「患者の血液や点滴液からマスキュラックスの成分・ベクロニウムが検出された」と鑑定した。
 その根拠はベクロニウムの標品(標準サンプル)と、血液・点滴液を比較分析した結果、どちらからも同じm/z258イオンが検出されたからだという。
 だが、専門家たちはベクロニウムからm/z258イオンが検出されるはずがないと断言する。科捜研の鑑定は科学の常識からかけ離れたも のだというのである。
 そんな時は血液や点滴液の残りを再鑑定すればシロクロがはっきりする。だが、科捜研は鑑定で全量を使い切って再鑑定をできなくしていた。血液や点滴液は鑑定に必要な量の何十倍、何百倍とあったにもかかわらずである。捜査の常識では考えられないことだ。
 弁護団は2審でベクロニウム標品の鑑定を求めた。m/z258イオンが検出されないことを立証するためだ。だが、裁判長はそれを却下し、わずか4回の公判を開いただけで結審させてしまった。
 今回の再審請求で弁護団が出した新証拠の柱の1つが、そのベクロニウム標品の鑑定結果である。
 志田保夫・前東京薬科大薬学部中央分析センター教授に依頼して実験してもらったところ、どういう条件下でもベク ロニウムからm/z258イオンが検出されることはあり得ないという結論が出た。
 つまり守氏の犯行の決定的証拠とされた鑑定結果が誤っていることが明らかになったのである。
 新証拠の2つ目は、00年10月末、北陵クリニックで点滴後に意識不明になった小学6年の女児についての長崎大医歯薬学総合研究科・池田正行教授の意見書だ。
 池田教授は女児のカルテや母親の供述などを詳しく分析した結果「容体急変の原因は筋弛緩剤の投与ではなく、ミトコンドリア病メラスである」と診断した。
 ミトコンドリア病は、細胞中のDNAの異変によって起きる急性脳症で、中でもメラスは脳卒中のような症状などを伴う。ただこの病気が知られるようになったのは90年代以降のことで、01年当時はまだ北陵クリニックや、女児が転送された仙台市立病院では知られてなかったという。
 女児は腹痛を訴え、嘔吐を繰り返したため北陵クリニックで受診した。その後、「物が二重に見える」と言って目をパチパチさせ、ろれつの回らないしゃべり方をするようになった。そして頭を左右に振り、手足の痙攣を起こし、脈が遅くなって心肺停止状態になった。
 これらの症状を全部説明できるのはミトコンドリア病メラスしかなく、目のパチパチや痙攣、心肺停止などはマスキュラックスの薬効と明らかに矛盾するという。
 池田教授はこの女児の症状について医師1000人にアンケート調査した。その結果、7割近くがメラスと答え、筋弛緩剤と回答したのはわずか3人だったという。
 阿部弁護団長は「北陵クリニックは当時、赤字穴埋めのため高齢者や重症患者を次々と受け入れていた。そのうえ救命措置ができる医師が辞めたので、容体が急変する患者が増えたのは当然のこと。その責任をすべて守君にかぶせた」と指摘し「この事件は、事件性のない冤罪なんです」と言った。
 私は千葉刑務所で服役中の守氏に会おうと思った。「無実の守大助さんを支援する首都圏の会」事務局長の藤沢顕卯さん(39)に頼み込んで手配してもらった。
 当日朝、JR千葉駅に国民救援会千葉県本部の岸田郁さん(42)が車で迎えに来てくれた。約10分で千葉刑務所に着き、古い煉瓦造りの門をくぐって中に入った。守氏との面会の模様は次号でお伝えしたい。(了)

(編集者注・これは週刊現代連載「わき道をゆく」の再録です。

参照文献・「人権と報道 連絡会ニュース第280号」「無実の守さんを支援する首都圏の会」サイト)
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http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2692

わき道をゆく第12回 
北陵クリニック残影
2013 年 1 月 18 日 魚住 昭

 千葉刑務所の面会室はとても狭かった。縦横1・5㍍前後のスペースしかない。
 そこに日本国民救援会千葉県本部の岸田郁さん(42)と岡山県本部の中元輝夫さん(75)と私が入るとすぐ、透明なアクリル板の向こうに元准看護師の守大助氏(41)が姿を見せた。
 緑色のズボンに灰緑色の作業服。頭髪は黒々としたスポーツ刈りで、顎の線がやや尖っている。
 十数年前の写真と比べると、痩せて引き締まったようだ。
「どう、元気?」と、岸田さんがまず声をかけた。
「ええ、元気です」。彼は椅子に腰を降ろしながら笑顔で答えた。
 顔は青白いが、声には張りがある。笑うと目尻に皺が何本か寄る。
 彼が仙台筋弛緩剤事件で逮捕されたのは01年のことだ。法廷で無 実を訴えたが、08年に無期懲役判決が確定した。現在、新証拠をもとに再審請求中である。
 許された面会時間は20分。しかも今回の面会の主役は岡山から来た中元さんだから、私は邪魔にならぬよう、彼らの会話に耳を傾け、守氏を観察することにした。
 中元さんが「いま一番やってほしいことは何ですか」と聞いた。
「全国の人たちに真実を広めてほしいんです。僕はやっていない。やっていないからこうして皆さんに会えるんです。やっていたら(後ろめたくて)会えませんよ」
 守氏は少し早口で言った。だが、声に刺々しさや苛立ちは感じられない。滑らかで落ち着きがあった。
 中元さんは「(新証拠で)冤罪が明白になったのに、日弁連はまだ守君の再審支援を決定していない。 対応が遅すぎる」と憤った。
 日弁連の支援は再審の成否にも影響する。いつになったら決まるのかと、守氏も気が気ではないだろうと思っていたら、違った。
「日弁連もたくさん冤罪事件を抱えて大変なんでしょう。それに日弁連の支援なしで再審開始決定が出た事件もありますから。もちろん僕は早くここから出たい。だけど、焦らず、ゆっくりやろうと自分に言い聞かせているんです」
 と、中元さんをなだめるように言った。優しげな笑顔を時折浮かべながら、相手の目をまっすぐに見る。これが、あの「恐怖の点滴男」だろうか?
 事件当時の集中豪雨のようなマスコミ報道でつくられたイメージと、目の前に座っている生身の人間との落差が大きすぎて、どうにも1つに重ならない。
 制 限時間が終わりに近づいたころ、彼は私の方を見て、
「いちばん悔しいのは、検察が証拠隠しをしていることです」
 と言い、こうつづけた。
東電OL殺害事件では被害者の爪のDNA鑑定をして最終的にマイナリさんの無実が証明され、検察もようやく無罪主張せざるを得なくなったでしょう。僕の事件でも検察が証拠を全部開示するよう裁判所が命令してほしい。そうすれば真実が明らかになる」
 確かにこの事件には「証拠隠しと疑いたくなることがいくつもある
 その1つは、守氏が犯行に使ったとされる筋弛緩剤の空アンプル(検察は19本あると主張)の開示を検察が拒んだことだ。替わりに出してきたのは8本、6本、5本に分けて撮った写真で、しかもロット番号が見えない角度から撮影されている。これでは本当に19本あるかどうかも分からない。
 そもそも裁判で犯行に使われた凶器(空アンプル)を開示しないことが許されていいはずがない
 もっとひどいのは鑑定である。北陵クリニックで容体が急変した患者5人の血液や尿、点滴液の鑑定は、宮城県警の依頼で大阪府警の科学捜査研究所が行った。
 科捜研は筋弛緩剤の成分・ベクロニウムの標準サンプルと、患者の点滴液や血液などを比較分析した結果、双方から同じm/z258イオンが検出されたから、点滴液に筋弛緩剤が混入されたのは間違いないと結論づけた。
 だが、法廷に証拠として提出されたのは、結論だけを書いた鑑定書のみだ。通常ならその結論に至るまでの様々な分析データを記録している はずの実験ノートは作ってない(科捜研)の一言で提出されずに終わってしまった。
 本当にまっとうな鑑定が行われたのか。意識不明の重体になった小学6年生(当時)女児から1週間後に採取した尿の例を見てみよう。科捜研は尿から1㍉㍑あたり20・8ナノグラムの高濃度でベクロニウムが検出されたと言う。
 しかしベクロニウムは投与後24時間以内に尿中に排泄されるから、7日後に20・8ナノグラムもの高濃度で尿中から検出されることは科学的にあり得ない。それだけで鑑定の信用性は瓦解する。
 しかも科捜研は患者らの血液など全量を使い切って再鑑定を不能にしていた。これは「犯罪捜査規範」186条の「鑑識に当たっては、なるべくその全部を用いることなく一部をもって行い、残部は保存しておく等再鑑識のための考慮を払わなければならない」という規定を無視した行為である。
 さらに今回の再審請求で、ベクロニウムの標準サンプルからm/z258イオンが検出されたという科捜研鑑定の前提そのものが誤っていたことが立証された。
 なぜ、こんなデタラメな鑑定が行われたのか。弁護側の意見書を書いた長崎大の池田正行教授は「司法事故を考える」という自らのサイトでこう指摘している。
 いま世界標準となっているベクロニウム検出法は事件当時、確立されておらず、まともな鑑定は不可能だった。そのうえ試料の保存条件の悪さなど悪条件が重なり、「結局彼ら(=科捜研)はそれまでに自分たちで手探りで組み立てた『独自の方法』(略)しかなく、自分たちの方法でも実験条件を検討する十分な時間さえ与えられずに、とにかく結果を出さざるを得ない立場に追い込まれて、パニックになり、後でどうにも説明できない報告を出してしまった
 池田教授は5人の患者の症状から見て「ベクロニウム中毒」は誤診だとはっきり言い切っている
 だとしたら、北陵クリニックで患者の容体急変が多発したのはなぜか。あるいは裁判所がそれほど明白な欠陥鑑定を根拠に守氏に有罪を言い渡したのはなぜか。その理由をきちんと示してくれと、読者は言われるだろう。
 守氏に面会して数日後、私は仙台市郊外の北陵クリニック(01年3月閉鎖)の元敷地に立った。
 JR仙台駅から北北西に約10㎞。閑静な住宅街の外れで、周囲に林や田畑が広がっ ている。
 ここに91年、ベッド数19床の北陵クリニックが開業した。その経緯まで遡ると、事件の謎を解くカギが1つ見えてくる。(了)

(編集者注・これは週刊現代の連載「わき道をゆく」の再録です)
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http://uonome.jp/category/article/uozumi-wakimichi

わき道をゆく第13回 
Back to 91
2013 年 2 月 6 日魚住 昭

 仙台・筋弛緩剤事件の真相を探る旅をつづけている。
 今回は、事件の舞台となった北陵クリニック(仙台市泉区)の生い立ちをたどってみたい。
 クリニックの生みの親は、FES(機能的電気刺激)療法の権威として知られた東北大医学部のH教授(当時)である。
 FESは、脳卒中や脊髄損傷で動かなくなった手足に細い針金状の電極を埋め込み、そこにコンピューター制御の電気刺激を与えることで手足が再び動くようになるという“夢の治療法”だった。
 H教授はそのFES研究・開発の母体となる世界初の医療機関として91年、北陵クリニックを開設した。地域医療にも応じられるよう小児科、内科、整形外科などの診療科目も設けた。教授は国家公務員なので表には出ず、代わりに妻のI子医師(小児科)を副院長に据えて経営にあたった。
 FES治療の研究は98年、科学技術庁(当時)が進めていた「地域結集型共同研究事業」に認定され、国と県から巨額の補助金を得た。事業が成果を挙げれば、新産業が創出されるというので地元銀行・電力会社・医師会などの名士たちが病院理事に名を連ねた。
 ところが、地元の期待を集めたFES療法の開発はうまくいかなかった。保険が効かないので患者は1人200万円もの治療費を負担し、全身麻酔の手術にも耐えなければならない。
 そのうえ電極を埋め込んだ患部の衛生管理が難しく、治療効果もあまり思わしくなかった。このため電極の抜去を希望する患者が相次ぎ、当初は年間50例ほどあった手術数も年々減っていった。
 それに加えてFES以外の一般患者の数も多くなかったので、クリニックの経営は悪化した。97年8月に薬剤師がリストラされて不在となり、98年末には勤務条件などをめぐる経営側との対立で多数の看護婦が辞めた。99年度には、開設時の設備投資から累積した負債が13億円余に達した。
 後に患者5人の点滴に筋弛緩剤を混入させたとして殺人罪などに問われる元准看護師の守大助氏(41歳、無期懲役が確定。再審請求中)がH教授にスカウトされて北陵クリニックで働くようになったのは、ちょうどこの時期の99年2月のことである。
 翌00年4月、北陵クリニックで患者の生命に影響する重大事が起きる。常勤医のなかではただ1人、救命処置に熟達していた整形外科のT医師が退職したことだ。そのきっかけもFESである。北陵クリニックの看護師だったFさん(49歳)が語る。
「当時はもう(FESの電極を)埋め込む手術をする人は年間3~4人ぐらいしかいなかった。あとは患部が化膿したので(電極を)抜きたいとか、機械の動作が不良になったとかいう患者さんの方が多かった。そんな時にFESの手術を希望する(下半身麻痺の)女性が入院してきたんです」
 その女性はカヌーが好きだった。だが、手術を受けると電極が身体から露出した状態になる。そこに川の水が触れると、化膿する恐れがあった。T医師は「手術するとカヌーができなくなるよ」と彼女に言い、FさんもFESのリスクをきちんと説明した。女性は結局、手術を取りやめた。
「それ以前からFESの手術をあえてする必要があるのかと疑問に思うケースがあったんです。T先生も私も、患者から訊ねられると正直にリスクを話したので手術をやめる人が何人か出た。最終的にはカヌー好きの女性の件で厳しく詰問されたあげく、私は解雇通知を受け、T先生は解雇はされなかったが、退職せざるを得なくなった」とFさんが言う。
 救命処置に長けたT医師がいなくなり、北陵クリニックの医療態勢は急激に弱体化した。残った小児科のI子副院長は、ぜん息が重症化したときなどに気道を確保する気管内挿官ができなかった。
 T医師の退職直後の00年5月から容体急変で仙台市立病院に搬送される小児患者が相次ぐようになり、同年9月にはぜん息の5歳男児が死亡した。北陵クリニックの総婦長(当時)はその後、市立病院の小児科医からこんな電話を受けた、と後の公判で証言した。
「北陵クリニックから小児患者で突然に呼吸停止を来すような急変患者が続いているけれども、北陵クリニックの状況はどうなんだろうか」
 これに対し総婦長が「救急蘇生の上手な先生が辞めてしまったので」と答えると、その小児科医は「訴訟になったらクリニックとしても大変な状態になるんじゃないか。救急患者はあまりひどくならないうちに連絡をくれれば市立病院でいつでも診るから」と言った。
 その際、総婦長は「市立病院の救急外来辺りで研修という形で(I子副院長に気管内)挿官の方法を教えてほしい」と相談したと法廷で証言している。
 T医師とともにクリニックを去ったF看護師は5歳男児の死亡後、守氏から電話で「ついに死んじゃった子が出ちゃったんだよ」と聞かされた。I子副院長の日ごろの治療ぶりから推測して「ぜん息でしょ」とFさんが言うと、守氏は「エッ、もう誰かから聞いてるの?」と驚いたという。
 一方、北陵クリニックではその前年の99年7月から高齢者の容体急変・死亡例が増え始めていた。しかし、それにはまた別の理由があった。もともとクリニックは複数の特別養護老人ホームと提携し、医師が訪問して治療に当たっていたが、高齢の重症患者の入院は受け入れていなかった。
 だが、経営改善のため19床のベッドを極力満床にもっていきたいというH教授の指示もあって、高齢の重症患者も受け入れるようになった。親族の同意のもとに容体が悪くなっても転院させず、延命治療せずに最期を看取る方針に変わった。その結果、高齢患者の急変や死亡が増大した。
 看護師のFさんが言う。
「(北陵クリニックの非常勤の)院長先生と、(老人ホームを担当していた)内科の先生が2人とも立派な人格者だったので、『先生に最期を看取ってもらいたい』と言う高齢の患者さんがいたほどだったんです。そこにきて(経営方針の転換で)重篤な患者さんを多く受け入れるようになったから当然そうなっただけで、誰もおかしいとは思っていなかった」
 こうしてFESという金看板の下で経営難にあえぐ北陵クリニックの実情を知ると、守氏が患者たちの点滴に次々と筋弛緩剤混入したという事件は、やはり幻だったのではないかという根本的な疑問が湧く。彼はなぜ犯人として断罪されなければならなかったのか?その謎をさらに追いかける。(了)

(編集者注・これは週刊現代連載『わき道をゆく』の再録です。)
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●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評

2013年01月28日 00時00分19秒 | Weblog


レイバーネット日本のWPの記事(http://www.labornetjp.org/Column/20120619)。

 「木下昌明の映画の部屋」(http://www.labornetjp.org/Column/)より、齊藤潤一監督『死刑弁護人』の映画評。安田好弘弁護士についての映画。

   『●木下昌明さんの新刊『映画は自転車にのって』
   『●『教育・研究分野での事業仕分け』
   『●『スクリーンの日本人 ~日本映画の社会学~』読了(1/3)
   『●『スクリーンの日本人 ~日本映画の社会学~』読了(2/3)
   『●『スクリーンの日本人 ~日本映画の社会学~』読了(3/3)

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』:
         バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(1/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(2/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(3/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(4/4)
   『●『特捜検察の闇』読了(1/3)
   『●『だまされることの責任』読了(1/3)

 「犯人もまた社会のひずみが生み出した被害者であり、彼の境遇を理解」・・・の部分は以下も。

   『●『誘拐』読了(1/3)
   『●『誘拐』読了(2/3)
   『●『誘拐』読了(3/3)

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http://www.labornetjp.org/Column/20120619

木下昌明の映画の部屋・第142
齊藤潤一監督『死刑弁護人』
「死刑弁護人」が見据える社会――民主主義の「最低の義務」とは

 安田好弘弁護士については、凶悪事件の担当ばかりか本人まで逮捕されたりと、日ごろ新聞ダネになっているので、どんな人物か気になっていた。それが齊藤潤一監督の『死刑弁護人』をみて、彼の生き方や思想信条などおよそのことが理解できた。
 映画は安田の日々の活動に寄り添って撮ったドキュメントで、『青空どろぼう』を作った東海テレビの製作だ。彼はのっけから「マスコミは嫌いです」と言う。取材に応じないのは、被告人をバッシングするための話題提供でしかないからだ、と明かす。
 実際に彼が担当した事件は、オウム真理教事件麻原彰晃和歌山毒カレー事件林眞須美光市母子殺害事件の元少年等々、時々のマスコミを賑わし、“極悪のレッテルを張られた人物ばかり。なかでも、1980年夏の新宿西口バス放火事件に強くひかれた。この時、巨人戦のナイター見物帰りの父子が焼死したが、筆者はその父とは顔見知りだった。真相は日々のニュースではつかめなかった。後に事件を扱った恩地日出夫監督の傑作『生きてみたい、もう一度』で被告女性のその後はわかったが、犯行の真相は依然つかめなかった。ただ全身にやけどを負った桃井かおりの熱演ぶりが印象に残っている。
 これは安田の最初の担当事件で、彼は真相とその後の問題を語っている。それとともに、彼が「悪魔」や「鬼畜」とそしられようとなぜ凶悪犯人の弁護を引き受けるのかも見えてきた。それは、事件を個人の罪に帰して片付けてしまうのではなく犯人もまた社会のひずみが生み出した被害者であり、彼の境遇を理解し、彼にも「生きる権利」がある――という認識に立っていることからきている。(木下昌明/『サンデー毎日』2012年6月24日号)

*6月30日より東京・ポレポレ東中野、名古屋シネマテークにて公開。ほか全国順次 (c)東海テレビ放送


〔追記〕 映画をみても、新宿西口バス放火事件の真相がよくわからなかったという人がいた。そんな人には同名の原作(講談社文庫)がおすすめ。
 それによると「犯人はバスで楽しそうに帰宅する人々をみて腹が立ってやった」――という検察のつくった動機とは違っていたこと。犯人の頭の中を占めていたのは「福祉さん」のことだった。彼には小さい息子がいたが、妻が育児放棄していたので福祉施設に預け、出稼ぎして月々施設に送金していた。しかし、息子を引き取りにいけなかったのでいつも自分を責めていた。8月、出稼ぎ先の飯場が盆休みに入って、その間、新宿で過ごすものの、いつも「福祉さん」に追われているという強迫観念にかられていた。いよいよ盆が明けたときロッカーに預けてあった荷物がなくなっていることにがくぜんとする。字がろくに読めなかった彼は、これを「福祉さん」の仕業と思い込み、逆上した。
 犯人の頭の中では、相手はバスの乗客などではなかった。およそミステリーの小説世界などと違って犯行の真相はつじつまの合わないものだった。悲惨な事件をひき起こしたにもかかわらず、犯人の内面を占めていたストーリーは架空の「福祉さん」像との葛藤だったのだ。内面と現実とは、まるで噛み合っていなかった。そこにこの事件の不可解さがあった。その「真相」は、安田弁護人が根気よく面会しつづけたことでようやくみえてきた。その結果、「死刑」を「無期懲役」にすることができた。しかし、犯人は自分がしでかした犯行(自分の息子と同じような年の子まで死なせた現実)におののき、ついに刑務所内で自殺してしまう。自らの手で「死刑」を下したのである。彼もまた、この社会のひずみが生みだした「被害者」の一人だったか――
 映画の『生きてみたい、もう一度』のなかで目に焼き付いているシーンがある。それはヒロインと愛する男とのラブシーンで、女が男の背に腕をのばして抱きしめる――その時、焼けただれて皮膚のなくなった黒い腕がニューッとのびてくる。これにわたしは戦慄した。甘いラブシーンを予想していたわたしのイメージを映像はひっくり返したからだ。
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●兵庫県警調書捏造など諸々についてのつぶやき

2013年01月15日 00時00分31秒 | Weblog


 兵庫県警調書捏造など諸々についての最近のつぶやき。脈絡無し。

 リツイートを受け、和歌山カレー事件林眞須美林真須美)氏についてもつぶやく。

 中谷宇吉郎博士・・・ついでなので、東京新聞のコラム「筆洗」(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013011302000089.html)を末尾に。キルヒホフの名前から、全く意味は無いのですが、ハーバーや、また、ニセ科学との関係でファラデーの名前が思い出されました。

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■『英キャスター退去の請願認めず 表現の自由は「根本原則」』(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013011401001401.html)/「ホワイトハウスは・・・小学校で子供ら26人が死亡した銃乱射事件・・・個人の武装の権利を認めた合衆国憲法を攻撃したとして英国人キャスターの国外退去を求めた請願を採択しない・・・」

■『河口慧海の日記帳発見 中くりぬき遺書入り箱の鍵隠す?』(http://www.asahi.com/culture/update/0110/OSK201301100066.html)/「・・・19世紀末、鎖国下のチベットに日本人として初めて入った堺市出身の禅僧、河口慧海(えかい・・・)・・・。・・・研究者は「命がけの旅と覚悟していた慧海の心境がわかる資料だ」」

魚住昭さんの『魚の目』(http://uonome.jp/)に『橋下政治資金の不可解』という記事が3本出ている。「8割強がパーティー券あっせん 」、「秘書一族がパーティー券大量あっせん 」、「橋下市長特別秘書の奥下氏 業務内容記録ゼロ」

■『[CML 022051] 本日1/13(日) 第94回街頭行動:新宿アルタ前 午後3時 のお報せ:長岩』(http://list.jca.apc.org/public/cml/2013-January/021884.html)/「・・・2013年、初アピールです。「原発廃炉」「戦争放棄」そして「子供たちの日本を取戻す」・・・」

■『[CML 022044] 「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」』(http://list.jca.apc.org/public/cml/2013-January/021876.html …)/「・・・落合恵子さん、鎌田慧さん、澤地久枝さん・・「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」についての記者会見・・・http://sayonara-nukes.org/2013/01/130110/

冤罪 死刑執行飯塚事件についてCMLの記事。やはり飯塚事件について黒塗りでしか公開されず。やましいことが満載なのでしょう!! 『[CML 022031] 過去5年間に執行された死刑について朝日新聞が法務省に情報公開請求したところ・・・』(http://list.jca.apc.org/public/cml/2013-January/021864.html

ニセ科学としての「水伝」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/s/%BF%E5%A4%AB%A4%E9%A4%CE%C5%C1%B8%C0)を思い出す  「東京新聞コラム「筆洗」」(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013011302000089.html)/「・・・中谷宇吉郎博士の名言だ▼雪の結晶の美しさに魅せられた博士は、どんな温度や湿度で、どういう結晶ができるかを調べ上げた・・・」

■アオコや赤潮植物プランクトンには応用できないのかな?? 『プラスチック主原料にミドリムシ 家電製品などに利用へ』(http://t.asahi.com/9cqf

■一体どういう発想なの?? 『国支払いの除染事業 健診・講習費 作業員持ち』(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013011302000086.html …)「・・・採用の際に健康診断や講習を受け、その場で費用を自分で支払ったり、いったんは業者が支払った後に「立て替え金」として給料から天引きされた人が多くいた・・・」

■これまでの原発推進の責任は? 単に原発推進したいがため! 『首相、宮城の被災地視察 復興加速へ決意』(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013011201001316.html …)/「亘理町の仮設住宅入居者ら約30人と懇談し、復興の加速化へ重ねて決意・・・首相就任後の被災地訪問は昨年12月29日の福島県に続き・・」

■常態化? 何でもやっていいと勘違い?? 『家宅捜索狙い調書捏造か 警部補らの動機解明へ』(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013011301001106.html …)/「・・・調書捏造事件で、虚偽有印公文書作成容疑で逮捕された容疑者・・・が、捏造した調書を基に暴力団関係者の関係先を家宅捜索しようとしていた・・・」

■「・・・書類送検などの対象になったのは2010年5月以降の7件で、和歌山カレー事件のものは含まれていない・・・」(http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/ 、2012年12月29日)

■「・・・しかし『週刊朝日』は、この研究員は一連の捜査で、カレー事件の捜査時期に当たる98年から03年にかけての19件でも捏造があったことが発覚しているとして疑義を呈している・・・」(http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/ 、2012年12月29日)」

■『●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度』(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/d41aa6ea58527c073c25b924c2ad55b5 …) 「・・・2010年5月以降の7件で、和歌山カレー事件のものは含まれていない・・・」(http://www.accessjournal.jp/ ・・・)
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013011302000089.html

【コラム】
筆洗
2013年1月13日

 「雪は天から送られた手紙である」とは、中谷宇吉郎博士の名言だ▼雪の結晶の美しさに魅せられた博士は、どんな温度や湿度で、どういう結晶ができるかを調べ上げた。それにより、雪の結晶を見れば、遥(はる)か上空の様子が分かるようになった▼雪が天からの手紙なら、星からの手紙は光だ。光をプリズムに通すと、虹色の帯が見える。科学者はこの帯を読み解くことで、星はどんな物質でできているか、どう動くかを解き明かしてきた▼英国の作家サイモン・シンの好著『宇宙創成』によると、十九世紀ドイツの物理学者キルヒホフは、太陽の大気に金など重金属があることを確かめようとした。だが、取引先の銀行家は研究に理解を示さない。「地球にもって来られないというのに、太陽に金があったところで、何の役に立つのです?」。後に、その成果で金メダルを贈られたキルヒホフは銀行を訪れ言ったそうだ。「太陽から得た金です」▼宇宙創成理論の権威・佐藤勝彦さんが率いる自然科学研究機構が、ハワイに巨大な望遠鏡を造って地球外生命体の探査に乗り出すことになった。地球と似た環境の惑星を探し出し、その星が反射した光を分析すれば、そこに光合成をする生物がいるか分かるのだという▼惑星からの手紙は、宇宙のかなたで生命が育まれていることを知らせてくれるだろうか。便りが、待ち遠しい。
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●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度

2012年08月24日 00時00分43秒 | Weblog


和歌山県警の鑑定結果捏造事件についての日刊ゲンダイの記事(http://gendai.net/articles/view/syakai/138261)。

 和歌山県警の鑑定結果捏造事件、うかつにも見落としていたようです。しかも、和歌山毒カレー事件との関連もあるようです。和歌山毒カレー事件については、あれだけバカ騒ぎしたのに、ほとんどマスコミで報道されないし、最近では、月刊『創』でもほとんど報じられていないように思う(購入してはいるのですが、ツンドク状態・・・)。
 足利事件菅家利和さんは奇跡的に冤罪が晴れたが、当時のDNA鑑定の杜撰さが指摘され、ずっと指摘されていたにもかかわらず、これまで認めてこなかった。大変な不幸中の幸いであるが、菅家さんは冤罪が晴れた。しかし、同じDNAの鑑定方法で飯塚事件久間三千年さんは死刑執行済みである。つまり、無辜の人、無罪の人を死刑・私刑にしてしまい、取り返し様の無いことをしてしまっている。死刑執行の瞬間の久間さんの脳裏には一体どんなことが過ったのだろう。警察官や検察、裁判官への怨嗟だろうか?

 今回、和歌山県警で、検定結果の捏造を行った主任研究員が和歌山毒カレー事件に直接に関係していたかどうかは分からない。ただ、和歌山県警の科学捜査研究所(和歌山県警科捜研)は和歌山毒カレー事件の際にもミスを犯しており、和歌山県警科捜研の「科学捜査研究がかなり疑わしいものだったことは明らかになったようだ。
 和歌山毒カレー事件の死刑判決はかなり異様であり、マスコミのばか騒ぎに煽られて、警察庁科学警察研究所科警研)や和歌山県警科捜研の具体的な証拠が示されるわけでもなく、「状況証拠だけで死刑判決となった異例の事件」である。しかも、「目撃」証言も非常に恣意的、曖昧であるにもかかわらず、そんないい加減な「状況証拠」だけで林真須美林眞須美)氏に死刑判決が出されている。マスコミが疑わしいと烙印を押せば、罰せよ!、と言わんばかりである。こんな死刑判決を最高裁が支持するのだから、この国の司法制度・裁判制度はどこかが狂っている
 裁判員制度になって、我々(私は絶対に拒否します: コレコレを、ご参考まで)に「死刑のスイッチ」を押させて、死刑への意識のハードルを下げさせ、死刑存置に我々が貢献させられていることを意識する必要があるのじゃないか? 最高裁がやらせタウンミーティングTM)までやって、裁判員制度導入を図った意図を我々は読み取った方がよい。

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http://gendai.net/articles/view/syakai/138261

科捜研 鑑定デッチ上げで再注目される毒カレー事件
2012年8月17日 掲載

和歌山県警 激震
再審請求の行方はどうなる

 和歌山県警に激震が走っている。捜査で押収した証拠品を分析する県警科学捜査研究所(科捜研)で、男性主任研究員(49)による鑑定結果の捏造(ねつぞう)が発覚したからだ。主任研究員は、別の事件の鑑定データを流用したり、鑑定書に所長の公印を勝手に押したりする手口で鑑定結果をデッチ上げた。県警の捜査で、10年5月~12年6月の間に少なくとも計8回の捏造が確認されたという。
 捏造鑑定書が作られていたのは、交通事故や無理心中、変死などの事件。虚偽公文書作成・同行使容疑で捜査している県警は、これらの鑑定書について「内部の説明資料」「鑑定自体には問題なし」と平静を装っているが、とんでもない話である。

   「科捜研の鑑定結果は、裁判で有罪、無罪を判断するキメ手となる
    “超一級の証拠”です。その証拠を捏造なんて前代未聞
    郵便不正事件小沢事件で発覚した検察の捏造調書と同じか、
    それ以上にタチが悪い。主任研究員は『見栄えのよい資料を
    作りたかった』と出来心を強調しているが、証拠品に対する意識が
    低過ぎる。主任がこんな認識では、組織全体で捏造が常態化していた
    とみられても仕方ありませんよ」(元検事の弁護士)

 問題なのは、この捏造発覚が過去の重大事件にも影響を及ぼしかねないことだ。和歌山といえば、思い出すのは、98年7月の「和歌山毒カレー事件」だ。この事件では和歌山県警科捜研が当初、原因毒物を「青酸化合物」と誤鑑定する“大失態”を起こしていた。

   「『ヒ素』と特定したのは、警察庁科学警察研究所科警研)で、
    事件発生から9日後でした。この初動捜査の遅れが事件解明を
    困難にさせ、捜査の迷走を招いたのは間違いないでしょう。
    そのうえ、公判では、弁護人が『鑑定資料の収集、保管の過程が
    ズサンで不透明』『保管や受け渡しの際の状況が、写真などの
    客観的証拠で保全されていない』と科捜研の不手際を批判しました。
    結局、事件は09年5月に最高裁で林真須美の死刑が
    確定=再審請求中=しましたが、状況証拠だけで死刑判決と
    なった異例の事件だけに、今回の科捜研の捏造事件はカレー事件にも
    波紋が広がるかもしれません」(司法ジャーナリスト)

 問題の主任研究員は、85年に技術職員として採用されたというから、カレー事件当時も在籍していたことになる。
 今回の捏造発覚で、林真須美の弁護団は再審請求の攻勢を増すだろう。今ごろ、和歌山県警は頭を抱えているんじゃないか。
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●『創(2010年9・10月号)』読了

2010年10月17日 04時54分29秒 | Weblog

『創』(2010年9・10月号)、9月に読了。

 「鈴木邦男さん顔面殴打出血!/7月3日、渋谷映画館前で「ザ・コーヴ」上映めぐる乱戦」(p.13)。「主権回復を目指す会」の弱い者イジメに対しての攻防。

  上杉隆氏、「『週刊ポスト』大反響キャンペーンの舞台裏/“タブー中のタブー”マスコミ官房機密費問題の闇」(pp.30‐38)。「マスコミが受け取ることの深刻な意味合い」、「「メモ上げ」など記者クラブ問題と直結」。野中広務さんの暴露。

 篠田博之編集長、「無事に全国上映開始/「ザ・コーヴ」上映中止騒動のその後の経緯」(pp.40-43)。
 鈴木邦男綿井健陽安岡卓治・針谷大輔・吉岡逸夫さん「公開日の夜、右翼も交え白熱応酬/「ザ・コーヴ」公開初日の怒号激論」(pp.44-55)。 

 佐高信さん「タレント文化人筆刀両断!/木村剛をさんざん持ち上げた田原総一郎ら」(pp.80-81)。「・・・木村を金融庁の顧問に抜擢した竹中平蔵である」。

 鈴木邦男さん「言論の覚悟/再審請求中!」(pp.82-85)。「和歌山カレー事件」の林眞須美さん。鈴木さんは「林眞須美さんを支援する会」代表。森達也さんの『死刑』安田好弘弁護士。

 森達也さん「極私的メディア論/第54回 ザ・ベストテレビとローカル局」(pp.90-93)。「たとえ賞を取ったとしても、ローカル局のドキュメンタリーは、なかなか陽の目が当たらない。・・・ゴールデン枠で放送したっていいはずだ。でもそんな英断はめったにない。/・・・視聴率獲得のコンテンツとして評価されていないことに加えて、・・・大スポンサーであるトヨタを強く批判した毎日放送の「夫はなぜ、死んだのか ~過労死認定の厚い壁~」(「地方の時代」映像祭08年度グランプリ)や日本中から批判された光市母子殺害事件弁護団のドキュメンタリー「光と影 ~光市母子殺害事件弁護団の300日~」(08年日本民間放送連盟賞報道番組部門「最優秀」賞)などのように、放送しづらい作品が多いからだ。/・・・間違いなく一つの要素だ。/志ある作り手たちは、まだまだローカル局には大勢いる。彼らを応援してほしい。彼らの作品を見て欲しい。/きっと、まだまだテレビは捨てたもんじゃないと思えるはずだ」。

 山本直樹・長岡義幸さんら「反対運動の当事者たちが一堂に会して/「非実在青少年都条例改定をめぐる大議論」(pp.98‐109)。

 星川淳さん、「[グリーンピース裁判]特別寄稿/「クジラ肉裁判」判決間近/税金ドロボーはどっちだ!?」(pp.122-127)。「・・・若い検察官(・・・志布志事件の担当・・・)は「NPOの分際で捜査機関さえ令状がなければできないことをやったのは絶対に許せない!」と啖呵を切った。私は〝正義の番人〟のはずの検察官が民主主義の真逆を口にする司法教育の崩壊ぶりに驚き呆れ、心の中で徹底抗戦を誓った」。「・・・青森地裁、仙台高裁、最高裁の全てが証拠開示の必要なしと判断した。原告側・弁護側が対等に争う条件である証拠の全面開示なしに、どうして公正・公平な裁判が可能だろう? 国策扱いの調査捕鯨を国家ぐるみで必死に守ろうとする姿勢は戦前・戦中を思わせる」。「・・・国際人権(自由権)規約に基づき、おおよそ次のように立論する。民主社会において一般市民やジャーナリストやNGO職員が公共の利益のために政府などの不正を明らかにしようとする際、やむを得ず法律の枠を踏み越えた場合は、その行為によって得られた公共の利益と、失われた法益とを秤にかけ、前者の方が大きければ許容(違法性阻却)されるべきだし、かりに形式上の罪を問うとしても過重な懲罰を与えてはならない。なぜなら、不均衡で過重な懲罰は市民による政府監視を委縮させるからだ、と―――。・・・西山事件や立川・葛飾ビラ入れ事件などについても同様なことがいえる」。

 「永六輔[放送タレント]×矢崎泰久[元『話の特集』編集長]ぢぢ放談/第15回 常識なん知らない!」(pp.128-135)。「本質を衝かない大相撲賭博報道」。「矢崎 オレが気になったのは、川田龍平なんだよね。・・・みんなの党に入党しちゃった。/永さんもオレも彼が無所属だから応援したのに、一種の変節ですよ。彼が立候補したときに掲げた理念って、みんなの党の渡辺喜美とは絶対合わないはずなのに・・・。/ だいたい、みんなの党の「みんな」って押しつけがましいよね。「あんたの党」でいいんじゃないの(笑)/矢崎 みんなの党って、理念的には市場原理を重視する新自由主義でしょう。・・・おれからすると、ああいう漁夫の利で伸びてくるのが気持ち悪いナチスが誕生したときに似ている」。

 浅野健一さん、「本紙8月号鼎談をめぐって/「記者クラブ解体論」は過激すぎる!?」(pp.146-149)。「本多勝一さんは、記者クラブに入れない人たちが、人種差別、職業差別だと主張して、記者クラブと官庁を集団提訴しようという話があったが、実現しなかった」。
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●『創(2010年8月号)』読了

2010年10月09日 10時25分35秒 | Weblog

『創』(2010年8月号)、8月に読了。

 「映画「ザ・コーヴ」上映中止騒動の全経緯/鈴木邦男さん突入の騒然現場写真」(pp.14-16)。「・・・市民が、持っていたスケッチブックに「恥ずべきは上映妨害」と書いて掲げている」。「・・・「君たちのやっているのは弱い者いじめの営業妨害じゃないか」と講議団に抗議」した鈴木邦男さん。

 特集/映画「ザ・コーヴ」上映中止騒動。
 
篠田博之編集長「上映中止騒動の全経緯とそこで問われたもの」(pp.26-31)。「・・・一般に想定される「抗議行動」の範疇を超えている・・・。/・・・「主権回復を目指す会」と「在日特権を許さない市民の会(在特会)」・・・」。
 
森達也綿井健陽・坂野正人・鈴木邦男野中章弘さん「上映会で議論された上映中止と「自粛の連鎖」」(pp.32-37)。
 田原総一郎・崔洋一・石坂啓さん「映画館主と表現者たちの上映中止をめぐる議論」(pp.38-45)。
 綿井健陽さん「和歌山県太地町の人たちは映画をどう考えているのか?」(pp.46-50)。「表現の自由」とは一体何なのか。「・・・撮影した側と撮影された側の間の関係性において、フェアに呼応して相互理解を得られる言葉なのだろうか。表現する手段や機会を普段は保証されない人たちを尊重することで初めて対等に成立する権利だと思う」。

 上杉隆・神保哲生・高田昌幸氏「記者会見の開放をいかにして進めるべきか/崩壊しつつある記者クラブ制度と大手マスコミの特権」(pp.52-63)。

 長岡義幸さん「否決はされたものの秋には再浮上/「非実在青少年」と条例改定をめぐる攻防の行方」(pp.76-83)。「・・・石原都知事は・・・。/・・・規制強化反対を訴えたマンガ家や読者らに悪罵を投げつけた」。

 佐高信さん「タレント文化人筆刀両断!/「いいやつ」と「どうでもいいやつ」村上春樹」(pp.84-85)。

 森達也さん「極私的メディア論/第53回 プロパガンダ展で見たプロパガンダ」(pp.94-97)。「・・・つまりこの展示の最後は、イランがいかに危険な国であるかを訴える(まさしく)政治的プロパガンダとして終わっていた。・・・展示にはイラク戦争が無い。・・・中東戦争もないし、イスラエル・パレスチナ問題もない。/要するにイスラエル国家にとって都合の悪い戦争や虐殺が、すべて削除されている。/「・・・・・・露骨ですよねえ」/プロパガンダの危険性を訴える展示で、・・・臆面もないほど見事なプロパガンダが行われていた」。

 林眞須美さん「大阪拘置所で綴った近況と心情/死刑確定後も無実への思いは変わらない」(pp.102-107)。免田栄さん、赤堀政夫さんの死刑台からの生還。

 矢崎泰久さん「ワープロ打ちのその文面を見て次々と疑問が湧いてきた/井上ひさしが残した謎の『遺言公正証書』」(pp.108-115)。「・・・『文藝春秋』は・・・表紙に特記し、電車の中吊り広告にもデカデカと発表している。こんなインチキも珍しい。・・・ユリ夫人が書いた「手記」を大々的にうたうのならともかく、井上ひさし本人が書いたかのように欺いたことは、どんな理由にせよ許されることではない。死者に対しても冒涜に他ならないと思う。羊頭狗肉とはまさにこのことだろう」。「・・・小泉首相に頼まれて道路公団民営化の委員になり、当時からしきりに権力にスリ寄っていた全共闘くずれの猪瀬直樹が、日本ペンクラブの最重要委員会の委員長に任命されるなんてまさしく噴飯ものではないか。・・・/日本ペンクラブに絶望した私たち(本多勝一鎌田慧佐高信北村肇)5人は脱会届を提出し、会報に抗議文を掲載するよう求めた。井上会長の後任・阿刀田高会長はそれすら無視した」。

 「永六輔[放送タレント]×矢崎泰久[元『話の特集』編集長]のぢぢ放談/第14回 菅直人なん知らない!」(pp.128-135)。「「市民運動家」という言葉の違和感」、「市民感覚が問われる沖縄問題への対応」、「「市民感覚」と「庶民感覚」」、「顔つきが変わったのは政治屋になったせい?」。

 大川豊さん「月刊「壊(こわす)」/第86回 参院選と菅一発内閣」(pp.144-147)。福岡県大木町の「おおき循環センター/くるるん」
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●『創(2010年4・5月号)』読了

2010年09月24日 05時11分34秒 | Weblog

『創』(2010年4・5月号)、7月に読了。

 News Eye、今西憲之氏「自身も突然倒れ先ごろ退院/夫・健治氏が語る林眞須美刑囚の近況」(pp.26-27)。
 News Eye、七瀬恭一郎氏「前例のない盗用騒動に決着か/廃墟写真盗用裁判に間もなく判決が」(pp.28-29)。町山智浩さんのブログ(2010年8月10日)からたどって行った(枡野浩一さん主催の本盗用問題に関するシンポ)動画を見る限り、丸田祥三さんの主張に分があるよう。出張先の札幌では小林伸一郎氏の写真集しかなく、丸田さんの写真集は見当たらず、本盗用問題の意味が世間には伝わっていないのかも。詳しく調べる暇がないが、秋に判決が出る模様。

 桂敬一・原壽雄・魚住昭・豊秀一座談会「検察報道で批判を受けた新聞ジャーナリズムが直面した危機とは」(pp.30-45)。村木厚子さんの冤罪事件での検察の証拠捏造も酷いが、マスコミのほうかぶりも酷いもの。芸能人の麻薬汚染問題でのマスコミの挙動については、篠田博之編集長のブログも参照(http://www.tsukuru.co.jp/tsukuru_blog/2010/09/post-129.html)。
 「桂 情報源の秘匿の原則・・・弱い情報源を保護すべしとする思想・・・ネタほしさにメディアが検察を庇うとすれば、メディアはますます検察になめられるだけです」(p.35)。三井環さんの件。押し紙問題。

 浅野健一さん「長野方式で制度解体を!/記者クラブ問題は「会見解放」で解決できない」(pp.86-93)。

 佐高信さん「筆刀両断!/友愛を掲げる〝こども首相〟 鳩山由紀夫」(pp.94-95)。

 鈴木邦男さん「言論の覚悟/三島と石原の分かれ道」(pp.96-99)。石原慎太郎による、新井将敬氏の選挙ポスター差別シール事件斎藤貴男さんの講演「石原都政10年の検証」。空疎な小皇帝について「斎藤さんは・・・単なるウケ狙いの差別的な男ではないかと感じたという」。

 森達也さん「極私的メディア論第51回/再犯防止と日本のメディア」(pp.104-107)。ノルウエーの再犯防止と、日本のそのお粗末さ。
 「・・・イギリスの独立調査委員会にブレア前首相が喚問され、参戦したことに後悔はないか?と詰問された。イギリスは日本と並んでブッシュ政権のイラク侵攻を真っ先に支持したけれど、このときの判断の正当性を、今も国民レベルで考え続けている。/翻ってこの国はどうなのか」。引退した首相は今でもヒーロー気取りだし、世間の非難の度合いも低いし、加えて、その息子の議員も父親同様な傲慢さの臭いがプンプン。
 
「・・・トヨタ騒動を報じる際にマスメディアのほとんどは「不具合」という言葉を使っているけれど、かつてなら「欠陥」だったはずだ。いつのまに語彙が変わったのだろう」。

 「永六輔[放送タレント]×矢崎泰久[元『話の特集』編集長]のぢぢ放談第11回/相撲なんて知らない!」

 
三井環さん「検察裏金」告発の闘いはこれからだ!第15回/国会で裏金追及を」(pp。134-137)。

 
篠田博之さん「『創』を読んでいただいている読者の皆さまへ」(pp.150-151)。『創』も大変なようだ。『紙の爆弾』の方も色々ごたついているようだし、『冤罪ファイル』(『冤罪File』)も大変なよう。
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●『ドキュメント死刑囚』読了(1/2)

2009年12月15日 05時09分46秒 | Weblog

『ドキュメント死刑囚』、12月に読了。篠田博之著。ちくま新書。2008年8月刊。

 殺して何になる。平和の象徴どころか・・・。「・・・宮崎勤死刑囚に突然、刑が執行されたのだった。・・・大臣就任後、異常といってよいほどのペースで死刑を執行している鳩山邦夫法相の意向がなければ、こんなに早い執行はなかったはずだ。/・・・朝日新聞のコラムで死に神と皮肉られたことに怒り、・・・こう語ったという。「死刑囚にだって人権も人格もある」「(表現は)執行された人への侮辱でもある」/この人はいったい、自分がやっていることがわかっているのだろうか。死刑囚の人権や人格を究極に否定する行為が、死刑執行ではないか。/・・・こんな対症療法的なやり方が、本当に凶悪犯罪の防止につながるのだろうか」(pp.8-9)。
 小林薫被告について、「・・・恐らく彼は、家庭環境が違っていたら、あのような犯罪者にはならないですんだ人間ではないかと思う」(p.97)。これは3人に共通。特に宮崎死刑囚は「乖離家庭」だった模様。宅間守死刑囚の家庭にも問題があったようである。家庭と、倒錯した3人の心の闇。
 「「法で定められた〝控訴〟という手続きすら、一殺人犯の死刑判決を受けた身は非難の対象となり、してはいけない手続きなのか」/・・・弁護士宛ての手紙・・・文面には「なんで、あんな奴弁護するんや!」「死ね!」「金もうけやから弁護するんか!」・・・」(p.167)。無茶苦茶である。小林薫被告が「小学・中学と受けたいじめとなんら変わらない・・・」。

 宅間守死刑囚の悲惨な事件で、「・・・宅間の側に自分を投影して事件を受けとめた人がいるのを知って、私が驚き、認識を新たにしたのだった。/・・・弁護士に聞くと、・・・3割ぐらいは彼に共感を寄せたものもあったのだという。・・・/世間を恨み、復讐のためにあの残虐な犯罪を犯した宅間守に、自分を投影してみた人が少なからず日本社会に存在するというこの事実は、深刻に受けとめねばならない事柄だった」(p.177)。

 和歌山カレー事件の林眞須美被告(p.219)、「来年こそは、死刑執行のないことを願います」。安田好弘弁護士(p.223)。

 家族殺害に加担させられてしまった、北九州監禁殺人事件の緒方純子被告(p.224)。「・・・彼女を処刑することなど何の意味もないことを、最高裁は理解してほしい。/・・・鳩山法相の話などを聞いていて私が苛立つのは、その言葉に死刑という人間の生き死の決定に自分が関わることへの重たさが感じられないからだ」(p.229)。スイッチを人に押させて平気でいられる神経が理解できない。
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●『創(2009年7月号)』

2009年07月22日 07時53分45秒 | Weblog

『創』(2009年7月号)、7月に読了。

 篝一光さんの写真シリーズ「東京street!/第21回 東京の坂」(pp.12-15)。野清志郎さんの葬儀後数日の「たまらん坂」(多摩蘭坂)にも多くのファンが。

 佐高信さん「筆刀両断!/戦争ごっこボケの道化 田母神一座」(pp.86-87)。「・・・花田紀凱。『朝日新聞』批判で食っているが、ナントカの一つおぼえでそれをやってきた花田が一時、『朝日』の出している雑誌に入ったのはおそまつだった。呼ぶ方も呼ぶ方なら、入る方も入る方。タカ派で売っているが、・・・節操は、この男にはおよそないらしい」。「・・・曽野綾子を最大限に持ちあげている。しかし、・・・保守派を自認する・・・が、大江の『沖縄ノート』を曽野は「ものの見事に誤読」していると論証し、それに乗っかった秦郁彦や渡部昇一のいい加減さも暴露しているのである」。「要するに田母神らには、最初から「国民の生命」など頭にないのだが、私たちは、少なくとも、それは「ある」だろうと「誤解」しているから、話がこんがらがってくる」。

 鈴木邦男さん「言論の覚悟/よど号症候群」(pp.88-91)。「あさま山荘事件の時、解放された・・・さんは「犯人は紳士的だった」と発言した。・・・それ以来、・・・さんは一言も発言していない。・・・/ただ、シンパシーが生まれたのも事実だ」。「・・・こうした「共感・一体感」は当事者でないと分からない。日野原さんも、テレビで喋ろうとすると、遮られたという。・・・視聴者のイメージ(思い込み)に沿った<物語>を作りたいのだ。/こうした「ストックホルム症候群」と相反する言葉として、「リマ症候群」という言葉がある。これは、人質側に犯人側が共感し、影響を受けるのだ。・・・/・・・ゲリラは人質に銃を向けることができず全員が殺された。銃を捨てて投降した子供のゲリラ兵まで軍隊は皆殺しにした。この時、僕はTBSの「ニュース23」に呼ばれたので、「これは虐殺だ!」と言ったら、抗議の電話が殺到し、電話回線がパンクしたという。/・・・さんは「鈴木さんの言う通りです」と言っていた。人質を解放し、ゲリラは投降する交渉をしていた。それが実行される寸前に、軍隊は突入し、ゲリラ全員を殺した」。

 森達也さん「極私的メディア論/第44回 日本のメディアの不自由さ」(pp.96-99)。「韓国・・・彼女は言った。・・・「・・・だって捕まったばかりの人はまだ容疑者ですよね。・・・テレビのニュースなどで容疑者の名前や顔を見たことは、ほとんどないです」」。「でも今の日本のメディア・・・当たり前のようにその顔を撮り、名前や住所、職業なども屈託なく明かし、ただし手錠と腰縄だけには、しっかりとモザイクを忘れない。これが定型になっている」。「メディアだけではない。法廷における無罪推定原則も、和歌山カレー事件の判決を引き合いに出すまでもなく、まったく形骸化している。・・・/・・・無罪推定原則は、そもそもの立証責任は検察側にあることを示している。/つまり検察側が被告人の有罪を合理的に立証できないのならば・・・その段階で被告人は無罪となる。ならねばならない。/・・・だからこそ無罪推定原則は、数多くの誤判や冤罪を歴史的に繰り返してきた近代司法が辿り着いた必然であり、罪なき人をできる限りは罰してはいけないとの崇高な決意によって誕生したテーゼなのだ」。「・・・全裸事件から北朝鮮ミサイル問題、新型インフルエンザと、最近の報道の一極集中と過熱ぶりは、あまりに常軌を逸している」。「国境なき記者団が2008年度に発表した世界報道自由ランキング・・・上位を占めるのは、ノルウエーやアイスランド、フィンランドやスウェーデンなどの北欧諸国。これらすべてが、犯罪報道においては匿名報道を先駆的に取り入れた無罪推定原則を守る)国々であることは象徴的だ」。2006年の51位よりは上昇したとはいえ29番目の「日本のメディアの自由度はあきれるほどに低い。それは確か。でもそれは国家権力や企業サイドからの圧力ではなく、メディアが自ら招いた規制であり、自ら招いた不自由さなのだ」。

 「週刊誌編集長とジャーナリストの闘論! 週刊誌がこのままつぶれてしまっていいのか」(pp.104-121)。佐野眞一氏「『週刊新潮』には、櫻井よし子さんや福田和也さんなど、常連の寄稿家が何人かいます。あのコラムを持ちながら、誰も虚報問題を論じていない」。田島泰彦氏「・・・ひどいのが、オリコンをめぐる訴訟です。・・・雑誌を差し置いて、コメントを出した烏賀陽弘道さんというジャーナリストが訴えられた。個人がターゲット・・・」。佐野氏「・・・「出版」というのはパブリッシュ(pubish)―パブリック(pubic)という言葉の語源です。公共のものなのです。社会のものですよ。それを資本の論理で休刊させてしまう。『月刊現代』にしろ『論座』にしろ・・・少しでも闘ったのかどうか。その痕跡すら見えないわけですね。・・・/・・・賠償金高額化の問題ですが、「お前ら、泣きごと言うなよ」というのが僕の意見です。「しっかり調べないからだろ」と」。山口一臣氏「スタッフには常に「・・・訴えられることを前提として、それに負けないような取材をして下さい」とお願いしています」。北村肇氏「ネットがどう頑張ろうとも、新聞、雑誌がジャーナリズム性できちんと勝負すれば負けるはずがない」。

 篠田博之編集長「林眞須美さんは死刑の恐怖を切々と訴えた/確定死刑囚は「死」とどう向きあうのか」(pp.122-131)。「成果が大きかったのは「フォーラム90」が昨年10月に実施したアンケートだ。・・・福島みずほ議員の協力を得て実現したのだが、78人の死刑囚から回答が寄せられた」。

 「永六輔[放送タレント]×矢崎泰久[元『話の特集』編集長]のぢぢ対談 第3回/選挙なんて知らない」(pp.126-134)。麻生首相について、矢崎さん「あの人は教養だけの問題じゃなくて、人間としての品性が卑しいでしょう」。城山三郎さん『粗にして野だが卑ではない』元国鉄総裁石田禮助さんを思い出す。
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