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●『誘蛾灯 二つの連続不審死事件』(青木理著)読了…マスコミの《愚にもつかない〝情報〟の大洪水》の中…

2019年01月20日 00時00分00秒 | Weblog

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『誘蛾灯 二つの連続不審死事件』(青木理著)読了(2019年1月3日)。講談社+α文庫、2016年1月20日第1刷発行。



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 不謹慎ながら、爆笑した青木理さん〝メイン〟の『大竹まこと ゴールデンラジオ』での本書についての爆笑話。お相手は、室井佑月さん。


『大竹まこと ゴールデンラジオ! 2018年10月26日』
https://youtu.be/9TuWVrAx1TQ
http://radio-life.blog.jp/archives/29240779.html


   『●『日本の公安警察』読了(1/2)
   『●『日本の公安警察』読了(2/2)
   『●青木理さん「供述が立証の柱…もっと物証が欲しい。
         「通信傍受を縦横無尽に使いたい。司法取引も」と…」
   『●《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的…代用監獄…人質司法》
                          …さらに、司法取引まで投げ渡す大愚
   『●青木理さん「特定のメディア組織に属してはいても、
      記者が本来奉仕すべきは、広い意味での読者や視聴者」
   『●青木理さん『情報隠蔽国家』…「客観的な事実すら隠蔽し…
                ねじ曲げて恥じない為政者たちの姿」を報じも…
   『●青木理さん「テロは確かに怖いかもしれないけれど、
      国家の治安機関の暴走はテロよりはるかに怖い」
   『●「紛争地での取材やメディア、ジャーナリズムの原則論」…
               「政府高官が建前でも原則論を口にできぬ国」

 《彼女たちに騙されていたのは》…、青木理さんも、そうだったのかも。自省も含め、マスコミ報道の在り方への批判…〝ファッションチェック〟など、《かわりに伝えられるのは、愚にもつかない〝情報〟の大洪水だった》(p.489)。
 随所に青木さんらしい視点。裁判員裁判への懐疑。黙秘権の理由(p.344)…《検察や警察には強力な捜査権限が付与され、膨大な人員とカネを投じて証拠等を収集し、…一個人にすぎない被疑者、被告人=被訴追者の立場はあまりに弱く、その力の差は圧倒的である。…証明する責任は全面的に訴追機関の側が負い、…立証することが求められる。それができなければ無罪。…疑わしきは被告人の利益にの原則である》。その意味で、和歌山毒カレー事件の和歌山地裁判決への疑問(p.346)。林眞須美氏の有罪にも疑問。
 黙秘権を批判する裁判員…《黙秘権の意味と重要性…この程度の認識の者たちが裁判員を務め、一段高い法壇から判決を宣告…私は暗澹たる気持ちになってしまう。その発言に適切な疑義を突きつけず、あたかも真っ当なことを言っているかのように垂れ流したメディアも批判されてしかるべきだろう》。素人裁判員に死刑を宣告させる愚策。死刑のスイッチを押させる国策。
 死刑制度への疑問など。

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https://www.amazon.co.jp/dp/4062816393?_encoding=UTF8&isInIframe=0&n=465392&ref_=dp_proddesc_0&s=books&showDetailProductDesc=1#product-description_feature_div

誘蛾灯 二つの連続不審死事件 (講談社+α文庫)
文庫 – 2016/1/21
青木理  (著)

内容紹介
上田美由紀、35歳。小柄で肥満、鳥取のスナックのホステス。彼女の周りで6人の男が死んだ。この事件の背景には、木嶋佳苗事件とは別の深い闇がある。
――美由紀に騙されていたのは、あなただったかもしれない。

2009年秋、30代の太った女二人が、それぞれ男と関係を持ち、カネを貢がせ、死に追いやっていた――。木嶋佳苗事件との共通項の多さから、世間の話題を集めた鳥取連続不審死事件。筆者は鳥取に通い、上田美由紀と面会し、彼女に騙された男たちに取材を重ね、二つの事件は似て非なるものだと確信する。
鳥取の事件の背景にあったのは、日本の地方をじわじわと覆う闇――人が減り、町が廃れ、仕事を失い、生活が立ちゆかなくなった田舎で生まれる、弱者が弱者を食い物にする状況――だった。

木嶋佳苗が獄中ブログを始めるきっかけとなり、「私の事件を取材してくれていたら…と思い続けたジャーナリスト」と言わしめた一冊が、大幅加筆のうえ、文庫化!

2009年秋、当時35歳の木嶋佳苗の周囲で、複数の男性が不審死した事件が話題を集めていた。同時期、別の連続不審死事件が浮上する。現場は鳥取、主役は上田美由紀、スナックのホステスだった。
二つの事件には驚くほど共通点があった。主役はどちらも30代半ばの小柄な肥満体型の女で、亡くなった男たちと肉体関係を持ち、多額のカネを貢がせていた。美由紀に惚れ込んだ男たちのなかには、刑事や新聞記者もいた。
しかし、二つの事件の背景はまったく異なるものだった。佳苗が高級マンションに住み、外車を乗り回し、セレブ相手の料理教室に通い、婚活サイトを利用して男を物色していたのに対し、美由紀は過疎の進む鳥取で5人の子どもとボロ家に住み、場末のスナックでターゲットを探していたのだ。
筆者は、事件現場、スナックに通い、裁判を傍聴する。美由紀に惚れ、貢ぎ、騙された男たちをみつけ、話を聞く。そして、拘置所にいる美由紀とも面会を重ねる。
そうして、木嶋佳苗事件からは決して見えてこない、この事件の深層――地方の貧困との関係があらわになっていく。人が減り、町が廃れ、仕事を失い、生活が立ちゆかなくなる。そこで生まれる、弱者が弱者を食い物にする犯罪。それは、いまの日本社会に覆いかぶさろうとしている闇だ


内容(「BOOK」データベースより)
上田美由紀、35歳。小柄で肥満、子ども5人を抱える鳥取のスナックのホステス。彼女の周りで6人の男が死んだ。この事件の背景には、木嶋佳苗事件とは別の深い闇がある―。なぜ男たちは騙され、カネを貢ぎ、それでも彼女を愛したのか?美由紀と面会し、取材を続ける筆者のもとに木嶋佳苗からのラブコールが届き、事態は新たな展開を見せる!鳥取連続不審死事件と、首都圏連続不審死事件―彼女たちに騙されていたのは、あなただったかもしれない


著者について
青木理
1966年、長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクションライター。慶應義塾大学卒業後、共同通信社に入社。警視庁公安担当、ソウル特派員などを務めた後、2006年に退社、フリーに。2000年に発表した『日本の公安警察』(講談社現代新書)は公安警察の内実を赤裸々に描き、ベストセラーとなった。主な著書に『絞首刑』(講談社文庫)、『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』(小学館文庫)、『増補版 国策捜査 暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(角川文庫)、、『青木理の抵抗の視線』『ルポ 国家権力』(ともにトランスビュー)、『抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)など。テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活動している。


著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)
青木理
1966年、長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクションライター。慶應義塾大学卒業後、共同通信社に入社。警視庁公安担当、ソウル特派員などを務めた後、2006年に退社、フリーに。テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000208043

目次
序章
第1章 太ったホステス
第2章 一人目の男
第3章 二人目の男
第4章 三人目の男
第5章 県警の蹉跌、男たちの蹉跌
第6章 なぜ溺れたのか
第7章 ウソツキだけど可愛い女
第8章 「真犯人」は誰なのか
第9章 「真犯人」の証言
第10章 美由紀との対話
第11章 「みちづれ」
第12章 ラブ・レター
第13章 松江にて―美由紀との対話2
第14章 男のウソと女のウソ
終章 美由紀と佳苗―二つの連続不審死事件
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●「耐え難いほど正義に反する状況」を認めれない仙台地裁 ~筋弛緩剤混入事件守大助さん~

2014年04月01日 00時00分03秒 | Weblog


付記(140521): ブログ主にとっては意外な結果になりました・・・・・・●PC遠隔操作”冤罪”事件: 意外な結果に・・・・・・ブログ主自身の無能さを痛感』]

大変に残念で無念な飯塚事件の再審棄却について、書く気力がわかない。後日、感想を書くことにするが、冤罪にもかかわらず死刑を執行された久間三千年さんご自身、そして親族や関係者の皆様の悔しさを思うと怒りがわいてくる。

asahi.comの記事【筋弛緩剤混入事件、受刑者の再審請求棄却 仙台地裁】(http://www.asahi.com/articles/ASG3V3PT5G3VUNHB006.html?iref=comtop_list_nat_n05)と、
東京新聞の【【コラム】筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014032802000124.html)。

   『●〝犬〟になれなかった裁判官
   『●『冤罪ファイル(2010年10月号)』読了


 検察や警察、裁判所自身の誤りを否定できないのでは裁判所の存在の意義はない。「ヒラメひらめ)」裁判官や「」裁判官では存在意義がない。仙台地裁の河村俊哉裁判長のことである・・・・・・「仙台市のクリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入事件で・・・・・・守大助受刑者(42)の再審請求について、仙台地裁は25日付で棄却した」・・・・・・目は節穴である。

   『●『冤罪File No.2 (6月号)』読了
   『●『紙の爆弾(2010年9月号)』読了
   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●冤罪: 筋弛緩剤事件の守大助氏
   『●冤罪(その1/2): どんな力学が働いているのか?


 袴田事件に一区切りついた今、北陵クリニック事件=「筋弛緩剤混入事件」にも注視し、一日でも早く冤罪を晴らさないと大変な問題。和歌山毒カレー事件PC遠隔操作事件、等々・・・・・・「ヒラメ(ひらめ)」裁判官や「犬」裁判官に当たらないことを祈るしかない現状が悲しい。

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http://www.asahi.com/articles/ASG3V3PT5G3VUNHB006.html?iref=comtop_list_nat_n05

筋弛緩剤混入事件、受刑者の再審請求棄却 仙台地裁
2014年3月26日12時17分

 仙台市のクリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入事件で、患者5人に対する殺人と殺人未遂の罪で無期懲役が確定した守大助受刑者(42)の再審請求について、仙台地裁は25日付で棄却した。弁護側は仙台高裁に即時抗告する。弁護側は、鑑定の方法や結果に誤りがあり、患者の症状も筋弛緩剤による中毒症状と矛盾するなどと主張。検察側は「恣意(しい)的で非科学的だ」と反論し、請求の棄却を求めていた。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014032802000124.html

【コラム】
筆洗
2014年3月28日

 一九五〇年の春、英国で一人の青年が絞首刑に処せられた。幼い娘を殺したというのが、その罪状だった。彼の名チモシー・エバンスは、死刑廃止の一つの契機をつくった人の名として、英司法史に刻まれることになる処刑後、真犯人が捕まったのだ▼この悲劇を受け、司法のありように疑問の声がわき起こった。内務省は調査に乗り出したが、出てきた報告書は捜査機関をかばう内容。国会で議員らは、こう追及したという▼「我々がこの報告書を問題にしているのは、真実を明らかにせぬからではない。真実を隠蔽(いんぺい)しているからだ。我々がこれを問題にしているのは、そこに過失があるからでもない。そこに不実があるからだ」▼きのう静岡地裁は袴田事件の再審開始と、無実を訴えてきた袴田巌さんの釈放を決めた。その決定要旨にある裁判所の指摘は驚くべきものだ。死刑判決の拠(よ)り所となった証拠は「捜査機関によって捏造(ねつぞう)された疑いがある」というのだ▼捜査も人のやること。真実にたどり着けず、過ちを犯すこともある。だが袴田さんに罪を着せるため、当局が証拠をでっち上げたとしたら、真実の隠蔽や不実どころではない。犯罪である▼司法当局が自らこの疑惑の解明にあたらないのならば、国会がその権限で追及すべきだ。それもできぬとしたら、それこそ地裁が言う「耐え難いほど正義に反する状況」だ
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コメント (1)
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●冤罪(その1/2): どんな力学が働いているのか?

2013年02月09日 01時00分16秒 | Weblog


山岡俊介さんのアクセスジャーナルの記事(http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/、2012年12月29日)で、和歌山毒カレー事件の林眞須美(林真須美)氏について。魚住昭さんの『魚の目』(http://uonome.jp/)に出ていた守大助氏の冤罪に関する一連の記事(http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2677http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2692http://uonome.jp/category/article/uozumi-wakimichi)で、こちらはまだ継続中。

 和歌山毒カレー事件林眞須美林真須美)氏にしろ、仙台の筋弛緩剤混入事件守大助氏にしろ、なぜ有罪が確定しているのか、理解できない。真面目に裁判官は審議しているのか? 妙な力学か、妙な思い込みか? 分析を委託された大阪府警科捜研の酷さ? 守大助氏についての冤罪の背景は魚住昭さんの記事で、今後、明らかになってくると思う。

   『●『週刊金曜日』(2012年10月19日、916号)についてのつぶやき
   『●冤罪: 筋弛緩剤事件の守大助氏
   『●兵庫県警調書捏造など諸々についてのつぶやき

 和歌山毒カレー事件事件の無茶苦茶ぶりは以下の通り。

   『●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と
                     和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度
   『●『創(2009年7月号)』
   『●『創(2009年6月号)』(2/2)
   『●『冤罪File(No.06、2009年6月号)』

  「日本の司法の歴史は、絶え間ない冤罪の歴史」であり、それをそれを修正する力があまりに弱い。

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http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/、2012年12月29日】

2012/12/29
<記事紹介>「和歌山カレー事件に新展開!?  鑑定担当者が『証拠捏造』で退職」(『週刊朝日』1月4・11合併号)
執筆者: Yamaoka (6:40 pm)

 自治会の夏祭りに出されたカレーを食べた住民4名が死去したこの事件、林眞須美(51)の死刑が確定している(再審請求中)が、未だ謎が多いのも事実。
 林死刑囚は一貫して無罪を主張しているが、その最大の証拠とされるヒ素の鑑定を担当した科学捜査研究所の主任男性研究員が12月17日、証拠品の鑑定結果を捏造したとして書類送検されると共に、懲戒3カ月の停職処分を受け、同時に、依願退職したと『週刊朝日』が報じている。
 誤解のないように断っておくが、書類送検などの対象になったのは2010年5月以降の7件で、和歌山カレー事件のものは含まれていない。
 しかし『週刊朝日』は、この研究員は一連の捜査で、カレー事件の捜査時期に当たる98年から03年にかけての19件でも捏造があったことが発覚しているとして疑義を呈している。

・・・・・・。
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http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2677

わき道をゆく第11回
2013 年 1 月 10 日 魚住 昭

 仙台の筋弛緩剤混入事件を読者は覚えておられるだろうか。
 00年ごろ、仙台市の北陵クリニックで点滴溶液に筋弛緩剤が混入され、入院患者ら十数人の容体が相次いで急変したとされる事件である。

 宮城県警は01年1月初め、北陵クリニックにひと月前まで准看護師として勤務していた守大助氏(41)を逮捕。仙台地検は5人の患者(うち1人死亡・1人意識不明の重体)に対する殺人・殺人未遂罪で守氏を起訴した。
 この間、テレビはもちろん新聞も「背筋凍る“恐怖の点滴”」「20人近く容体急変 うち10人が死亡」などと大々的な報道を繰り返し、前代未聞の病院内無差別殺人に日本中が騒然となった。
 守氏は逮捕当日、犯行を認める調書に署名し、「待遇に不満があった 」「副院長を困らせたかった」と動機も供述したとされるが、3日後から全面否認に転じた。
 彼は裁判で一貫して「僕はやってない」と訴えたが、1審の仙台地裁、2審の仙台高裁ともに有罪を認定。08年2月、最高裁の上告棄却で無期懲役が確定した。
 それから4年後の今年2月、守氏の弁護団は新証拠を携えて仙台地裁に再審請求した。弁護団長の阿部泰雄さん(仙台弁護士会)は「この再審は勝てる。私たちが新たに出した科学的データで守君の無実を証明できる」と語る。
 もともとこの事件には不審な点が多かった。犯行の目撃者がいない。動機もはっきりしない。そして何より、患者の血液や点滴液から筋弛緩剤を検出したとする鑑定に重大な疑問があった。
 私は再審請求書を読んで 強い説得力を感じた。新証拠には有罪判決を揺るがす力がある。日本の司法の歴史は、絶え間ない冤罪の歴史だ。今も獄中で身に覚えのない罪科に呻吟する人が数多いはずだ。筋弛緩剤事件の真相を問い直す作業も無意味ではないだろう。
 何はともあれ新証拠の内容をご説明したい。が、その前に裁判で浮上した鑑定の疑問点を2つ挙げておこう。1つは筋弛緩剤を点滴ボトルに混入させるやりかたで果たして人を死に至らしめることができるのかという疑問だ。
 筋弛緩剤(マスキュラックス)は手術時などに静脈注射するもので点滴投与を想定していない。そのうえすぐに血中から排泄される(半減期11分)から、点滴でゆっくり投与した場合に効くかどうか、実際にはわからない。仮に効くとしても、膨大な量が必要だと専門家は指摘する。
 だが、裁判所は東北大名誉教授の「効くと思いますの証言だけで効果を認定した。本来なら効果が出るのに必要な量と時間の科学的立証がなされるべきだろう。
 もう1つの疑問点は鑑定のやり方そのものだ。宮城県警の依頼を受けた大阪府警の科学捜査研究所は「患者の血液や点滴液からマスキュラックスの成分・ベクロニウムが検出された」と鑑定した。
 その根拠はベクロニウムの標品(標準サンプル)と、血液・点滴液を比較分析した結果、どちらからも同じm/z258イオンが検出されたからだという。
 だが、専門家たちはベクロニウムからm/z258イオンが検出されるはずがないと断言する。科捜研の鑑定は科学の常識からかけ離れたも のだというのである。
 そんな時は血液や点滴液の残りを再鑑定すればシロクロがはっきりする。だが、科捜研は鑑定で全量を使い切って再鑑定をできなくしていた。血液や点滴液は鑑定に必要な量の何十倍、何百倍とあったにもかかわらずである。捜査の常識では考えられないことだ。
 弁護団は2審でベクロニウム標品の鑑定を求めた。m/z258イオンが検出されないことを立証するためだ。だが、裁判長はそれを却下し、わずか4回の公判を開いただけで結審させてしまった。
 今回の再審請求で弁護団が出した新証拠の柱の1つが、そのベクロニウム標品の鑑定結果である。
 志田保夫・前東京薬科大薬学部中央分析センター教授に依頼して実験してもらったところ、どういう条件下でもベク ロニウムからm/z258イオンが検出されることはあり得ないという結論が出た。
 つまり守氏の犯行の決定的証拠とされた鑑定結果が誤っていることが明らかになったのである。
 新証拠の2つ目は、00年10月末、北陵クリニックで点滴後に意識不明になった小学6年の女児についての長崎大医歯薬学総合研究科・池田正行教授の意見書だ。
 池田教授は女児のカルテや母親の供述などを詳しく分析した結果「容体急変の原因は筋弛緩剤の投与ではなく、ミトコンドリア病メラスである」と診断した。
 ミトコンドリア病は、細胞中のDNAの異変によって起きる急性脳症で、中でもメラスは脳卒中のような症状などを伴う。ただこの病気が知られるようになったのは90年代以降のことで、01年当時はまだ北陵クリニックや、女児が転送された仙台市立病院では知られてなかったという。
 女児は腹痛を訴え、嘔吐を繰り返したため北陵クリニックで受診した。その後、「物が二重に見える」と言って目をパチパチさせ、ろれつの回らないしゃべり方をするようになった。そして頭を左右に振り、手足の痙攣を起こし、脈が遅くなって心肺停止状態になった。
 これらの症状を全部説明できるのはミトコンドリア病メラスしかなく、目のパチパチや痙攣、心肺停止などはマスキュラックスの薬効と明らかに矛盾するという。
 池田教授はこの女児の症状について医師1000人にアンケート調査した。その結果、7割近くがメラスと答え、筋弛緩剤と回答したのはわずか3人だったという。
 阿部弁護団長は「北陵クリニックは当時、赤字穴埋めのため高齢者や重症患者を次々と受け入れていた。そのうえ救命措置ができる医師が辞めたので、容体が急変する患者が増えたのは当然のこと。その責任をすべて守君にかぶせた」と指摘し「この事件は、事件性のない冤罪なんです」と言った。
 私は千葉刑務所で服役中の守氏に会おうと思った。「無実の守大助さんを支援する首都圏の会」事務局長の藤沢顕卯さん(39)に頼み込んで手配してもらった。
 当日朝、JR千葉駅に国民救援会千葉県本部の岸田郁さん(42)が車で迎えに来てくれた。約10分で千葉刑務所に着き、古い煉瓦造りの門をくぐって中に入った。守氏との面会の模様は次号でお伝えしたい。(了)

(編集者注・これは週刊現代連載「わき道をゆく」の再録です。

参照文献・「人権と報道 連絡会ニュース第280号」「無実の守さんを支援する首都圏の会」サイト)
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http://uonome.jp/article/uozumi-wakimichi/2692

わき道をゆく第12回 
北陵クリニック残影
2013 年 1 月 18 日 魚住 昭

 千葉刑務所の面会室はとても狭かった。縦横1・5㍍前後のスペースしかない。
 そこに日本国民救援会千葉県本部の岸田郁さん(42)と岡山県本部の中元輝夫さん(75)と私が入るとすぐ、透明なアクリル板の向こうに元准看護師の守大助氏(41)が姿を見せた。
 緑色のズボンに灰緑色の作業服。頭髪は黒々としたスポーツ刈りで、顎の線がやや尖っている。
 十数年前の写真と比べると、痩せて引き締まったようだ。
「どう、元気?」と、岸田さんがまず声をかけた。
「ええ、元気です」。彼は椅子に腰を降ろしながら笑顔で答えた。
 顔は青白いが、声には張りがある。笑うと目尻に皺が何本か寄る。
 彼が仙台筋弛緩剤事件で逮捕されたのは01年のことだ。法廷で無 実を訴えたが、08年に無期懲役判決が確定した。現在、新証拠をもとに再審請求中である。
 許された面会時間は20分。しかも今回の面会の主役は岡山から来た中元さんだから、私は邪魔にならぬよう、彼らの会話に耳を傾け、守氏を観察することにした。
 中元さんが「いま一番やってほしいことは何ですか」と聞いた。
「全国の人たちに真実を広めてほしいんです。僕はやっていない。やっていないからこうして皆さんに会えるんです。やっていたら(後ろめたくて)会えませんよ」
 守氏は少し早口で言った。だが、声に刺々しさや苛立ちは感じられない。滑らかで落ち着きがあった。
 中元さんは「(新証拠で)冤罪が明白になったのに、日弁連はまだ守君の再審支援を決定していない。 対応が遅すぎる」と憤った。
 日弁連の支援は再審の成否にも影響する。いつになったら決まるのかと、守氏も気が気ではないだろうと思っていたら、違った。
「日弁連もたくさん冤罪事件を抱えて大変なんでしょう。それに日弁連の支援なしで再審開始決定が出た事件もありますから。もちろん僕は早くここから出たい。だけど、焦らず、ゆっくりやろうと自分に言い聞かせているんです」
 と、中元さんをなだめるように言った。優しげな笑顔を時折浮かべながら、相手の目をまっすぐに見る。これが、あの「恐怖の点滴男」だろうか?
 事件当時の集中豪雨のようなマスコミ報道でつくられたイメージと、目の前に座っている生身の人間との落差が大きすぎて、どうにも1つに重ならない。
 制 限時間が終わりに近づいたころ、彼は私の方を見て、
「いちばん悔しいのは、検察が証拠隠しをしていることです」
 と言い、こうつづけた。
東電OL殺害事件では被害者の爪のDNA鑑定をして最終的にマイナリさんの無実が証明され、検察もようやく無罪主張せざるを得なくなったでしょう。僕の事件でも検察が証拠を全部開示するよう裁判所が命令してほしい。そうすれば真実が明らかになる」
 確かにこの事件には「証拠隠しと疑いたくなることがいくつもある
 その1つは、守氏が犯行に使ったとされる筋弛緩剤の空アンプル(検察は19本あると主張)の開示を検察が拒んだことだ。替わりに出してきたのは8本、6本、5本に分けて撮った写真で、しかもロット番号が見えない角度から撮影されている。これでは本当に19本あるかどうかも分からない。
 そもそも裁判で犯行に使われた凶器(空アンプル)を開示しないことが許されていいはずがない
 もっとひどいのは鑑定である。北陵クリニックで容体が急変した患者5人の血液や尿、点滴液の鑑定は、宮城県警の依頼で大阪府警の科学捜査研究所が行った。
 科捜研は筋弛緩剤の成分・ベクロニウムの標準サンプルと、患者の点滴液や血液などを比較分析した結果、双方から同じm/z258イオンが検出されたから、点滴液に筋弛緩剤が混入されたのは間違いないと結論づけた。
 だが、法廷に証拠として提出されたのは、結論だけを書いた鑑定書のみだ。通常ならその結論に至るまでの様々な分析データを記録している はずの実験ノートは作ってない(科捜研)の一言で提出されずに終わってしまった。
 本当にまっとうな鑑定が行われたのか。意識不明の重体になった小学6年生(当時)女児から1週間後に採取した尿の例を見てみよう。科捜研は尿から1㍉㍑あたり20・8ナノグラムの高濃度でベクロニウムが検出されたと言う。
 しかしベクロニウムは投与後24時間以内に尿中に排泄されるから、7日後に20・8ナノグラムもの高濃度で尿中から検出されることは科学的にあり得ない。それだけで鑑定の信用性は瓦解する。
 しかも科捜研は患者らの血液など全量を使い切って再鑑定を不能にしていた。これは「犯罪捜査規範」186条の「鑑識に当たっては、なるべくその全部を用いることなく一部をもって行い、残部は保存しておく等再鑑識のための考慮を払わなければならない」という規定を無視した行為である。
 さらに今回の再審請求で、ベクロニウムの標準サンプルからm/z258イオンが検出されたという科捜研鑑定の前提そのものが誤っていたことが立証された。
 なぜ、こんなデタラメな鑑定が行われたのか。弁護側の意見書を書いた長崎大の池田正行教授は「司法事故を考える」という自らのサイトでこう指摘している。
 いま世界標準となっているベクロニウム検出法は事件当時、確立されておらず、まともな鑑定は不可能だった。そのうえ試料の保存条件の悪さなど悪条件が重なり、「結局彼ら(=科捜研)はそれまでに自分たちで手探りで組み立てた『独自の方法』(略)しかなく、自分たちの方法でも実験条件を検討する十分な時間さえ与えられずに、とにかく結果を出さざるを得ない立場に追い込まれて、パニックになり、後でどうにも説明できない報告を出してしまった
 池田教授は5人の患者の症状から見て「ベクロニウム中毒」は誤診だとはっきり言い切っている
 だとしたら、北陵クリニックで患者の容体急変が多発したのはなぜか。あるいは裁判所がそれほど明白な欠陥鑑定を根拠に守氏に有罪を言い渡したのはなぜか。その理由をきちんと示してくれと、読者は言われるだろう。
 守氏に面会して数日後、私は仙台市郊外の北陵クリニック(01年3月閉鎖)の元敷地に立った。
 JR仙台駅から北北西に約10㎞。閑静な住宅街の外れで、周囲に林や田畑が広がっ ている。
 ここに91年、ベッド数19床の北陵クリニックが開業した。その経緯まで遡ると、事件の謎を解くカギが1つ見えてくる。(了)

(編集者注・これは週刊現代の連載「わき道をゆく」の再録です)
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http://uonome.jp/category/article/uozumi-wakimichi

わき道をゆく第13回 
Back to 91
2013 年 2 月 6 日魚住 昭

 仙台・筋弛緩剤事件の真相を探る旅をつづけている。
 今回は、事件の舞台となった北陵クリニック(仙台市泉区)の生い立ちをたどってみたい。
 クリニックの生みの親は、FES(機能的電気刺激)療法の権威として知られた東北大医学部のH教授(当時)である。
 FESは、脳卒中や脊髄損傷で動かなくなった手足に細い針金状の電極を埋め込み、そこにコンピューター制御の電気刺激を与えることで手足が再び動くようになるという“夢の治療法”だった。
 H教授はそのFES研究・開発の母体となる世界初の医療機関として91年、北陵クリニックを開設した。地域医療にも応じられるよう小児科、内科、整形外科などの診療科目も設けた。教授は国家公務員なので表には出ず、代わりに妻のI子医師(小児科)を副院長に据えて経営にあたった。
 FES治療の研究は98年、科学技術庁(当時)が進めていた「地域結集型共同研究事業」に認定され、国と県から巨額の補助金を得た。事業が成果を挙げれば、新産業が創出されるというので地元銀行・電力会社・医師会などの名士たちが病院理事に名を連ねた。
 ところが、地元の期待を集めたFES療法の開発はうまくいかなかった。保険が効かないので患者は1人200万円もの治療費を負担し、全身麻酔の手術にも耐えなければならない。
 そのうえ電極を埋め込んだ患部の衛生管理が難しく、治療効果もあまり思わしくなかった。このため電極の抜去を希望する患者が相次ぎ、当初は年間50例ほどあった手術数も年々減っていった。
 それに加えてFES以外の一般患者の数も多くなかったので、クリニックの経営は悪化した。97年8月に薬剤師がリストラされて不在となり、98年末には勤務条件などをめぐる経営側との対立で多数の看護婦が辞めた。99年度には、開設時の設備投資から累積した負債が13億円余に達した。
 後に患者5人の点滴に筋弛緩剤を混入させたとして殺人罪などに問われる元准看護師の守大助氏(41歳、無期懲役が確定。再審請求中)がH教授にスカウトされて北陵クリニックで働くようになったのは、ちょうどこの時期の99年2月のことである。
 翌00年4月、北陵クリニックで患者の生命に影響する重大事が起きる。常勤医のなかではただ1人、救命処置に熟達していた整形外科のT医師が退職したことだ。そのきっかけもFESである。北陵クリニックの看護師だったFさん(49歳)が語る。
「当時はもう(FESの電極を)埋め込む手術をする人は年間3~4人ぐらいしかいなかった。あとは患部が化膿したので(電極を)抜きたいとか、機械の動作が不良になったとかいう患者さんの方が多かった。そんな時にFESの手術を希望する(下半身麻痺の)女性が入院してきたんです」
 その女性はカヌーが好きだった。だが、手術を受けると電極が身体から露出した状態になる。そこに川の水が触れると、化膿する恐れがあった。T医師は「手術するとカヌーができなくなるよ」と彼女に言い、FさんもFESのリスクをきちんと説明した。女性は結局、手術を取りやめた。
「それ以前からFESの手術をあえてする必要があるのかと疑問に思うケースがあったんです。T先生も私も、患者から訊ねられると正直にリスクを話したので手術をやめる人が何人か出た。最終的にはカヌー好きの女性の件で厳しく詰問されたあげく、私は解雇通知を受け、T先生は解雇はされなかったが、退職せざるを得なくなった」とFさんが言う。
 救命処置に長けたT医師がいなくなり、北陵クリニックの医療態勢は急激に弱体化した。残った小児科のI子副院長は、ぜん息が重症化したときなどに気道を確保する気管内挿官ができなかった。
 T医師の退職直後の00年5月から容体急変で仙台市立病院に搬送される小児患者が相次ぐようになり、同年9月にはぜん息の5歳男児が死亡した。北陵クリニックの総婦長(当時)はその後、市立病院の小児科医からこんな電話を受けた、と後の公判で証言した。
「北陵クリニックから小児患者で突然に呼吸停止を来すような急変患者が続いているけれども、北陵クリニックの状況はどうなんだろうか」
 これに対し総婦長が「救急蘇生の上手な先生が辞めてしまったので」と答えると、その小児科医は「訴訟になったらクリニックとしても大変な状態になるんじゃないか。救急患者はあまりひどくならないうちに連絡をくれれば市立病院でいつでも診るから」と言った。
 その際、総婦長は「市立病院の救急外来辺りで研修という形で(I子副院長に気管内)挿官の方法を教えてほしい」と相談したと法廷で証言している。
 T医師とともにクリニックを去ったF看護師は5歳男児の死亡後、守氏から電話で「ついに死んじゃった子が出ちゃったんだよ」と聞かされた。I子副院長の日ごろの治療ぶりから推測して「ぜん息でしょ」とFさんが言うと、守氏は「エッ、もう誰かから聞いてるの?」と驚いたという。
 一方、北陵クリニックではその前年の99年7月から高齢者の容体急変・死亡例が増え始めていた。しかし、それにはまた別の理由があった。もともとクリニックは複数の特別養護老人ホームと提携し、医師が訪問して治療に当たっていたが、高齢の重症患者の入院は受け入れていなかった。
 だが、経営改善のため19床のベッドを極力満床にもっていきたいというH教授の指示もあって、高齢の重症患者も受け入れるようになった。親族の同意のもとに容体が悪くなっても転院させず、延命治療せずに最期を看取る方針に変わった。その結果、高齢患者の急変や死亡が増大した。
 看護師のFさんが言う。
「(北陵クリニックの非常勤の)院長先生と、(老人ホームを担当していた)内科の先生が2人とも立派な人格者だったので、『先生に最期を看取ってもらいたい』と言う高齢の患者さんがいたほどだったんです。そこにきて(経営方針の転換で)重篤な患者さんを多く受け入れるようになったから当然そうなっただけで、誰もおかしいとは思っていなかった」
 こうしてFESという金看板の下で経営難にあえぐ北陵クリニックの実情を知ると、守氏が患者たちの点滴に次々と筋弛緩剤混入したという事件は、やはり幻だったのではないかという根本的な疑問が湧く。彼はなぜ犯人として断罪されなければならなかったのか?その謎をさらに追いかける。(了)

(編集者注・これは週刊現代連載『わき道をゆく』の再録です。)
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●木下昌明さん、『死刑弁護人』映画評

2013年01月28日 00時00分19秒 | Weblog


レイバーネット日本のWPの記事(http://www.labornetjp.org/Column/20120619)。

 「木下昌明の映画の部屋」(http://www.labornetjp.org/Column/)より、齊藤潤一監督『死刑弁護人』の映画評。安田好弘弁護士についての映画。

   『●木下昌明さんの新刊『映画は自転車にのって』
   『●『教育・研究分野での事業仕分け』
   『●『スクリーンの日本人 ~日本映画の社会学~』読了(1/3)
   『●『スクリーンの日本人 ~日本映画の社会学~』読了(2/3)
   『●『スクリーンの日本人 ~日本映画の社会学~』読了(3/3)

   『●ドキュメンタリー『死刑弁護人』:
         バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(1/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(2/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(3/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(4/4)
   『●『特捜検察の闇』読了(1/3)
   『●『だまされることの責任』読了(1/3)

 「犯人もまた社会のひずみが生み出した被害者であり、彼の境遇を理解」・・・の部分は以下も。

   『●『誘拐』読了(1/3)
   『●『誘拐』読了(2/3)
   『●『誘拐』読了(3/3)

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http://www.labornetjp.org/Column/20120619

木下昌明の映画の部屋・第142
齊藤潤一監督『死刑弁護人』
「死刑弁護人」が見据える社会――民主主義の「最低の義務」とは

 安田好弘弁護士については、凶悪事件の担当ばかりか本人まで逮捕されたりと、日ごろ新聞ダネになっているので、どんな人物か気になっていた。それが齊藤潤一監督の『死刑弁護人』をみて、彼の生き方や思想信条などおよそのことが理解できた。
 映画は安田の日々の活動に寄り添って撮ったドキュメントで、『青空どろぼう』を作った東海テレビの製作だ。彼はのっけから「マスコミは嫌いです」と言う。取材に応じないのは、被告人をバッシングするための話題提供でしかないからだ、と明かす。
 実際に彼が担当した事件は、オウム真理教事件麻原彰晃和歌山毒カレー事件林眞須美光市母子殺害事件の元少年等々、時々のマスコミを賑わし、“極悪のレッテルを張られた人物ばかり。なかでも、1980年夏の新宿西口バス放火事件に強くひかれた。この時、巨人戦のナイター見物帰りの父子が焼死したが、筆者はその父とは顔見知りだった。真相は日々のニュースではつかめなかった。後に事件を扱った恩地日出夫監督の傑作『生きてみたい、もう一度』で被告女性のその後はわかったが、犯行の真相は依然つかめなかった。ただ全身にやけどを負った桃井かおりの熱演ぶりが印象に残っている。
 これは安田の最初の担当事件で、彼は真相とその後の問題を語っている。それとともに、彼が「悪魔」や「鬼畜」とそしられようとなぜ凶悪犯人の弁護を引き受けるのかも見えてきた。それは、事件を個人の罪に帰して片付けてしまうのではなく犯人もまた社会のひずみが生み出した被害者であり、彼の境遇を理解し、彼にも「生きる権利」がある――という認識に立っていることからきている。(木下昌明/『サンデー毎日』2012年6月24日号)

*6月30日より東京・ポレポレ東中野、名古屋シネマテークにて公開。ほか全国順次 (c)東海テレビ放送


〔追記〕 映画をみても、新宿西口バス放火事件の真相がよくわからなかったという人がいた。そんな人には同名の原作(講談社文庫)がおすすめ。
 それによると「犯人はバスで楽しそうに帰宅する人々をみて腹が立ってやった」――という検察のつくった動機とは違っていたこと。犯人の頭の中を占めていたのは「福祉さん」のことだった。彼には小さい息子がいたが、妻が育児放棄していたので福祉施設に預け、出稼ぎして月々施設に送金していた。しかし、息子を引き取りにいけなかったのでいつも自分を責めていた。8月、出稼ぎ先の飯場が盆休みに入って、その間、新宿で過ごすものの、いつも「福祉さん」に追われているという強迫観念にかられていた。いよいよ盆が明けたときロッカーに預けてあった荷物がなくなっていることにがくぜんとする。字がろくに読めなかった彼は、これを「福祉さん」の仕業と思い込み、逆上した。
 犯人の頭の中では、相手はバスの乗客などではなかった。およそミステリーの小説世界などと違って犯行の真相はつじつまの合わないものだった。悲惨な事件をひき起こしたにもかかわらず、犯人の内面を占めていたストーリーは架空の「福祉さん」像との葛藤だったのだ。内面と現実とは、まるで噛み合っていなかった。そこにこの事件の不可解さがあった。その「真相」は、安田弁護人が根気よく面会しつづけたことでようやくみえてきた。その結果、「死刑」を「無期懲役」にすることができた。しかし、犯人は自分がしでかした犯行(自分の息子と同じような年の子まで死なせた現実)におののき、ついに刑務所内で自殺してしまう。自らの手で「死刑」を下したのである。彼もまた、この社会のひずみが生みだした「被害者」の一人だったか――
 映画の『生きてみたい、もう一度』のなかで目に焼き付いているシーンがある。それはヒロインと愛する男とのラブシーンで、女が男の背に腕をのばして抱きしめる――その時、焼けただれて皮膚のなくなった黒い腕がニューッとのびてくる。これにわたしは戦慄した。甘いラブシーンを予想していたわたしのイメージを映像はひっくり返したからだ。
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●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度

2012年08月24日 00時00分43秒 | Weblog


和歌山県警の鑑定結果捏造事件についての日刊ゲンダイの記事(http://gendai.net/articles/view/syakai/138261)。

 和歌山県警の鑑定結果捏造事件、うかつにも見落としていたようです。しかも、和歌山毒カレー事件との関連もあるようです。和歌山毒カレー事件については、あれだけバカ騒ぎしたのに、ほとんどマスコミで報道されないし、最近では、月刊『創』でもほとんど報じられていないように思う(購入してはいるのですが、ツンドク状態・・・)。
 足利事件菅家利和さんは奇跡的に冤罪が晴れたが、当時のDNA鑑定の杜撰さが指摘され、ずっと指摘されていたにもかかわらず、これまで認めてこなかった。大変な不幸中の幸いであるが、菅家さんは冤罪が晴れた。しかし、同じDNAの鑑定方法で飯塚事件久間三千年さんは死刑執行済みである。つまり、無辜の人、無罪の人を死刑・私刑にしてしまい、取り返し様の無いことをしてしまっている。死刑執行の瞬間の久間さんの脳裏には一体どんなことが過ったのだろう。警察官や検察、裁判官への怨嗟だろうか?

 今回、和歌山県警で、検定結果の捏造を行った主任研究員が和歌山毒カレー事件に直接に関係していたかどうかは分からない。ただ、和歌山県警の科学捜査研究所(和歌山県警科捜研)は和歌山毒カレー事件の際にもミスを犯しており、和歌山県警科捜研の「科学捜査研究がかなり疑わしいものだったことは明らかになったようだ。
 和歌山毒カレー事件の死刑判決はかなり異様であり、マスコミのばか騒ぎに煽られて、警察庁科学警察研究所科警研)や和歌山県警科捜研の具体的な証拠が示されるわけでもなく、「状況証拠だけで死刑判決となった異例の事件」である。しかも、「目撃」証言も非常に恣意的、曖昧であるにもかかわらず、そんないい加減な「状況証拠」だけで林真須美林眞須美)氏に死刑判決が出されている。マスコミが疑わしいと烙印を押せば、罰せよ!、と言わんばかりである。こんな死刑判決を最高裁が支持するのだから、この国の司法制度・裁判制度はどこかが狂っている
 裁判員制度になって、我々(私は絶対に拒否します: コレコレを、ご参考まで)に「死刑のスイッチ」を押させて、死刑への意識のハードルを下げさせ、死刑存置に我々が貢献させられていることを意識する必要があるのじゃないか? 最高裁がやらせタウンミーティングTM)までやって、裁判員制度導入を図った意図を我々は読み取った方がよい。

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http://gendai.net/articles/view/syakai/138261

科捜研 鑑定デッチ上げで再注目される毒カレー事件
2012年8月17日 掲載

和歌山県警 激震
再審請求の行方はどうなる

 和歌山県警に激震が走っている。捜査で押収した証拠品を分析する県警科学捜査研究所(科捜研)で、男性主任研究員(49)による鑑定結果の捏造(ねつぞう)が発覚したからだ。主任研究員は、別の事件の鑑定データを流用したり、鑑定書に所長の公印を勝手に押したりする手口で鑑定結果をデッチ上げた。県警の捜査で、10年5月~12年6月の間に少なくとも計8回の捏造が確認されたという。
 捏造鑑定書が作られていたのは、交通事故や無理心中、変死などの事件。虚偽公文書作成・同行使容疑で捜査している県警は、これらの鑑定書について「内部の説明資料」「鑑定自体には問題なし」と平静を装っているが、とんでもない話である。

   「科捜研の鑑定結果は、裁判で有罪、無罪を判断するキメ手となる
    “超一級の証拠”です。その証拠を捏造なんて前代未聞
    郵便不正事件小沢事件で発覚した検察の捏造調書と同じか、
    それ以上にタチが悪い。主任研究員は『見栄えのよい資料を
    作りたかった』と出来心を強調しているが、証拠品に対する意識が
    低過ぎる。主任がこんな認識では、組織全体で捏造が常態化していた
    とみられても仕方ありませんよ」(元検事の弁護士)

 問題なのは、この捏造発覚が過去の重大事件にも影響を及ぼしかねないことだ。和歌山といえば、思い出すのは、98年7月の「和歌山毒カレー事件」だ。この事件では和歌山県警科捜研が当初、原因毒物を「青酸化合物」と誤鑑定する“大失態”を起こしていた。

   「『ヒ素』と特定したのは、警察庁科学警察研究所科警研)で、
    事件発生から9日後でした。この初動捜査の遅れが事件解明を
    困難にさせ、捜査の迷走を招いたのは間違いないでしょう。
    そのうえ、公判では、弁護人が『鑑定資料の収集、保管の過程が
    ズサンで不透明』『保管や受け渡しの際の状況が、写真などの
    客観的証拠で保全されていない』と科捜研の不手際を批判しました。
    結局、事件は09年5月に最高裁で林真須美の死刑が
    確定=再審請求中=しましたが、状況証拠だけで死刑判決と
    なった異例の事件だけに、今回の科捜研の捏造事件はカレー事件にも
    波紋が広がるかもしれません」(司法ジャーナリスト)

 問題の主任研究員は、85年に技術職員として採用されたというから、カレー事件当時も在籍していたことになる。
 今回の捏造発覚で、林真須美の弁護団は再審請求の攻勢を増すだろう。今ごろ、和歌山県警は頭を抱えているんじゃないか。
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●ドキュメンタリー『死刑弁護人』: バッシングされ続ける「死刑弁護人」安田好弘さん

2012年06月26日 00時00分34秒 | Weblog


東京新聞の記事(http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2012062202000122.html)。『週刊金曜日』の記事の一部(http://www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php?no=2514)。最後に映画『死刑弁護人』WP(http://shikeibengonin.jp/)の予告編(http://shikeibengonin.jp/tra.html)を勝手に貼らせてもらいました。

 全く知りませんでした。安田好弘さんについて『死刑弁護人』という映画が出来たそうです。

   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(1/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(2/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(3/4)
   『●『死刑弁護人~生きるという権利~』読了(4/4)
   『●『特捜検察の闇』読了(1/3)
   『●『だまされることの責任』読了(1/3)

監督は、東海テレビの斎藤潤一さん。ディレクターは阿武野勝彦さん。ヒットすべき、多くの人に是非見てもらいたい映画ですが・・・・・・難しいでしょうかね。死刑制度について考えを巡らせる良い機会になると思うのですが・・・・・・。
 『週刊金曜日』創刊900号(http://www.kinyobi.co.jp/news/wp-content/uploads/2012/06/120622-003trim.pdf)の表紙は安田さん。この映画について、安田さんに対する森達也さんのインタビュー記事。メディアに対する距離感や、結果として死刑存置を思いとは逆に後押ししてしまったという意識など、いろいろ考えさせられるインタビュー。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2012062202000122.html

秀作ドキュメント劇場公開 東海テレビ「死刑弁護人」
2012年6月22日 朝刊

 テレビで放送された優れたドキュメンタリー番組が、東京都内の映画館で相次いで上映されている。ドキュメンタリーは内容が高く評価されても、放送が深夜帯だったり、全国ネットではなかったりということが多い。劇場公開で、テレビでは見られなかった人にも作品に触れるチャンスが広がっている。 (宮崎美紀子)

 劇場公開にいち早く取り組んできたのは、東海テレビ(名古屋市、フジテレビ系)。「死刑弁護人」を、三十日から東京・ポレポレ東中野で上映する。
 オウム真理教事件和歌山毒カレー事件光市母子殺害事件など、死刑事件の担当で知られる安田好弘弁護士を追った作品だ。東海地方では昨年十月に放送され、文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど注目されたが、首都圏では未放送だった。
 監督は斉藤潤一ディレクター。「裁判長のお弁当」「光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~」など、司法をテーマに制作してきた。「光と影~」の取材で、信念を曲げない安田弁護士の生き方に興味を持ったのが今回のきっかけだ。
 作品は、世間からバッシングを受ける安田さんに深く入り込んでいる。「カメラ嫌いの人なので、懐に飛び込もうと思った。取材の後は必ず一緒に食事に行った。本来なら一歩引くべきかもしれないが、密着しないと撮れなかった」と斉藤さん。事件を取材し、放送して終わり、ではなく「なぜ起きたのか、何が原因なのかを一つずつ拾い上げていくのがドキュメンタリー」と語る。「映画館でのお客さんの反応が、次の作品の糧になる」
 阿武野勝彦プロデューサーは「映画にすることで、作品は命を永らえることができる」と話す。
 昨年、戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長を取材した「平成ジレンマ」、四日市公害訴訟を取り上げた「青空どろぼう」を劇場公開、今回が第三弾。一年半で三本というのは制作者の強い思いだろう。

    ■ ■ ■ 

 地方のドキュメンタリー制作者の熱い思いは、東京の大手民放局へも波及している。
 十六日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町で公開中の「劇場版 ライバル伝説~光と影~」は、TBSの二つのスポーツドキュメンタリーをもとに、未公開映像を加えて再編集した。同局がドキュメンタリー番組を劇場公開するのは初めて。座席数約六十のミニシアターだが、満員の回が出るなど好調な滑り出しだ。
 テレビ版では分かりやすさのために再現ドラマや冒頭のあおり映像が入っていたが、劇場版では削られ、印象が異なる。
 「東海テレビの試みに大きな影響を受けた」という菊野浩樹プロデューサーは「劇場でチケットを買ってもらったのを見ただけで感動した」と話す。
 今年二月、東京・オーディトリウム渋谷がRKB毎日放送(福岡市、TBS系)の故木村栄文ディレクターの特集上映を行った。好評のため、二十四日から再上映となった。

    ■ ■ ■ 

 東海テレビの三本と木村栄文さんの特集上映を配給した「東風」の木下繁貴代表は「ドキュメンタリーは、この五年ほどで劇場で頻繁に上映されるようになった」と話す。
 小規模な劇映画がヒットしにくくなったのに対し、一定数の動員が見込めるため、ミニシアターが興味を示しているという。
 木下さんは「若い人もドキュメンタリーに目を向けている。もうかるかというと、リスクもあるが、こういう試みが今後一般的になっていくのでは」と話している。
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http://www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php?no=2514

2012年6月22日 900号 特集記事

死刑弁護人 安田好弘

この国の刑事司法の矛盾を体現している弁護士がいる。安田好弘さん(六四歳)だ。
彼ほど、事実に徹底的にこだわり、被疑者・被告に寄り添う弁護士は少ない
そのため、困難な刑事事件が集中し、「あんな悪者を弁護するのか」と、新聞やテレビに叩かれ続けている
安田さんを主人公にした映画『死刑弁護人』が公開されるのを機に、刑事弁護とはなにかをあらためて考える。

●「赦すという前提があれば死刑囚の意識は変わる」
 聞き手 森達也

法廷は民意に
大きく影響され、
民意はメディアに
影響されている――森

死刑廃止派は
鬼畜だとのイメージを
多くの人が
持ってしまった――安田

◆齊藤潤一監督に聞く
「死刑について考えるきっかけに」

悪魔の弁護士と呼ばれてもなお、安田好弘氏は死刑弁護を引き受け続ける、その理由は――。安田弁護士に密着したドキュメンタリー映画『死刑弁護人』が6月30日より公開される。映画の見所を齊藤監督に聞いた。

国策捜査
 死刑判決が確定した光市母子殺害事件の元少年  
 弁護団への猛烈な批判と変更された死刑基準
 青木理

●冤罪阻止の最後の砦
 刑事弁護人が抱える困難
 北方 農夫人

死刑や無期判決が予想される重大事件ほど弁護士の労力負担は大きく、
弁護費用が持ち出しになる場合も多い。安田好弘弁護士に重大事件が
集中する背景には、この国の刑事司法の歪みがある。
・・・・・・。
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http://shikeibengonin.jp/tra.html
   ・・・・・・ブログ主: すいません映像を勝手に貼らせてもらいました

『死刑弁護人』劇場予告編

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●『創(2011年9・10月号)』読了

2012年03月04日 00時00分06秒 | Weblog


『創』(2011年9・10月号)、9月に読了。3・11東京電力福島第一原発人災以前に読了したものが放置されたままだけれども、こちらを先に。

 特集「震災・原発とマスメディア」。
 おしどり「吉本芸人が見た記者クラブの実態/東電会見で目にしたヘンなこと」(pp.28-35)。

 佐高信さん「筆刀両断!」、「「専門バカ」でなく「専門もバカ」/原発御用学者達」(pp.70-73)。「原子力安全委員会委員長の班目春樹については・・・。ただ、なぜ、この男がまだ安全委員会の委員長なのか、デタラメが辞めない限り、私たちの「安全」はないことだけは明白である」。「「専門もバカ」のナンバーワンは、・・・山下俊一。・・・。/同じく福島県放射線健康リスク管理アドバイザーの長崎大学教授 高村昇もひどい」。なんと、年間20ミリシーベルトどころか、100ミリシーベルト以下ならば心配が無いと吹聴して回っているそうである。

 鈴木邦男さん「言論の覚悟」、「「事件・事故」からの自衛」(pp.72-75)。布川事件など、冤罪について。和歌山毒カレー事件甲山事件山田悦子さん。

 森達也さん「極私的メディア論 第62回/受賞と逝去、そして批判」(pp.80-83)。マスコミから無視された『A3』講談社ノンフィクション賞受賞。「読み終えて力が抜けた」〝大批判〟。

 編集部「いったい何が問題になっているのか/中国映画「南京! 南京!」の上映をめぐる懸案」(pp.106-111)。

 「永六輔[放送タレント]×矢崎泰久[元『話の特集』編集長]ぢぢ放談/第25回 原子(アトム)なんていらない」(pp.130-137)。「 ・・・森達也さん・・・。・・・被災地でのメディアがひどいって言うの」。高木仁三郎さん、佐高信さん。

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●安田好弘さん、小沢一郎氏は政治資金規正法違反の「共犯者」なのか?

2011年10月11日 00時02分31秒 | Weblog


偶然以下の記事と映像にたどり着きました。
 『来栖宥子★午後のアダージォ』の記事(http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/ba547be39945d7add3b35330432b5c4c)とYouTube映像「7/19緊急シンポジウム!! ''ニッポン''は何を守ろうとしているのか!H.22-06-08」(http://www.youtube.com/watch?v=ZCEPWjJ-5Ow&feature=related)。

 「情緒的な社会の動き」に抗う。プロ的職責を果たす人の必要性。安田好弘さんがまさにその人だと思う。自身の冤罪逮捕オウム事件和歌山毒カレー事件光市母子殺人事件、そして、死刑反対論者として受けるバッシングなどで、痛いほどに「情緒的な社会の動き」の危険さを知っているから。

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http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/ba547be39945d7add3b35330432b5c4c

政治資金規正法を皆さん勘違い。小沢さんがいなくなることはプロの政治家がいなくなること=安田弁護士2011-01-08

 
7/19緊急シンポジウム!! ''ニッポン''は何を守ろうとしているのか!H.22-06-08 

 「唯一はっきりしている条文があるんです。政治資金規正法で処罰されるのは、会計責任者だけなんです。政治家は処罰されないんです。政治家は処罰の対象から外れているんです。始めから、そういう法律なんです。そもそも法律の目的というのは、会計責任者が責任を持って会計の結果について報告する、ということが義務付けられているんです。ところが皆さん、勘違いしている。小沢さんが秘書と一蓮托生で処罰されるべきだと。これほど法律違反、法律の主旨に反することは、ないんです。つまり、どこかで法律が歪められて、トリッキー歪められて、つまり、政治資金規正法は政治家取締法なんだというふうに完全に勘違いしている。この勘違い、実は検察審査会も、まったく同じ評決をしているわけですね。小沢さんは、これだけ権力を持っている人間が、小沢さんの指示なしに物事が行われるはずがない、と。しかし法律の枠組みは、およそそんなことは無いんです。もし小沢さんが有罪になるとすればですね、責任者との共犯なんです、あくまでも。単に、知っていたとか、報告受けていたとか、そんなことでは共犯になるはずありませんね。これは、税理士さんが「これで申告しますよ」と言って「ああ、はい、どうぞ」って言ったら共犯になるか、といえば、そんなことはないわけなんです。ですからもし小沢さんが共犯になるとすれば「おい、石川、こうやれ」という形ですね。「こうやらんと許さんぞ」と、指示・命令、絶対的に服従させたと、そういう場合に初めて共犯として存在する。それを皆さん、完全に誤解している。大変な誤解(笑)。それで、皆さん、恐らくテレビなどで論評していらっしゃる。
 次の問題です。政治資金規正法の中に、何を記載せよとか、どのような会計原則に則れとか、何一つ書いてないんです。ですからたとえば、ちょっとお金を借りましたとか、立て替えて貰いましたとか、或いは、今日帳簿に載せるよりは来年のほうに載せとこうか、というような話は、本当に虚偽記載になるのかどうか、或いはそれを載せなければならないのかどうか、それさえもあの法律の中には書いてないんですよ。つまり、虚偽を記載してはいかん、という話だけなんですよ。何が虚偽なのか、さえ書いていない。しかしそれを検察が勝手に解釈してですね、例えば今回の場合の、今年載せずに来年載せたということが犯罪だと、虚偽だと、やったわけです。或いはAという政治団体からお金貰った、それを実はこうだった、違う人だった、と言って、それは虚偽だというわけですね。しかしAという政治団体を通して貰ったんだから、それを記載するのは当たり前の話でして、それを虚偽といえるかどうか、それこそ大変大きな問題なわけです。ですから小沢さんの一昨年の問題、或いは今年の問題、いずれも法律の解釈を彼らがやって初めて有罪に出来るだけの話でして。ですから立法者の条文とは違うんですね。
 ですからこの間(かん)も法律が守られずにどんどんどんどんきている。今回典型的なことはですね、石川さんが逮捕されました。しかしその2日後、3日後ですかね、3日後には国会が開かれるわけです。国会が開かれた場合、国会議員を逮捕するためには国会の議員の議決の承諾がないといけないわけなんです。それを抜き打ち的に、先達する形で石川さんを逮捕する。これは立法権に対する侵害じゃないですか。つまり憲法違反の事を彼ら、やっているわけです。つまり憲法に違反している行為に対する批判がどこにもない。これは、私ももう、大変びっくりしたわけです。
 検察はしっかりと政治をやっている、というふうに私は理解しているんです。例えば今回、石川さんの弁護をやっていて3日目か4日目ですかね、あ、検察はこれを狙っているな、というのは大体、私も、石川さんが検察にどういうことを言われているかというのを聞いて分かるんです。
 つまり検察は小沢さんを逮捕することは恐らく不可能だろうと最初から思った。しかし検察審査会で勝負をかける、ということを彼らは考えている。彼らのやり方はこうだな、と。検察審査会で起訴相当を取ることによって小沢さんの政治生命を奪う、と。そのシナリオ通りに見事に小沢さんの政治生命はなくなってしまった。ま、これが今回のシナリオでですね。小沢さんを直接起訴すれば当然全面戦争になってしまうわけでして。むしろ国民を総動員して、或いは市民という名を、怒れる11人の市民を使って小沢さんの政治生命を奪うという戦術に彼ら、でてきた。
 で検察審査会も、トリック、ま、検察審査会には助言者といってですね、弁護士がその場に同席していろんな助言をするわけです。法律の解釈とかそういうものを。恐らくその助言者がとんでもない助言をしたんだろうと思うんです。どういうことかというと、政治資金規正法は政治家の犯罪、取締法なんだという解説をしたんだと思うんです。
 ですからとんでもない、検察でさえ起訴しなかったものを検察審査会が起訴相当という結論をだしたんだろうと、そしてそのことを検察は最初から予想、予定していたんだろうと、そう思うわけです。
 先に、情緒的な風潮の中で有罪無罪が決まっていくと、そういう話がありましたけど、私は思うんですね。弁護士は弁護士として、政治家は政治家として、メディアの人間はメディアの人間として、それぞれの人間がプロ的な精神を持ってそれぞれの職責を全面的に発揮すれば、おそらくこんな体たらくな状態にはならんだろうと思うんです。法廷でも、捜査段階から弁護士が弁護人として責任をしっかりと果たせば、恐らく情緒的な社会の動きに対してたえることが出来る、或いは十分に弁護して勝つことが出来るだろうと思うんですね。
 プロ性がどんどん抜けていく、今回の政権交代でも、ま、アマチュアの集団というか、益々プロがなくなる。小沢さんがいなくなることは、プロがいなくなる、そういうことだろうな、と。崩壊の社会が来たな、と。プロが居なくなるということは、結局情緒的なものに流されるし、或いは、世間の風潮に流される、とこういう時代に益々突入したな、と思っているんです。
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●『冤罪File(No.06、2009年6月号)』

2009年07月16日 07時59分25秒 | Weblog

冤罪File』(No.06、2009年6月号)、6月に読了。

 巻頭インタビューは森達也さん、「死刑に本音で向き合うことを余儀なくさせた、冤罪死刑囚との「出逢い」」。(p.2-9)。4大死刑冤罪、免田栄さんの熊本での事件、財田川事件・松山事件・島田事件。「・・・存置派も廃止派も、「償い」という言葉をあまりにも安易に考えすぎている。/・・・社会全体がまるで被害者になり代わったような気分になって、加害者を死刑にしろ、と叫ぶ・・・/・・・他人がそんな簡単に共有できる訳がないんです。・・・被害者に対して不遜だし、失礼です」。裁判員制度について、「害悪をまきちらす以外にまったく意味がない制度になりかねないと思います。/・・・改革すべきことは他にいくらでもある。・・・/このまま見切り発車となれば、整備不良の車で高速に入るに等しいことです。/・・・冤罪を防止するための方策には全くなりえていません」。まったく同感。「・・・まず代用監獄から手をつけなければならないと思いますが、それは全く手付かずです」。「・・・公判前整理手続きが密室でおこなわれ、公判が始まれば弁護側の新たな証拠提出も認められない。一方で証拠を握っている検察は、その全面開示の義務はない」。裁判員制度下で死刑判決を出すということは、どういうことなのか? さらにそれにのしかかる守秘義務。冤罪事件であることが間違いのない袴田事件の一審裁判官だった熊本典道さんが、無罪心証を持ちながら死刑判決を出し、何十年も苦しんできたことに関連して、「彼は職業裁判官だったのに・・・苦しんできた。裁判員制度では、それを普通の市民が抱えることになるかもしれない。しかもそのつらさを妻にも夫にも言えないのです」。最後に、メディアも含めた組織的な構造の問題であることが強調。「・・・組織が病理をかかえていることを認識しないと冤罪がなくなる筈はないのです。/・・・悪い警察官や検察官がいるから冤罪がおきるのではない。組織がそういう構造になっているからです。・・・/さらに今のこの国は、メディアを媒介にしながら犯罪者への憎悪が深まることで、冤罪の構造が変わってきています。その典型が和歌山カレー事件の林眞須美さんです。自供もなければ物証も何もない。かつてならこれで死刑はありえなかったと思います」。

 片岡健氏「最高裁は果たして公正な判断を下せたのか!? 不明な動機、作られた目撃証言、疑惑の証拠「ヒ素」/あなたが裁判員だったら死刑判決を下せますか!? 「和歌山毒カレー事件」全真相」(pp.18-31)。

 江川昭子さん「名張ブドウ酒事件/死刑確定から37年・・・裁判所は誤りを正し、ただちに再審開始を決定せよ」(pp.18-31)。「こういう態度からは、裁判官たちの関心は、一人の無辜を救うより、過去に出された判決を維持する方にあると思わざるをえない。/最高裁も、・・・決定を支持。・・・断言した。/・・・裁判官の「常識」は、実にしばしば一般人のそれと異なる」。

 「1954年に山口県で起きた一家6人殺しの仁保事件と呼ばれる冤罪事件があります。岡部さんという当時37歳の男性が別件逮捕され、4カ月にわたる勾留の後に「自白」してしまいます。一審死刑でしたが、最高裁で差し戻しとなり、後に無罪が確定しています。/この事件は、取り調べの録音テープが残っているという点で、人がなぜ嘘の自白をするのか研究する上で貴重な資料です」(p.58)。松下センセの係わった事件。

 里見繁氏、「現役テレビプロデューサーの「取材現場発!」 冤罪・浜松幼児せっかん死事件/検察が隠し続けた自白テープ」(pp.62-81)。リード部、「冤罪に巻き込まれた一人の人間の人生を20年近くに亘って奪い続ける日本の司法制度は機能不全に陥っている。土台から腐っている」。交際中の男性を誤認逮捕。母親の折檻死事件と知りつつ、検察が隠蔽。母親の自白テープが法廷に提出されたにもかかわらず、裁判官は無視し、その後も詭弁を連発。その母親と、捜査に係る刑事との不可解な交際や、免停のもみ消し工作など無茶苦茶の連続。「「疑わしきは被告人の利益に」という刑事司法の建前は今や「風前の灯」だが、最近の科学鑑定について裁判所は「わからない理論は検察の利益に」という姿勢を貫いている。DNA鑑定などに対する裁判所の対応を見ていると、そう考えざるを得ない」。菅家利和さんの足利事件冤罪を見ても明らか。

 柳原三佳さん、「「高知白バイ死亡事件」最新速報/「本件事故は、高知県警の暴挙による重大な謀略事件である」(訴状より抜粋)/獄中で冤罪を訴える元運転手・片岡氏が、ついに県警を提訴!」(pp.92-93)。片岡さんの支援者は、「片岡さんに罪をなすりつけたことはもちろんですが、大人として、子を持つ親として許せないのは、一連の行為が22名の中学生の前で行われたということです。生徒達に警察や司法への不信感を植えつけた責任は問わなくてはなりません。大人として、同じ親として恥ずかしくはないのか!? と彼らに問いかけたいのです」。
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●『月刊誌3冊』読了(3/3)

2009年04月18日 07時16分02秒 | Weblog


『冤罪ファイル No.05(20093月号)
 巻頭インタビューは落合恵子さん「冤罪は最大の人権侵害の一つです」(pp.2-9)
 「最高裁、判決迫る/「創」篠田編集長 特別寄稿/和歌山毒カレー事件の重大局面」(pp.10-30)安田好弘弁護士の発言「カレー鍋に入っていたヒ素は135グラム、・・・濃度も大変なことになります。/・・・ヒ素に関する知識のない人だと考えるのが合理的なんです」。林夫妻の自宅への悪罵の落書き、「毒婦」などのマスコミによる烙印、理解に苦しむ・・・。
 今井恭平さん「3度の死刑判決からの生還/八海 (やかい) 事件」 ―死と隣り合わせで、無罪を勝ち取った18年―」(pp.86-116)

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