いわゆる「元徴用工」裁判の原告側は、国際世論を味方につけるべく国連への働きかけを開始した。座視すれば彼らの思いのままとなる。私が所属する「国際歴史論戦研究所」では6月末、代表団をスイス・ジュネーブの国連欧州本部に派遣し、国連人権理事会の場で徴用工問題をめぐり韓国に反撃した。
主要派遣メンバーは、私と、長崎県・端島(通称・軍艦島)の元島民の坂本道徳氏、韓国で徴用工問題の「ウソ」を訴えている落星台(ナクソンデ)経済研究所の李宇衍(イ・ウヨン)氏である。国連では最初に李氏が人権理事会本会議で、次のようにスピーチを行った。
「日本で働いた朝鮮人は日本人と同一賃金であり、朝鮮人に対する差別はなかった」「監禁状態や強制収容所のような抑圧体制はなく、朝鮮人は自由であった」
7月2日には、国連内でシンポジウムを開催した。
坂本氏は、集まった国連人権理事会の関係者に対し、「私の故郷である軍艦島が『地獄の島』だったという、まったく事実でないことが世界に広まって、私たちの名誉が傷つけられている。悲しいことだ」と語った。切々とした坂本氏の訴えは、参加者の胸深くに響いたに違いない。
李氏は、賃金などの具体的データをあげて差別を否定し、「慣れない朝鮮人労働者に危険な作業は一切させなかった」など、当時の実態を説明した。
最後に私が、当時、日本国民である朝鮮人を徴用することは国内法上も国際法上も合法であること、朝鮮人労働者への補償問題は日韓間の正式協定で「完全かつ最終的に解決」していることを指摘して、シンポジウムを締めくくった。
続く7月3日は、私が人権理事会本会議でスピーチを行い、韓国政府に次のように勧告するよう各国政府代表に訴えた。
「韓国の未熟な法律システムを悪用して日本人の人権を侵害することをやめよ」「1965年に日韓両国間で締結された協定を厳守せよ」
李氏はスピーチ直後から、韓国民から「死ね」などと、すさまじいバッシングを受け始めた。帰国後は地上波テレビMBCが李氏に「売国奴」の烙印(らくいん)を押し、彼の事務所には暴漢が現れて罵声を浴びせ脅迫した。
しかし、彼は全くひるまない。韓国人が真実の歴史を知ることが日韓の断絶を防ぎ、「韓国の赤化を阻止する」という確固たる信念があるからだ。
われわれの活動は先制効果を上げたが、これから韓国政府は国連で巻き返しに出るだろう。政府自体が反日暴走を続ける韓国に、民間の力だけで対抗するのは限界がある。
日本政府は自ら表に立って「徴用工問題のウソ」を国連から世界に発信し、日本の名誉と国益を守るべく全力を尽くしてほしい。
■松木國俊(まつき・くにとし) 朝鮮近現代史研究所所長。1950年、熊本県生まれ。73年、慶応大学を卒業し、豊田通商に入社。直後から韓国担当を務め、80~84年、ソウル事務所に駐在する。秘書室次長、機械部次長を経て、2000年に退社。松木商事を設立する。韓国問題を長く研究しており、「慰安婦の真実国民運動」前幹事長。著書に『こうして捏造された韓国「千年の恨み」』(ワック)、『日本が忘れ韓国が隠したがる 本当は素晴らしかった韓国の歴史』(ハート出版)など。
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