あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

麗しのうつわー日本やきもの名品選 ・出光美術館

2010-02-06 15:35:19 | 日本美術
館内は4つの章立てになっていて、

静かにその世界へと導かれる。

Ⅰ 京の美 -艶やかなる宴
  
  京といえば、仁清と乾山。
  この二人の逸品が迎えてくれるというゴージャスに
  震える。
  所々に特徴的な色図がパネルになって、
  そのサイズに合わせてライティングされている。
  なんとも心憎い演出。
  解説もわかりやすく、不勉強を支えてくれる。
  仁清の「色絵梅花文四方香炉」は頂上に兎、
  脇を象さんが香炉を力持ち発揮で支えている。
  じつに愛らしい。
  サントリー美に獅子の大振りな香炉が出ていたが、
  この人の作には実直で真面目でそして艶やかが滲む。
  轆轤名人といわれる所以のとおり、作品のフォルムの
  ぶれのなさは右に出る人が見つからない。
  京焼きの元祖なのだ。
  遠目でも仁清と判る「色絵芥子文壷」が堂々と
  スポットライトを浴びていた。

  乾山。
  愛玩せずにはいられない親しみやすさが溢れる。
  様々な試みをした本人もさぞ楽しかったに違いない。
  その作品を初めてみた人の驚愕と絶賛が聞こえてくるようだ。
  紙に書いていた絵巻が陶板になって現れたり、
  漆器の中で評判だったろう、蒔絵の花鳥たちが
  鉢になったり、皿になったり、向付になったり。
  新しいやきものの道を作った人だと思っている。
  それは近くにいた光琳たちの世界と大きく結びついていった。
  ころんとした「色絵牡丹文壷」や、
  出光のお宝、松波文の蓋ものと似た、
  「錆絵染付白彩薄蝶文平鉢」は初見。
  まだまだ見ていないものがあるのだと感服。

  その影響を受け、オリジナルにチャレンジした  
  道八、の色鮮やかな「色絵桜楓文鉢」
  
  光琳の「蝦蟇流水蒔絵硯箱」
  光琳の漆芸は洒脱だ。
  私は絵画より漆器を高く評価している。
 
  一段下がった屏風を腰掛けて鑑賞するところに
  銀地の紅白梅図が見える。
  酒井抱一の「紅白梅図屏風」(2月14日まで) 
  右隻は老木の紅梅図。
  苔むした太い老木が直線を効かせて厳しく
  かつ柔らかに花をつけている。
  対する左隻は白梅の若木。
  枝はまだなよやかで曲線。
  花は瑞々しい可憐な装い。
  大胆な対極を目の前にすると、
  春風に運ばれた甘い梅の香りを感じた気がした。

Ⅱ 幽玄の美 -ゆれうごく、釉と肌
  
  ここでは色絵から離れて、
  土、本来の質感を感じるコーナーとなっている。
  猿投、瀬戸、美濃、唐津の
  奈良~平安、鎌倉、室町、桃山の
  重厚な土の魅力にノックアウト。
  猿投の壷たるや、悠然とした姿に惚れ惚れした。
  絵付けとしては素朴な草文で、
  志野や、絵唐津が並び、
  古陶の雄大な威厳が光っていた。
  「絵唐津柿文三耳壷」のたっぷりとした胴のふくらみと
  のどかな柿文の姿は、
  柿の樹が丸々と生っている鄙びた自然の様子そのままだ。

Ⅲ うるおいの美 -磁器のまばゆさと彩り

  やきものの花形、色絵付けの優品。
  鍋島、古九谷、柿右衛門、古伊万里らが
  きらびやかに並ぶ。
  おめでたい気分が盛り上がる。
  今回はなぜか古九谷に目がいった。
  大胆な色の使い方、びっちり描きこみ余白を持たない、
  そんな派手な姿ではあるが、
  斬新さと、デザインの新しさに改めて絶賛したくなった。
  好みのものと、そうでないものがある極端な古九谷なのだが。
  小さな手のひらサイズのリスと葡萄の5客が可愛い。
  「色絵葡萄栗鼠文角皿」 
  「色絵瓜文大皿」皿全体に瓜の葉と実が描かれる。
  「色絵蓮葉に菱文大皿」鮮やかな菱文に蓮の葉。大胆。
  「色絵菖蒲文大皿」籠目のような文の裾に菖蒲が描かれる。
  柿右衛門の小さな水注。小さいのにきゅっとしまる色使い。
  江戸期からぐっと新しくなって、
  大正の陶器の釉薬改革者、
  波山は静かなひそやかな華やぎを釉薬の下に覆ってしまった。
  端正な作品群。

Ⅳ いつくしむ美 -掌中の茶碗

  ここでは茶器の名品。
  長次郎から始まり、ノンカウ、慶入、乾山、仁清
  波山の天目茶碗まで。
  長次郎の茶碗はじつに禅だと思う。
  若い雲水たちの茶事を想像して似合うだろうなぁと。
  道入の赤楽 酒呑童子、黒楽 此花は
  いかにもノンカウらしい~。
  織部のかわいらしい香合も目が細くなる。

いいものをじっくり鑑賞できる展開に
出光の底力。感服いたしました。
感謝申し上げます。
  
2月16日からは、屏風が入れ替わったり、私のあこがれ、小川破笠の硯箱
などが出展。
朝夕庵では仙の書。
「こち吹けは もろこしまでも にほひけん
  梅の主の 袖の一枝」

それだけで早春の香りがするしつらいとなっていた。
茶器の銘も梅が付くものシリーズ。

日本の自然と共に、時代のうねりを潜り抜け
裕福な時間を経て数奇な運命を感じられる
深々とした質の高い展覧です。
もちろん、後期も破笠を確かめに行くつもりです。

ぜひ、お見逃しのなきよう。
3月22日まで。
私の記念すべき誕生日までとは嬉しいじゃないですか。      

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (一村雨)
2010-02-09 05:14:26
日本の焼き物を堪能しました。
雑器からテクニックを駆使した超芸術品まで
本当に幅広いですね。
返信する
322は見ににor見つつ と読むべきか (遊行七恵)
2010-02-09 12:43:19
こんにちは
さすが出光!とうなるばかりのいい展覧会でした。これはもぉホント好きなヒトには極楽、展覧会に関心のないヒトにも「・・・いいな」と思うに違い良い内容でしたね。
わたしは好きなものが多く出ていて、本当に歓喜しました。
返信する
一村雨 さま (あべまつ )
2010-02-09 14:50:31
こんにちは。

>日本の焼き物を堪能しました。

まったく、そのとおりでした。
やきものの本を買い始めたときの
喜びもよみがえってきました。
しかし、本当に充実のラインナップ。
文句の言いようがありませんでした。
返信する
遊行 さま (あべまつ)
2010-02-09 14:56:17
こんにちは。

322は見つつ。でいきましょうか。

いつまでもそこにいたい、そんな気持ちになった至福の展覧会でした。
出光に住んでもいいとさえ!!
沢山の方々に見て欲しいと思いました。
返信する
Unknown (oki)
2010-02-10 22:40:38
こんばんは、お久しぶりです。
出光は日本美術に定評がありますが、出光左三が晩年にルオーとかムンクとか集めたのがなんか失敗だったようなー。
ちょうど三菱一号館も開館しますし、出光もルオーやムンクで展覧会開く訳にもいかなくなるでしょう、日本美術路線走るしかない。するとルオーやムンクは出光美術館所蔵展覧会として地方でやるしかないのかな。
今回の展覧会は出光からのメルマガによると図録ガ2500円取られるんですね、行くかどうか迷い中。
返信する
Unknown (あおひー)
2010-02-11 22:46:32
こんばんは。

さっと見て終わるつもりだったのですが、結局のところ二巡してしまいました。

今回は波山が収穫でした。
現代にも通用する美しさでしたね。
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oki  さま (あべまつ)
2010-02-12 21:24:20
こんばんは。

自分の花展のことでばたついており、
お返事遅くてすみませんでした。

一昨年でしたか、ルオーの大々的個展を出光でやって、ここが出光かと思うような寡黙な宗教的な雰囲気に変わりました。
収集はその人、そんな気がしました。
今回の図録はやきものの基本編図録としてもとてもいいできでしたよ。贅沢だと思って私は断念したのですが。
個人的には超お勧めです!!ぜひ。
返信する
あおひー さま (あべまつ)
2010-02-12 21:26:55
こんばんは。

ちょっとお花の展覧会でばたついておりまして、お返事遅くて失礼しました。

波山の可憐な色にベールをかけてしまうtころ、
まったくの新しい絵付けに驚かされますね。
後期も覗きに行くつもりです。
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