門外不出の「白菜」奇跡の出品!!
皇帝の至宝 186件、台北から初来日。
この台北故宮展覧会を心待ちにしていました。
その中の「白菜」は現地でも人気スターで
行列順番で見ることとなっているようです。
仕事がらみで台湾に行った20年前に
ありがたく故宮博物院にいくことが叶って、
とても興奮して見てきたことが思い出されます。
当時はまだ今ほど「白菜」並んで見るほどではなかったのですが、
それでも擬態の豚の角煮「肉形石」と並んで人気の作品でした。
それよりも汝窯の優品を見ることができた感激が
大きかったのでした。
今回、その「白菜」が初来日でエライいことになりました。
この至宝展示ために東博は本館特別5室を一部屋つかって
厳重な鑑賞現場を作りました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ展の「受胎告知」一点だけの展示は
この特別第5室でした。
そんなに大変な事になるとは思ってもみなかったのですが、
開催されると同時に本館横に張り巡らされたテントに長蛇の列。
Twitterアプリで現場の状況をつかめる世の中になって
便利になりましたが、それにしても
マックスで「240分」という待ち時間を見て仰天しました。
ツイートで台湾に行ける時間だわ、とのコメントをみつけて苦笑いでした。
さて、どうしましょうと悩んだ結果、
最終日の7日まで休まずに夜8時まで開館しているということ、
これは月曜日の夕方が一番の穴場だと確信して
もし、長蛇の列で「白菜」の持久戦を諦めたとしても、
平成館の展示をしっかり見ようと気合いを入れて行ってきました。
6月30日、東博に着いたのが3時半頃。
本館の周りにテントが張り巡らされ、
途中には水分補給のテーブルも設置されて万全の取り組みです。
待ち時間は「120」分という看板。
平成館のほうに伸びるテントの中に粛々と待つ人の行列が見えました。
むむ、これは「白菜」は諦めようと思って平成館の至宝に
たっぷり時間をかけられると思ったのでした。
平成館を出てきたのが5時過ぎ。
テントはどうなったかと確認すると、ややや、これは
短気の私でも我慢できそうな60分の看板が。
こんな事もあろうかと、晩ご飯をカレーに仕込んできたので、
ギリギリ7時すぎに帰宅してもなんとかなりそう。
息子の帰りはもっと遅いので、なんとかなる、
そんな胸算用をしながら、列に加わることにしました。
しばらくで本館から館内に入ることができて、
これは嬉しいじゃないかと中に入ると、
なんと、ここでも行列整理の一室が設けられ、
忍耐と持久戦力のある人々の真面目さに感動しながら、
色々なおしゃべりが聞こえてくる中
至宝のビデオを眺めたり、時々現場の方がアナウンスされることを
聞いたりして順番を待つのでした。
さてさて、いざ、5室に入りましたら、
またまた行列の渦が待ち構えています。
室内は暗くなり、壁面に大きめのスクリーンに「白菜」のビデオが
流れています。
5室の前方右手に黒い円柱の壁が見えます。
窓が開けられ、中の様子が外からも覗けます。
あぁ、今入った人たちはどのくらいの人数で
どのくらい楽しませてもらえるか、外から確認できる仕組みです。
円柱の展示ブースの中に20人程度の人が入って、
まずは「白菜」のすぐおそばで鑑賞して2~3分たったらその周りに
まわってしばらく1メートル至近でもう一度鑑賞することができるようです。
テーマパーク化しているとはいえ、
うまく大勢の人を裁く工夫がされていることに感心しました。
順番が迫ってくる、それだけでも胸が高鳴ります。
そりゃ、既に待ちぼうけ一時間以上経過していますから。
さ、いよいよ対面です。
至近距離で張り付いて裏側からもしっかり凝視。
白菜の葉脈も透ける肌合いも、
緑に光る翡翠の輝きも鮮やかなこと。
現地よりも照明の所為でしょうか、とてもまぶしく映りました。
あっという間の約一時間。
諦めないで見た、持久戦に参加できたことの
達成感みたいなものが押し寄せてきました。
時計は6時半を回っています。
シンデレラ時間のように、
慌てて日常へ戻っていったのでした。
芸術新潮2007年1月号台北故宮博物院の秘密 誌面から
そして、この翡翠玉のお話を少し。
*翠玉白菜
清(19世紀)高さ 18,7センチ
白と緑の翡翠を材料に、
清らかさの象徴である白菜と多産のあらわすキリギリス、イナゴを彫刻、
光緒帝の墐妃の嫁入り道具とされています。
というプロフィールをさっと流すだけでは
きっと西太后が存命中の恐ろしい時代、毒殺やら横行していた怖い時代、
選ばれた妃となってもけっして幸せな安泰の時を過ごしていたとは思えないのです。
光緒帝は西太后の妹の息子、続く戦争などの困難時流に振り回され、
西太后にものをいえない立場となっても
国を立て直そうという意識もあった上で、墐妃を娶るのです。
それも、清らかで多産であるようにとの願いが
光緒帝妃としてどれだけ重たい任務となっただろうかと、
背筋がぞっとするのでした。
それだけに、白と緑のコントラストが美しく、
玉作品としての最高峰、といわれても、壊れて処刑が待っているのではないかとか、
ハラハラする思いも巡ってきます。
西太后の癇癪は信長に似ているようで恐ろしい限りです。
この玉を支えている細工物にも注目します。
日本での盆栽のように、「盆景」と呼ばれるものだと思います。
嫁入り道具の格付けとしても素晴らしい盆となっています。
対する、角煮の「肉形石」の台は黄金に輝く波の形となっています。
石を支える盆の形にも注目すると面白いです。
さてさて、本日七夕、「白菜」の見納めのラストデイです。
私はご縁あって、20年前台湾に行った知人達と邂逅の時をご一緒することとなりました。
なんとも巡り合わせという意味で
不思議な七夕の夜となりそうです。
お楽しみになれなかった方はぜひ、台湾へ。
また、九州国立博物館には「白菜」にかわって
「肉形石」角煮がきてくれるそうです。
まだまだもの凄いお宝が東博で開催中です。
本当にもの凄いお宝なので、ぜひぜひお出かけしてみて下さい。
本館、東洋館も気合い入っています。
「白菜」がお帰りにあった後でも
9月15日まで、神品至宝が鑑賞できます。
お返事遅くなりました。
白菜レポ、ご覧くださり、嬉しいです。
実はこの白菜にも劣らない刺繍や玉など超絶技巧が東博平成館で展覧中なので、あともう一回は拝みに行きたいと思っています。日本も負けてない超絶技巧ありますしね!