阿部ブログ

日々思うこと

日本の電力周波数問題

2011年03月26日 | 日記
東日本大震災以降、福島原発からの電力供給が減少した為、関東圏で電力供給を維持するための努力が続けられている。だが、電力開発黎明期の電力システムが残した遺産によって、西日本からの電力供給という手段が困難なものとなっている。

ご存知の通り西日本は60Hzの交流電源を使用しており、東日本は50Hzの交流電源を使用している。これは当時の東京電燈が50ヘルツのドイツ製発電機を使用し、片や大阪電燈は、米国標準である60ヘルツのGE社製の発電機を使用した事が淵源となっている。

この奇妙な状態が解消される事無く現在に至っているが、3.11で頼みの原発からの電力供給停止ともない、また福島第一原発の第1~第4は多分廃炉になるだろうから、今後の安定的な電力供給を行うには、周波数の異なる電力網を接続することが必要だが、それには周波数変換が必要で、この変換所では最大1ギガワットの電力しか処理できないのだ。

地震発生後、東日本の原発は福島第一原子力発電所で稼働していた3基を含め、合計11基の原子炉が停止し、東京電力と東北電力の電力生産量の9.7ギガワットの電力供給が停止した。
第二次世界大戦直後、復興にあわせて商用電源周波数を統一するという構想があったが、復興が急速に進んだことで実現がほぼ不可能になってしまったとされる。一国内に50Hz地域と60Hz地域が混在する例は極めて珍しく、地方によって厳然と周波数が違うのは日本くらいと言ってよい。

東西の周波数を統一するには、どちらか一方の発電機を総て交換しなければならない。若しくは周波数を変換する設備を組むなどが必要であるが、コストの問題もあるが、周波数を変更するには当然停電が伴う。また周波数に依存する機器の交換も必要。既に配電自動化を含め最先端の電力網を構築し運用してきた日本であるが、周波数の統一は現実的には殆ど不可能に近い。

現在の電力相互融通のための周波数変換所としては、電源開発の佐久間周波数変換所と東京電力の新信濃変電所。中部電力の東清水変電所3箇所であるが、融通可能な電力は佐久間変電所は最高30万kW、新信濃変電所60万kW、東清水変電所10万kW(現在仮運用中、設計30万kW)。これにより東日本側が 154kV、西側が275kVで連系される。
前述の通り、上記3変電所により変換できる最大電力は100万kWで東清水変電所が本運用になっても120万kWに過ぎない。

面白い例は東海道新幹線である。JR東海の東海道新幹線は、富士川以東では浜松町・綱島・西相模・沼津の4箇所で周波数変換を行っている。この変電所では東京電力から受電する50Hzを60Hzへ変換している。当然ながら新富士駅から東京駅までは50Hz。

政府電力業界共に電力周波数が違うことの問題は認識されてきたが、日本の得意技、所謂「問題先送り」により今回の重大事を招来している。

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