阿部ブログ

日々思うこと

廃炉措置中の新型転換炉「ふげん」を視察

2013年12月12日 | 雑感
福井県敦賀市にある独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)の原子炉廃止措置研究開発センターでは、「ふげん」の廃炉作業中。「ふげん」は25年間稼働していた。
        

「ふげん」は勿論、普賢菩薩の普賢。敦賀半島の突端には、三人寄れば何とかの文殊菩薩こと「もんじゅ」が立地している。「もんじゅ」は言わずと知れた高速増殖炉。しかし、この名前は一般に誤解を与える言葉の典型。高速には増殖しないからだ。高速は、高速中性子を使うからであり、プルトニウムが初期比で1.2に増えるから増殖。つまり正確に命名するならば「高速中性子・低速増殖炉」となる。
確か「ふげん」、「もんじゅ」両菩薩は、お釈迦様の両脇に控える菩薩様だったような気がするが・・・もし新型の「高速中性子・低速増殖炉」が作られると仮定すると、この新型炉の名前は、もしかして~   

さて、視察した「ふげん」は新型転換炉(Advanced Thermal Reactor:ATR)と呼ばれる型式の原子炉で、稼働当初は、アメリカから買ってきたプルトニウムを装荷し運転した炉。「ふげん」は結局、25年間稼働し、その間、様々なプルトニウムやウランの化学的データの収集を行った。この実績は、黎明期にあった我が国における原子力産業にとっては、極めて有意義なものであった。この「ふげん」が運転を停止し、廃炉作業中と言う点、特に商用運転した原発としては、浜岡第一、第二原発、東海原発と共に、廃炉が検討されている40年越えの原発の廃炉作業にとって極めて意義のあるプロジェクトであり、重水を用いた原発としては日本初だ。
福島第一原発では、水爆の原料になるトリチウム(三重水素)の問題が顕在化しているが、「ふげん」においては重水からトリチウムを除去して、精製した重水をカナダに輸出している実績を有する事から、トリチウム除去技術の横展開が期待されている。先進各国が原子力黎明期に建設した原発が今後廃炉に直面する事から、関連ビジネスの拡大が想定され、如何に安全に短期間かつ低コストで廃炉を行うかが注目される。

視察に行って初めて知ったが「ふげん」は、日本が独自開発した炉形式で、昭和53年に初臨界に達した。この新型転換炉「ふげん」は、重水減速沸騰軽水冷却圧力管型炉。燃料に天然 ウランが直接使用できることや、減速材に液体ナトリウムを使用する高速増殖炉(FBR)に比べて構造が単純で通常の原発プラントに応用が容易である点などの特徴を持つ。

      

「ふげん」は、平成2年以降、MOX燃料(プルトニウム・ウラン混合の酸化燃料)の燃焼実験にも使用され、世界最大のMOX燃料装荷炉として様々なデータ収集に貢献した。「ふげん」は、最終的に、平成15年3月の運転終了までに772体のMOX燃料と、ウラン燃料集合体(UO2燃料)の装荷687体。合計1459体の燃料を79回に渡って受け入れた。MOX燃料は、BU型輸送容器に2対ずつ収納、最大12基24体がトラック4台に積載され搬入される。UO2燃料もA型輸送容器に2体、最大15基30体がトラック4台に積載され、これまた搬入された。「ふげん」は、核分裂性プルトニウム1355kgを含む1845kgのプルトニウムを装荷し、25年の稼働により総発電電力量219億2400万kWh、総発電時間13万7000時間、平均設備利用率62%、平均点検日数は113日、標準燃料の取出平均燃焼度は12880MWd/t。

                    

大きな事故を引き起こすことなく廃炉措置となった「ふげん」は、福島第一原発のBWRと同じように原子炉で発生した蒸気をそのままタービンに送り込み発電する仕組みで、重水関連の施設を別にするとBWRとほぼ同じ仕組み。その重水に関しては稼働開始時195トンを海外から輸入して対応した。カールスルーエ研究所からアメリカ国籍の重水160トンを輸入し、これと別にアメリカから17トン、ノルウェー16トン、中国から5トンをそれぞれ輸入して稼働開始に漕ぎつけている。ふげんの運転終了後の重水は、トリチウム(三重水素)を除去した後、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社に移転しており、視察の際にも最後の搬出となるドラム缶が施設内に安置されていた。OPG社に搬出される重水の総量は240トンとされる。

上記の実績を有する「ふげん」であるが平成7年に原型炉に次ぐ実証炉建設が中止されたことに伴い、ATRの研究プログラムそのものも中止され、研究と運転そのものも、前述の通り平成15年3月に終了した。現在は、廃止措置が本格的に開始され、国内の発電可能な大型炉としては、平成13年から廃止措置が取られている日本原子力発電東海発電所(黒鉛減速ガス冷却炉)に次ぐものとなる。しかし、世界的に見れば、「ふげん」のような重水炉は、カナダが開発したCANDU炉(カナダ型加圧重水炉)を代表として 世界各国で運転されており、天然ウランが燃焼できる点以外にも、今後有望視されているトリウムを重水炉の燃料とすることで、ウラン233の生産が可能な点に注目が集まり、インドや中国で研究開発が進んでいる。一方、重水の生産コストの高さや、稼働率の低さ、生産されるプルトニウムの扱いなどが問題になってはいる。

「ふげん」の開発には約 925億円が投入され,建設費と 25年間の 運転経費の合計は約 3,600億円。発電による収入は約 2,065億円。解体とそれに伴う廃棄物処理費用,更に解体終了までの施設管理に要する費用は合計で約2000億円と推定されている。ちなみに廃炉だけにかかる費用は750億円としているが、この数字を見れば原子力発電は廃炉と使用済み核燃料の後処理を考えると経済的にペイしない事はあきらかだ。

この廃炉作業で出る廃棄物約36万1800トンのうち、これまでに7720トンを撤去。タービンを回した蒸気を冷やして水に戻す復水器をビニールシート越しに公開。高さ15メートル、幅7メートル、奥行き15メートルの構造物が左右対称に2つあったらしいが、原形は既にない。しかし復水器の解体はあと3年かかる。タイミングが良ければ、ビニールハウス内で作業員が高圧水を使い、解体された配管や弁などを除染している様子も見れるとの事であるが今回はなし。残念~
原子力機構は、廃炉作業で得られた技術を東京電力福島第1原発の事故処理などに生かしたい考え。原子炉本体は放射線の遮へいのため上部にプールを設け23年度から解体する計画。レーザーを使い遠隔操作により切断する技術開発を進めているそうだ。
それと「ふげん」には466体の使用済み核燃料が今も敷地内に残っており、東日本大震災などの影響で東海再処理施設(茨城県)の稼働が遅れたため、搬出は先延ばしされ続けている。早ければ今年、2013年度後半にも搬出を再開したい意向とのことだ。

最後に↓

     

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