阿部ブログ

日々思うこと

キャノングローバル戦略研 『排他的経済水域における安全保障と産業活動』 ~その3~

2011年11月23日 | 日記
日本がリードする海底資源開発 ~海洋を産業フロンティアに~

大阪府立大学 大学院工学研究科 海洋システム工学分野・山崎哲生教授)

・海洋ポテンシャルを産業に如何につなげていくのかが課題。今後の日本における海洋産業を立ち上げ育成する事が大切。

・最近では忘れ去られているが世界に冠たる石見銀山、明治維新後の富国強兵を支えたのは国内石炭産業と金属鉱山の存在が大きい。また戦後復興をになったのは鉱業であった事は最初に述べておきたい。

・最近では、資源メジャーが海洋資源、特に枯渇が懸念されているベースメタル「銅」などの資源開発に関心を示している。

・海底資源開発を産業化するためには、全体の産業戦略があり、海外進出の戦略を立案する事が重要である。この時、誰が主体となるのか?従来だと日本の機器メーカーが主体となる場合が殆どであるが、言わば彼らはツールを提供するだけ、本来ならば海洋産業分野でビジネスをやる人・組織が主体とならねば本当の意義あるプロジェクトの展開は難しいだろう。これは省庁の縦割りもあり、これは実に頭の痛い問題である。 

・日本は特に海底熱水鉱床開発を促進するべき。またREE開発も積極的に投資&開発を行うべし。但し加藤先生が既に講演されているので、これ以上述べないが、違う視点からだとニュージーランドは農業国であるがゆえに中国依存度が高い燐酸など肥料の継続的な確保に懸念を示している。これが為、海山の団塊上で存在するリン酸塩鉱石を自国のEEZ内で採取する事を検討するなど興味深い取組みの事例も散見される。 

・近年銅の価格を見るとREE並みに高騰しており、これは高成長を続ける中国、インドなど新興国の需要が劇的に伸びている事に原因がある。

・このままだと銅不足による経済成長の足枷になるのではないかと懸念されている。実は「銅」は、ニッケル、コバルトに匹敵するレアメタルである。既に主要な銅山では採掘鉱石の0.5%~0.6%程度の低品位鉱を採掘せざるおえない状況にある。つまり需要増加が低品位化を促進している。

・鉱山開発においては、インフラ整備から必要な奥地、高地での開発によるコスト増が資源メジャーを悩ませている。また採算性を確保することもママならないため、経営にも多大な影響とリスクが存在する。今後の陸上における鉱物資源開発は採算ベースを確保するのは極めて難しい環境となるだろう。最近でもアフガニスタンで大規模な銅鉱床が発見され、中国が権益を確保したが、戦争状況にある他、インフラ整備からはじめないと駄目で多大な投資と時間が必要。それと採掘から発生する酸性廃棄物は現地に残地されており、その内顕在化する大きな問題である。

・日本EEZ域内における海底資源の推定賦存量は貨幣価値にして300兆円を超えると推定されている。しかしこれは海底資源を回収する意思と実行が伴わないと意味がない数字。特に海底熱水鉱床は世界第一位、コバルトリッチクラストは世界第二位である。特にコバルトリッチクラストは、REE資源埋蔵泥の近傍に存在するし、そもそもREEを含有してもいる。基本的に海底鉱物資源は、金属成分が多く、しかも多品種の元素を得ることができるので、非常に資源獲得手段として効率的である。

・極めて有望なポテンシャルを有する海底資源開発をオールジャパン体制でスピード感を持ってやること。そうしないと日本は茹で蛙になる可能性が高い。中国や韓国など着実に歩む亀にもそのうち追い越されるだろうし、危機感を募らせている。

・前述の通り海洋開発実施主体を明確にすること。また国としては「海洋開発庁」を新たに創設し予算要求と執行主体の一体化を図ること。更には培った海洋技術を海外で展開する事を念頭に事業を行い、EEZ域内は当然の事、太平洋での海洋産業覇権の確立を目指すべきである。

・意外な事にコバルトのマーケットは規模はREEより小さい。海底資源開発を行う際に金属の含有バランスを考えて採取量を定めるなど戦略方針が事前に必要で、特に陸上産出国を破綻させず、海洋資源開発をする方向性が一番望まれるやり方である。

・私見としては、①陸上の資源メジャーとの協調的開発を行うパターン、②圧倒的な産出量による現状の金属資源市場を破壊するパターン、③国内限定の公共事業としての展開パターンの3つが想定されるが、現実的には①だろうし、行く行くは海洋資源メジャーを目指す企業体を日本として生み出すのであれば国際協調は避けて通れない。

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