阿部ブログ

日々思うこと

核廃棄物の分離変換処理~核廃棄物は人類の手に余る

2011年11月20日 | 日記
東海大学・原子力工学科の高木直行教授から勧められて『総説 分離変換工学』(本体・税・送料込み4600円:原子力学会、2004年)と言う書籍を読み進めている。

分離変換工学(Overview of Partitioning Transmutation Technology Development)とは、原子力発電システムから生じる長寿命核種を分離し、核反応によって短命核種、あるいは安定核種に核変換する技術で、現在大きな問題となっている放射性廃棄物の存続期間を短縮するとともに、高レベル放射性廃棄物の減量を実現するもの。

核変換技術で研究例が多く、比較的有望とされる方法が示されている。
即ち①高速炉による核変換、②軽水炉による核変換、③加速器を用いた核変換の3つである。最後の加速器とは「加速器駆動未臨界炉システム(ADS)」であるが、これが今のところ一番期待される技術らしい。
このADSの記述の一部に「溶融塩炉熱中性子システム」がある。溶融塩炉は言わずと知れたオークリッジ国立研究所で開発された実験炉MSREの事だ。この溶融塩炉に核変換の対象物であるマイナアクチニド(MA)溶かし込み、これに陽子や中性子を加速器で照射して核変換させる、と言うもの。
加速器を使っての核変換は、従来の原子炉では許容されなかった燃料成分構成でも対応出来る利点がある為、核変換専用システムとしては高いポテンシャルがるとされる。
だが、しかし同書を読み進めていくと、どれもこれお決め手に欠けるとがよく分かる。
この『総説 分離変換工学』の2章にも簡単に書かれているが、従来の研究の延長にはない核変換・分離の研究があってしかるべきだ。その例として①極限環境を利用した核変換処理、②レーザーを利用した核変換処理、③電子はぎ取りによる核変換処理、④その他の新方式による核変換処理、などだ。
個人的には③の電子はぎ取りと、④の新方式による核変換処理に期待したい。特にブラック・ライト・プロセスに注目したいと考えている。

さて、やはりエンリコ・フェルミが予言した通り、放射性廃棄物の処理と処分は人類最大の負担となっている、特に日本においては。
福島第1原発事故が無くとも、既に大きな問題となっていた放射性廃棄物処理の問題。これは格段に大きな問題として日本政府、電力会社に重くのし掛かる。

確実に福島第1原発の第1号炉から3号炉までは確実に廃炉だろうし、4号炉は今後使われることは無いだろう。つまり福島第一原子力発電所全部が解体・廃棄される事となるだろう。そうなれば、福島第1原発から出る放射性廃棄物の量は想像を絶する。
既存原発の廃棄物保管施設も限界に来ており、ましては最終処分場など存在していない。(幌延で穴は掘っているものの実際の廃棄物は搬入しない取り決めを自治体と締結している)
炉心溶融していること確実な1号炉、2号炉、3号炉から出る高レベル放射性物質の扱いは極めて頭の痛い問題だ。しかも3号炉ではMOX燃料を使っているため、厄介なプルトニウム問題にも対処せねばならない。

『総説 分離変換工学』を読んで分かる事は、やはり原子力は人類の手に余ると言う事実。この本に書かれている分離変換技術が確立する事があっても決し放射性廃棄物がゼロになる事はないからだ。
やはり従来の研究成果に捕らわれない、新たな核変換処理技術の探索が必要だと改めて再認識した次第。

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