阿部ブログ

日々思うこと

『高木惣吉 日記と情報』を入手~陸軍から政財界の動きが詳細に書かれている~

2016年12月31日 | 雑感
海軍の情報将校だった高木惣吉の日記を入手した。みすず書房刊で2冊本である。既に毎日新聞社刊の『高木惣吉日記~日独伊三国同盟と東条内閣打倒~』は入手済みだが、残念ながら昭和14年と昭和19年、昭和20年の3年間のみ。副題にある通り、三国同盟の時期と、終戦に至る時期に限定されている。今回入手したみすず書房の『高木惣吉 日記と情報』は昭和12年から昭和20年まで。

さて早速、昭和14年のパートを比較しながら両書を読み始める。

まず両書の違いにビックリする。
毎日新聞社刊の『高木惣吉日記』には米国、英国、支那の外交暗号解読文が掲載されている。これは海軍省内の情報部門を中心に回覧されていたものを高木大佐(当時)は丁寧に転記しており、極めて興味深い。陸軍も外交電報を解読していたが、暗号解読には5日程度で解読しており、高木大佐の手元に届くのに10日から20日で回ってきたようだ。外交電報の緊急レベルで解読順位は異なるが、米英に比べると時間が掛かっていたかもしれないが、同じレベルである。
米国務省の暗号は、グレー、ブラウン、A1、B1、C1、D1、M138という暗号構成で、陸軍は、海軍が解読出来ていないストリップ暗号も開戦前に解読しており、米国、英国、ソビエト、オランダ、支那などの暗号も解読していた。日本は国務省の暗号電文から米国の外交政策は正確に把握しており、日米の外交は相互に筒抜けだった。

この外交暗号電文が『高木惣吉 日記と情報』には一切掲載されていない。これは何なんだろうか? 元は一緒じゃないのか?
『高木惣吉 日記と情報』で暗号解読に関する記述があるのは昭和14年7月20日(木)である。「特情研究。」と1行だけ書いてある。特情とは特種情報の略で暗号解読のこと。特殊ではない。
この日の『高木惣吉日記』には7通の外交解読電報が掲載されている。下記電報は全て7月15日発の電文である。
(1)駐支米国大使発→米国国務長官宛(暗号、平文)
(2)駐日米国大使発→  同上   ×3通(極秘暗号1通、暗号電文2通)
(3)米国務長官発 →駐日米国大使宛(暗号電文)
(4)駐日英国大使発→英国外務大臣宛×2通(暗号電文)


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