阿部ブログ

日々思うこと

第五次エネルギー基本計画の策定と今後の原子力政策の方向性

2018年01月16日 | 雑感

現在、経済産業省に於いて、3年毎に見直される、次のエネルギー基本計画の策定作業が山場を迎えている。第五次となる基本計画では、「高速増殖炉もんじゅ」の廃炉決定後の原子力政策と核燃料サイクルをどのように着地させるかが、最大の焦点である。特に使用済み核燃料問題は、非常に深刻で原発再稼働をしても、早晩、使用済み核燃料プールが一杯となり、再処理工場の再開の目途立っておらず、しかも最終処分地も決まっていない事から、それ以降、原子炉による発電が出来ない状態に陥るからである。これに関しては、関西電力社長が、使用済み核燃料の最終処分地に就いてはこの2年で決着させるとの発言をしているとの情報もあるが、このような発言が出るほどに重要かつ喫緊の問題となっている。
このようなエネルギー政策の行き詰まりの打開策を模索する動きがあった。12月6日、自民党本部において新型エネルギー検討委員会が、国会議員十数名と関係省庁課長級を集めて開催され、日本では溜まる一方の使用済み核燃料を燃料とする米国の次世代原子力技術の紹介が行なわれた。米国は、2016年秋に核燃料戦略を大きく転換し、低コストで発電や水素製造が可能な小型原子力プラントの開発を推進している。この米国の戦略転換は、日米のエネルギー連携にも影響を与えており、先のトランプ大統領との日米首脳会談(11月6日)後の政府間会議において締結された「日米戦略エネルギーパートナーシップ」(Japan-United States. Strategic Energy Partnership)覚書が締結され、その中にはにおいて、より安全で核拡散抵抗性の高い先進的な原子力技術(小型原子炉)の促進が優先事項に掲げられ、重点地域として、東南アジア、南アジア、サブサハラアフリカが明記された。既に日本政府は、5月のG7伊勢志摩サミットにおいて、今後5 年間で総額約2000億ドル規模のインフラ投資を実施することを決定しており、欧米・中国で開発が進められている小型原子炉開発(溶融塩炉)に日本も乗り出すとの憶測もある。
来年発表される第五次エネルギー基本計画においては、大まかな政策方針と基盤技術などが提示され、2020年以降に出される第六次エネルギー基本計画では、今後30年間のエネルギー政策の方向性と新型エネルギー技術の開発ロードマップなど詳細な計画が提示されることになる。冒頭に述べた通り、日本のエネルギー政策は、大きなターニングポイントに差し掛かっており、政策立案状況や次世代エネルギー技術の動向等に関する情報収集を強化し、抜本的な政策変更などに対処できる体制整備等の準備が必要である。