一般社団法人日本原子力学会が、福島第一原子力発電所事故~その全貌と明日に向けた提言~と題して最終報告書報告会を、3月8日(土)新橋のヤクルトホールで行った。
この報告会では報告書『福島第一原子力発電所事故 その全貌と明日に向けた提言』が頒布価格2000円で配られた。定価は2500円。今週の後半には一般書店に並ぶとの事。
原子力学会の最終報告が事故から3年の節目と言える時期に出され、遅いとの指摘を受けつつも、ようやく最終報告まで漕ぎ着けた。これで主要な調査報告は出そろった事になる。
①国会事故調:東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(2012年7月5日)
②政府事故調:東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(2012年7月23日)
③民間事故調:福島原発事故独立検証委員会(2012年2月27日)←目次のみ
④東電事故調:福島原子力事故調査委員会(2012年6月20日)
⑤学会事故調:東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会(2014年3月8日)←中間報告
第5番目の事故調査報告書となる日本原子力学会の最終報告は、原発事故を専門的な立場から検証するため2011年8月には発足していたが、昨年3月の中間報告を踏まえようやく最終報告書の公表に至った。先行する事故調査報告書とその内容や批判、論評も咀嚼した上での原因分析と提言であり、原子力の専門家集団としての尖がった意見や提言が一切なく、無味乾燥な発表に終始した田中知氏の発表と学会の提言には深く失望。活動原資となる基金が枯渇しつつあるとの事だが、科学的知見に基づいた技術者としての批判精神を忘れた専門集団に活動継続の余地などあろうはずがない。
この最終報告書では、日本原子力学会について、原子力やそれに係る学術的活動は前述の科学的観点から中立的であることが社会から求められているにもかかわらず、原子力を推進する政府や電力会社など特定の組織と、原発利益集団のための安全神話構築と宣撫活動に終始し、原子力専門家に対する日本国民の信頼を裏切った反省の弁を書いている。
学会事故調は、地震や津波などの自然災害や設計で想定していた以上の深刻な事故への備えについて、研究の成果を対策に反映できていなかったなどと指摘しているが、これは嘘。福島沖での地震に関しては東京電力側が懸念を表明しており、きちんとした調査を要求していた。原子力とは違う分野ではあるが、自然災害への理解や中立性を守る努力が足りなかったとの指摘は正しくない。また地震や津波以外の領域においても原子力の専門家としての役割、特にリスク評価や災害対策において、明らかに検討不足やリスクを顧みない政府、電力会社への勇気ある指摘と助言を怠った原子力専門家集団の罪は極めて重い。
提言にはシミュレーションによる分析や予測などに力をいれるべきとの項目もある。特にメルトダウンがどのように進んだかの分析結果や、原子力研究機関やIAEAが行った調査で見方が分かれているおり、地震の揺れによる影響について「原子炉の安全機能に深刻な影響を与える損傷はなかった」という見解を示している。配管のお化けである原子炉施設が送電線も倒れる揺れに、配管網が正常な状態を保っていない事はその後事故の進捗をみて明らかだ。全ての事故調の報告書を読むと今回の事故調査の結果、制御棒が入ったこと以外、正常に作動した機能は何もなかった事が明確である。またコンピュータ・シミュレーションにおいては重要な前提がある。つまり設計と施工は違うと言う事。完璧に設計されても、現場ではそのまま施工されないと言う単純な事実を踏まえなければならない。設計図からではなく、実際に施行された状態を精確にシミュレーションにインプットしなくては分析の役に立たない 。
最後に原子力学会の専門性と蓄積された知見やノウハウを全面的に活かした調査とはなっていない事が明確で、専門家集団が事故発生から3年を目前にして公表した報告書としては、新事実の解明という点は皆無で、厳しい言い方になるが、今更報告書の公表など必要なかった貧相な内容である。
この報告会では報告書『福島第一原子力発電所事故 その全貌と明日に向けた提言』が頒布価格2000円で配られた。定価は2500円。今週の後半には一般書店に並ぶとの事。
原子力学会の最終報告が事故から3年の節目と言える時期に出され、遅いとの指摘を受けつつも、ようやく最終報告まで漕ぎ着けた。これで主要な調査報告は出そろった事になる。
①国会事故調:東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(2012年7月5日)
②政府事故調:東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(2012年7月23日)
③民間事故調:福島原発事故独立検証委員会(2012年2月27日)←目次のみ
④東電事故調:福島原子力事故調査委員会(2012年6月20日)
⑤学会事故調:東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会(2014年3月8日)←中間報告
第5番目の事故調査報告書となる日本原子力学会の最終報告は、原発事故を専門的な立場から検証するため2011年8月には発足していたが、昨年3月の中間報告を踏まえようやく最終報告書の公表に至った。先行する事故調査報告書とその内容や批判、論評も咀嚼した上での原因分析と提言であり、原子力の専門家集団としての尖がった意見や提言が一切なく、無味乾燥な発表に終始した田中知氏の発表と学会の提言には深く失望。活動原資となる基金が枯渇しつつあるとの事だが、科学的知見に基づいた技術者としての批判精神を忘れた専門集団に活動継続の余地などあろうはずがない。
この最終報告書では、日本原子力学会について、原子力やそれに係る学術的活動は前述の科学的観点から中立的であることが社会から求められているにもかかわらず、原子力を推進する政府や電力会社など特定の組織と、原発利益集団のための安全神話構築と宣撫活動に終始し、原子力専門家に対する日本国民の信頼を裏切った反省の弁を書いている。
学会事故調は、地震や津波などの自然災害や設計で想定していた以上の深刻な事故への備えについて、研究の成果を対策に反映できていなかったなどと指摘しているが、これは嘘。福島沖での地震に関しては東京電力側が懸念を表明しており、きちんとした調査を要求していた。原子力とは違う分野ではあるが、自然災害への理解や中立性を守る努力が足りなかったとの指摘は正しくない。また地震や津波以外の領域においても原子力の専門家としての役割、特にリスク評価や災害対策において、明らかに検討不足やリスクを顧みない政府、電力会社への勇気ある指摘と助言を怠った原子力専門家集団の罪は極めて重い。
提言にはシミュレーションによる分析や予測などに力をいれるべきとの項目もある。特にメルトダウンがどのように進んだかの分析結果や、原子力研究機関やIAEAが行った調査で見方が分かれているおり、地震の揺れによる影響について「原子炉の安全機能に深刻な影響を与える損傷はなかった」という見解を示している。配管のお化けである原子炉施設が送電線も倒れる揺れに、配管網が正常な状態を保っていない事はその後事故の進捗をみて明らかだ。全ての事故調の報告書を読むと今回の事故調査の結果、制御棒が入ったこと以外、正常に作動した機能は何もなかった事が明確である。またコンピュータ・シミュレーションにおいては重要な前提がある。つまり設計と施工は違うと言う事。完璧に設計されても、現場ではそのまま施工されないと言う単純な事実を踏まえなければならない。設計図からではなく、実際に施行された状態を精確にシミュレーションにインプットしなくては分析の役に立たない 。
最後に原子力学会の専門性と蓄積された知見やノウハウを全面的に活かした調査とはなっていない事が明確で、専門家集団が事故発生から3年を目前にして公表した報告書としては、新事実の解明という点は皆無で、厳しい言い方になるが、今更報告書の公表など必要なかった貧相な内容である。