中国の国営港湾運営会社である香港の招商局グループが、北朝鮮の「羅津・先鋒経済特区」を本格開発すると発表した。中国の有力かつ歴史のある招商局グループは、1873年に設立された中国最大の港湾運営会社であり、資産は1兆5000億元に達する。
現在、中国創力グループ(大連)が、羅津港の第1埠頭を建設中で、第2埠頭は北朝鮮が建設している。
ただ第4埠頭は、ロシア企業が建設中であるが、北朝鮮と招商局&創力グループは、ロシア企業と交渉し、同埠頭開発権の買収に向けて交渉中である。ロシア側は開発権放棄を拒否しているが、北朝鮮政府の方針は、中国企業による独占的開発であり、事実上ロシア企業は羅津港プロジェクトを諦めざるおえないだろう。
羅津港開発は、更に第4、第5、第6埠頭の建設計画も浮上しており、中国国営企業コンソーシアムがすべて統括し、大連の創力グループ以外にも、中国最大の不動産&総合建設会社である上海緑地と中建が参加する事となっており、中国側の力の入れようは尋常ではない。
何故中国は、北朝鮮・羅津港に注力するのか?それは同地域は地政的に重要な地域である為。
この羅津港は、北朝鮮とロシアと中国の国境が近接する地域であり、北朝鮮とロシアは日本海に面しているが、中国の国境(吉林省)は日本海には面していない。この為、今までは中国東北三省は、日本への輸出のため大連を利用するしかなかった。しかし今回の羅津港の事実上の租借により日本海への直接ルートが確保された事になり、ダイレクトに日本と太平洋地域にアクセスする事が可能となった。
実際に羅津港を運営管理するのは、中朝合弁会社である「羅先国際物流合営公司」で羅津港の第3号埠頭と、今後建設される第4号埠頭を管轄する。また羅津・先鋒経済特区全体についても、北朝鮮と吉林省が合同で「中朝羅津・先鋒共同管理委員会」を設立し、同経済特区の総合的開発を支援すると言う。
また北朝鮮と中国は、「羅津・先鋒経済特区」40万キロワット級の原子力発電所の建設の計画している。これは昨年、北朝鮮の張成沢氏(朝鮮労働党行政府長)が中国の陳徳銘商務相と面会した際に、中国側に要請したもので、当初は、中国・琿春のる発電所から北朝鮮の羅先に電力を送電しつつ、平行して当地での原子力発電所の建設を進めると言うもの。この原子力発電所が完成すると北朝鮮の日本海に面した北部地域の全電力を賄う事が可能となる。
この中国の・羅津港の租借と港湾整備により日本海における物流環境を大きく変える可能性があり、特に、日本、ロシア、韓国、中国、北朝鮮の5か国による環日本海経済圏の発展に寄与するだろう。しかし、もし整備拡張された羅津港に中国海軍が常駐するようになると、日本の安全保障環境、特に自衛隊の作戦計画や部隊編成を変える事となる為、同地域の動向には細心の注意と監視が必要である。
仮に羅津港に中国海軍が常駐する状況となった場合、どのような対応が必要であろうか?
やはり日本海側におけの海上自衛隊部隊の艦艇部隊の充実と、やはり佐渡島地域に航空自衛隊部隊と陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊の配備などが必要だろう。また新潟港には海上自衛隊基地の新設が欠かせない。可能であれば潜水艦部隊を配備したい所。
勿論、情報収集部隊の充実が必要であるが、海中音波監視を重視する事が肝要ではないだろうか。
しかし、中国との尖閣、韓国との竹島、ロシアとの北方領土と、我が国は敵国に囲まれている認識が、改めて国民にも浸透しつつあり、核抑止力を含む自主防衛能力の早急なる整備拡充が必要である。国防力の充実について財政困難は理由にならない。国家としての使命であり怠りがあってはならない。