日本男道記

ある日本男子の生き様

猫定

2008年03月21日 | 私の好きな落語
【まくら】
諸宗山回向院(墨田区両国2-8-10)の中にある猫塚由来の噺。
ネズミ小僧次郎吉の墓の右側に小さい三つの墓(塚)が縦に並んでいる。

【あらすじ】
八丁堀玉子屋新道 の魚屋定吉は本業が博打打ち。
朝湯の帰り三河屋で酒を飲んでいたが、悪さをして困るという黒猫を殺されるところをもらって帰る。
猫と一人話をしながら丁半博打を話して聞かせる。
「壺の中が分かるなら教えてみな」と試すと、「にゃご」と一回鳴くと”半”、「にゃご、にゃご」と二回鳴くと”長”、の目が出ている。猫も恩を感じて教えてくれるのだと思い、賭場に行くときはいつも 黒猫”クマ”を懐に入れて行く。
当然いつも勝つ様になって、羽振りも良くなり回りも兄ぃとか親分と呼ぶ様になったが、あだ名を猫好きの定吉で「猫定」と呼ぶ様になった。
 ある時江戸をふた月ばかり離れなくてはいけなくなり、女房に猫を託して旅に出る。
”旅の留守家にもゴマの灰が付き”で、若い男を連れ込んで女房”お滝”は楽しんでいた。
旅から戻った定吉はある日、愛宕下の藪加藤へ猫を連れて遊びに出かける。
留守宅では女房が男を引き入れ、亭主を殺して一緒になろうとそそのかす。
その晩は猫が鳴かないので早めに切り上げ、雨の中愛宕下から新橋に抜けて近道をしようと真っ暗な采女が原を抜けるとき、小用を足していたら、後ろから竹槍で有無を言わさず刺され、鯵切り包丁でとどめを刺され殺されてしまう。
その時胸元から黒いものが飛び出した。雨は激しさを増してきた。
 留守宅で女房は事のいきさつを心配していたが、引き窓が開いて黒いものが落ちてきた。
「ぎゃ~」と悲鳴を上げた。その声を聞いた長屋の者が台所で死んでいる女房を発見。
朝には定吉の死を知らされる。
采女が原に見に行くと隣に間男が首を食いちぎられ死んでいた。
定吉の死骸を引き取って、女房と二人のお通夜をする。
 長屋の連中が居眠りを始めると、棺の蓋が開いて、二人の死骸がすさまじい形相で立ち上がった。
恐れをなしてみんな逃げ出したが、あんまの三味(しゃみ)の市だけは見えないので平然と線香を上げている。
そこに長屋住まいの浪人が帰ってきて、事の様子をうかがい棺の向こうの壁を刀で突くと「ぎゃ~」。
隣の空き部屋を覗くと黒猫が息絶えていた。
手には間男の喉元を持っていたので、主人のあだを討った忠義な猫だと評判になった。
御上から25両の褒美が出て、両国回向院に猫塚を建てた。猫塚の由来という一席。

出典:落語の舞台を歩く

【オチ・サゲ】
地口落ち(地口とは駄洒落。同じ音を持った別の言葉と結びついて終わるもの。)

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『旅の留守家にもごまのはいがつき』

【語句豆辞典】
【五二の半】丁半ばくちでは、サイコロの二つの目を合わせた数が奇数なら丁、偶数なら半。五と二を合わせると七で奇数になるので半。
【銘仙】くず糸を主にも用いた絹織物。丈夫で値が安い。
【結城紬】現在の茨城県結城市を中心に作られる絹織物。無形文化財の一つ。
【護摩の灰】道中で旅人の金品を盗む泥棒。
【番傘】竹の骨に油紙を張った和風の差し傘で、丈夫な日常用のもの。商家が番号をつけて客に貸したことから。
  
【月番】長屋では、月代わりの持ち回りで朝晩の路地口開閉、井戸・掃き溜めの掃除、祝儀不祝儀の銭集めなどの担当者を決めた。今の町内会の当番に当たる。
【六道の辻】六道は、地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人間・天上という六つの迷いの世界。すべての生あるものはこの中で生死を繰り返すとされる。六道の辻は、六道へ通じる道の分かれる所。
【湯棺】仏式の葬儀で、入棺前に遺体を湯で洗うこと。

【この噺を得意とした落語家】
・六代目 三遊亭圓生

【落語豆知識】
【兄さん】落語界では年齢に関係なく、一日でも早く入門した人が兄弟子となる。その兄弟子を呼ぶことば。よその師匠の弟子でも先輩であれば、こう呼ぶ。
 




最新の画像もっと見る

コメントを投稿