日本男道記

ある日本男子の生き様

牛ほめ

2009年10月04日 | 私の好きな落語
【まくら】
原話は、貞享4年(1687年)に出版された笑話本・『はなし大全』の一遍である「火除けの札」。元々は「池田の牛ほめ」という上方落語の演目

【あらすじ】
とにかく頓珍漢な言動ばかりしている与太郎。万事が世間の皆様とズレているので、父親は頭を抱えている。
今度、兄貴の佐兵衛が家を新築したと聞き、これは与太の汚名を返上するチャンスだと考えた父親は、家の褒め方をトンマな倅に覚えさせようと決意した。
「良いか、こう言うんだ…」
【結構な御普請でございます。普請は総体檜造りで、天井は薩摩の鶉木目。左右の壁は砂摺りで、畳は備後の五分縁でございますね。お床も結構、お軸も結構。庭は総体御影造りでございます】
「あぁ、そうだ。台所の柱に節穴が空いているんだが、そいつを見つけたらこう言うんだ。きっとお小遣いをくれるよ?」
【 どうでしょうか、この穴の上に秋葉様のお札をお張りになっては。穴が隠れて火の用心になります 】
「フワー、お金がもらえるの? もっと何かない?」
「現金な奴だなぁ。…そうだ、伯父さんが大切に飼っている牛があるから、ついでにそいつを褒めたらどうだ?」
【この牛は、『天角地眼一黒直頭耳小歯違』でございます】
『天角地眼-』というのは、菅原道真公がご寵愛になっていた牛の特徴。牛に対する最高の褒め言葉だ。
「フーン…。そんな事でお金になるんだ。面白いね」
「練習してみろ」
「フニャ。結構な…ゴ…普請でございますね。普請は総体ヘノキ造りで、天井は薩摩芋に鶉豆。佐兵衛のカカァはおひきずり、畳は貧乏のボロボロで…」
まるでガタガタ。仕方がないので紙に書いて与太郎に渡し、伯父さんの所に送り出した。
伯父さんのところにやってきた与太郎は、父親との練習通りに挨拶をすませ…隠し持った紙を読みながらではあるが、何とか口上を言う事に成功。
水を飲みたいと言って台所へ行き、節穴を見つけて「この穴が気になるか?」。
「大丈夫、この節穴には秋葉様のお札をお張りなさい。穴が隠れて火の用心になる」
感心した伯父さんはお小遣いに一円くれた。
「わーい、予定通りだ。じゃあ、今度は牛に行くね?」
牛小屋で『天角地眼-』とやっていると、牛が目の前でフンをポタポタ…。
「悪いなぁ、与太郎。こいつは畜生だから、褒めた人の前でも遠慮なくフンをしやがる」
その言葉を聞いた与太郎は考えた。
「おじさん、その穴…気になる?」
「如何するんだ?」
「その穴に、秋葉様のお札をお張りなさい。穴が隠れて、屁の用心になるから」

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

【オチ・サゲ】
『火』と『屁』を引っ掛けた地口落ち。

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『落語家(はなしか)は世上のあらで飯を食い』

【語句豆辞典】
【秋葉様のお札】秋葉信仰は火伏せ・火防の山岳信仰。中部、関東地方を中心に広まった伝統的なもの。秋葉神社本宮は静岡県周智郡春野町の秋葉山(あきはさん・標高866m)。徳川末期には総数二万七千余社を数え全国的な広がりを持っていたが、明治の神仏分離、修験道廃止措置によって全国各地の秋葉山は神道へと転進、
名を廃するか廃絶した。

【天角地眼一黒直頭耳小歯違(てんかくちがんいっこくろくとうにしょうはちごう】牛のほめ言葉。
天角地眼:角と眼の形、角は天を向き、目は地をにらんでいる
一黒:黒いが極上
頭:頭が傾かずまんなかにある
耳小:小さい耳
歯違ふ:歯がぐいちになってるとおねおねとよく噛める

【この噺を得意とした落語家】
・三代目 三遊亭小圓朝
・四代目 春風亭柳好

 




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