日本男道記

ある日本男子の生き様

夏の医者

2009年08月30日 | 私の好きな落語
【まくら】
原話は、明和2年(1765年)に出版された笑話本・「軽口独狂言」の一遍である『蛇(うわばみ)の毒あたり』。

【あらすじ】
暑い夏…。鹿島村の勘太もダウンしたのか、ご飯を茶碗に七、八杯しか食べることが出来ない。「もう歳だから」と息子が心配していると、見舞いに来たおじさんが「隣の一本松村の玄伯先生に往診してもらえば」と言う。
それを聞いた息子はおじさんに留守を頼み、ばっちょう笠に襦袢一枚、山すそを回って六里の道を呼びに行った。
汗だくになって訪ねてみると、玄白先生は畑で草取りの真っ最中。早速頼み込み、息子が薬籠を背負って二人で村を出発した。
「山越えのほうが近道だべ」 先生がそう言うので、二人で山の中をテクテク。山頂に着いたときには二人とも汗びっしょりになっていた。
そこでしばらく休憩し、さぁでかけよう…とした所で、なぜかあたりが真っ暗になった。周囲はなぜか温かい、はておかしいと考えて…。
「こりゃいかねえ。この山には、年古く住むウワバミがいるてえことは聞いちゃいたが、こりゃ、飲まれたかな?」
「どうするだ、先生」
「どうするだっちって、こうしていると、じわじわ溶けていくべえ」
うっかり脇差を忘れてしまい、腹を裂いて出ることもできない。
どうしようかと考えている先生の頭に、あるひらめきが舞い降りた。
息子に預けた薬籠を渡してもらい、中から大黄の粉末を取り出すと、ウワバミの腹の中へパラパラ…。『初体験』の大黄に、ウワバミは七転八倒…ドターンバターン!
「薬が効いてきたな。向こうに灯が見えるべえ、あれが尻の穴だ」
ようやく二人は下されて、草の中に放り出された。
転がるように山を下り、先生、さっそく診察すると、ただの食あたりとわかった。
「なんぞ、えかく食ったじゃねえけ?」
「あ、そうだ。チシャの胡麻よごし食いました。とっつぁま、えかく好物だで」
「それはいかねえ。夏のチシャは腹へ障(さわ)ることあるだで」
薬を調合しようとすると、薬籠はうわばみの腹の中に忘れてきてない。
困った先生、もう一度飲まれて取ってこようと、再び山の上へ登っていく。
一方…こちらは山頂のウワバミさん。下剤のせいですっかりグロッキーになってしまい、松の大木に首をダランと掛けてあえいでいた。
「あんたに飲まれた医者だがな、腹ん中へ忘れ物をしたで、もういっぺん飲んでもれえてえがな」
ウワバミは首を横に振っていやいや。
「もういやだ。夏の医者は腹へ障る」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

【オチ・サゲ】
地口落ち(会話の調子で間抜けなことを言って終わるもの。また奇想天外な結果となるもの)

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『上手にも 下手にも 村の一人医者』
『とは知らず さて留守中は お世話さま』
『語るなと 人に語れば その人は また語るなと 語る世の中』

【この噺を得意とした落語家】
・六代目 三遊亭圓生
・二代目 桂 枝雀
 


rakugo:summer doctor 落語:夏の医者



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