はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

一日一首

2012年02月09日 20時42分00秒 | 日詠短歌

2012/1/16(月)
   東直子『十階 短歌日記2007』1/16
   空欄に答を埋める問題をしずかに解いて冬のこどもは

 「ああ、あと一つだけ」解答はひとつじゃないと知ってて冬が


1/17(火)
   なにもしてないしなにもなかったのに、ぐだぐだに疲れた。

 木枯らしがそろりと内に置いていくハンカチ落としのうまそうな手で


1/18(水)
   『イパネマの娘』ジルベルト夫妻とスタン・ゲッツがこさえる、暖かくて乾いたかなしみ。

 (もうすぐだもうすぐ届く)芽を堅く突きあげて木の女、桜は


1/19(木)
   同僚の女の子に、眉毛を八の字にして気の毒がられた。
   おれは、気の毒な人なんだろうか?

 白妙のマスクは頬に束ねたる髪はコートの衿の深みに


1/20(金)
   〔問〕訳しなさい。「ナニコノオタキモ!」

 初めてにしちゃあなかなか小綺麗に鞭を振るうじゃないか え?雪


1/21(土)
   「ご臨終です」
   「いや、まだだ……もうすぐだ」
        (『アンナ・カレーニナ』)

 血を燃やすからこそ毛布が暖かいひたひたと鳴るマーラー2番


1/22(日)
   3日間ぐずぐずの天気。午後、ようやく日が差した。

 足先をこする夜にはオルガンのふいごの軋む音を聞きたい



一日一首

2012年02月01日 21時08分38秒 | 日詠短歌

2012/1/9(月)
   ドストエフスキー『悪霊』 なんというか、へんな小説。

 精液を軽視したヤツ、いただろう?「残酷だ!」って喚いてた奴さ
 (奴=の)


1/10(火)
   3ヶ月に1回、歯の定期検診。

 仰向けば言えない見えない聞くだけの宝探しの地図のようだね


1/11(水)
   今夜は一番の冷え込みだとか。

 燃えない木うかばない夢少女から買ったマッチを灯してもまだ


1/12(木)
   瓦Re:KEY HOLDER(陸前高田産)
   「瓦礫の一部を使用し、地元の方の手でひとつひとつ作られています」

 「〈忘れません〉ってまじかよふざけんな!」軋る瓦礫の現役の朱
 (朱=あか)


1/13(金)
   一日に1分ずつ、日は延びるのだとか。

 たまきはる白の一帯 群青と干柿色の空のあはひに
 (一帯=ひとおび)


1/14(土)
   元ゲートボール場でお年寄りたちが、重そうな鉄球を放っている。なんていうスポーツだろう?

 朝霜のローム層なる赤土にてとてと鳩のあしあとだらけ


1/15(日)
   子どもとは走り出す動物である、と定義したのは高校生の頃だったのだが。

 「人は死ぬ」生悟りする言の葉に「死ぬ奴もいる」冬木の木霊