令和4年度第3回市町村議会議員特別セミナーの1月23日第1日目の講義内容を紹介します。
講義①「ベーシックサービス宣言〜分かち合いが変える日本社会〜」
慶應義塾大学経済学部教授 井手 英策 氏
○現在の日本は、発展途上国の一歩手前
・日本の社会保障は、高齢者向けが高く、現役世代は自己責任になっている。
・共稼ぎ世帯60%増-勤労者世帯収入1997年水準に届いていない。
・世帯収入300万円未満が31%、400万円未満が45%
・低下し続ける実質GDP(一人当たりGDP世界4位⇒現在26位)
・相対的貧困率OECD32ヶ国中9位、日本の経済力は、実質GDP1%を成長させる力しかない
・弱い立場にある人たちを放置する社会になっていないか。
「国民みなが安心して暮らせるよう国が責任を持つべき」「誰かを助けるのではなく、すべての人たちへの保障を人々は求めている」
○ベーシックサービスの理論
・ベーシックサービスとはー誰もが生存・生活のために必要とするベーシックなサービス、決められたサービスではない。人間に不可欠なニーズを追い求める終わりなき対話によって決まるサービス。
・品位ある最低保障
生活扶助の充実、失業給付の増額、住宅手当の創設(月額2万円を給付)。中間層の生活保障により、働けない人たちへの寛容さを引き出す政治戦略。人間を救済の屈辱から解放し、万人の尊厳を平等化するという哲学
*ベーシックサービス+品位ある最低保障=万人の尊厳を平等化する
・痛みと希望を分かち合う「連帯の社会」を創る
特別定額給付金の是非=13兆円=消費税5%分=幼保無償化15年分、13兆円あればできたこと(住宅手当の創設、失業手当月額5万円)
財源問題からの逃走は社会を破壊する。品位ある最低保障=すべての人が安心して暮らせる社会。
・どれぐらいの負担かを考えることが重要
大学(2.5兆円)医療(4.8兆円)介護(0.9兆円)障がい者福祉(数百億、給食費・学用品費等の無償化(1兆円)
・財源は増税という提案
全所得階層向けの幼保無償化、低所得向け大学無償化
・ベーシックサービス革命=ヨーロッパの常識
みんなにサービスを出すと低所得層の所得改善率上昇
将来不安がなくなれば、無駄な貯蓄がなくなり消費に回る
救済を権利に帰れば、人間が手を取り合う社会へと変わる
○結論
・子育て・教育・医療・介護等のベーシックサービスを無償化することで、貯蓄を消費・税にまわすことができる(北欧をモデルとする)
・救済を権利に帰れば、人間が手を取り合う社会へと変わる。
・自由な社会は、選択肢のある社会である。
講義②「一人一人の個性を尊重する「あおいけあ流」の介護の世界」
株式会社あおいけあ代表取締役 加藤 忠相 氏
○急激に進む日本の少子高齢化
・日本の人口は、2004年をピーク(1億2784万人)に急減する。2030年1億1522万人、2050年9515万人、2100年4771万 人。75歳以上の高齢者の増。2030年5人に1人、2055年4人に1人。
・現役世代の減少が加速、単身世帯が50%、医療・介護の人材不足が深刻。
○日本の高齢福祉の考え方の変遷
・1963年老人福祉法「療養上の世話」⇒2000年介護保険法自立支援⇒2003年高齢者介護研究会「尊厳を支える」⇒2010年地域包括ケア研究会「地域包括ケア」=地域共生社会の実現
○認知症とは?
・認知症とは①脳の細胞が死ぬ病気②症状(記憶障害・見当識障害・理解判断力の障害・実行機能障害)③行動(不安・焦燥・うつ・幻覚妄想・徘徊・暴力・不潔行為
・記憶の種類から考えるケアの在り方-①意味記憶②エピソード記憶③手続き記憶④プライミング(呼び水)記憶
○ケア(CARE)とは何か?
・ケアとは、相手の方を耕すこと。
・介護者はその人個人にかかる情報を事前に把握し、その人らしさを少しでも発揮してもらうケアをする。
○「あおいけあ流」のおたがいさんケア
・自立支援を促すことで、介護度が改善する
・社会とのつながりを持つことで、自分らしさを少しでも取り戻す
高齢者が地域の子どもや人々に楽しんでもらうイベントを考える。
高齢者が社会参加することで生きがいづくりになる。
・介護事業所の業務(フロア)⇒自立支援CARE(施設)⇒社会参加(地域)
・高齢者が借りられるアパートを若者が借りたいようなアパートに改造する。⇒高齢者と若者が同居するアパート