12月17日、アメリカのオバマ大統領は、53年間外交関係が断絶しているキューバとの国交再開を目指す協議を開始すると発表した。オバマ氏は、キューバを国際的に孤立させることで民主化促進を目指すこれまでのアメリカの政策が「失敗だった」と認め、新たな包括的外交政策を発表することで、関与政策に向けて180度の方向転換をした。
オバマ大統領はすでにケリー国務長官にキューバ側との交渉を指示。アメリカはキューバの首都ハバナに大使館を再開することも念頭に、高官レベルの相互訪問を実施する。来年1月には担当の米国務次官補がキューバで移民問題について協議する予定だ。
国交正常化が成されれば、今まで制限されてきたアメリカからキューバへの旅行についても条件を大幅に緩和。キューバ人に対する送金の上限額も、特定の政府関係者などを除いて引き上げる。
複数の米メディアによると、キューバ政府は同日、2009年からキューバで拘束されていたアメリカ人アラン・グロス氏を解放した。スパイ容疑などで15年の禁錮刑に服していた同氏の解放は、両国関係の関係改善に向けた必要条件だった。
これまで、アメリカとキューバの間で国交正常化に向け秘密交渉を続けてきたが、これを仲介したのは南米アルゼンチン出身のフランシスコ・ローマ法王だった。法王は、アラン・グロス氏の解放にも力を尽くし、この点についてもオバマ大統領とラウル・カストロ国家評議会議長は、共に法王に謝意を表明した
キューバはかつてアメリカの実質的な保護国だったが、1959年のキューバ革命後に米系企業の接収などが行われ、アメリカ側もカストロ政権転覆を目指して亡命キューバ人部隊の侵攻を図った「ピッグズ湾事件」を引き起こすなどし、外交関係は1961年に断絶。両国の対立は東西冷戦の最前線の一つとなり、62年のケネデー大統領時代にはキューバを舞台に米ソ核戦争寸前の対立をまねいた「キューバ危機」も起きた。
アメリカとキューバの和解は、任期2年を残すオバマ大統領が自ら歴史に名を残すためのパホーマンスという見方もあるが、それはそれとして、歴史的な出来事であることは間違いなく、アメリカ国内でも60%の国民は歓迎している。しかし、議会両院で多数を占める共和党は今のところ反対の意思を示している。従って、ハバナに大使館を再開することなど議会の承認が必要な事項については、今後も紆余曲折があるようだ。
また、国際的には、今までキューバと友好関係があり、格安で石油提供を受けている反米政権のベネズエラとの関係や同じ社会主義国家中国やロシアとの関係がどのように変化するかも見逃すことができない。
一方、キューバは野球の強豪国であり、今までキューバ選手のアメリカ大リーグ入りは、亡命せざるを得なかったが、今後は自由に契約ができることになると、日本のプロ野球としても、キューバ選手の入団は大リーグと競うことになりそうだ。
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