世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は29日夜、緊急記者会見し、新型インフルエンザの拡大を受け、警戒水準を「フェーズ4」から「5」に引き上げることを決定したと発表した。
WHOが世界的大流行(パンデミック)の一歩手前を意味する「5」を宣言するのは初めて。日本など、各国はさらなる対応策を迫られる。各国の経済や社会に大きな影響が出ることは必至だ。
WHOは27日夜にフェーズを「3」から「4」に引き上げたばかりだが、チャン氏は「このウィルスの活動は予測がつかない」と述べ、感染のさらなる拡大を警告した。
一方、チャン氏は人や物の移動の制限、国境閉鎖などは勧めないとの見解も明らかにした。さらにチャン氏は「過去の経験から、インフルエンザは豊かな国では軽い病気だが、途上国では致死量の高い深刻な病気になる」と語り、途上国への感染拡大に危険感を示すとともに、国際間の協力の重要性を訴えた。
30日11時現在で、感染が確認された国は11各国、感染が確認された人は245人、死者はメキシコで176人、アメリカ1人となっている。また、疑い例が報じられた国13カ国を入れると24カ国に広がったことになる
ただ、発症国メキシコでは、感染者が約2500人とされるが、正式に感染が確認されたのは99人、その内死者が8人とされ、発表された死者数176人との整合性はどうなるのか明らかでない。逆に考えると、死者の多くが豚インフルへの感染が明確でないことにもなる。
しかし、いずれにしても「フェーズ5」の判定基準である「人から人への感染が2カ国以上で起き、大流行の危険が切迫」していることは間違いないのだろう。
さて「フェーズ5」宣言を受けて、衆院厚生労働委員会は30日、新型インフルエンザ問題について集中審議を行った。舛添要一厚労相はこの中で、新型インフルエンザが「パンデミック、世界的大流行になる確実性が極めて高くなった」との見通しを示した。
また、厚労省の上田博三健康局長は、新型インフルエンザに効果があるとされる治療薬のタミフルを既に3380万人分確保し、さらに830万人分を確保する予定と公表。やはり治療薬のリレンザは国で268万人分を備蓄済みで、都道府県でも133万人分を備蓄する予定と明らかにした。
反面、今回の新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)のウイルスについて、専門家の間では、当初想定していた強毒性の高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に比べて、感染しても比較的軽症で済む「弱毒性」との見方が強まっている。
米疾病対策センター(CDC)の遺伝子解析によると、今回のウイルスは強毒性のH5N1型と異なり、呼吸器にしか感染できない構造だったという。
強毒性のH5N1型ウイルスの場合は、のどや肺などの呼吸器だけでなく、内臓など全身に感染が広がるのが特徴で、感染者の免疫機能が過剰反応して、重症化すると考えられているが、今回のものはそうではないようなので、見方のとおり「弱毒性」のものなら不幸中の幸いと言える。
しかし、たとえ毒性が弱いとしても、今回の新型ウイルスは、ほとんどの人が経験したことがなく、免疫を持っていない。今後、世界各地で、爆発的に感染が広がる恐れがある。国立病院機構仙台医療センターの西村秀一・ウイルスセンター長は「毒性が弱く、重症化率が低くても、多くの人が感染すれば死亡者数は増える。弱毒性の方が感染に気づかないうちに周囲に広げる危険性が高い。マスクをするなど、感染拡大を抑えることが大事」と指摘する。
さらに、インフルエンザウイルスは、遺伝子が変異しやすい。大流行して人間の間で感染を繰り返すうちに、弱毒性が強毒性に変わることも考えられる。1918年から19年にかけて世界で4000万人以上の犠牲者を出した「スペインかぜ」も、弱毒性が流行の途中で変化したタイプだった。やはり、油断は絶対禁物ということになる。「関連:4月28日」
WHOが世界的大流行(パンデミック)の一歩手前を意味する「5」を宣言するのは初めて。日本など、各国はさらなる対応策を迫られる。各国の経済や社会に大きな影響が出ることは必至だ。
WHOは27日夜にフェーズを「3」から「4」に引き上げたばかりだが、チャン氏は「このウィルスの活動は予測がつかない」と述べ、感染のさらなる拡大を警告した。
一方、チャン氏は人や物の移動の制限、国境閉鎖などは勧めないとの見解も明らかにした。さらにチャン氏は「過去の経験から、インフルエンザは豊かな国では軽い病気だが、途上国では致死量の高い深刻な病気になる」と語り、途上国への感染拡大に危険感を示すとともに、国際間の協力の重要性を訴えた。
30日11時現在で、感染が確認された国は11各国、感染が確認された人は245人、死者はメキシコで176人、アメリカ1人となっている。また、疑い例が報じられた国13カ国を入れると24カ国に広がったことになる
ただ、発症国メキシコでは、感染者が約2500人とされるが、正式に感染が確認されたのは99人、その内死者が8人とされ、発表された死者数176人との整合性はどうなるのか明らかでない。逆に考えると、死者の多くが豚インフルへの感染が明確でないことにもなる。
しかし、いずれにしても「フェーズ5」の判定基準である「人から人への感染が2カ国以上で起き、大流行の危険が切迫」していることは間違いないのだろう。
さて「フェーズ5」宣言を受けて、衆院厚生労働委員会は30日、新型インフルエンザ問題について集中審議を行った。舛添要一厚労相はこの中で、新型インフルエンザが「パンデミック、世界的大流行になる確実性が極めて高くなった」との見通しを示した。
また、厚労省の上田博三健康局長は、新型インフルエンザに効果があるとされる治療薬のタミフルを既に3380万人分確保し、さらに830万人分を確保する予定と公表。やはり治療薬のリレンザは国で268万人分を備蓄済みで、都道府県でも133万人分を備蓄する予定と明らかにした。
反面、今回の新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)のウイルスについて、専門家の間では、当初想定していた強毒性の高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に比べて、感染しても比較的軽症で済む「弱毒性」との見方が強まっている。
米疾病対策センター(CDC)の遺伝子解析によると、今回のウイルスは強毒性のH5N1型と異なり、呼吸器にしか感染できない構造だったという。
強毒性のH5N1型ウイルスの場合は、のどや肺などの呼吸器だけでなく、内臓など全身に感染が広がるのが特徴で、感染者の免疫機能が過剰反応して、重症化すると考えられているが、今回のものはそうではないようなので、見方のとおり「弱毒性」のものなら不幸中の幸いと言える。
しかし、たとえ毒性が弱いとしても、今回の新型ウイルスは、ほとんどの人が経験したことがなく、免疫を持っていない。今後、世界各地で、爆発的に感染が広がる恐れがある。国立病院機構仙台医療センターの西村秀一・ウイルスセンター長は「毒性が弱く、重症化率が低くても、多くの人が感染すれば死亡者数は増える。弱毒性の方が感染に気づかないうちに周囲に広げる危険性が高い。マスクをするなど、感染拡大を抑えることが大事」と指摘する。
さらに、インフルエンザウイルスは、遺伝子が変異しやすい。大流行して人間の間で感染を繰り返すうちに、弱毒性が強毒性に変わることも考えられる。1918年から19年にかけて世界で4000万人以上の犠牲者を出した「スペインかぜ」も、弱毒性が流行の途中で変化したタイプだった。やはり、油断は絶対禁物ということになる。「関連:4月28日」