シリアの軍事施設に対するアメリカの限定的なミサイル攻撃については、イギリスが離脱したが、どうやらフランスのオランド大統領は、オバマ大統領に同調するようだ。フランスは、このような場合の権限については、大統領の職権として任されているとのことであり、オランド大統領は自らの責任の元にアメリカに協力することになりそうだ。これで、アメリカは一国で決行することなく、有志連盟の友国フランスの加勢は心強いだろう。
フランスの場合、イラク戦争の時はアメリカと距離を置き、一時、両国に溝ができたが、今回は、シリアで化学兵器が使用されたことは明白で、使用したのはシリア政府だというアメリカの情報を信頼した上の参戦だろう。
ただ、肝心のアメリカが、国内で、シリア攻撃賛成が反対の半数程度しかなく、野党の共和党は賛成だが、与党民主党は、必ずしも一枚岩になっていないようだ。アメリカ国民にとっては、イラク、アフガニスタンと長期に亘る派兵で、厭戦の空気が色濃く、経済的な負担も重く圧し掛かっていることが起因していると言われる。
また、オバマ大統領と言えば、イラク、アフガンからの米軍撤退を進め、核兵器廃絶についても強い意思を持っているリベラルな大統領が、シリア攻撃について、何故ここまで入れ込んでいるのか。やはり彼が言っている「化学兵器の使用は絶対に認められない」という強い信念の上に立ってのことなのだろう。
若し、シリア政府の使用に目をつぶって見過ごせば、今後あらゆる紛争に化学兵器が使用され、自国を含めその脅威は計り知れないものになると確信しているからだと思う。また、化学兵器がテロ組織に渡った場合の脅威、現在進行形で、1000人以上が化学兵器で殺戮され、多くの子供も含まれている現状を見過ごすことはできないからだろう。
しかし、オバマ大統領が、ここにきてシリア攻撃に一定の時間をかけているのは、シリアがイスラエルを攻撃するなど、戦乱が広がり長期化する可能性を見極めていることや、真に、限定的な攻撃で化学兵器を破壊できるのか、若し攻撃により、化学兵器が拡散した場合、一般国民に被害が及ぶ可能性についても見極めなければならないからだ思う。
また、シリア政府は、アメリカの攻撃対象になっている軍事施設に、反政府側の政治犯を止め置くとの情報もある。つまり、攻撃に対する人間の楯にするつもりだ。
このように、あれこれ考えると、オバマ大統領は、相当なリスクを覚悟の上で、余り先延ばしせず早期に決断せざるを得ない苦しい状況に置かれている。
アメリカなどのシリア軍事施設攻撃によって、シリアの内戦が収束する見込みがあるのなら張り合いがあるが、今回の攻撃は化学兵器使用を抑えるためのもので、限定的と言われている。
この攻撃が終わった後も、シリアの内戦が延々と続くとしたら何とも空しい。やはり、国連常任理事国が何とかしなければならない。取り分け、シリア政府を後押ししているロシア、中国が大国としての責任を果たさなければならい。「関連:8月30日」