目に見えないメス

引きずるように身体を動かした。
昨夜の松阪ツアー・・・っていっても、客は中３の凌之だけ。
それでも突然の登場、征希（４期生・カイロプラクティク自営）の新機軸の治療でかなりよくなっている。

「今日は名古屋の研修会の帰りなんですよ。今日の僕は太陽を持ってます」
昔話にはとんと暗い・・・太陽と風がどうだのああだの・・・征希、珍しく熱っぽくしゃべっている。
いっぽうの俺、携帯で写真を撮る元気もなくうずくまっている。
それでも一泊二日の名古屋での研修会、征希にとってはよっぽどのもの・・・それは分かる。
治療が始まる。
今までとは全く違うアプローチ・・・詳細は省く。
ただ、これってカイロか？
そんな疑念すら抱く治療だ。

俺の頭のなかで何かが変わった気がする。
何か暖かいもの・・・お湯のような感じが頭のなかを浸している。
「すんませんね、いつも突然で・・・そして今夜もまた実験台になって・・・」
征希の声がどこからかする。
しかし、その声に返答するのも忘れて眠りこけている。


少なくとも征希、新しい目に見えないメスを見出した。


いつか奥さんと昼食を『あづり』で食べようと思っていた。
そのいつか・・・やっかいなことに今日しかない。
今日を逃すと明日は日生第一の説明会。
明後日から橋北中の中間、昼には迎えに行く予定。
そして現在進行形で津高、木曜から三重高の前期期末試験が始まる。
10月になれば各中学の２学期中間試験が目白押し。
「行きたかったのに行けなかったね」・・・そんなセリフを吐くくらいなら、強行軍、今からだ。


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