危険な時間帯・・・午後11時あたりに真ん中の部屋のロフトベッドにもぐりこむ。真下では龍神(17期生・慶応大学法学部4年)、リクシルのNさんの話にスパイアされたのか猛然とES(エントリーシート)を打ち込んでいる。
中3が帰っていく挨拶を寝ぼけ頭で聞く。
午前0時半、しばしの冬眠から目覚める。話し声・・・中学生の教室。いつしか龍神、18期生トリオの絵梨香(立命館大学情報理工2年)と竜太(立命館大学文学部心理1年)とれい(三重大学教育学部2年)の話し相手に興じている。
絵梨香がパワーアップしている・・・オリター活動がマシンガントークを加速させたようだ。蝶のように舞い蜂のように刺す龍神ならではのフットワークを見せては絵梨香の攻撃ならぬ口撃をしのいではいるが、竜太ともなるとサンドバッグ状態でコーナーによりかかりセコンド?の有里奈にタオルで扇いでもらっている。
18期生には他に陵(大阪芸術大学キャラクター造形学部4年)や悠志(島根大学工学部4年)、さらには岡南(東京工業大学理学部3年)がいる。そうそう、いち早く社会人となった娘のめい(保育園勤務)もいたっけ。
こんなご時世だ。ゲーム業界に絞った陵は苦戦している。悠志は院への進学を決めた。岡南は時世とは関係なく院に進学する。現役もいれば一浪もいる、あげく二浪に、大学を入り直して実質三浪もいる・・・そんなことを考えながらスラム街のベッドに横になる。
岡南を除けばそれほど勉強に秀でた生徒はいない。しかし、この時代にありながら各々が自分の生き方にこだわった。変に現役にこだわることなく・・・決して妥協することなく、各々のベストを尽くした。その意味では後々語り継がれる学年になるやもしれぬ。
絵梨香が腰を上げては座り、また上げては座る。読みかけの伊坂幸太郎の頁をめくり始めると今度こそ絵梨香が帰り、そして竜太が。後には宿題に追われるれいがパソコンとにらめっこ、それを眺める龍神もまた立ち上がる。そして宿題が終わったのか、れいが電気を消す。「暖房も切ってくれ」・・・俺の言葉が届いたようで教室が静寂に包まれる。
『フィッシュストーリー』を読み終えた俺、目が冴える・・・ありがちな展開、午前5時。冷蔵庫に巣食う不良債権・・・焼肉がちらりと頭をかすめる。長い夜になる。