・*・ etoile ・*・

🎬映画 🎨美術展 ⛸フィギュアスケート 🎵ミュージカル 🐈猫

【tv】100分de名著「夏目漱石SP 明暗」

2019-04-04 00:53:12 | tv

【tv】100分de名著「夏目漱石SP 明暗」

「明暗」の「奥」にあるもの

 

 

1回25分×4回で1つの作品を読み解く番組。3月は夏目漱石(Wikipedia)スペシャルということで、1回につき1冊を読み解く変則的な構成。第4回目は「明暗」(Wikipedia)で、講師は東京大学教授で英文学者の阿部公彦氏。第1回はコチラ、第2回はコチラ、第3回はコチラ


伊集院光氏:教科書に載っている作品や偉人というイメージだったが、サービス精神や時代性が入って来てワクワクが止まらない。


「明暗」は未完であるにも関わらず一番長い作品。「明暗」=対決小説。登場人物がバチバチと火花を散らすのがおもしろい。他者とは何だろう? コミュニケーションとは何だろう? と考えるきっかけを与えられる。


主人公の津田由雄(30歳)は医者のすすめにより手術をすることを決める。津田は半年前にお延(23歳)と結婚したばかりで、2人は一見ラブラブに見えるが、津田はあの女は何故あの男と結婚してしまったのか、自分は何故この女と結婚したのかと考えている。


対決1:津田 VS お延

津田とお延は日曜日に誰から芝居に誘われるあてがあるらしい。お延は芝居を見に行きたい。なので津田に手術を先延ばしにして欲しいがそういうわけにもいかない。津田は芝居にお延だけで行けばよいと言うが、お延としてはそうもいかない。お延は芝居など行かなくてもいい、ただ甘えたかっただけだと言う。


伊集院光氏:いきなり手術から始まるが? 死に至る病気ではなさそうだが?


安部みちこアナウンサー:病名は痔だがハッキリとは書かれていない。


番組では女性のナレーションでの説明のみの場合と、俳優による朗読のみの場合と、両方が入る場合がある。今回は両方入るバージョン。こうして記事を書くためには録画してメモ取りながら再生しているのだけど、朗読部分って文字起こしにくい。朗読部分は画面に文字が出ているのだけど、それを全て書くのは大変過ぎる💦 ってことで、朗読部分は適当にあらすじ的に描いている。今回丸ごと端折った医者とのやり取りは結構生々しい。でも、何の病気かよく分からなかった。なので、手術しなくてもいいじゃない的なお延にビックリしたのだけど、痔だったのね😅 ならば納得。


わざと隙間が空いている。ツッコんでいい。気になるところや変な部分をほじくってツッコむとより楽しめる。行間に書き込んでみるのもいい。落書き式。おとなしく与えられた物を読んだり正解を受け入れるのではなく、文句を言ったり疑問点を立てて読むと集中力が高まる。

 

実際に阿部先生が書き込みをした画像が表示されていた。確かにそうやって読むのも楽しいし、理解が深まるかもしれない。でも自分は本がを汚すの嫌いだからな~😣

 

冒頭の医師との会話の中で医師が"まだ奥があるんです"と言うが、この奥に疑問点がある。「明暗」のキーワードは「奥」 痔も生きて来る。恋愛にも痔のようなところがある。奥が深い。

  

会社を休む報告のため上司の吉川を訪ねる。応対したのは吉川の妻。吉川夫人は夫の部下に対してもズケズケ物を言うタイプ。

 

対決2:津田 VS 吉川夫人

夫人は津田の夫婦仲について聞いてくる。楽しい時はもう過ぎたのかとの問いに、初めから楽しい時などないと答える津田。あなたは研究熱心だからダメなのだと言う夫人は、津田にもう一人の女性があることをにおわせる。

 

吉川家を辞した津田は夫人の言葉が気になっている。ひょっとすると夫人はあの事件について話したいのかもしれない。それを聞きたくないし、聞きたいと考える。

 

津田は手術のため入院。悩みごとがある。津田は毎月父親から金銭援助を受けていた。お延と結婚する際に実家は資産家だと嘘をついてしまったため。しかし父親は2人が贅沢し過ぎだと援助を打ち切り、津田はお金に困っていた。津田の妹のお秀はその話を聞いていた。資産家に嫁ぎお金のあるお秀は意地悪く見まいに来る。

 

対決3:津田 VS お秀

お秀は自分はお金を持って来たからあげようかとほのめかす。津田も直接ではないが欲しいという感じをにおわす。お秀は津田が結婚して変わってしまったと言う。自分たち家族よりもお延を大切にしているではないか。津田がそれは当然だと答えると、お秀は津田には他にも大切にしている人がいると言う。

 

安部みちこアナウンサー:女性が多弁。漱石に変化があったのか?

 

個性とか存在性がしゃべり方に出る。言葉の形に出るという考え。どの女性も多弁だが必ずしも直ぐに意図が分かるわけではない。いろいろ意図も策略もあるだろうがとにかく多弁で、そのおかげで血の通った存在になる。

 

伊集院光氏:すると女性の気持ちがむき出しになり、むき出しになったためよりドラマチックになる。

 

そこから対決の構図が生まれて来る。

 

伊集院光氏:ああ言えばこう言うではないが、言われればこちらも言う。だからリズムがとても良い。

 

相関図を見てみると・・・

 

 

津田は登場する女性全員と対決している。お延と吉川夫人、お延とお秀も対決している。

 

この津田という人物はハッキリしないわりに、絶対に自分を曲げない人物。これでは女性をイライラさせてしまうばかりだと思う。女性はどんどん考えや視点が動いてしまう部分があるから、それに対して真っ向勝負してしまうと、いつまでたっても並行線な気がするのだけど🤔 しかし、思っている人がいるのにお延と結婚して、楽しい時など初めからないのに、妹に自分たちよりも嫁を大切にしてと言われる津田って何なの?😅 

 

対決と言うとそれぞれ主張があって、それをぶつけ合うと考えがちだがそういうのとも違う。対決の中で自分でも自分の思っていたことに気づく。売り言葉に買い言葉でその人の本性や性格や戦略が引き出されてくる。なので読み手にも発見があるし、漱石も発見しながら書いたのではないか?

 

伊集院光氏:お秀が"ここに(お金を)持っていますよ"と言っていた時には遊び心があったが、途中から不満が爆発している。素直に頭を下げてくれたらすんなり帰ったのでは?

 

いろんなところにスイッチが入り燃え広がっている。

 

伊集院光氏:人間ぽい。漱石が女性のおしゃべりの特性を掴んだのではないか。

 

いろんなところにスイッチがあり、燃え広がっているというのはとってもよく分かる。自分は女性だから男性の思考とかおしゃべりの特性がよく分からないけど、自分はこう思うという筋があって、でもその筋とは違う方向に流れてしまって、新たなスイッチが入ってみたいなことはよくある気がする。

 

謎の女の正体は清子。かつての津田の恋人。手術を終えた津田は温泉に療養に行くが、本当の目的は温泉にいる清子に会いに行くこと。清子は突然津田を捨てて他の男と結婚してしまった。清子を忘れることが出来ない。当人の口から真相を聞き出そうと決意したのだった。しかし心の準備ができていないまま廊下で清子と出くわし彼女を驚かせてしまう。

 

対決4:津田 VS 清子

津田、昨日廊下で会ったことは偶然であって驚ろかせて申し訳ないと言いつつも、清子が偶然とは思っていないであろうことに苛立ち突っかかってしまう。清子としても津田の態度に苛立つ。

 

伊集院光氏:すごく面白い。過不足なくギクシャクしている。

 

最後の対決だけに一番力を込めて描いた。とっておきの女性で一番手強い。

 

 

伊集院光氏:全ての津田の手を出させておいて相手にしない。すごく計算されているのは"僕が何のために貴女を廊下の隅で待ち伏せしていたんです"というセリフ。津田は理屈の人。自分には待ち伏せする動機がないという理屈。ゆっくり会えばいいじゃないかという理屈。津田は理屈が合わないから、この時点で清子をやりこめたと思っている。清子の謝りますは政治家がよく使う"気分を害された方がいたら謝ります"と同じで謝らない宣言。私が疑るのは当然で悪いことではないので謝らない。堂々巡りなので謝らないまま終わりますと言っている。

 

2人とも同じところを指さしている感じはする。お互い相手が何を目指しているかは分かっているが、喋るモードが違う。津田は男の理屈、もしくは西洋のロジックで話している。清子は感情で話している。その場しのぎとも言えるが、非常に柔軟。その場に応じて自分に正直な対応が出来る。どちらも嘘はついていないが、モードが違うので相手が嘘をついているように感じてしまう。

 

うーん。伊集院光氏の言っていることはよく分かるし、阿部先生のおっしゃるようにモードが違うのが苛立ちの原因なのだというのも分かる。でも、2人が目指しているところとは一体何なのか? 自分にはよく分からない。そもそも津田は何がしたいのか? 清子が何故他の男性と結婚してしまったのかはこの時点では分からないけれど、今更津田に現れられても困るというのがまずあるわけだから、待ち伏せされていようがいまいが感情としては同じだとは思う。津田は自分が待ち伏せするというような卑怯なことをする人間だとは思って欲しくないから、延々とそこにこだわってしまっているということかな🤔

 

伊集院光氏:このコミュニケーションは成立している?

 

コミュニケーションはこの形を取るのが普通。情報を与え合うと考えがちだが、感情のすり合わせが起きている。お互いに感情的にある種の落着点を見つけることが大切。会話をすることで共有感。同意したことについて同意したことを同意したい。

 

伊集院光氏:漱石はそこに行きついたということ?

 

"同意したことについて同意したことを同意したい"というのは、さっきこれで同意したよね?という問いに同意したということを皆で同意したいということだそう。そういう感情の落としどころを全員がつけることが大切ということで、漱石はそこに気づいたということかな?

 

清子と温泉で会った辺りで小説は未完で終わっているが、その後どうなるのか?

 

清子とお延の対決が見たい。

 

伊集院光氏:それはないとおかしい。それは見ないと収まらない。

 

たしかにそれは見たい! そしておそらくその対決は構想にあったと思う。

 

1990年刊行水村美苗作「続 明暗」にはお延が温泉にやって来て3人で会う場面がある。

 

伊集院光氏:阿部先生は清子とお延の対決がどうなって欲しいか?

 

津田の症状が悪化し床に臥せっている状況で、襖越しに清子とお延の対決が漏れ聞こえて来る。それぞれの持ち味を生かしかみ合っているか分からない会話を繰り返しつつ、一瞬お延が清子の何かを見た瞬間があったらいい。清子の奥をとらえた瞬間があればいい。

 

伊集院光氏:おそらく落書きだらけになる予感。のびのび読んでみたい。

 

うーん。夏目漱石最後の作品ということだし、伊集院光氏の言うように漱石は女性の話し方の特徴的なことをつかんだのだろうし、男女の違いも分かった。さらに、コミュニケーションとはということもつかめたのだと思われるので、まさに漱石文学の集大成という作品なのだろうけれど、長い上に未完というのは読む気が萎えるな😅   

 

100分de名著:毎週月曜日 午後10:25~10:50 Eテレ

100分de名著



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【動画】新元号「令和」に決定 | トップ | 【cinema / DVD】2019年3月鑑... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

tv」カテゴリの最新記事