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【tv】100分de名著「夏目漱石SP 夢十夜」

2019-03-14 21:07:30 | tv

【tv】100分de名著「夏目漱石SP 夢十夜」

「夢十夜」と不安な眼

 

 

 

1回25分×4回で1つの作品を読み解く番組。3月は夏目漱石(Wikipedia)スペシャルということで、1回につき1冊を読み解く変則的な構成。第2回目は「夢十夜」(Wikipedia)で、講師は東京大学教授で英文学者の阿部公彦氏。

 

伊集院光氏:すでに「三四郎」を読み始めた。「三四郎」だけで4回やって欲しかったが、逆にギュッとした分読むのが楽しい。

 

この時期の漱石はいろんなタイプの小説を書いていて「三四郎」は小説になろうとして小説になりつつある作品。「夢十夜」は小説になろうとするレールをすっ飛ばしてなんでもあり。すごい変なものがいっぱい出て来る。

 

「夢十夜」=不安小説。読者も不安になるし、登場人物も不安そう。不安と言うと嫌なことのようだが、意外とそうでもない。「こんな夢を見た」という書き出しで始まる10篇の短い作品からなっている。

 

【第一夜】

ある夜、仰向けに寝ていた女がもう死ぬと言う。自分が死んだら大きな貝殻で穴を掘って埋めて、その墓のそばで自分が戻って来るまで百年待って欲しいと言う。男は言うとおりにする。赤い月が上り沈むのを何度も見るが、ある時だまされたのではないかと思う。すると墓から百合の花が咲き、男は百年経ったことを知る。

 

伊集院光氏:朗読してもらうことや、効果音を付けることも勇気がいるくらい読者それぞれの間や解釈がある作品。

 

これが新聞小説であったことに驚く。だから10話で終わったし、やっちゃえ的な部分があったのでは? 言葉の冒険をしている。

 

伊集院光氏:夢ってそういうもの。不安なので先生の解釈が知りたい。

 

不安が無くなってしまうと「夢十夜」の魅力が半減するので、不安が無くならないようにちょっと減らすくらいにおさめたい。

 

女性が復活する際に植物になる。人間が人間でないものになる話は昔からあるパターン。何故? 人間、植物、動物をつなぐと世界が見えてくる。コミック(宇宙的)に一つの物語の中で全体を理解する。神話的な思考。自由に書けている。ロマンティック。理想とする女性が悲劇的な最期を迎えることで、より美しくなる。美しい女性は悲劇的な最期を迎えて欲しい?

 

不思議な話ではあるけれど、とても妖しく美しい話だなと思う。女性が百合になったというのもいいけれど、それが墓石の下から生えて来る描写がとっても美しかった。

 

【第三夜】

自分の子どもを負ぶって歩いているが、子どもの眼は潰れて青坊主になっている。いつからかと聞くと昔からだと答える。不安に思っていると重いかと聞いてくる。重くないと答えると、もうすぐ重くなると言う。不気味だから森に捨てようと思っていると、その杉の根のところだったと言ってくる。うんそうだと答えてしまう。百年前にお前が俺を殺した所だと言う。俺は人殺しだったのだと思ったら、背中の子が急に重くなった。

 

19世紀イギリスのロマン派は子どもを聖なるものと見なす考え方だった。それが逆転した悪魔のような子ども。深層心理でどちらもある。怖い子どもが自分より多く知っていて、自分に怖いお告げをする。それが自分の子どもであることが怖い。

 

伊集院光氏:子どもが独り言を言っていると、男が「何が」と際どい声で言うあるが、際どい声という表現がスゴイ。

 

子どもの独り言、「何が」、「何がって知ってるじゃないか」の3つのセリフの緊張感。自分が何か言い当てられた気がするが、何かは分かっていない。自分の中から変なものが出て来た感じ。

 

ネガティヴ・ケイパビリティ(Negative Capability)=分からないものを分からないまま受け入れる力。イギリスを代表する詩人ジョン・キーツ(1795-1821年)が手紙の中で、シェイクスピアについて言及した際に一度だけ使用している言葉。シェイクスピアは謎めいたものを分からないまま受け止めて表現できたことがすごいと書いている。

 

わざわざそういう言い方をしたことに気づき、こういうことだと言ってしまうつまらなさ。

 

この話を現実として書けば怪談になるけど、それを夢の話にしているところがネガティヴ・ケイパビリティということなのかな? この子どもの不気味さが、夢の一つの面を表しているのかなと思う。なんとも言えない不気味な夢見る時ある。

 

【第七夜】

大きな船に乗っているがどこに行くのか分からない。船の男にこの船は西に行くのかと聞くが、何故と聞かれてしまう。西に日が沈む方へ向かっている気がするからだと答えると、笑って去ってしまう。船にはたくさんの人が乗っていて、異人が多かった。異人の1人が神を信仰しているか聞いてくるが黙っていた。つまらなくなって、死ぬことを決心し海へ飛び込んだが急に命が惜しくなる。しかし取り返しがつかないから海へ落ちていく。

 

西に向かう船は西洋に向かって行く日本、西洋の文明に憧れる漱石を表している。でもよく分からない要素が入っていてそれが良い。

 

これはまたとっても夢っぽい。ラストの海に落ちていく描写がとっても生々しいのに、なかなか海に入らない感じがとっても夢っぽい。なんのことかよく分からない中で死ぬことになってるのも夢っぽい。そして、その中に日本の状況や漱石自身の憧れが含まれていたってことなのかな?

 

夢十夜「読み方のヒント」

①象徴解釈的に読む

②象徴解釈の破綻を楽しむ

③象徴解釈の及ばなさを楽しむ

④因果律と時間間隔の無効性を楽しむ

 

①表向きはこうだが実は裏の意味がある。子殺しの話は漱石が養子に出されていろいろな眼にあったという背景を見れば、漱石の自伝であると言ってもいいかもしれない。

 

②どのストーリーも寓話的な枠組みから零れ落ちる部分がある。そういうフィットしない部分を楽しむ。

 

③②との相違は? 西向きの船が西に行くのかは答えてくれない。そのうちにつまらなくなる。翻弄される感じが「夢十夜」的

 

④そもそも動機がない。時間の順番が逆になっていることに注目。

 

伊集院光氏:そのままで受け入れることが出来ずストレスがたまる。おもしろいのか? 良かったのか?と考えがちだが、全部入った状態でとどめることも大切。

 

「こんな夢を見た」という書き出し自体は知っていたけど、それが夏目漱石の作品と結びついていなかったし、「夢十夜」という作品も知らなかった。「坊ちゃん」や「吾輩は猫である」などの印象が強いので、こういう作品書くとは思わなくて意外。漱石はロンドンで病んでしまったそうだけれど、漱石留学中のロンドンってこんな雰囲気あったのかもと勝手に思ったり😌

 

100分de名著:毎週月曜日 午後10:25~10:50 Eテレ

100分de名著


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