まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『怒りの葡萄』弱者は切り捨てろ!

2013-02-22 02:25:26 | アメリカの作家
THE GRAPES OF WRATH 
1939年 ジョン・スタインベック

私は、強い者が勝つっていう考え方も、努力は報われないっていう現実も肯定します。
でもちゃんと働いている人が普通に生きることさえままならないっていうのは
やっぱり国の責任で、なにかシステムがおかしいんじゃないかね? と思いますけどね。

映画にもなったという『怒りの葡萄』
こんなに強いメッセージを含んだ映画が、娯楽万歳!な当時のハリウッド映画の中で
ウケたのかどうかは知りませんが、本はすごく面白かったです。

『二十日鼠と人間』同様、農場が舞台になっていますが
決定的に違うのは『二十日鼠~』に登場する労働者たちは
事情があるとはいえ、自ら季節労働者を選んだ大人の男たちでした。

けれどもこの物語で農場から農場へと彷徨っているのは膨大な数の家族。
老人も子供も、病人も妊婦も含まれる人々が故郷を追われ、仕事を求めて
カリフォルニアに向かっています。

彼らはなにも「カリフォルニアってオシャレよね!」とその地を目指しているわけでなく
仕事があると聞いて、オンボロの車に積めるだけの家財道具を押し込み
高値でふっかけられるガソリンや食べ物にあえぎながら進んでいるのです。

彼らを追い出したのは農場の大規模経営に乗り出した銀行です。
土地を抵当に入れていた農民を村から丸ごと追い出し、機械化して収益を得るためです。

長い話でもあり、随所にスタインベックが抱く今後の農場経営への危惧や
公然と行われている “ 移民 ” への不当な扱いに言及する章が挟み込まれているので
到底数行のあらすじでは表しきれないのですが、ざっくり書いてみますね。

やむを得ず殺人を犯したトム・ジョードという若者が仮釈放になり
再会した元説教師ケーシーとオクラホマの故郷に戻ると村はもぬけの殻でした。
伯父の家に身を寄せていた一家に追いつきますが、伯父の村も立退き寸前でした。
一家とケーシーは西へ向かいます。

ジョード一家は、トム、じいさまとばあさま、父母、兄ノアと弟アル、
身重の妹ローザシャーンとその夫コニー、幼い妹ルーシーと弟ウィンフィールド
ジョン伯父の総勢12名です。
しかし、じいさまは出発間際になって「行かない」と言い張り村に残ります。

ここから西までの道程は長いので省きますが、かいつまんでいうと
道中助け合うことになった人々との別れがあり、ケーシーもある事情から去り
家族も一人抜け、二人抜けして最後には6人になります。
必死で働いたのに結局定住はできず、暗澹たる状況に陥ります。

スタインベックはジョード一家に当時の農民たちの苦境を投影させて
旅を続けさせます。
「この正直な人々を見よ! 彼らの理不尽な苦しみを見よ!」と。

この先離散した家族は会えるのでしょうか?
一家が夢見た家族が暮らせる家は手に入るのでしょうか?
以前と同じような収入が得られ妥当な値段で食糧が買えるのでしょうか?

物語を読んで見える答えは “ No ” です。
後から後からに押し寄せる人々にどの店も必需品を高値で売りつけようとします。
泊まる場所が無い人々を警官は追い出します。
農場ではありとあらゆる手を使い賃金を搾取します。
少しでも他より高い賃金を払う雇用主は協会に睨まれ融資を受けられなくなります。

今でもそうだとは言いません。
災害に遭った地域にとっとと大統領が出向いたりすぐに募金が集まったり、
スターたちの募金額も桁違い…アメリカって慈善精神に富んだ国よね。
ニュースになった可哀想な犬や猫の引き取り手も多いしね。

ただね、世界一正義感を持ってると言い張るアメリカの過去がこんなに無慈悲だったとは…と
けっこう衝撃を受けましたよ。

さすがに現代は… と思うけど、マイケル・ムーアのドキュメントとか
リーマンショックのニュースから考えるに、弱者後回し感は否めないわ。
まずはホワイトカラーを救おうっていう感じ。
日本も人ごとじゃないですけどね。

ラストはものすごく感動的でした。
具体的な未来は見えませんが、人間の底力と勇気が感じられます。
移民として彷徨っている人々に今日よりましな明日が訪れそうな期待が持てる
そんなクライマックスでした。
『風と共に去りぬ』のラストっぽいかもしれないね。 前向きってことか?

ひとことK-POPコーナー
ちょいとちょいと!  SHINeeの『Dream Girl』聴きましてっ!? 素敵ですね!!
いまのところ、Wild Sideなオニュ炸裂の Dynamaite と Hitchhiking が好きです

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