WALKER’S 

歩く男の日日

10日目 高知屋(高知市)~民宿旭(須崎市)

2015-06-28 | 15年四国の旅


 高知屋の同宿は最後に入った年配夫婦、お遍路は初めてのMさん、アメリカから来た40代の男性、何回か回っているベテランお二人、それにもう一人男性。Mさんはアメリカで仕事をしていたことがあって英語が堪能、アメリカ人にいろいろ話しかけていました。ベテランのお二人とは靴や靴下の選び方などいろんな話が出ました。ベテランの方でもやはりマメができて辛い思いをしながら歩いている、できない方法はないものか、と訊かれるのですが、なかなか決定的なことは言えません。ぼくも昨年はマメができてうまく歩けなかった区間があったし、今年はまだできてはいないけれど、人によって靴も違えば、歩き方も歩く速度も距離も違うから、本当にこれということは何一つ思いつかないしアドバイスもできません。Aさんのような超ベテランでも足の裏にはテープ絆創膏をびっしり貼っていたから、楽に長い距離を歩くのは本当に難しいことなのだと思います。Mさんは今日は国民宿舎土佐まで、30kmほどなので少し物足りないという感じでした。ベテランのお一人はぼくが民宿旭に泊まるというと、翌日に泊まると言います。今日は土佐市の宿まで19kmぐらいとゆったりお遍路です。多くの人は36番の近くになるでしょう。
 ぼくは目の前の雪けい寺で納経があるので7時前の出発になりますが、みなさんは早々に朝食を終え6時半には出て行かれます。


 6時40分、33番札所雪けい寺に到着、宿から1分もかかっていませんが。またも朝から予報にはなかった雨です。夕立のような通り雨みたいなのでしばらく待てば止みそうな感じはあります。


 納経が終わって、まだ雨の勢いが強いのでしばらく待たせてもらいました。そうすると納経所の女性が市内在住の篤志家の方から預かっている綾鷹を持ってきてくれました。それとは別に湯飲みに熱いお茶を煎れて出してくれました、お煎餅もついています。12回目のお接待です。
 雨が上がったのは7時30分、これくらいなら16時前後に宿に着けそうです。


 8時26分、34番札所種間寺に到着、33番から57分29秒、ベストより1分遅れですがこの区間はベストが出にくいのでかなりいい方の歩き(時速6.60km)だと言えます。同宿の男性3人を追い抜きました。別にカートを持った野宿の人にも会いました。同宿のご夫婦はぼくが出るときまだ33番の境内でした。


 納経が終わるとまたも納経所の女性からお接待をいただきました。今年13回目です。前回納経した6年前は納経所でお接待をいただくことは一度もなかったはず。別格の時は大山寺と椿堂と大瀧寺でいただきましたが。

 種間寺でいただいた洋菓子とせっけい寺でいただいたせんべいを食べてから、8時50分に出発、種間寺に着く100m手前で出発する人が見えたから、35番に着く前に追いつくかもしれません。
 そうしたら、3.8km地点、仁淀川大橋に上がるちょっと手前で追いつきました。同宿の方でした。あと同宿で追いついていないのはMさんだけです。さすが健脚です。
 仁淀川大橋を渡って、土手の道を進み土佐の街に入っていきます。ぼくの持っている9版の地図では土手から3通りの赤線赤点線があります。最初の頃は真ん中の喜久屋旅館の前を通る道を歩いていたのですが、4巡目からはずっと一番北側の近道を歩いています。北側の道を行こうとすると土手の降り口がちょっと見つけづらいので初めての人は道しるべのある真ん中の道を行くのが賢明かもしれません。
 国道56号バイパスを横断してしばらく行くと、右手のバイパスを歩く人が見えました。おそらくMさんでしょう。バイパスは新しくできた道だから赤線はありません。でも喜久屋旅館の前の道より130mほど近道になります。


 10時23分、35番札所清滝寺に到着、35番から91分25秒、ベストより1分遅れ(時速6.12km)でした。昨日よりは動きが良くなっている感じです。
 境内に上がるとテントの下で初めて見る歩きのご夫婦が休んでいます。浦戸大橋の近くの宿からでしょうか、それにしても早い。
 お参り納経を終えて、ぼくもテントの下で休んでいたら、少し遅れてMさん、大部遅れて仁淀川の手前で追い抜いた人が上がってきます。「あれで6km?!あっという間に見えなくなってしまうんだもの」とあきれ顔です。


 清滝寺ではたっぷり30分以上休憩して11時15分に出発です。山門を出てすぐの所でまたやってしまいました。雨上がりでたっぷり水分を含んだ舗装坂道に枯れ葉やその他植物が薄く堆積している部分があって、思った以上に滑りやすくなっていました。あっと言う間もありません。
 清滝寺を下って2km、バイパス沿いのコンビニで昼食を調達です。ここも以前はスリーエフだったのがローソンに生まれ変わっています。
 タイムチェックポイント、喜久屋旅館の前まで27分56秒、ベストより1分早くてびっくりなのですが、考えてみればこれまでは1日の最終盤の区間だったので、早くて当然でした。


 12時28分、清滝寺から6.8km地点、塚地坂の登り口にある休憩所までやってきました。喜久屋路館の前から35分55秒、ここまでのタイムはとったことがないので比較はできませんが、時速は6.54kmなのでかなりいい動きといえるでしょう。この2kmぐらい手前の波介川のところで先に出たご夫婦を追い抜きました。
 側にトイレがあるのですが、この建物は見覚えが全くありません。この2年の間にできたのか、記憶が完全に飛んでいるだけなのか。いっても何百kmという道中全ての景色を記憶にとどめるというのは、無理な仕業です。
 さっき買った芋けんぴで昼食を摂っていると、ご夫婦と、しばらくしてMさんもやってきて一緒に休みます。そこへ地元の若い男性がやってきて、山道の方が景色もいいし展望台もあるし湧き水もあるから、とさかんにすすめます。3人はあと7kmほどの国民宿舎土佐までなので、そうしようという気になったのですが、ぼくはまだその先8km以上歩くのでトンネルを選択します。
 休憩所では30分休んで13時ちょうどに出発です。


 塚地坂トンネルを抜けて海岸沿いの県道23号に突き当たって右折、しばらく行くとすごいファミリーマートがあったので思わずパチリ、中がどうなっているかは確認しませんでした。13時26分。


 14時02分、36番札所青龍寺に到着、喜久屋旅館から97分49秒、ベストより4分遅れでした。それが意外に思えるくらい歩きの調子は悪くありません。休憩所からの時速も6.28kmあったからまずまずといえます。ベストを出したときは朝一で喜久屋旅館を出たから納得の4分遅れだと言えます。
 札所のお大師さんは別格を含め大体撮影したのですが、ここ36番だけはまだ撮影していなかったので忘れない内に押さえておきます。


 納経所と販売所の間を抜けると、奥の院へ続く山道が始まります。県道47号、横浪スカイラインで須崎に向かうのであればこの道が近道になります。スカイラインを行くのは10年ぶりです、その時かなりきつい思いをしたので2度と歩く気になれなかったのですが、今回の宿は半島にあるので仕方ありません。
 14時30分に出発です。


 納経所から5分ほどでスカイラインに上がってきました。10年前はこの道が近道だとは知らなくて、この100mほど手前で右後ろに入っていく道を歩いてしまいました。その道も少し先でスカイラインに出られるけれど、歩く人がほとんどいないので、かなり荒れていて道しるべも全くなくてかなり心細い思いをしたものです。もちろん時間も大部かかったと思います。


 スカイラインに上がって右折、すぐ奥の院の入口が見えています。
 もう少し進むと国民宿舎に上がっていく道もありました。これだけの距離と時間であれば迎えに来てもらうほどでもないという感じです。


 14時54分、土佐市から須崎市に入ります。写真でも判るくらいのきついアップダウン、でも一度歩いていて覚悟があるせいかしっかり歩けています。
 この少し前で逆打ちの男性とすれ違いました。今日は国民宿舎まで、荷物を宿に置いてからお参りに行くつもりだそうです。昨日は土佐久礼の宿、31kmぐらいになります。逆打ちの人は無愛想な人が多くて閉口することが常なのですが、この人は明るくてとても感じのいい人でした。


 須崎市に入って6分ほど進むと右手眼下に明徳義塾高校、ここまで何台もの明徳のスクールバスに追い抜かれました。この学校はいったい何台のバスを持っているんだと呆れるほどでした。


 15時07分、車も停められるちょっとした展望スペースにやってきました。横浪半島は典型的なリアス式海岸です。天気も良くなって気持ちがいいのですが南風が強くなってきます。


 15時11分、明徳義塾高校への下り口です。たまたま車が写っていますが、そんなに多くはありません。トータルではスクールバスの方が多かったくらいです。


 15時48分、今日の宿がある池ノ浦の集落への下り口が見えてきました。青龍寺から6968mを75分53秒、時速5.51kmでした。かなりいい感じで歩いてきたのにこのスピードはアップダウンの厳しさを物語るようです。


 いせえびが有名な漁港のようです。写真では快晴ですが帽子が飛ばされるくらいの強風が吹き荒れています。


 16時05分、横浪半島のほぼ中央部にある民宿旭に到着、スカイラインから1500mを14分13秒、標高差が110mあるので自然にスピードが乗ってしまいます。
 今日の宿泊はぼく一人です。高知屋から38kmなので健脚の人でも距離が合いにくいし、この先の宿や札所のことも考慮すると、ここで区切る必要もありません。高知屋から37番岩本寺まで93kmなので30km地点で区切るのがちょうど良い。でも少ないとはいえ、この宿を利用する人は2~3日に1人くらいの割合で確実にいるようです。長い距離を歩けない人で、土佐の宿から来る人はちょうど良いのかもしれません。前日に清滝寺を打っていない人であれば、24.8kmだし、打っていると19kmになります。高知屋から来る人は滅多にいないと女将さんは言っていました。


 別料金で伊勢エビの刺身が出せますが、と言われたのですが、倹約遍路なので、普通のでお願いしました。でも。朝食には小ぶりですが伊勢エビの半身が入った味噌汁が出ました。テレビでは見たことがありますが、食すのは初めて、味わったことのないような甘みと旨みで味噌とも良く調和していて、なるほどと納得できる味でした。 2食付き7000円、素朴な海の民宿という感じで居心地は悪くなかったですね。

 10日目の歩行距離  37.8km
      歩行時間  6時間05分
      平均時速  6.20km   1日トータルでまずまずの動き


9日目 遊庵(香南市)~高知屋(高知市)

2015-06-24 | 15年四国の旅


 ちょっとアートを感じさせるようなレイアウト、左下はアップルジュース、見た目にうれしいこんな朝食も初めてです。奥さんは松山の51番札所石手寺の近くに実家があるそうで、お遍路さんが身近な存在ではあったけれど、まさか自分が遍路宿をするとは思わなかった、と言います。
 金剛頂寺宿坊に泊まった人は次が神峯の下の宿になって、そこから35kmになるのでこの宿に泊まれる人は多くはないでしょうが、あまり長い距離を歩けない人で津照寺の近くの宿に泊まった人は、次がホテル奈半利(22.7km)、その次が安芸市の宿(22.8km)、そして遊庵まで25.2kmとなるので、無理なく来られると思います。
 同宿のお遍路は初めて、京都から来られた方は今日30番まで打って、高知駅からバスで帰られます。もう一人の8巡目ベテラン逆打ちの人は昨日は高知屋から36km歩いたので、今日はゆっくり安芸市の宿までということでした。
 遊庵の朝食は6時半からなので、7時に出発、ご夫妻が玄関の外まで見送ってくれて近道を教えてくれます。大日寺の階段下まで戻るつもりだったのですが、教えてもらった道を行くと500mぐらい短くなって、大日寺から国分寺までの距離とほとんど変わらなくて(40mだけ長い)今までのタイムとそのまま比較できます。
 夜明け前からずっと雨が降っていて、また雨の出発です。でも今日もほとんど平地なので大して苦にもなりません。
 雨が降っていたのでカメラを出す気にはなれず写真がありません。でも、雨だけの理由ではなかったのではないかとも思えます。いまいち身体の動きが冴えないような、気持の余裕がないような。
 8時26分、29番札所国分寺に到着したのですが、やはり写真を忘れてしまいました。遊庵から85分44秒、ベストより4分遅れ(時速6.32km)でした。この区間のベストは4巡目の時で、それから3年連続で2分遅れ、つまり2分遅れが標準タイムと見るべき、それより2分遅れということは、万全ではなかったということでしょう。歩いているときも、その後も理由はよく分からなかったのですが、帰宅して1ヶ月以上経ってから、何となくその理由が見えてきました。正解かどうかは判りませんが、おそらく間違いないと思います。歩くというのは本当に難しいしデリケートなものだとつくづく思います。

 国分寺の山門を抜けると鐘楼の脇に歩き遍路さんのザックが二つ、民宿きらくから来た人に違いありません。一つはMさんのものでしょう。
 ぼくがお参り納経をしている間に、二人とも出発されていました。車の人のお参りは多かったのですが、歩きの人の姿は見あたりません。
 8時50分に国分寺をあとにします。
 国道32号の下をくぐり、笠ノ川川を渡ると、目の前の小高い山が岡豊城址、長宗我部氏の居城で、戦国時代の一時ここが土佐の中心であり四国の中心でもあった、というようなことは半年ほど前、BSフジの「おへんろ。八十八歩記」を見るまで知りませんでした。今回は、城跡に登ったり県立歴史民俗資料館を見学する余裕はさすがにないけれど、この次来たときにはという気持はあります。
 国分寺から4.5km地点にある遍路小屋まで来ると,Mさんともう一人男性が休憩中でした。あと2kmほどなので、挨拶だけしてそのまま行き過ぎることにします。
 9時58分、30番札所善楽寺に到着、また写真を取り忘れてしまいました。国分寺から67分38秒、ベストより4分も遅れてしまいました(時速6.12km)。このタイムを見て本当に動きに精彩がないことを自覚します。理由は全く判りません、昨日まで理想的な動きだっただけに首を傾げるばかりです。
 傾げながらも、きっちりお参りはします。納経所でキャンディ3ついただきました。今年12回目のお接待、うれしくなって大きな声でお礼を言いました。納経所の前のベンチで休憩していたらMさんがやってきて、いつもながらの一言を掛けてくれました。Mさんも今日は高知屋までだそうです。

 善楽寺では10分ほど休んで、10時25分に出発です。歩き出しはそんなに調子は悪くないという感じではありますが。
 900m地点で自動車道を離れて川沿いの歩道に入ると、工事中で通行止め、橋を渡って対岸の道を行きます。
 国分川を渡ってサンピアセリーズを過ぎて、次の交差点を渡ったところで左折して田圃の中の遍路道に入るところ、ぼんやりしていて直進してしまいました。15mほど進んですぐ気がついたけれど、やっぱりちょっと変。
 五台山の山道はまだ雨が降っていて傘をさしたまま登ります。大した登りではないけれど、やっぱり不調なときの感じでした。
 植物園に入ってしばらく行くと逆打ちの男性がやってきました。降り口を訊かれたので教えてあげました。植物園の逆打ちはぼくでも迷うかも。


 11時33分、31番札所五台山竹林寺に到着、善楽寺から63分34秒、ベストより1分遅れでした。少し持ち直したと見ることもできます。
 お参りをすませて休憩所で軽食を摂っていたら、中国人の団体がやってきて境内が一気ににぎやかになりました。お遍路だけのツアーなのか、高知観光の一部なのかよく分かりませんが、それにしてもこんな所でパワーを見せつけられるとは思ってもみませんでした。
 12時ちょっと前にMさんが到着、迷いませんでしたか、と訊くと、「植物園の中をちょっとうろうろしてしまった」とのこと。土佐一宮の少し先の二または問題なく進めたようでした。

 竹林寺では15分ほど休憩、12時08分に出発です。雨はごく小降りになったので傘をたたみます。竹林寺の下りはごつごつした大きな岩の階段が続き、おまけに雨で濡れているので慎重に下ります、ここだけで1分や2分はタイムが落ちることは覚悟の上。
 竹林寺から3.2km地点、県道に入ったところで男性の歩きの人に追いつきました。善楽寺の近くの宿から来た人でしょうか。


 13時12分、32番札所禅師峰寺に到着、竹林寺から65分14秒、ベストより5分遅れでした。やはり最初の階段でゆるりゆるりと下ったから、その後も乗り切れなかったという感じでしょうか。体調はそんなに悪いという感じはないのですが。
 最後の山道でお参りを終えた男性とすれ違いましたが、境内には車遍路の二人連れだけで、ひっそりとしています。
 お参り納経を終えて休憩なしで、13時32分に出発、そのまま宿に向かえば1時間半ほどですが、今回は浦戸大橋を渡って桂浜に寄るので、あまり時間の余裕はありません。
 禅師峰寺の山道を下り始めてしばらくすると、登ってくる人がいます。県道で追い抜いた人でした。「さっきたくさん夏みかんをもらったのでお裾分けします」、ちょうどぼくが追い抜いたときで、ぼくにも渡そうとしたけれど、足が速いので声をかける間もなかったとのこと。皮を剥いた状態だったので、その場でいただきながら、少し話をしました。渡船が運休しているということを聞いてどうしたものか、と言われたので、昨日同宿だった人が逆打ちで渡船に乗ったと言っていたから大丈夫だと思いますよ、と言うと安堵の表情。宿は桂浜の近くで、橋を渡るのが近道なのだけれど、ぜひとも渡船には乗っておきたいということでした。


 13時47分、禅師峰寺から1kmちょっと、畑の真ん中に津波避難タワー、海岸線から150mほどの地点。


 14時26分、浦戸大橋を登ります。2年前来たときは本当に大変でした。右側の歩道を歩いたのが失敗で、絶え間なく右側から10m以上の強風が吹き付ける、車道に飛ばされそうになって何度もうずくまるように立ち止まったものでした。今回は念のため左側の歩道を歩きます。
 風はほとんどなく2年前のような恐怖はありませんでした。


 14時50分、ようやく龍馬さんの前までやってきました。映像や写真では何度も見てきたけれど、生で対面するのは初めてです。想像以上に偉大でした、圧倒されるような迫力を感じます。


 龍馬さんの目線と同じ高さまで登れる矢倉が隣に設えてあるのですが、残念、登る気満々で来たのでがっくり肩を落とします。


 荒天の似合う桂浜・・・・


 15時05分、桂浜から県道14号に戻る途中、見晴らしのいいところがあったので思わずカメラを向けました。岬のように見えている奥の山なみは横浪半島の東の端、一番高いのが宇都賀山、その真下あたりに明日最後にお参りする36番青龍寺があるはずです。明日の宿はその5kmほど向こうにあります。


 15時28分、高知県のお墨付き、遍路道しるべがありました。桂浜に行く人やその近くの宿に泊まる人もいるから、これは意味のあるありがたい道標です。帰ってから計測すると、距離は正確でした。


 15時53分、33番門前にある高知屋に到着です。300m手前にある高知南郵便局で3万円と100円玉12枚を下ろしたのでちょっと遅くなりました。
 今まで8回素通りしてきたこの有名遍路宿にやっと宿泊します。ほとんどの同宿の方は15時10分の渡船に乗って、すでにお参りをすませ宿に入っているようです。納経の時間には十分余裕があるのですが、ぼくはお参りは明日の朝にします。夫婦連れの方は17時15分の渡船で来られたので、ぼくと一緒にお参りすることになります。昨日黒潮ホテルの近くで会った二人だと思われます。


 Aさんに「今年初めて高知屋に泊まるんですよ」と言うと、「それだけ巡っていて、まだ高知屋に泊まっていなかったんですか」と目を丸くして驚かれました。さほどにベテラン遍路さんの中では有名で評判のいい遍路宿であるし、初めての人でもその評判を聞いて泊まる人が多い。
 でもぼくは2巡目の時に土佐市の喜久屋旅館でお世話になって、なかなかほかの宿に泊まる気になれませんでした。その翌日の宿が須崎の柳屋旅館で、この二つの宿には6年連続で泊まりました。土佐市に泊まるとその前日は善楽寺の近くか高知駅の近くの宿に泊まるしかないので、どうしても行き過ぎるしかありませんでした。
 それが2年前喜久屋旅館が廃業になっていて、今回やっと区切るポイントを18kmほどずらして泊まることができたのでした。
 数年前に改築されたということで、部屋もお風呂もトイレも洗面もきれいで言うことありません。二人の娘さんもきびきびとしていて感じのいい応対、有名な宿で連日満室になるだろうから、無駄のない応対は当然のことでしょう、愛想に欠けると感じる人もいるかもしれないけれど、そこまで求めるのは酷だと思います。お風呂から上がると、玄関の横の椅子に大女将が座って夕刊を広げています。その姿が何ともゆったりしていていい感じです。大体のことは娘たちに任せて無理のない落ち着いた感じ。夕食の時にはごはんをよそってくれます。おそらく、何十年もの間、何万人ものお遍路さんのお世話をし続けてきた、そのことを思うと、彼女こそがお大師さんであり、観音様ではないかという気すらしてきて、えもいえぬ感動におそわれます。もぐりのままで終わらなくて本当によかったと思いました。

 9日目の歩行距離  39.1km
      歩行時間  6時間37分  1日を通じてちょっと不満の残る動き
      平均時速  5.91km


8日目 旅の宿美園(田野町)~遊庵(香南市)

2015-06-20 | 15年四国の旅

 朝食は6時からAさんと一緒に摂ります。Aさんは昨日は宿の先まで歩く予定だったのが、疲れてしまってそのまま宿に入ったので、今日は神峯に登っての35kmになるので、少し早めに発たれました。ぼくは、今日は1日山登りがなくて距離も短めなのでゆっくりです。昨日電車で引き返した分も、電車に乗らず歩きます。そうしても40km未満なのでかなり余裕を持って歩けます。
 6時49分、美園さんとがっちり握手を交わして出発です。お接待に大きなおにぎりも頂きました。この時には、また来年も来ることを決めていました。



 7時28分、神峯への分岐点にやってきました。昨日お山に登ったので今日は直進です。ここから国道に合流するまでの1300mは初めて歩くことになります。


 浜吉屋さんです。2年前もこの前を通ったはずですが気づかないまま行きすぎていました。後ろにかなり立派な建物が増築されています。


 8時03分、大山岬のちょっと手前、新しい国道バイパスとトンネルもできていてびっくり。2年前来たときトンネルの工事くらいはしていたはずですが全く気づきませんでした。
 この少し手前で、道ばたで休んでいる歩き遍路さんに、お接待でもらったという夏みかんをお裾分けでいただきました。


 大山岬浜千鳥公園に来てみれば、見慣れない建物が、


 2年前ぼくが来たときにはすでにできていたようですが、完全に記憶が飛んでいました。
 04年の台風でこの公園は浜千鳥の歌碑以外は高波と暴風雨にあらわれて悲惨な状況になった。はらたいらさんのイラストが描かれた碑もごろんと横になっていて何とも痛ましかった。
 8時15分、道の駅大山に到着、田野からの記録はとったことがないので比較はできませんが、時速で換算するとほぼベストタイ。道の駅はバイパスができたおかげで店は営業していなくて深閑としています。トイレは使えるし、屋根のあるベンチもあるので、さっきもらった夏みかんをいただきます。


 20分休んで8時35分に道の駅を出発、すぐ防波堤沿いの道に入るのですが、道が陥没して通行止めになっていました。仕方なく国道に出ます。この部分国道を歩くのは何年ぶりでしょう。


 9時57分、安芸市、球場駅から国道を横切ったところにあるカリヨンまでやってきました。道の駅大山から7003mを66分05秒、時速は6.36kmでした。


 カリヨンの時間に合わせてがんばって歩いてきたのに、少々拍子抜け、来年までに直っていることを期待しましょう。
カリヨンでは10分だけ休憩、国道に出てローソンで柿ピー108円を買って10時07分に歩き始めます。


 10時37分、自転車道に入って25分ほど進むとまたも通行止めです。言われるがまま国道に出ていきます。この部分国道を歩くのは、初めてのお遍路の時以来12年ぶりです。


 国道に出てきましたが、さすがに全く見覚えのない景色になっていました。12年ぶりですから当然のことです。2年ぶりでも覚えていないことがあるくらいですから。


 琴ヶ浜、絶景といってもいいこの風景も全く記憶にありませんでした。土佐ロイヤルがくっきり、本日の宿はその向こうの山の10km先です。


 11時00分、赤野休憩所に到着、カリヨンから52分36秒、ベストタイ(時速6.49km)でした。
 久々に「雨」の歌碑を撮影しました。前は逆光になる位置にあったのですが、数年前に少し移動されて撮影しやすくなりました。


 典子さんはこの碑が作られた前年「典子は今」というゼミドキュメンタリー映画の主演をつとめたサリドマイドで障害を負った白井典子さんです。もちろんのことこの碑の書も足で書かれたものです。




 赤野休憩所から900m、栗山さんのお接待所に到着すると、男性お遍路さんが映子さんに見送られて出て行くところでした。映子さんは今年81歳、2年ほど前にもお遍路に出られたようで、すごくお元気でした。いつもはあまりここに来ることはないようで、お会いするのは初めてです。甘夏を剥いて出していただきました。本日3回目のお接待、居心地が良くてコーヒーも2杯いただいて30分も休ませてもらいました。


 お接待所を11時50分に出発、30分ほど歩くと西分駅です、自転車道から少し上がったところにあるのでいつもは気にもとめなかったけれど、今回はちょっと立ち寄ってつきこちゃんを撮影してみました。来年は行き過ぎてしまった、赤野駅や和食駅にも寄ってみたいと思います。


 12時35分、栗山さんのお接待所から5300m、芸西村と香南市の境の近くにある特養までやってきました。この間48分07秒、ベストタイ(時速6.61km)でした。やはり休みが長いと動きも良くなるみたいです。
 正面脇に遍路休憩所があり緑茶サーバーとトイレもあるので少し休みます。
 ちょうど男性お遍路さんが出発するところでした。「長いこと休んだので6人ぐらい見送ったよ」。Mさん(名前は聞かなかったので仮のイニシャル、この後何日か出会うことになります)は今日は大日寺の近くの民宿喫茶きらくまで、神峯の下の宿から来たはずだから、34.5km、かなりの健脚です。先に出られた6人は安芸の宿に泊まった人が多いのではと思われます。
 15分ほど休んで、12時50分に出発、宿まで2時間弱だからいい時間です。


 13時13分、夜須駅までやってきました。駅前で先に出たMさんに追いつきました。少し前、サイクリングターミナルへ下りていく分岐点の近くのトンネルでは女性二人を追い抜きました。


 夜須駅から3km弱、赤岡の町を歩いていると気になるものが目に留まりました。


 この道は毎回通っているのに、今まで気がつかなかったのは何とも不思議です。それくらい前へ前へと歩くことしか頭になかったのでしょうか。早足遍路の駄目なところです。


 6年前はデオデオだったけれど今はエディオン、2年前に来たときはエディオンだったことは記憶にあります。この角を右折します。最初来たときは、直進してしまって地元の人に野市駅までつれて行ってもらいました。


 14時38分、28番札所大日寺に到着、サイクリングターミナルの分岐から92分28秒、ベストより2分遅れ(時速6.32km)でした。ベストを出したのは朝一の時だからまずまずの歩きはできていたと思います。夜須駅からここまでに5人の歩き遍路さんに出会って、今日は合計14人の歩きの人に出会いました。


 納経を終えると、納経所の女性が「歩きですか?」と訊くので「はい」と答えると、こちらの方でお茶が飲めますので休んでいってください、といって右の方を指示されました。時間に余裕があるので行ってみるとすごい器械が設置してあります。上から上煎茶、アップルジュース、コーヒー、麦茶、それぞれホットコールド選び放題です。


 アップルジュース2杯とコーヒーもいただきました。明日のためにキャンディも少しいただきます。納経は6年ぶり、6年前は声をかけられなかったから、それ以降にできたのだと思われます。車遍路さんは声をかけてもらえないようです。本日5回目のお接待、今年通算11回目、6年前と何かが違うのだろうかと、不思議な感じがしています。


 大日寺を15時06分出発、本日の宿遊庵までは700mほどなので、すぐ着いてしまいます。


 県道の右手、ちょっとだけ小高いところにありました、ネットで見ていたけれど、看板が大きい、だれも通り過ぎてしまうことはないでしょう。これも一つの親切。
 15時12分、到着、ちょうどご主人が玄関から出てくるところでした。とても柔和で感じの良い応対をしてもらいました。部屋はフローリングにベッドでとても広い、ベッドからテレビが遠くて見にくいくらい広くてゆったり落ち着けます。うまめの木と同様、3組限定で、お風呂の湯は一人一人入れ替えてもらえます。


 これにおつゆも加わります。5つのお皿の内、4つができたて熱々です。民宿えびすもうまめの木も最高だと言いましたが、これはちょっと違います。しかも全部ものすごく美味い。右下の茄子の揚げ浸しは、こんなにうまい茄子は生涯初めてと叫びたいくらいでした。ミンチカツもジューシーでお肉たっぷりソースがまた美味い。ポトフの味もやさしくてしっかりした旨みが沁みてきます。これだけのことをしてもらって2食付き6300円というのは本当にもったいないという感じさえします。この宿に泊まったという2人の人に出会ったのですが、ぼくが泊まった四国の宿の中で文句なく最高の宿だったと力説すると、二人とも大きくうなずいて同意してくれました。

 8日目の歩行距離  39.9km
       歩行時間  6時間12分
       平均時速  6.44km   昨日に続いて上々の歩き


7日目 うまめの木(室戸市)~旅の宿美園(田野町)

2015-06-14 | 15年四国の旅

 同宿の一人、浜松から来られたAさんは赤札の大ベテラン、考えてみれば赤札の人に対面するというのはそんなにあることではなくて、ぼくが出会った赤札のお遍路さんは、善根宿うたんぐらの奥さんと公認先達広島の竹下さん、それに大阪住之江の佐藤さん、作家で僧侶の家田荘子さんの4人ぐらいです。
 Aさんは浜松といっても天竜川の最下流にあるダム、船明ダムの近くにお住まいです。この方がまた大変な方でした。四国に来るきっかけは入院中にたまたま手にした、辰濃和男著「四国遍路」。読んでいる内に興味が湧いて、病状が落ち着いてきたときにお医者さんに相談したら大丈夫でしょうとお許しが出て四国に来たそうです。病名は悪性リンパ腫、四国を一巡したら病巣が小さくなっていた。それから毎年巡るようになると、3分の2になり、半分になり、3分の1になり、今では45mmほどあったものが10分の1以下になり、各部に転移していた病巣は完全に消滅、ほぼ完治に近い状態にあるといいます。「四国に来るとストレスが全くないからそれが良かったんじゃないかな」ニコニコ笑いながら焼酎のグラスを傾けます。地元でも毎日10km以上のウォーキングは欠かしません。天竜川沿いを上って一つ上流の秋葉ダムまで往復することもあるとか。「歩くのが楽しくて仕方ないんよ」
 この宿の評判はよく聞いていて、どうしても泊まりたくなって、バスを使うことにしたのだとか。翌日の宿はと訊くと、なんと、ぼくと同じ田野町の旅の宿美園、昨年は連泊でお世話になったそうです。その次の宿はとしつこく訊くと、住吉荘、そうなりますよね、と大きくうなずきます。ぼくは遊庵、「遊庵の話もよく聞いていて泊まりたいとは思うけれど、どうしても距離が合わなくて」。普通のお遍路さんは、金剛頂寺を起点とすると、次は27番の下の宿、そこから大日寺の近くの遊庵までは34km、まあ行ける人も少なくはないけれど次の宿のかねあいもあって手前の宿を選択する人が多くなってしまいます。遊庵から次の高知屋までは36kmあるから、その点でも泊まりにくい立地にはなっています。
 写真は2年前のうまめの木の朝食、今年は写真を撮り忘れてしまいましたがほぼ同じです。写真などより、すぐ食べたい。
 Aさんとぼくは今日も同じ宿に泊まりますが、歩く距離はちょっと違います。ぼくは田野の町を行き過ぎて27番にお参りして、ふもとの駅から電車で二駅引き返すというややこしいことをします。最初はふもとのドライブイン27に宿泊する予定だったのですが、少し手前に2500円で2食付けてくれる善根宿があると聞いたので、これは試すしかないと思い、距離を合わせるには電車を使うしかないということになりました。ぼくの歩く距離は41km、直接行くAさんは29kmです、ただしそうすると翌日の距離が35kmになってしまうので、今日は宿の数km先まで歩いて迎えに来てもらうということでした。もう一人の方は昨日お参りしなかった24番に登って、25番、26番を打って、吉良川の町の中にある蔵空間茶館に泊まるということでした。距離は17kmぐらいです。
 ということでぼくは朝食は6時から摂って、6時半に出発です。朝食の1時間ほど前から雨が降っていて、昨日の予報と違うじゃないか、7日連続の雨か、とちょっとがっかりしたのですが、玄関を出るとすっかり上がっていました。


 7時08分、25番札所津照寺に到着、宿から42分05秒、2年前より1分遅れですが時速は6.6kmなので全然悪くはありません。お寺のすぐ手前にある宿の駐車場には長野ナンバーと神戸ナンバー、いろんな所から来られています。
 津照寺ではぼくのすぐ後から来た車遍路の二人がいただけ、雨上がりの静かなお参りです。7時28分に次の札所に向けて出発です。
 足の運びは全く問題なくいい感じです。2日目の焼山寺で足全体が筋肉痛になったけれど、大部落ち着いて痛みが残っているのは脛ぐらいです。
 26番はそんなに高い山ではないけれど、登り口はいきなり勾配がきつく、その日の調子が試されます。直角に左に曲がる所まではやはり思ったように足が出ない感じにはなったけれど、その後は何とか落ち着いて山道に合わしていけました。調子の良いときの感じでしっかり登っていけました。


 8時09分、26番札所金剛頂寺に到着、25番から41分49秒、ベストタイでした。同じタイでもちょっと余裕のあるタイ、本当にいい宿に泊めてもらうと出足が好調になるというのは、決して思い込みではないと思います。
 お参り納経を終えて8時28分に出発です、今日は電車の時間があるのであまりゆっくり休憩できません。


 テレビで不動岩の縁起を詳しく聞かせてもらったので、行きたかったのですが、宿の都合で今回はパスするしかありません。来年は電車に乗らないので行けると思います。


 金剛頂寺から17分ちょうどで道の駅キラメッセ室戸に到着、ベストタイでした。ベストを出したときは必死に下ってきた記憶があるから、それに比べるとかなり普通のつもりなのに余裕でした。
 キラメッセではいつも休憩するのですが、今回は水の補給をして、ちょっと喉を潤すだけにします。まだ先は長いし、どうしても電車の時間が気になります。9時05分に出発です。


 写真ではよく分かりませんが、高知湾の対岸、須崎から中土佐町の山なみがくっきり見えています。もしかしたら、黒潮町までも見えているかもしれません。ここから向こう側の山なみを見ることは初めてです。神戸、垂水から和歌山友ヶ島が見えることが時々ありますが、その倍の80km先の山ですから、かなり珍しいことだと思われます。


 四国に来て7日目にして初めての陽射しです。うれしくなって、思わず自分にカメラを向けてみました。9時27分、


 吉良川の町を歩いていると、新しい宿ができていました。2年前に来たときもあったようですが、その時は気づかずに行き過ぎていたようです。帰ってから調べてみると、素泊まりのみで、1人で泊まった場合、母屋が6500円、離れが4500円です。徳増から29kmだから来られる人は多いけれど、どうしても金剛頂寺宿坊になるでしょうね。


 ぼくも暴風雨にたたかれながら岬を巡ってきた、自分の歩いてきた道程をつくづく眺めてしまいます。


 吉良川の町を抜けて西ノ川を渡ると、見事な藤の花盛り、思わず立ち止まって見惚れてしまいます。数日後の地元のニュースで、通りかかったお遍路さんと共に紹介されていました。ここで9時38分、
 西ノ川から5km先にある羽根郵便局の近くのバス停(屋根のある休憩所、バス停かどうか未だにはっきりしない)に到着したのは10時30分、キラメッセから84分46秒、ベストタイ(時速6.45km)でした。
 バス停(Yショップの向かい側)では15分休んで、10時45分に出発します。27番まで3時間以上かかるからまだまだ余裕はありません。


 今回も赤線の近道は歩かず国道を歩きました。距離は近道でも時間は数分遠回りになります、しかも体力もかなり消耗するので2回歩いたきりです。
 7日目にして初めての青空です。この青さだけでもちょっと感動します。


 11時56分、奈半利の町に入る少し手前、へんろみちが国道と離れる分岐点の前にあるコンビニに吸い込まれるように入っていきました。奈半利の町の中にある店に入って、中学校の前にある遍路小屋で休むつもりだったのですが、かなり疲れていたようです。ちょうどベンチもあるのでここで休むことにします。


 モナ王、130円、ちょっと贅沢してしまいました。食料を買うのは3回目、食費合計はまだ810円、最初は荷物になってうっとうしかったのですが、持参したミルクキャラメル600gがかなり効果的でした。
 30分ほど休んで12時28分に出発です。27番まで2時間弱だからちょっと余裕が出てきました。


 タイムチェックポイント、奈半利の交差点までバス停から82分30秒、ぎりぎりベストタイ(時速6.40km)でした。
 奈半利川を渡って田野の町に入っていくと見慣れない建物が飛び込んできました。第5、ということはこの小さな町にすでに5基の避難タワーができているということか。


 2年前は工事中で国道に迂回するしかなかった、安田川の橋がきれいに完成しています。橋の真ん中にあるベンチで年配夫婦が休憩中、やっと金剛頂寺を出た歩きの人に追いつきました。13時19分、


 14時22分、27番札所神峯寺に到着、奈半利の交差点から101分42秒、ベストより2分遅れですが、これまでは奈半利の宿に泊まって朝一で歩いた記録だから正しい比較にはなりません。
 登り口からここまで3kmの間に5人の歩き遍路さんを追い抜いてきました。さすがにこの時間に下ってくる人には会いませんでした。
 電車は唐浜発15時33分だから、かなり余裕はあるとこの時点では思っていました。


 お参り納経を終えて、山門を出たのは14時50分、予定通り、順調だと思っていたのですが、下りは思った以上に足が出ませんでした。急に暑くなったのが響いたか、全体に休み時間が少なかったのが影響したのか、
 写真は、2年前に4年ぶりに来てみればいきなり新しい道ができていてびっくりの広域農道ですが、宿に着いて美園さんに訊いてみたところ、蛇行がきつくて近道にはなっていないということでした。歩き遍路には全く無用のようです。
 唐浜までは37分で着く予定だったのですが、動きが全く駄目で42分もかかってしまい、あたふたして撮影する余裕もありませんでした。


 唐浜駅のへんろ君は撮影できなかったので、代わりに田野駅のいしん君です。


 高知家の代表はやっぱり広末、


 田野駅前の国道を東へ240m、交差点を北に入って200m、案内板がありました。初めて泊まる宿でへんろ地図にも出ていないから、事前にばっちり調べてこの案内板も写真で見ていました。1番札所などでもらえる、野宿ポイント、通夜堂、善根宿のリストにはのっているようですが、普通の歩き遍路さんにはまだまだ知られていないようです。


 15時49分、旅の宿美園に到着、普通の住宅です。写真を撮っていたら、玄関から美園さんが出てきました。ちょうどよかったぁ、今からちょっと出るとこやったの。とりあえず中に案内してもらいました。2階の部屋にはすでにAさんの荷物がありました、お風呂に入っているようです。


 旅の宿美園は2食付き2500円、部屋は一つだから、二人以上になると相部屋になります。三人以上になると広いリビングにも布団を敷くことになるようです。お手伝いに来ている若い男性二人とAさんと4人で食卓を囲みました。左上の肉じゃががなんといっても最高でした。肉じゃがなんて特別においしいと感じることのない普通のおかずだと思っていましたが、ちょっとその認識を覆すほどの美味さでした。ほかのお皿が添え物に感じてしまうほどでした。これだけのご馳走で、相部屋とはいえ2500円というのは何ともすごいとしかいいようがありません。善根宿の範疇ですが本当にありがたいと思いました。
 美園さんはネットで調べていた通りとてもバイタリティにあふれた明るく元気な女性です。少し前まで介護の仕事もしていたのですが、宿を初めてみると、どうしてもお遍路さんの面倒が十分みてあげられないこともあって、思い切って介護の方はやめてしまいました。お話好きで人の面倒をみるのが大好き、今日も国道で出会った外国人のお遍路さんに話しかけて泊まる宿を紹介して予約もとってあげたそうです。英語も話せるそうです。翌朝その宿に電話をしてちゃんと泊まれたか確かめていました。
 Aさんには翌日神峯に登るときにふもとに荷物を預かってくれる家があるからと、地図を書いて丁寧に教えていました。
 神峯の下りでは6人の歩き遍路さんと出会って本日は13人の歩きの人と出会いました。今日まで7日間で75人の歩き遍路さんと出会ったことになります。

  7日目の歩行距離  41.2km
      歩行時間  6時間57分  神峯までは文句のない歩き
      平均時速  5.93km


6日目 民宿えびす(海陽町)~うまめの木(室戸市)

2015-06-08 | 15年四国の旅


 夜明け前から雨が降っています。データボタンでレーダー画像を確認すると真っ赤な雨雲の帯が高知県西部から県境に近づいています。しかも今日は1日中雨の予報、岬の雨は油断なりません。
 ここまで5日連続で雨にあったけれど、1日目=1時間、2日目=5分、3日目=2時間、4日目=3時間、5日目=30分、ぐらいで、太龍寺の下りで転んだことを除いて、あまり痛手を受けたという感じはしていなかったのですが、今日は本格的にやられそうな感じがします。何しろ、1巡目の室戸が大雨で親友から祝い事のお返しでもらった大切な折り畳み傘を駄目にしてしまった。すぐ、野根の荒物屋さんで新しい傘を買うことになってしまった、その時の印象が12年経っても忘れられません。
 朝食は6時から摂って6時半から発つこともできたのですが、赤い帯がまさに県境にかかろうとしていたので、行き過ぎるのを待って7時14分の出発となりました。



 7時20分、水床トンネルを抜けるとそこは高知県東洋町、写真でもすごい雨が降っているのが判るようです。


 8時02分、生見海岸、東洋町役場の近くにある元コンビニの前までやってきました。えびすからタイムをとったことはないのですが、時速から換算するとベストタイでした。風がほとんどないので傘をさしていても全くハンデにはなりません。合羽を着込む方が中が蒸れてかえって体力の消耗が激しいかもしれません。
 元はヤマサキショップだったのですが9年前ぐらいにつぶれてそのままになっていたのが、2年ぶりに来てみるときれいに再生していました。何の建物かはよく分からないのですが。
 生見海岸から5700mの地点にあるゴロゴロ休憩所まで53分57秒でやってきました。ベストより30秒遅れです。ちょうど歩きの男性が出発したところ、その200mほど前にも人影が見えます。9時ちょうどだから宍喰を早めに出た人たちでしょう。
 15分ほど休んで、9時15分に発ちます。出発を大部遅らせたのでゆっくりしているわけにもいきません。携帯では写真を撮ったのですが、急いていたのか写真を撮り忘れてしまいました。


 ゴロゴロ休憩所から5,5km、東洋町から室戸市に入ります。この少し前でゴロゴロを先に発った二人を追い抜きました。二人目の人はベテランさんでした。朝食は摂らずぼくより1時間ほど先に発ったそうです。雨足はそんなに強くなく風も落ち着いているので機嫌良く歩けています。靴の中はぐっしょりですが。
 ゴロゴロから8300m、佛海庵の近くにあるバス停がタイムチェックポイント、76分53秒、ベストより20秒だけ遅れました。遅れたといっても時速は6.48kmだから申し分のない歩きです。実際9回歩いて2番目の記録、しかも雨も降っている。バス停ではカートを持った野宿の男性が休んでいました。いつもはここで休むことにしていたけれど、今回からもう少し先の佐喜浜の町中で休みます。
 国道を離れてしばらく行くと、若者がうろうろしています。休むところを探しているのか自動販売機を探しているのか。橋を渡ったところにスーパーがありますよ、と伝えるとにっこり安心したようでした。


 11時02分、佐喜浜のスーパーフェニックスに到着、入口の横にあるベンチで昼食です。すぐ若者が追いついてきてスーパーの中でお弁当を買っています。ぼくは昨日買った芋けんぴ。そうしたら、スーパーの奥さんが熱いお茶を入れてくれました。早くも今年5回目のお接待です。
 スーパーで休んでいたら、佛海庵の近くで追い抜いた年配夫婦がやってきました。休みますかというと、宿はもうすぐだからといってそのまま行かれました。ロッジ尾崎まで3kmちょっと。13時までに着いてしまいます。もうこれ以上雨の中にいたくないという感じかもしれません。その後にベテランさんがやってきました。また、休みますかtと訊くと、近くの食堂で昼食を摂るといって、また先に行かれました。ここまで出会った歩き遍路さんは11人、この後は岬までひとりぼっちでした。
 35分ほど休んで、11時40分に出発、宿まであと20kmだから、休憩、お参りの時間を入れても16時までには楽に宿に着きそうです。
 スーパーから4kmの所にある民宿徳増がタイムチェックポイント、佛海庵の近くのバス停から64分09秒、ベストタイです。時速は6.58km、2年前の歩きとは大違い。
 室戸までの道は国道で新しい舗装道だけれど、四国全部を通じてのハイライトと言えるへんろみちです。その醍醐味のあるへんろみちを全く辛い思いで歩くしかなかった2年前は本当に最悪でした。リベンジという言葉は嫌いだけれど、この道だけはしっかり楽しく歩き直しておきたいという気は満々でした。すごい雨でそんなこといってる場合ではないという感じだったのですが、ここまでは本人も意外なくらい足が自然に動いてくれて大満足。


 13時00分、椎名郵便局に到着です。雨が降っていて風もあるので軒下でしか撮影できません。徳増からの5000mを44分17秒、時速は6.77km、ちょっと信じられないくらい、追い風の時間が長かったのが原因かも。


 雨が降ったら郵便局で休ませてもらうことは決めていました。佐喜浜から8.9km、この付近に適当な休み場所はないはずです。ここから24番札所まで9.5kmだから、バランスは申し分ありません。
 キットカットをお接待してもらいました。今年6回目のお接待です。女性局員さんから清原が歩いていると聞きました。3月の末に徳島を歩いていたから、もう高知には入っているのではないか、と言われたのですが、帰ってから調べるとこの日薬王寺に着いたということでした。1日に15kmしか歩けないほどひざを痛めているようです。
 椎名郵便局では12分ほど休ませてもらっていっぱいお話もできました。
 13時12分に出発したのはいいのですが、天気の様子がちょっと違ってきました。風が強くなって傘があおられるようになります。しかも、方角が一定しなくて右往左往する感じで歩きに集中できません。時に突風が来て傘を持って行かれそうにもなるので、これは駄目だと、傘をたたみました。こんな所で壊されたのではたまりません。風は相当な強風で岬の木々がうなりを上げているような感じすらしたのですが、雨足はそんなに強くなかったので合羽は出しませんでした。もう最後の区間だし下半身はしっかり濡れているから、今更という感じでもあります。それに何より宿で乾かしてたたみ直すことを考えたら濡れた方がましという気になります。宿に着けば濡れたものは全部洗濯機に放り込んで、自分は風呂に浸かって乾いた衣類を着ければそれは極楽、それまでの我慢だと言い聞かせながら室戸台風の中を濡れ鼠でひたすら歩き続けます。もちろんカメラは使えません。
 14時45分、24番札所最御崎寺の登り口までやってきました。郵便局から87分もかかってしまいました。ベストより6分遅れですが、これは納得。ベストを出したのは徳増から歩き出した時だし、何よりこの荒れくれた天気の中だから、たどり着けただけで偉い。登り口からお寺までは距離にして700m、時間にして14分、険しい山道ですが木々が雨をいくらか防いでくれるので国道を歩くよりは気分は落ち着いています。
 15時ちょうど最御崎寺山門前に到着、ここのお大師さんが好きでいつもカメラを向けるけれど、今回は諦めるしかありません。境内には車で来ている人が3人ばかり、当然のこと歩き遍路さんの姿はありません。24番にお参りする歩きの人は朝、徳増かロッジ尾崎から来る人がほとんどだから正午までにお参りを終えてしまいます。
 ライターがぐっしょり濡れてなかなか灯明に点火できません。雨の日はこういう苦労もあります。お参り納経を終えて、15時17分にお山を下ります。宿まで1750m、大変な1日もまもなく終了です。

 15時35分、本日の宿うまめの木に到着、若女将が出迎えてくれました。「歩きですか」、「はい」、「今日はみなさん歩きですね」。というのもこの宿は普通の歩き遍路さんが泊まりにくい所に位置します。徳増、ロッジ尾崎から16kmなのでかなりゆる足の人でも5km先の25番の近くの宿まで行けてしまうし、徳増の手前の宿は生見海岸までなくて37km歩かないとこの宿に到達できないというわけです。事実2年前泊まったときの同宿は自転車遍路と車で来た観光客でした。本日の同宿も一人は徳増から来た人で、もう一人はこの宿の評判を聞いてどうしても泊まりたくて昨日は佛海庵まで歩いてバスで生見海岸まで引き返して、今日はまた佛海庵までバスで来たということでした。佛海庵からだと24kmぐらいです。そういうことで二人ともぼくより大部早めに着いたようです。
 「前に来られたことありますよね」「はい2年前にお世話になりました」、当たり前のような受け答えですがそんなにあることではありません。2回目ですぐ気がついてもらえたのは、今はなくなってしまった足摺の宿(20代の若女将の優しい笑顔が忘れられない)と高松のビジネス旅館三鈴くらい、それ以上だったのが須崎の柳屋旅館。2回目1年ぶりに予約を入れたとき、自分の名前を告げた瞬間「ああ、昨年来られた方ですね」と言われ度肝を抜かれてしまいました。珍しい名前でもないのに声だけですぐ思い出せるなんて、今でも信じられないくらいです。おかげで柳屋旅館には6年連続、その後もう1回泊まることになってしまいました。
 玄関には先に着いた人のシューズが2足、中敷きをはずされ新聞紙が詰め込まれて立てかけてありました。
 「靴はそのままにしておいて下さい、後でちゃんとしておきますから」といってタオルを手渡されました。これも全然当たり前のことではありません。靴の中がずぶぬれで宿に到着しても、古新聞いただけますかとお願いして自分で詰め込むことがほとんどでした。タオルを手渡してもらったことも一度もありません。
 2年前と同じ部屋に案内され「洗濯物はこのかごに入れておいて下さい。後で取りに来ますから、お風呂は今入ってる方が出られたら案内しますので」、洗濯はもちろん無料、お湯は一人一人入れ替えてもらえます。3部屋だからできることかもしれないけれど、同じことをしてくれるのは宇和島の遍路宿もやいしかこの時点では知らなかったですね。
 夕食の写真は4月10日付のブログで確認して下さい、デジカメでは撮りませんでした。何から何まで本当に至れり尽くせりの最高の遍路宿だと言っていいと思います。こんな素晴らしい宿に多くの歩き遍路さんが来られないのは本当に残念です。徳増も、金剛頂寺宿坊もたいそう良い宿ですが。

  6日目の歩行距離  42.3km
      歩行時間  6時間44分  室戸岬ときっちり向きあえて大満足
      平均時速  6.28km


5日目 弘陽荘(美波町)~民宿えびす(海陽町)

2015-06-04 | 15年四国の旅


 朝食をしっかり摂って6時37分に宿を出発します。薬王寺の手前に新しく立派なふなつき旅館があります。薬師会館がなくなって、日和佐の宿選びはちょっと迷います。帰ってから調べてみるとこの宿の料理は写真で見る限り弘陽荘よりもちょっと物足りない感じで、料金も高い。すぐ近くにあるきよ美旅館も弘陽荘よりは物足りなくて2011年当時で料金は7000円、弘陽荘は2食付き6500円だから一番リーズナブルだといえるかもしれません。他にも宿はいくつかあるのですが、評判はほとんどネット上に登場しないので何とも言えません。
 この少し先で男性を追い抜いたのですが、薬王寺の前の信号でふり返ると姿はありません、駅の方に向かったのかもしれません。次の札所まで75km、目標が遠すぎると歩くのも辛いので電車やバスを使うという人も少なくありません。ぼくなんかは目標はあくまでその日泊まる宿で、毎日40km先に宿がある限り焦ることもないし辛くもありません。
 と言いながら、薬王寺の写真は撮り忘れてしまいました。10回目だし、前に何度も撮っているし、改めてという感じもほとんどなくなっています。境内に上がると女性が一人いるだけで落ち着いてお参りすることができました。2年前境内に上がるすぐ手前でエリーさんとすれ違ったのは忘れられないけれど、なぜか桂吉弥さんが箒を持ってたたずんでいる姿が思い出されます。


 7時ちょうどに納経を済ませ、7時10分に薬王寺を出発です。しばらくすると弱い雨が落ちてきました。1km進んで牟岐線を越えて右折すると、前を行く二人連れが見えました。そのすぐ先では雨具を用意している男性もいます。3人を追い抜いてさらに、この奥潟トンネルの手前でも男性を一人、スタートして3km行かない間に5人の歩き遍路さんに出会いました。トンネルの向こうにも一人見えます。
 実は今回はこの600m手前で左折して県道147号で牟岐まで行く予定だったのですが、この時間に薬王寺を出ると日和佐に泊まった歩きの人を大体追い抜けるのではと思ったので、にぎやかな道を選択してしまいました。147号は来年歩くことにします。


 7時48分、日和佐トンネルの手前で、前のトンネルの先に見えた人に追いつきました。さらにその先トンネルに入ったばかりの人も見えます。日和佐トンネルの歩道は柵があって追い越すのに苦労しました。突然後ろから声をかけてよけてもらうのでびっくりさせてしまうことになります。トンネルの中で追い抜いたのは若い男性でした。
 薬王寺から7km地点にある小さな休憩所まで67分57秒で到着、時速は6.28km、ベストより1分半遅れでした。動きは悪くなくて前に歩く人も次々現れたのにタイムが出なかったのは少し意外でした。休んでいるとトンネルで追い抜いた若者がやってきて一緒に休みました。就職が決まった大学生で野宿で巡っている、昨日は橋本さんのバスで泊まったそうです。若い人は30万も一度に使うのは無理でどうしても野宿をすることになるようです。全部宿に泊まるのと、野宿で通すのとでは、お遍路の風景は大部違うものになるとぼくは思っているけれど、お遍路は自由だし、それぞれの人のものだから他人がどうこう言うことではありません。
 休んでいる間にここまでで追い抜いた人たちが先に進んでいきます。休憩するたびに抜かれると1日の間に2度3度と追い抜く人が出て、カウントするのがややこしくてしょうがありません。数が多くなると顔も覚えていられないので、いったい何人の人と出会ったのか、とそんなことを気にしつつ歩くことになります。
 16分ほど休んで8時35分に出発です。
 牟岐駅まで8kmの間はどういう訳か写真を1枚も撮りませんでした、雨は止んでいたけれど、前を歩くお遍路さんが気になって、特に2回目追い抜くときにはどう言って前に行けばいいのかとまどったり、初めての人か2回目の人か考えたりしていたので、カメラのことを考える余裕がなかったのかもしれません。
 そうして牟岐駅に到着したのは9時55分、休憩所から79分43秒、ベストより1分遅れでした。
 牟岐駅の前の交差点にある民宿あづまで泊まるとき以外は、いつも牟岐駅で休みます。少し先にお接待所があるはずですが、今回は遠回りの山道を歩くのでお接待所の前は通りません。家から持ってきたチーズとキャラメルで昼食です。ここまでまだ昼食は買っていません。でもそろそろ手持ちの食料も少なくなってきたし、今日の午後にはコンビニに入ろうと思います。
 駅のベンチから国道の交差点が見えます。追い抜いてきた人たちが次々に行き過ぎていきます。3回追い抜くことになる人がいるのだろうか、まもなく昼食だからどこかの食堂に入っている間に抜くことになるのだろうか、とぼんやり考えつつ35分ほど休んで10時30分に出発です。


 牟岐駅から130m先で国道を離れます。この道は3年前別格巡りの時に1度来たけれど、雨が降っていて写真の山道は行かず舗装道を直進してしまいました。山道を行かないのならこちらの道に来る意味はなかったのですが、何となくそうなってしまいました。


 四元さんが歩いたので、ぜひこちらの道も歩きたいと思いつつ、もうあれから7年です。


 予想とは違ってすごく歩きやすい気持のよい山道です。この道を歩いてこなかったのはちょっともったいなかったと思うほどです。せっかくなので一服します。


 5日目にして初めての海、そして5日連続の雨、受け入れるしかないのが歩き遍路です。


 下りになってしばらく進むとこの絶景、四元さんが声を上げたのはここだったのかもしれません。意味のある遠回りです。


 10時59分、国道に合流です。最後の所は山が削られていて、昔のへんろみちもなくなり急な階段になっていて少し残念、でも十分楽しめました。


 11時26分、別格4番鯖大師の馬頭観音堂の大屋根が見えてきました。国道から鯖大師へ入っていく道の入口がタイムチェックポイント、牟岐駅から国道を歩いたときのベストが42分、今回は遠回りの山道だったので56分かかりました。比較できないのでゆったり歩けました。


 鯖大師から4km、浅川駅の300mほど先にあるCafeふくながのママさんです。やっとお会いしてお話しすることができました。
 7年前、6巡目の時、この前を通りかかったとき雨が降っていました。店の中からママさんが飛び出してきて、お遍路さんがんばってね~、と声をかけてくれました。それが何ともすごく嬉しかった。帰ってから、NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク、のサイトをたまたま見つけると、このCafeがおもてなしステーションに指定されていることが判りました。であれば、翌年は休ませてもらおうと、決めて歩いたのですが、お店は開店前でした。前年は鯖大師でお参り、納経もしたので、宿を出るのが30分遅かったのでした。それでも、トイレを使わせてもらい水を補給しました。その次に来たのが2年前、その時は店の中がかなりにぎわっていて店の外の休憩所で休ませてもらうだけになりました。
 ということで、今回もあまり期待はしていなかったのですが、店の前で腰を下ろそうとしたらママさんが出てきて、中でコーヒーどうぞ、と言ってくれました。
 ここに着く少し前に年配の男性を追い抜いたので、その人もいいですかと聞いて、まもなくやってきたので中へ促しました。この方がまたすごい人でした。聞くと、ぼくに促されるまでもなくここに立ち寄るつもりだった、3年前にお世話になったのでどうしてもお礼を言いたかった。この方は、6巡目の大ベテランさんでしたが、普通のベテランさんとちょっと違う。58歳の時に心筋梗塞で倒れ、60歳ですっぱり仕事をやめて四国に来た、でも、普通の人の6割7割しか歩けない、今の自分はこれだけの力しかないのだと納得しながら1巡されたそうです。無理をしても仕方がない、それから3年ごとに四国に来て3年間生きさせてもらったことにお礼を言うために88ヶ所を巡る。今年75歳、6巡目のお礼参りです。
 ママさんの話もたくさん聞かせてもらいました、すごく明るく元気な人ですが、大変な苦労をされてきたそうです、このお店を続けていくのも容易ではなかったとか、本当に辛い目にあったからこそ人に優しく親切にできる、
 ベテランさんは一足先に発たれたのですが、ぼくはなんだか居心地がよくて50分も休ませてもらいました。今日は歩く距離が短かったので時間的余裕もありました。13時01分に出発、宿まで12kmだからこれだけ休んでも15時に着いてしまいます。


 手持ちのお金が少なくなって今日の宿賃にも足りないくらいになったので、海南郵便局に立ち寄るつもりだったのですが、国道から少し入ったところにあったようで気づかないまま行き過ぎてしまいました。仕方ないので大部遠回りになるけれど宍喰郵便局に行くしかありません。海南駅の近くでベテランさんと若者が一緒に歩いていました。
 海部駅前がタイムチェックポイント、たっぷり休んだのに2分遅れでした。身体は思うように動いてくれてる感じはしていたのですが。
 14時43分、宿の1.5km手前にあるコンビニに到着しました、一昨年改装中ですごく焦りました。宍喰で泊まるときも、もっと先の徳増やロッジ尾崎で泊まったときも毎回ここで夕食や朝食を調達しました。今回は2食付きで泊まるので、明日の昼食用の芋けんぴ、108円だけ買いました。


 国道から離れて宍喰の町の中にある郵便局を見つけて、3万円と100円玉12枚を無事に下ろすことができました。ATMボックスから女性局員さんに会釈。
 徳島県と高知県の境、水床トンネルの入口の200m手前にある民宿えびすに15時15分に到着しました。初めての投宿です。3日連続初めての宿、でもこの宿は佐藤さんからすごくいい宿だと聞いているので何の心配もしていません。


 お肉です、ビーフです、焼き肉です。四国の宿でビーフが出たのは大洲のときわ旅館以来2度目です。手前はチキン、右の奥はお魚、全部すごくうまい。写真には写っていませんがおつゆもありました。
 お風呂もトイレも部屋もピッカピカでこれ以上の快適さはないくらい。2食付き7100円は超おすすめの宿です。ぼくの泊まった147軒の中でベストファイブに入ると言ってもいいくらいです。
 ふくながでいっしょだったベテランさんが同宿で隣に座られました。Cafeで渡した遍路宿情報がよくできていると言ってほめてくれました。今治駅の近くで安いビジネスホテルがあったら紹介してほしいと言われたので、三笠旅館、3500円がいいでしょう、と推薦しました。よく聞くと道後から菊間まで歩いて、菊間には宿がないので電車で大西まで行くというので、古い地図には載っていませんが菊間にはマリーナシーガルという宿がありますよと紹介しました。
 話の中で、ぼくが三原村の農家民宿3軒とも予約がとれなくて清水川荘にやっと救ってもらった言うと、自分は農家民宿に予約しているので一緒に泊まって1組にしてもらってもいいけれど、と言われました。今年ふれあいの里さかもとの手前で一緒になった人が予約が取れなくて困っていたので相部屋で一緒に泊まるようにしてもらったそうです。とてもありがたい申し出だったのですが、さすがに、歩く距離が大部違うので日程が合わないということでお断りするしかありませんでした。でもこんなことを言われたのは初めてでちょっと感動してしまいました。
 ほかに、歩きの男性が3人、北海道から車で来たご夫婦が同宿でした。

  5日目の歩行距離  37.1km
      歩行時間  6時間11分  全区間ベストより数分遅れでした
      平均時速  6.00km  昨日の山越えの8時間の疲れが
                           残っていたかも