WALKER’S 

歩く男の日日

5日目 弘陽荘(美波町)~民宿えびす(海陽町)

2015-06-04 | 15年四国の旅


 朝食をしっかり摂って6時37分に宿を出発します。薬王寺の手前に新しく立派なふなつき旅館があります。薬師会館がなくなって、日和佐の宿選びはちょっと迷います。帰ってから調べてみるとこの宿の料理は写真で見る限り弘陽荘よりもちょっと物足りない感じで、料金も高い。すぐ近くにあるきよ美旅館も弘陽荘よりは物足りなくて2011年当時で料金は7000円、弘陽荘は2食付き6500円だから一番リーズナブルだといえるかもしれません。他にも宿はいくつかあるのですが、評判はほとんどネット上に登場しないので何とも言えません。
 この少し先で男性を追い抜いたのですが、薬王寺の前の信号でふり返ると姿はありません、駅の方に向かったのかもしれません。次の札所まで75km、目標が遠すぎると歩くのも辛いので電車やバスを使うという人も少なくありません。ぼくなんかは目標はあくまでその日泊まる宿で、毎日40km先に宿がある限り焦ることもないし辛くもありません。
 と言いながら、薬王寺の写真は撮り忘れてしまいました。10回目だし、前に何度も撮っているし、改めてという感じもほとんどなくなっています。境内に上がると女性が一人いるだけで落ち着いてお参りすることができました。2年前境内に上がるすぐ手前でエリーさんとすれ違ったのは忘れられないけれど、なぜか桂吉弥さんが箒を持ってたたずんでいる姿が思い出されます。


 7時ちょうどに納経を済ませ、7時10分に薬王寺を出発です。しばらくすると弱い雨が落ちてきました。1km進んで牟岐線を越えて右折すると、前を行く二人連れが見えました。そのすぐ先では雨具を用意している男性もいます。3人を追い抜いてさらに、この奥潟トンネルの手前でも男性を一人、スタートして3km行かない間に5人の歩き遍路さんに出会いました。トンネルの向こうにも一人見えます。
 実は今回はこの600m手前で左折して県道147号で牟岐まで行く予定だったのですが、この時間に薬王寺を出ると日和佐に泊まった歩きの人を大体追い抜けるのではと思ったので、にぎやかな道を選択してしまいました。147号は来年歩くことにします。


 7時48分、日和佐トンネルの手前で、前のトンネルの先に見えた人に追いつきました。さらにその先トンネルに入ったばかりの人も見えます。日和佐トンネルの歩道は柵があって追い越すのに苦労しました。突然後ろから声をかけてよけてもらうのでびっくりさせてしまうことになります。トンネルの中で追い抜いたのは若い男性でした。
 薬王寺から7km地点にある小さな休憩所まで67分57秒で到着、時速は6.28km、ベストより1分半遅れでした。動きは悪くなくて前に歩く人も次々現れたのにタイムが出なかったのは少し意外でした。休んでいるとトンネルで追い抜いた若者がやってきて一緒に休みました。就職が決まった大学生で野宿で巡っている、昨日は橋本さんのバスで泊まったそうです。若い人は30万も一度に使うのは無理でどうしても野宿をすることになるようです。全部宿に泊まるのと、野宿で通すのとでは、お遍路の風景は大部違うものになるとぼくは思っているけれど、お遍路は自由だし、それぞれの人のものだから他人がどうこう言うことではありません。
 休んでいる間にここまでで追い抜いた人たちが先に進んでいきます。休憩するたびに抜かれると1日の間に2度3度と追い抜く人が出て、カウントするのがややこしくてしょうがありません。数が多くなると顔も覚えていられないので、いったい何人の人と出会ったのか、とそんなことを気にしつつ歩くことになります。
 16分ほど休んで8時35分に出発です。
 牟岐駅まで8kmの間はどういう訳か写真を1枚も撮りませんでした、雨は止んでいたけれど、前を歩くお遍路さんが気になって、特に2回目追い抜くときにはどう言って前に行けばいいのかとまどったり、初めての人か2回目の人か考えたりしていたので、カメラのことを考える余裕がなかったのかもしれません。
 そうして牟岐駅に到着したのは9時55分、休憩所から79分43秒、ベストより1分遅れでした。
 牟岐駅の前の交差点にある民宿あづまで泊まるとき以外は、いつも牟岐駅で休みます。少し先にお接待所があるはずですが、今回は遠回りの山道を歩くのでお接待所の前は通りません。家から持ってきたチーズとキャラメルで昼食です。ここまでまだ昼食は買っていません。でもそろそろ手持ちの食料も少なくなってきたし、今日の午後にはコンビニに入ろうと思います。
 駅のベンチから国道の交差点が見えます。追い抜いてきた人たちが次々に行き過ぎていきます。3回追い抜くことになる人がいるのだろうか、まもなく昼食だからどこかの食堂に入っている間に抜くことになるのだろうか、とぼんやり考えつつ35分ほど休んで10時30分に出発です。


 牟岐駅から130m先で国道を離れます。この道は3年前別格巡りの時に1度来たけれど、雨が降っていて写真の山道は行かず舗装道を直進してしまいました。山道を行かないのならこちらの道に来る意味はなかったのですが、何となくそうなってしまいました。


 四元さんが歩いたので、ぜひこちらの道も歩きたいと思いつつ、もうあれから7年です。


 予想とは違ってすごく歩きやすい気持のよい山道です。この道を歩いてこなかったのはちょっともったいなかったと思うほどです。せっかくなので一服します。


 5日目にして初めての海、そして5日連続の雨、受け入れるしかないのが歩き遍路です。


 下りになってしばらく進むとこの絶景、四元さんが声を上げたのはここだったのかもしれません。意味のある遠回りです。


 10時59分、国道に合流です。最後の所は山が削られていて、昔のへんろみちもなくなり急な階段になっていて少し残念、でも十分楽しめました。


 11時26分、別格4番鯖大師の馬頭観音堂の大屋根が見えてきました。国道から鯖大師へ入っていく道の入口がタイムチェックポイント、牟岐駅から国道を歩いたときのベストが42分、今回は遠回りの山道だったので56分かかりました。比較できないのでゆったり歩けました。


 鯖大師から4km、浅川駅の300mほど先にあるCafeふくながのママさんです。やっとお会いしてお話しすることができました。
 7年前、6巡目の時、この前を通りかかったとき雨が降っていました。店の中からママさんが飛び出してきて、お遍路さんがんばってね~、と声をかけてくれました。それが何ともすごく嬉しかった。帰ってから、NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク、のサイトをたまたま見つけると、このCafeがおもてなしステーションに指定されていることが判りました。であれば、翌年は休ませてもらおうと、決めて歩いたのですが、お店は開店前でした。前年は鯖大師でお参り、納経もしたので、宿を出るのが30分遅かったのでした。それでも、トイレを使わせてもらい水を補給しました。その次に来たのが2年前、その時は店の中がかなりにぎわっていて店の外の休憩所で休ませてもらうだけになりました。
 ということで、今回もあまり期待はしていなかったのですが、店の前で腰を下ろそうとしたらママさんが出てきて、中でコーヒーどうぞ、と言ってくれました。
 ここに着く少し前に年配の男性を追い抜いたので、その人もいいですかと聞いて、まもなくやってきたので中へ促しました。この方がまたすごい人でした。聞くと、ぼくに促されるまでもなくここに立ち寄るつもりだった、3年前にお世話になったのでどうしてもお礼を言いたかった。この方は、6巡目の大ベテランさんでしたが、普通のベテランさんとちょっと違う。58歳の時に心筋梗塞で倒れ、60歳ですっぱり仕事をやめて四国に来た、でも、普通の人の6割7割しか歩けない、今の自分はこれだけの力しかないのだと納得しながら1巡されたそうです。無理をしても仕方がない、それから3年ごとに四国に来て3年間生きさせてもらったことにお礼を言うために88ヶ所を巡る。今年75歳、6巡目のお礼参りです。
 ママさんの話もたくさん聞かせてもらいました、すごく明るく元気な人ですが、大変な苦労をされてきたそうです、このお店を続けていくのも容易ではなかったとか、本当に辛い目にあったからこそ人に優しく親切にできる、
 ベテランさんは一足先に発たれたのですが、ぼくはなんだか居心地がよくて50分も休ませてもらいました。今日は歩く距離が短かったので時間的余裕もありました。13時01分に出発、宿まで12kmだからこれだけ休んでも15時に着いてしまいます。


 手持ちのお金が少なくなって今日の宿賃にも足りないくらいになったので、海南郵便局に立ち寄るつもりだったのですが、国道から少し入ったところにあったようで気づかないまま行き過ぎてしまいました。仕方ないので大部遠回りになるけれど宍喰郵便局に行くしかありません。海南駅の近くでベテランさんと若者が一緒に歩いていました。
 海部駅前がタイムチェックポイント、たっぷり休んだのに2分遅れでした。身体は思うように動いてくれてる感じはしていたのですが。
 14時43分、宿の1.5km手前にあるコンビニに到着しました、一昨年改装中ですごく焦りました。宍喰で泊まるときも、もっと先の徳増やロッジ尾崎で泊まったときも毎回ここで夕食や朝食を調達しました。今回は2食付きで泊まるので、明日の昼食用の芋けんぴ、108円だけ買いました。


 国道から離れて宍喰の町の中にある郵便局を見つけて、3万円と100円玉12枚を無事に下ろすことができました。ATMボックスから女性局員さんに会釈。
 徳島県と高知県の境、水床トンネルの入口の200m手前にある民宿えびすに15時15分に到着しました。初めての投宿です。3日連続初めての宿、でもこの宿は佐藤さんからすごくいい宿だと聞いているので何の心配もしていません。


 お肉です、ビーフです、焼き肉です。四国の宿でビーフが出たのは大洲のときわ旅館以来2度目です。手前はチキン、右の奥はお魚、全部すごくうまい。写真には写っていませんがおつゆもありました。
 お風呂もトイレも部屋もピッカピカでこれ以上の快適さはないくらい。2食付き7100円は超おすすめの宿です。ぼくの泊まった147軒の中でベストファイブに入ると言ってもいいくらいです。
 ふくながでいっしょだったベテランさんが同宿で隣に座られました。Cafeで渡した遍路宿情報がよくできていると言ってほめてくれました。今治駅の近くで安いビジネスホテルがあったら紹介してほしいと言われたので、三笠旅館、3500円がいいでしょう、と推薦しました。よく聞くと道後から菊間まで歩いて、菊間には宿がないので電車で大西まで行くというので、古い地図には載っていませんが菊間にはマリーナシーガルという宿がありますよと紹介しました。
 話の中で、ぼくが三原村の農家民宿3軒とも予約がとれなくて清水川荘にやっと救ってもらった言うと、自分は農家民宿に予約しているので一緒に泊まって1組にしてもらってもいいけれど、と言われました。今年ふれあいの里さかもとの手前で一緒になった人が予約が取れなくて困っていたので相部屋で一緒に泊まるようにしてもらったそうです。とてもありがたい申し出だったのですが、さすがに、歩く距離が大部違うので日程が合わないということでお断りするしかありませんでした。でもこんなことを言われたのは初めてでちょっと感動してしまいました。
 ほかに、歩きの男性が3人、北海道から車で来たご夫婦が同宿でした。

  5日目の歩行距離  37.1km
      歩行時間  6時間11分  全区間ベストより数分遅れでした
      平均時速  6.00km  昨日の山越えの8時間の疲れが
                           残っていたかも