WALKER’S 

歩く男の日日

7日目 うまめの木(室戸市)~旅の宿美園(田野町)

2015-06-14 | 15年四国の旅

 同宿の一人、浜松から来られたAさんは赤札の大ベテラン、考えてみれば赤札の人に対面するというのはそんなにあることではなくて、ぼくが出会った赤札のお遍路さんは、善根宿うたんぐらの奥さんと公認先達広島の竹下さん、それに大阪住之江の佐藤さん、作家で僧侶の家田荘子さんの4人ぐらいです。
 Aさんは浜松といっても天竜川の最下流にあるダム、船明ダムの近くにお住まいです。この方がまた大変な方でした。四国に来るきっかけは入院中にたまたま手にした、辰濃和男著「四国遍路」。読んでいる内に興味が湧いて、病状が落ち着いてきたときにお医者さんに相談したら大丈夫でしょうとお許しが出て四国に来たそうです。病名は悪性リンパ腫、四国を一巡したら病巣が小さくなっていた。それから毎年巡るようになると、3分の2になり、半分になり、3分の1になり、今では45mmほどあったものが10分の1以下になり、各部に転移していた病巣は完全に消滅、ほぼ完治に近い状態にあるといいます。「四国に来るとストレスが全くないからそれが良かったんじゃないかな」ニコニコ笑いながら焼酎のグラスを傾けます。地元でも毎日10km以上のウォーキングは欠かしません。天竜川沿いを上って一つ上流の秋葉ダムまで往復することもあるとか。「歩くのが楽しくて仕方ないんよ」
 この宿の評判はよく聞いていて、どうしても泊まりたくなって、バスを使うことにしたのだとか。翌日の宿はと訊くと、なんと、ぼくと同じ田野町の旅の宿美園、昨年は連泊でお世話になったそうです。その次の宿はとしつこく訊くと、住吉荘、そうなりますよね、と大きくうなずきます。ぼくは遊庵、「遊庵の話もよく聞いていて泊まりたいとは思うけれど、どうしても距離が合わなくて」。普通のお遍路さんは、金剛頂寺を起点とすると、次は27番の下の宿、そこから大日寺の近くの遊庵までは34km、まあ行ける人も少なくはないけれど次の宿のかねあいもあって手前の宿を選択する人が多くなってしまいます。遊庵から次の高知屋までは36kmあるから、その点でも泊まりにくい立地にはなっています。
 写真は2年前のうまめの木の朝食、今年は写真を撮り忘れてしまいましたがほぼ同じです。写真などより、すぐ食べたい。
 Aさんとぼくは今日も同じ宿に泊まりますが、歩く距離はちょっと違います。ぼくは田野の町を行き過ぎて27番にお参りして、ふもとの駅から電車で二駅引き返すというややこしいことをします。最初はふもとのドライブイン27に宿泊する予定だったのですが、少し手前に2500円で2食付けてくれる善根宿があると聞いたので、これは試すしかないと思い、距離を合わせるには電車を使うしかないということになりました。ぼくの歩く距離は41km、直接行くAさんは29kmです、ただしそうすると翌日の距離が35kmになってしまうので、今日は宿の数km先まで歩いて迎えに来てもらうということでした。もう一人の方は昨日お参りしなかった24番に登って、25番、26番を打って、吉良川の町の中にある蔵空間茶館に泊まるということでした。距離は17kmぐらいです。
 ということでぼくは朝食は6時から摂って、6時半に出発です。朝食の1時間ほど前から雨が降っていて、昨日の予報と違うじゃないか、7日連続の雨か、とちょっとがっかりしたのですが、玄関を出るとすっかり上がっていました。


 7時08分、25番札所津照寺に到着、宿から42分05秒、2年前より1分遅れですが時速は6.6kmなので全然悪くはありません。お寺のすぐ手前にある宿の駐車場には長野ナンバーと神戸ナンバー、いろんな所から来られています。
 津照寺ではぼくのすぐ後から来た車遍路の二人がいただけ、雨上がりの静かなお参りです。7時28分に次の札所に向けて出発です。
 足の運びは全く問題なくいい感じです。2日目の焼山寺で足全体が筋肉痛になったけれど、大部落ち着いて痛みが残っているのは脛ぐらいです。
 26番はそんなに高い山ではないけれど、登り口はいきなり勾配がきつく、その日の調子が試されます。直角に左に曲がる所まではやはり思ったように足が出ない感じにはなったけれど、その後は何とか落ち着いて山道に合わしていけました。調子の良いときの感じでしっかり登っていけました。


 8時09分、26番札所金剛頂寺に到着、25番から41分49秒、ベストタイでした。同じタイでもちょっと余裕のあるタイ、本当にいい宿に泊めてもらうと出足が好調になるというのは、決して思い込みではないと思います。
 お参り納経を終えて8時28分に出発です、今日は電車の時間があるのであまりゆっくり休憩できません。


 テレビで不動岩の縁起を詳しく聞かせてもらったので、行きたかったのですが、宿の都合で今回はパスするしかありません。来年は電車に乗らないので行けると思います。


 金剛頂寺から17分ちょうどで道の駅キラメッセ室戸に到着、ベストタイでした。ベストを出したときは必死に下ってきた記憶があるから、それに比べるとかなり普通のつもりなのに余裕でした。
 キラメッセではいつも休憩するのですが、今回は水の補給をして、ちょっと喉を潤すだけにします。まだ先は長いし、どうしても電車の時間が気になります。9時05分に出発です。


 写真ではよく分かりませんが、高知湾の対岸、須崎から中土佐町の山なみがくっきり見えています。もしかしたら、黒潮町までも見えているかもしれません。ここから向こう側の山なみを見ることは初めてです。神戸、垂水から和歌山友ヶ島が見えることが時々ありますが、その倍の80km先の山ですから、かなり珍しいことだと思われます。


 四国に来て7日目にして初めての陽射しです。うれしくなって、思わず自分にカメラを向けてみました。9時27分、


 吉良川の町を歩いていると、新しい宿ができていました。2年前に来たときもあったようですが、その時は気づかずに行き過ぎていたようです。帰ってから調べてみると、素泊まりのみで、1人で泊まった場合、母屋が6500円、離れが4500円です。徳増から29kmだから来られる人は多いけれど、どうしても金剛頂寺宿坊になるでしょうね。


 ぼくも暴風雨にたたかれながら岬を巡ってきた、自分の歩いてきた道程をつくづく眺めてしまいます。


 吉良川の町を抜けて西ノ川を渡ると、見事な藤の花盛り、思わず立ち止まって見惚れてしまいます。数日後の地元のニュースで、通りかかったお遍路さんと共に紹介されていました。ここで9時38分、
 西ノ川から5km先にある羽根郵便局の近くのバス停(屋根のある休憩所、バス停かどうか未だにはっきりしない)に到着したのは10時30分、キラメッセから84分46秒、ベストタイ(時速6.45km)でした。
 バス停(Yショップの向かい側)では15分休んで、10時45分に出発します。27番まで3時間以上かかるからまだまだ余裕はありません。


 今回も赤線の近道は歩かず国道を歩きました。距離は近道でも時間は数分遠回りになります、しかも体力もかなり消耗するので2回歩いたきりです。
 7日目にして初めての青空です。この青さだけでもちょっと感動します。


 11時56分、奈半利の町に入る少し手前、へんろみちが国道と離れる分岐点の前にあるコンビニに吸い込まれるように入っていきました。奈半利の町の中にある店に入って、中学校の前にある遍路小屋で休むつもりだったのですが、かなり疲れていたようです。ちょうどベンチもあるのでここで休むことにします。


 モナ王、130円、ちょっと贅沢してしまいました。食料を買うのは3回目、食費合計はまだ810円、最初は荷物になってうっとうしかったのですが、持参したミルクキャラメル600gがかなり効果的でした。
 30分ほど休んで12時28分に出発です。27番まで2時間弱だからちょっと余裕が出てきました。


 タイムチェックポイント、奈半利の交差点までバス停から82分30秒、ぎりぎりベストタイ(時速6.40km)でした。
 奈半利川を渡って田野の町に入っていくと見慣れない建物が飛び込んできました。第5、ということはこの小さな町にすでに5基の避難タワーができているということか。


 2年前は工事中で国道に迂回するしかなかった、安田川の橋がきれいに完成しています。橋の真ん中にあるベンチで年配夫婦が休憩中、やっと金剛頂寺を出た歩きの人に追いつきました。13時19分、


 14時22分、27番札所神峯寺に到着、奈半利の交差点から101分42秒、ベストより2分遅れですが、これまでは奈半利の宿に泊まって朝一で歩いた記録だから正しい比較にはなりません。
 登り口からここまで3kmの間に5人の歩き遍路さんを追い抜いてきました。さすがにこの時間に下ってくる人には会いませんでした。
 電車は唐浜発15時33分だから、かなり余裕はあるとこの時点では思っていました。


 お参り納経を終えて、山門を出たのは14時50分、予定通り、順調だと思っていたのですが、下りは思った以上に足が出ませんでした。急に暑くなったのが響いたか、全体に休み時間が少なかったのが影響したのか、
 写真は、2年前に4年ぶりに来てみればいきなり新しい道ができていてびっくりの広域農道ですが、宿に着いて美園さんに訊いてみたところ、蛇行がきつくて近道にはなっていないということでした。歩き遍路には全く無用のようです。
 唐浜までは37分で着く予定だったのですが、動きが全く駄目で42分もかかってしまい、あたふたして撮影する余裕もありませんでした。


 唐浜駅のへんろ君は撮影できなかったので、代わりに田野駅のいしん君です。


 高知家の代表はやっぱり広末、


 田野駅前の国道を東へ240m、交差点を北に入って200m、案内板がありました。初めて泊まる宿でへんろ地図にも出ていないから、事前にばっちり調べてこの案内板も写真で見ていました。1番札所などでもらえる、野宿ポイント、通夜堂、善根宿のリストにはのっているようですが、普通の歩き遍路さんにはまだまだ知られていないようです。


 15時49分、旅の宿美園に到着、普通の住宅です。写真を撮っていたら、玄関から美園さんが出てきました。ちょうどよかったぁ、今からちょっと出るとこやったの。とりあえず中に案内してもらいました。2階の部屋にはすでにAさんの荷物がありました、お風呂に入っているようです。


 旅の宿美園は2食付き2500円、部屋は一つだから、二人以上になると相部屋になります。三人以上になると広いリビングにも布団を敷くことになるようです。お手伝いに来ている若い男性二人とAさんと4人で食卓を囲みました。左上の肉じゃががなんといっても最高でした。肉じゃがなんて特別においしいと感じることのない普通のおかずだと思っていましたが、ちょっとその認識を覆すほどの美味さでした。ほかのお皿が添え物に感じてしまうほどでした。これだけのご馳走で、相部屋とはいえ2500円というのは何ともすごいとしかいいようがありません。善根宿の範疇ですが本当にありがたいと思いました。
 美園さんはネットで調べていた通りとてもバイタリティにあふれた明るく元気な女性です。少し前まで介護の仕事もしていたのですが、宿を初めてみると、どうしてもお遍路さんの面倒が十分みてあげられないこともあって、思い切って介護の方はやめてしまいました。お話好きで人の面倒をみるのが大好き、今日も国道で出会った外国人のお遍路さんに話しかけて泊まる宿を紹介して予約もとってあげたそうです。英語も話せるそうです。翌朝その宿に電話をしてちゃんと泊まれたか確かめていました。
 Aさんには翌日神峯に登るときにふもとに荷物を預かってくれる家があるからと、地図を書いて丁寧に教えていました。
 神峯の下りでは6人の歩き遍路さんと出会って本日は13人の歩きの人と出会いました。今日まで7日間で75人の歩き遍路さんと出会ったことになります。

  7日目の歩行距離  41.2km
      歩行時間  6時間57分  神峯までは文句のない歩き
      平均時速  5.93km