事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察~その67「機龍警察・未亡旅団」 月村了衛著 早川書房

2014-04-28 | 日本の警察

123980 その66「福家警部補の挨拶」はこちら

「機龍警察」

「機龍警察・自爆条項」

「機龍警察・暗黒市場」

につづく機龍警察シリーズ第4弾。これまで、龍機兵(ドラグーン)という機甲兵装に乗るオペレイター三人を中心にしたドラマだったが、さて今回は……

ある意味、同じパワードスーツ警察ものでも、あの「機動警察パトレイバー」より荒唐無稽な設定だとも言える。

・外務省のキャリアが主導して警視庁内に特捜部を設置し

・その唯我独尊ぶりでまわりから憎まれ、あるいは軽蔑され

・ドラグーンに搭乗するのは傭兵で、それぞれ軍人、ロシアの警察くずれ、そしてIRAの女性テロリスト

……ありえないでしょ?(笑)まだしも特車二課の方が地方公務員の苦みが横溢していた。しかし、荒唐無稽であればあるほど、作者の月村は現実の絶望をドラマの柱にしてみせる。今回はチェチェン問題。女性だけのテロリスト集団(架空どころか、実際にチェチェンに存在するそうだ)が日本に潜入した情報から、特捜部は公安と手を組んで(お互いがお互いを利用して)テロ防止に走る。

身長156センチ以下の人間しか登場できない機甲兵装が登場し、テロの世界ではすでに子どもが利用されまくっている現実を描写する。そしてその子どもがテロに疑問を抱いたのは、特捜部の刑事が、自分の全存在をかけて語りかけた説得のためだった。

毎回登場していた脇役の由紀谷刑事が、おそらくは松田優作をモデルにした過去を語る。港町の母子家庭にありがちな、しかしありがちであるだけ絶望的な十代。泣きましたよこれには。

自爆テロを神の恩寵だとする子どもたちにとって、生き残って組織から逃げ続ける方がはるかに厳しい道だ。その選択をしたひとりの少女が由紀谷にあてて書いた手紙が……あーこれもまた泣ける。確実にレベルアップしているこのシリーズ、はやく次作が読みたいー。

その68「宰領 隠蔽捜査5」につづく

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