事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「寝台急行『昭和』行」 関川夏央著 日本放送出版協会刊

2010-06-24 | 本と雑誌

14081384  自分も鉄道オタクであることを吐露しながら、しかし彼らへの嫌悪を隠そうともしていない。あいかわらず関川夏央は造りが複雑な人格。それはこの書でも顕著で、たとえばこんな具合……

「これからは、いわゆる団塊の世代がローカル列車の旅に参入してくる。自分もそのひとりとしていうのだが、『団塊』の特徴は『反体制気分』『口先民主主義』『若づくり』、それに『ケチ』である。」

「『オリエント急行の殺人』の場合、その真のテーマは、1920年代に世界の中心となった『アメリカとは何か』である。そうして、ポワロシリーズ全体をつらぬくものは、ゆるやかに落日しつつあるヨーロッパへの哀惜の念と、第一次世界大戦以前の秩序への郷愁である。」

例によって当たっているだけに、どうしたものでしょう(笑)

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「告白」 (2010 東宝)

2010-06-24 | 邦画

Kokuhaku02

主人公(松たか子)が、中学の教員として心に決めていたのは

「生徒を呼び捨てにしない」

ことだった。フレンドリーなつき合いを要求する生徒たちの期待にはそえないが、ひとりの人間として生徒を尊重しようと考えてのことだった。しかし、彼女のセオリーは最悪の形で裏切られる……

 湊かなえの原作は、息子や娘が「すんごく面白い」と言っていたのだが(まだ、息子の本棚にある)、現役の中学校職員として“しんどそう”なので読まないまま。

 こう思っていたのだ。きっとクラスのなかで延々と殺人犯捜しが続くのだろう、背景にはいじめやゆがんだ家庭像があるのだろう。しんどい、と。

 これらの予想はことごとくはずれ、想像もしなかった展開、あ然とするエンディングにジェットコースタームービーとして突っ走る。計算されたカメラワーク(生徒ひとりひとりの顔があまり判別できないように撮ってある)。紋切り型のセリフがあると必ず裏があるか、あるいは粉砕されるみごとな脚本。そして観客に判断をゆだねる微妙な表情で作品をささえた松たか子。眉毛をうすくしただけでここまで怖くなるかー。

下妻物語」「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本の中島哲也に「告白」を撮らせようという企画がまずすばらしい。しかも断トツのシェアを誇るメジャー東宝がその企画にOKを出したこと、その作品に数多くの観客がつめかけている事実までふくめて、今年度ベストワン決定。

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