毎日 ◆ 熱血!与良政談 <与良正男> (専門編集委員) 【全文転載】
★ ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中で日本の防衛はどうあるべきか。参院選で各党が主張を競い合うのは当然だ。でも本当に選挙の争点になっていると言えるだろうか。
私は懐疑的だ。それは自民党の主張があいまいだからにほかならない。
*自民党の公約にはこうある。「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を
目指します」 一方、岸田首相は「政府として、(2%という)数字ありきとは一度も申し上げていない」と繰り返し、新しい国家安全保障戦略を策定する年末までに具体的な中身を詰めると言う。
・対する立憲民主党の泉健太代表は「(首相は)自民党と相当違うことをおっしゃる。総額ありきでなければ、わが党の政策にだいぶ近づいてくる」と語った。
立憲の公約には「着実な防衛力整備を行う」とある。確かに違いはよく分からない。自民党公約にある「念頭に」という文言がくせものである。
・今回、NATO(北大西洋条約機構)を例に出して「GDP(国内総生産)比2%に」と口火を切ったのは安倍晋三元首相だ。党内には賛同する議員も多い。岸田氏も配慮しないわけにはいかない。
ところが数字を公約に明記すれば、「何が必要なのか具体的になっていないのに……」と批判されるのは目に見えている。ならば「念頭に」とすればどうか。安倍氏の顔も立つし
「2%とは決めていない」と言い訳もできる。つまり妥協の産物なのだ。2%となれば防衛費は今のほぼ倍で、約5兆円もの新たな財源が必要となる。
自民党がそう語りたがらないのは「5兆円と言ったら国民が驚く」と恐れているからだろう。ここにもずるさがある。
● いくら岸田氏が「最後は私が決断する」と力説しても、安倍氏の意向が政権を大きく動かしているのは間違いない。これを「権力の二重構造」と呼ぶ。
今度の選挙で私たちが直視すべきは、そこだ。仮に参院選で自民党が勝てば、岸田氏は他の予算を削ったり、国債を出したりして防衛費を増やすだろう。
だが、それで岸田氏の評判が落ちても安倍氏が責任を取ることはない。先が思いやられるではないか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
約8年もの間、首相の座に居ながら、国民のための功績をあげられなかった安倍晋三が、自民党内で隠然たる影響力を持てる。有権者はそれでも自民党候補者に投票してしまう。
この現実こそが日本の権力構造であり政局運営なのだ。それは防衛に限らない。「正面から真面目に答えず」「突っ込まれたくない争点は表現をぼやかす」
「数のチカラ=民主主義だ」・・・・これを有権者は拒否しない!何という国民なんだろう??? 怒るべき事にも怒らない?
★ ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中で日本の防衛はどうあるべきか。参院選で各党が主張を競い合うのは当然だ。でも本当に選挙の争点になっていると言えるだろうか。
私は懐疑的だ。それは自民党の主張があいまいだからにほかならない。
*自民党の公約にはこうある。「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を
目指します」 一方、岸田首相は「政府として、(2%という)数字ありきとは一度も申し上げていない」と繰り返し、新しい国家安全保障戦略を策定する年末までに具体的な中身を詰めると言う。
・対する立憲民主党の泉健太代表は「(首相は)自民党と相当違うことをおっしゃる。総額ありきでなければ、わが党の政策にだいぶ近づいてくる」と語った。
立憲の公約には「着実な防衛力整備を行う」とある。確かに違いはよく分からない。自民党公約にある「念頭に」という文言がくせものである。
・今回、NATO(北大西洋条約機構)を例に出して「GDP(国内総生産)比2%に」と口火を切ったのは安倍晋三元首相だ。党内には賛同する議員も多い。岸田氏も配慮しないわけにはいかない。
ところが数字を公約に明記すれば、「何が必要なのか具体的になっていないのに……」と批判されるのは目に見えている。ならば「念頭に」とすればどうか。安倍氏の顔も立つし
「2%とは決めていない」と言い訳もできる。つまり妥協の産物なのだ。2%となれば防衛費は今のほぼ倍で、約5兆円もの新たな財源が必要となる。
自民党がそう語りたがらないのは「5兆円と言ったら国民が驚く」と恐れているからだろう。ここにもずるさがある。
● いくら岸田氏が「最後は私が決断する」と力説しても、安倍氏の意向が政権を大きく動かしているのは間違いない。これを「権力の二重構造」と呼ぶ。
今度の選挙で私たちが直視すべきは、そこだ。仮に参院選で自民党が勝てば、岸田氏は他の予算を削ったり、国債を出したりして防衛費を増やすだろう。
だが、それで岸田氏の評判が落ちても安倍氏が責任を取ることはない。先が思いやられるではないか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
約8年もの間、首相の座に居ながら、国民のための功績をあげられなかった安倍晋三が、自民党内で隠然たる影響力を持てる。有権者はそれでも自民党候補者に投票してしまう。
この現実こそが日本の権力構造であり政局運営なのだ。それは防衛に限らない。「正面から真面目に答えず」「突っ込まれたくない争点は表現をぼやかす」
「数のチカラ=民主主義だ」・・・・これを有権者は拒否しない!何という国民なんだろう??? 怒るべき事にも怒らない?