静夜思

愁多酒雖少 酒傾愁不来

モルフォ・ブルー

2014-06-02 15:56:57 | 旅行
「モルフォ蝶」の名を耳にされたことはおありだろうか?学名はMorpho didiusでアゲハチョウの仲間、北米南部から南米にかけて80種生息するそうだ。翅(し)の色は褐色、白、青が主な色調だが、青以外では水玉模様の斑点が入る大型の蝶である。両翅広げた幅は15センチ程度。

 いきなり蝶の話で恐縮だが、偶々、私は青色のモルフォ蝶の翅ばかり敷き詰め、額に収めたものを保有しているからだ。図鑑にあたると、<メネラウス・モルフォ>と呼ばれる種類。「青」とひとくちに言うが、それは形容し難い。南洋の珊瑚礁溢れる海のブルーといえば、想像して戴けるだろうか?

そのブルーは視る角度で茶から紺色、緑など自在に変化し、暗い照明の中では妖しげな紫にも見える。但し、斑点は一切なく、翅の下端部内側が淡い茶色を見せている。じっと凝視するほどに神秘的な奥行きが拡がる。気味が悪いと漏らす人さえいたくらいだ。写真でどこまで伝わるか不明だが、ともかく不思議な雰囲気を醸しだしてくれる。

2000年頃か?正確には知らないが、日本も加盟するワシントン条約でこれは成虫標本の持ち込み禁止となったようだ。その一方で、ネット上には単体標本の販売サイトがあるので、首を傾げている。ブラジルでは蝶園で養殖しているとの記事もあるし、ザル法ここに極まれり、というところか。

私の手元にあるのは成虫標本ではなく、翅ばかり贅沢に集めて造形したものだから今も違法ではないのだが、それはさておき、一体何枚の翅が使われているのか?あるとき気になり数えてみた。<写真ご参照>

中央のサークル状にレイアウトされた周囲を囲んで約270枚、9つの円形部分には32枚X8と中央の70枚。重なった部分も含めると合計600枚近いことが判った。1羽あたり4翅として150羽分にあたる。いまは養殖されているとはいえ、自然界では希少な蝶になりつつあるのだろうから、胸が傷まなくはない。

これを何処で手に入れたかというと、ブラジルはサンパウロである。1988年、ウジミナスという製鉄会社を始め数社へ鋼板の買付けにシンガポールから出張した際のお土産のひとつだ。ブラジルみやげといえば紫水晶が当時は人気が高く、原石を粗研磨したのを随分安く売っていた。それ以外に食指の動くものは殆どないなか、私の目を釘付けにしたのがこのモルフォ・ブルーという訳である。
見ているうちに欲しくなった私は値切り交渉に入った。親爺もさるもの、軽く20分は粘っただろうか。折り合いがついたところで米ドルが足りない。両替屋を聞くと、近所の雑貨屋の二階で替えてくれるとのこと。だが先に電話を入れてから行けという。

面倒な連中だなと呟きつつ、ホテルから言われた番号にかけると、くぐもった、低く野太い声でパスポートを持参してくれとのたまう。プライヴェートのマネチェンなのにと理由を聞けば、貴方が本当に日本人かどうか確かめたいからだと。ふ~ん?

言われた店の二階のドアを開けると、目つきの鋭い男が机の向こうから、近づく私を見ている。こちらが名乗るまで口を利かない。パスポートを一瞥するや、ベルトに挟んでいた拳銃を机のうえに置き、円ドル交換レートを懐かしい欧州風の発音で言う。この頃は未だ渡米前なので拳銃を見るのは初めてだ。私が興味津津に拳銃を見つめるものだから、男はニヤッと微笑み引き出しに銃をしまったあと、私とニ三回の押し問答で合意。マン札を数え、ドル紙幣の束を封筒に入れてよこした。これで取引は終わり。余分なクチは一切きかない。

踵を返し階段に向かう私の背中に<Good Day グッデイー♪>が短く聞こえた。
        
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1 コメント

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ワシントン条約には該当しません (sadamuhuseinko)
2014-08-15 22:54:00
キシタ・トリバネ・アポロ・ホメロス・チカエ・コルシカキアゲハ・シボリ・テングがワシントンに該当します。モルフォはブラジル政府が天然物の輸出を禁じただけで飼育品は今でも自由です。

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