▲ 毎日【社説】中曽根元首相が死去 戦後政治の針路を変えたhttps://m ainichi.jp/articles/20191130/ddm/005/070/060000c?fm=mnm
昨日来の報道で主に使われているキャッチフレーズは、元首相の功績を集約するものとして『戦後政治の総決算を行った首相』だ。
私は此の語句に違和感を覚える。 ”戦後政治”とは何を言うのか? それを”総決算する”とは、具体的にどれを指しているのか?
★ まず後者からいくと、真っ先に挙げられるのが<3公社5現業の民営化>だ。あれから30年以上が経過。巨大な国営企業の累積赤字と非効率性の構造を
是正した功績は誰も否定しようがない。
他方、この民営化が強力だった労働組合運動の勢力弱体化を狙ったものでもあったことは明白で、その目論見は概ね成功。労使関係の均衡は大きく変わり、
90年代以降の「非正規雇用形態の合法化」「身分差による所得格差拡大」に繋がった点は周知のとおり。
これらの変化は、確かに戦前・戦中に形成された国営企業主導型経済の残渣を経営形態ならびに雇用形態の両面を清算したという意味で”総決算”したといえよう。
もうひとつ、政府機構の整理(いわゆる行政改革=行革)も今は功績に挙げられているが、省庁統合や内閣府の人事権掌握に道を開く遠因でもあり、
この行革の意義付けも、民営化に因る労働組合弱体化とともに今後の展開を暫く待たねばならず、性急な<評価はできまい。
☆ 一方の対外政策・外交の点で”戦後政治”とは何か? 敗戦後、進路転換してからの日米同盟、それと連動する対ソ連(ロシア)・共産中国との対峙。
これは90年余り経過した今も基調に於いて何も変わらない。此の意味で戦後政治の大枠は不変だ。
ソ連がロシアに変わっても、ロシアが米国と対立する限り、向こうも日本との関係は変えられない。資本主義経済に転じた中国とて全く同じ。
1978年の日中国交回復も所詮は、この大枠の中で相互が得失計算した戦術的妥協でしかない、今も。
こう大枠を観るなら、中曽根氏以後、日本が変わったのは対米・対ロシア・対中国への外交姿勢ではなく、上に述べた労働運動弱体化を踏まえた自身の右傾化だ。
靖国参拝は其のシンボルであり、今に至る国家主義的思潮と政治家の行動に顕われている。此の意味で、中曽根氏の政治体質は戦後自民党の本流ではない。
此の意味において【社説】が指摘する<戦後政治の針路を変えた>の表現は正しい。
ここで我々国民が忘れてはならないのが、此の中曽根路線の延長線上に今の安倍政治があるという俯瞰である。つまり”戦後政治”の基本をどう認識したうえで、
安倍首相が口にする”戦後政治の総決算とは何か?”をどのように捉え、評価するか、である。
メディアが、国民にここを正確に評価させられないミスリードをするようなことがあってはいけない。
昨日来の報道で主に使われているキャッチフレーズは、元首相の功績を集約するものとして『戦後政治の総決算を行った首相』だ。
私は此の語句に違和感を覚える。 ”戦後政治”とは何を言うのか? それを”総決算する”とは、具体的にどれを指しているのか?
★ まず後者からいくと、真っ先に挙げられるのが<3公社5現業の民営化>だ。あれから30年以上が経過。巨大な国営企業の累積赤字と非効率性の構造を
是正した功績は誰も否定しようがない。
他方、この民営化が強力だった労働組合運動の勢力弱体化を狙ったものでもあったことは明白で、その目論見は概ね成功。労使関係の均衡は大きく変わり、
90年代以降の「非正規雇用形態の合法化」「身分差による所得格差拡大」に繋がった点は周知のとおり。
これらの変化は、確かに戦前・戦中に形成された国営企業主導型経済の残渣を経営形態ならびに雇用形態の両面を清算したという意味で”総決算”したといえよう。
もうひとつ、政府機構の整理(いわゆる行政改革=行革)も今は功績に挙げられているが、省庁統合や内閣府の人事権掌握に道を開く遠因でもあり、
この行革の意義付けも、民営化に因る労働組合弱体化とともに今後の展開を暫く待たねばならず、性急な<評価はできまい。
☆ 一方の対外政策・外交の点で”戦後政治”とは何か? 敗戦後、進路転換してからの日米同盟、それと連動する対ソ連(ロシア)・共産中国との対峙。
これは90年余り経過した今も基調に於いて何も変わらない。此の意味で戦後政治の大枠は不変だ。
ソ連がロシアに変わっても、ロシアが米国と対立する限り、向こうも日本との関係は変えられない。資本主義経済に転じた中国とて全く同じ。
1978年の日中国交回復も所詮は、この大枠の中で相互が得失計算した戦術的妥協でしかない、今も。
こう大枠を観るなら、中曽根氏以後、日本が変わったのは対米・対ロシア・対中国への外交姿勢ではなく、上に述べた労働運動弱体化を踏まえた自身の右傾化だ。
靖国参拝は其のシンボルであり、今に至る国家主義的思潮と政治家の行動に顕われている。此の意味で、中曽根氏の政治体質は戦後自民党の本流ではない。
此の意味において【社説】が指摘する<戦後政治の針路を変えた>の表現は正しい。
ここで我々国民が忘れてはならないのが、此の中曽根路線の延長線上に今の安倍政治があるという俯瞰である。つまり”戦後政治”の基本をどう認識したうえで、
安倍首相が口にする”戦後政治の総決算とは何か?”をどのように捉え、評価するか、である。
メディアが、国民にここを正確に評価させられないミスリードをするようなことがあってはいけない。