マチンガのノート

読書、映画の感想など  

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 :東畑開人著

2019-04-14 23:55:41 | 日記

以前から様々な学派において、重症例での再抑圧の必要性について論じられていたが、

著者は院生時代から、自らの著書で自験例を例示して、解り易くクライアントが表面を保ち

内側を護れるようになる必要性について論じてきている。

これまでの著作では、心理センターなどでの心理療法においのてそのようなことを論じてきたが、

本書では、精神科クリニックのデイケアにおいての表面を維持して、破綻せずに

日常を送ることの大切さについて解り易い文体で論じている。

そしてその際には、いかに身体的にも関わることの多い看護師達が重要かについても論じている。

しかしながら、投資に対して見返りを求める現在の風潮が、いかにそれをフォローしていないかについても

触れられている。

心理療法を行う以前に、安定させるケアがいかに必要かがよく解る一冊である。

著者は臨床心理について詳しいので、それなりに自らを保ってきたが、

そうではない医療事務の方々が負担をもろに受け止めて、続けられなくなることについても

触れられていている。

心理療法においてスーパーバイズや症例検討会における治療者の分かち合いの

必要性は指摘されてきたが看護師や医療事務従事者についても、そのようなことは必要なのだろう。

しかしながら投資に対する効果のエビデンスを求める昨今において、

そのようなことを始めるのは、予算上難しいようである。

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 :東畑開人著


小林隆児氏と畑中千紘氏に関して

2019-04-09 00:10:38 | 日記
小林隆児氏は、SSPで、子供が養育者から離れていると寂しそうにして、
近付くと、離れることを描写していた。
畑中千紘氏は、70代のクライアントが、いろいろ話すのを、
意味を理解できないが、何か月か聞いていて、「あなたの話は理解できない」
というと、クライアントはショックを受けて、もう来るのをやめると言うのに対して
このままでは終われない、と言い、面接を続けたとのこと。
そこからが、京大臨床心理の人たちの言う、「掴む、絡みあう、離れる」「融合と分離」
との事なのだろう。


美と深層心理学 :東畑開人 京都大学学術出版会 4

2019-04-03 22:00:20 | 日記
ネットでも放送しているラジオ番組で、働いていたデイケアでのこととして、
他の要因も当然影響があるだろうが、時間をとって話を聞くことにした患者さんが、
来なくなったことを話していた。
重い症例だと、時間をとって話を聞いたりするなどで、深くかかわると逆に状態が悪くなるというのは、
いかなる理由でなのかを考えたことが、本書の執筆の理由の一つではないだろうか。
深層心理学だと、患者さんの話すことや描くものや箱庭などの表面より奥にある意味を考えながら
聞く態度が基本的にあるとのことだ。
そのことが表面を保とうとする部分を揺さぶってしまい、
状態が悪くなり、治療関係が続かなくなったり、様々な症状が悪化したり、
様々な適応状態も悪くなるのだろう。
著者によると、表面の意味を他の次元に還元することが、主体性を削ぎ落すことに
繋がるとの事である。
深層を探るような臨床の態度はバリントのいう、地火風水になり
支え続けるという事とは少し違い、不要な影響を相手に与えるのだろう。
ビオン流に言うと、関係によって、アルファ機能を逆回転させるようなことが起きるのだろう。
治療者側がなぜ、不要なことをしたり、気づかない内にそういう態度を取るのかを
考えたことが、この一冊になったのだろう。