以前から様々な学派において、重症例での再抑圧の必要性について論じられていたが、
著者は院生時代から、自らの著書で自験例を例示して、解り易くクライアントが表面を保ち
内側を護れるようになる必要性について論じてきている。
これまでの著作では、心理センターなどでの心理療法においのてそのようなことを論じてきたが、
本書では、精神科クリニックのデイケアにおいての表面を維持して、破綻せずに
日常を送ることの大切さについて解り易い文体で論じている。
そしてその際には、いかに身体的にも関わることの多い看護師達が重要かについても論じている。
しかしながら、投資に対して見返りを求める現在の風潮が、いかにそれをフォローしていないかについても
触れられている。
心理療法を行う以前に、安定させるケアがいかに必要かがよく解る一冊である。
著者は臨床心理について詳しいので、それなりに自らを保ってきたが、
そうではない医療事務の方々が負担をもろに受け止めて、続けられなくなることについても
触れられていている。
心理療法においてスーパーバイズや症例検討会における治療者の分かち合いの
必要性は指摘されてきたが看護師や医療事務従事者についても、そのようなことは必要なのだろう。
しかしながら投資に対する効果のエビデンスを求める昨今において、
そのようなことを始めるのは、予算上難しいようである。
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