マチンガのノート

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美と深層心理学 :東畑開人 京都大学学術出版会 4

2019-04-03 22:00:20 | 日記
ネットでも放送しているラジオ番組で、働いていたデイケアでのこととして、
他の要因も当然影響があるだろうが、時間をとって話を聞くことにした患者さんが、
来なくなったことを話していた。
重い症例だと、時間をとって話を聞いたりするなどで、深くかかわると逆に状態が悪くなるというのは、
いかなる理由でなのかを考えたことが、本書の執筆の理由の一つではないだろうか。
深層心理学だと、患者さんの話すことや描くものや箱庭などの表面より奥にある意味を考えながら
聞く態度が基本的にあるとのことだ。
そのことが表面を保とうとする部分を揺さぶってしまい、
状態が悪くなり、治療関係が続かなくなったり、様々な症状が悪化したり、
様々な適応状態も悪くなるのだろう。
著者によると、表面の意味を他の次元に還元することが、主体性を削ぎ落すことに
繋がるとの事である。
深層を探るような臨床の態度はバリントのいう、地火風水になり
支え続けるという事とは少し違い、不要な影響を相手に与えるのだろう。
ビオン流に言うと、関係によって、アルファ機能を逆回転させるようなことが起きるのだろう。
治療者側がなぜ、不要なことをしたり、気づかない内にそういう態度を取るのかを
考えたことが、この一冊になったのだろう。