大学入学が昭和40年、この頃よく三宮界わいをウロウロしていた。
とりあえず家を出たものの、講義を受ける気がしない。
そんなとき三ノ宮で途中下車し、よくコーヒーを飲んだ。
この一帯には色々個性的な喫茶店があった。
そんな時にオープンしたのが、阪急山側の茜屋珈琲店。
学生向きという雰囲気ではなかったので時折覗く程度だった。
その後神戸を離れた時期もあるが、
コーヒーの香りに包まれた落ち着いた雰囲気は独特で、
前を通るとつい引き寄せられるように狭い階段を上ってしまう。
久しぶりだった。
店の看板ともいえるマダムの顔は見えなかったが、
垢ぬけたあたりのいい若者が店を仕切っていた。
ブレンドを頼んだ。
口当たりはいいが、もう少しアピールがあってもいいのではと思った。
ここは大倉のカップが主流だが、この日はロイヤルコペンハーゲンだった。
店内に流れているのはLP盤のレコード、バイオリン曲だった。
目の前に見えた電話は黒のどっしりとしたダイヤル式のクラシックタイプ、
頭の上には小松益喜画伯の作品がかけてあった。
まさに郷愁、タイムスリップしたようで快感だった。
こうしたスタイルは結構受けるようで
あの軽井沢に3軒、銀座にも一軒出店しているそうな。