TVおじさん

世相の鏡であるテレビから学び、時として批判も。メディア表現にも触れる。まだ元気、散策の想い出も綴りたい。

幽けし清酒

2018-09-23 | ことば

『歌風土記 兵庫県』なる歌集がある。

 詩人富田砕花が、戦後間なしの昭和24年およそ1年余りをかけて

「現地についての風趣感慨を盛るに当って、親しく山に登り、

峠を越え、野をわたり、家をたづね、更にまたそれらに繋がる古典、

土俗のたぐひをも・・・念には念を入れて」(朝倉斯道)調べ連載した。

鉄道・バスの交通事情は極めて悪く、道路事情など言わずもがな。

想像もつかぬ大変な作業を経て、摂津・播磨・丹波・但馬・淡路の

広い兵庫五国を396首で詠い上げた。

その冒頭の歌

しんとろり こはくいろの滴りの

澄めば澄むもの 音のかそけく

灘の酒蔵を訪ねて歌ったものだが、

とろーっと琥珀色をした灘の清酒したたりは

澄み切った色合いで、ほのかに音さえ聞こえてくる

といったような意味だろうか ‼

芦屋市宮川町の富田砕花旧居には歌碑もある。

こんな調子で兵庫を見事に謳い上げている。

それぞれの土地のその当時のありさまが手に取るよう。

いまや”天空の城”と呼ばれ大人気の竹田の城は、

山城の天守の址によぢのぼり

床尾は見つれ 大江山もすこし


鐘の音のひびきこもらひいつまでも

古城の址は花の雲の上

この歌集はとっくの昔に廃刊となっていて

県立図書館でも閲覧しかできません。

興味のある方はどうぞ・・・




 

 


あざとい

2017-02-14 | ことば

ドラマ作りに長年携わってきた私の友人は、

「あざとい」という言葉をよく使う。

演出には欠かせない手法のようだ。

広辞苑を引くと

①思慮深い。小利口である

②押しが強くて、やり方が露骨で抜け目がない

明鏡国語辞典によると

①思慮深さに欠けるが、小利口であるさま

浅はかでこざかしい。

②抜け目がなく貪欲であるさま

①②とも非難していう

あまりいい言葉ではないようだが、

かなり意図的な意味合いが強く

「露骨で抜け目なく貪欲に見る者の関心を引き」

視聴率アップにつなげようという意図がくみ取れる。

NHKの朝ドラはこの路線とみて間違いないだろう。

ある意味その成功例ともいえる。

韓国ドラマもこういう流れだろう。

脚本・俳優の演技・カメラワークなどを見れば一目瞭然、

演技のできない役者をメインに据え

親しみを強調するのもひとつのやり方か?

こうなれば「くさい」「つたない」というのもあり得るだろうが、

一歩間違えば奈落の底に落ち込む恐れもある。

ドラマ作りの手法は時代とともに変化するのはわかるが、

本道を行くドラマをもっともっと見てみたい。

 

 

 

 


読めない北海道の地名

2016-04-17 | ことば

北海道旅行に行けば必ず難読地名の読み方講習がある。

殆どがアイヌの命名のようで、巧くはまる漢字をあてたようだ。

これらの地名を見ることで、全道に広がったアイヌの存在が読めるし、

言葉の文化も相当熟していたことがわかる。

晩生内(オソキナイ)、咲来(サックル)、穂香(ホニオイ)、枝幸(エサシ)、

占冠(シムカップ)、足寄(アショロ)、神居古譚(カムイコタン)等々。

挙げればきりなし。

興味ある人は勝手に調べてください。


野坂昭如の絶筆

2015-12-11 | ことば

神戸にゆかりの深い野坂昭如さんが亡くなった。

直木賞を受けた『火垂るの墓』はあまりにも知られている。

神戸空襲の実体験をベースにしているという。

私を映画の虜にしたのも彼が書いた今村正平監督の『エロ事師たち』、

『おもちゃのチャチャチャ』も彼の手によるもの。

活動は多彩だが、騒がしい事件も起こしている。

映画監督の大島渚をぶん殴った事件は、

私と同年代の人間なら誰もが記憶にあるだろう。

彼は15年前に脳梗塞で倒れたが、

今も続けているのが『新潮45』の連載「だまし庵日記」。

新潮社に絶筆といえる原稿が届いたことが、

きょうのスポニチに紹介されている。

末尾の一文、

「この国に戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」

絶筆にふさわしい彼の悲痛な叫びだ。

ちなみに女優・吉永小百合に思いを寄せる“サユリスト”、

その吉永さんは「残念です。野坂さんの飛びぬけた行動力と

非戦への想いを、今しっかりと受けとめたい」と追悼の言葉を寄せている。

ほんとに突拍子のない人物だが、彼の憂いは大切にしたい。

 

 


羽田の下駄履き

2013-10-08 | ことば

MBSのひるおび、

昭和39年の東京オリンピックに関するクイズを出していた。

第1問。オリンピックの際羽田空港で禁止になったのは、

下駄かそれともジーンズか。答えは下駄。

私はオリンピックの翌年大学に進んだ。

この頃は、ジーンズに下駄履きという姿が流行っており、

私も好んで似たような格好をした。

禁止にする必要があったかどうかは分からないが、

日本の国際化スタートの象徴的なイベントでもあり、

当然の措置だったのかもしれない。

当時、東京の一流ホテルはやたら服装にうるさかった。

正装とまではいかないにしろ、ネクタイは必須だった。

ただし日本人のみ。ホテルの従業員はうるさく注意をしていた。

外国人は短パンにサンダル姿でロビーを闊歩していた。

きょうのクイズでついこんなことを思い出してしまった。

これは付け足しだが、東京オリンピックの開会式を

10月9日であると1面トップで大々的に報じた誤報が

今も私の目に焼き付いている。

どこの新聞だったかははっきりしないが・・・。


いきいき行動する“活”

2013-10-08 | ことば

きょうのNHKの「あさイチ」で「温活」を取り上げていた。

秋バテ克服のためには、体を温めることが必須という理由からである。

キャスターの井ノ原快彦ことイノッチが、「なんでも活」とやや皮肉っぽい言い方をしていた。

これは言葉をやたら縮める短縮化への抵抗と

流行病のように安易に“活”をつけることへのいら立ちのように思えた。

 

広辞苑によると、「活」は“いきいきと”という

極めて前向きな意味を含む響きの良い言葉である。

「生活」はまさにいきいきと生きることであり、

「活魚」はピンピンと跳ねる魚、

「活花」は静と動、凛としている様、

華やかを際立たせることがあるかと思えば

清楚な装いも見せることもある。

 

破壊活動と言った言葉は良しとしないが、

貧乏生活という表現でも、

つつましやかに強くたくましく生きようという

前向きの姿勢が伝わってくる。

 

前置きが長くなったが、最近は“活”のオンパレードである。

御三家と言えるのが「婚活」「就活」「終活」、

今さらこの意味を説明することはないだろう。

ただ「終活」については「就活」と紛らわしいし、

もっといい表現がなかったのかと言いたい。

「終活」は、身内の醜い争いを避けるため生前に相続計画をたてたり、

自身の葬儀やお墓の手当てなどをしたりしておくことのようだが、

ストレートすぎる「終」の文字をあてなくても

極楽浄土の「浄」や臨終の「臨」などのほうが語感もいいのではないか。

 

「活」を拾っていくと、“早起きは三文の徳”を実践する「朝活」、

円満離婚を図るための「離活」、泣いてストレスを和らげる「涙活」

それに元気な赤ちゃんを産む「妊活」等々。

 

ネットで見ると某教授は、「活」が広がった理由として

「結婚活動を婚活のように2文字に縮めたことによる語感の変化と

“カツ”という音の響き」を挙げている。

短縮化で本来の「活発に動く」という意味が薄まり、

「楽しもう」という意味合いが浮き立ってくるという。

「婚活」「就活」もあまり悲壮感を持たずに楽しくやろうということなのか。

ただ当事者は、最初からあきらめの境地でとりかかるのではなく、

何が何でも成就するという気持ちで頑張ってほしい。


国語調査

2013-10-05 | ことば

先日文化庁の「国語に関する世論調査の結果」が載っていた。

朝日・読売・NHK等そろって「噴飯物」にズームイン。

どう読むのか、その意味はどうだろう。

読みはそのまま「ふんぱんもの」、

NHKの漢字表記辞典にはちゃんと載っている。

さてこの言葉の意味は?

(例文)「彼の発言は噴飯ものだ」、

(ア)「腹立たしくて仕方がない」

(イ)「おかしくてたまらない」

それに「わからない」

回答は(ア)が49パーセント、(イ)は19.7パーセント

「分からない」が27.4パーセント。

さて正解は(イ)、5人に1人しかいない。

半数が間違いで、4人に1人が分からない。

〔NHKTVから〕

分からないのはどうしてこの言葉が調査の対象となったのか。

私はこの言葉を使ったことはないし、

現場からあがってきた原稿でも使われたためしはない。

マスコミ内部では死語と認定されても仕方がない。

ついクイズのようなつもりで答えた向きもあろう。

“噴”にに引っ張られれば、「憤り」や「憤怒・憤懣」につながり

「腹立たしい」ほうに結びついてしまう。

“飯”に目がいけば「飯を噴き出す」状況が浮かぶかもしれない。

間違いの割合が最も高いということで

マスコミはこの言葉を取り上げたのだろうが、

日常の暮らしとはかけ離れた言葉であり、

記事のための記事でしかないように思う。

 

 

 

 


“代”という漢字

2013-09-27 | ことば

台風18号の襲来からまもなく2週間。

京都、大津方面は豪雨禍で、今なお京阪電車は停まったままで、

この区間は代替(だいたい)輸送が行われている。

京阪の周知文書を見ると、一部はJRで振替輸送、

山科・浜大津間は代行バス運行となっている。

確かに関西では「代替」という言葉は定着していないようだ。

お馴染みなのは「代替え(だいがえ)」。

阪神・淡路大震災の折には、この代替えを使っていた。

「神戸では“代替え”が一般的」とことわりもしていた。

現地主義を重視した的確な判断と言っていいだろう。

 

“代”という字は面白い字だと思う。「よ」「しろ」とも読む。

国歌「君が代」の“代”が最も象徴的な使い方だろう。

「君が代は、千代に八千代にさざれ石の・・」

「千代に八千代に」、結婚式の挨拶で使われる常套句で

いついつまでも・・という寿ぎを強調している。

ところが「身代(しんだい)」はどうか。

明鏡国語辞典は用例として「身代を築く」をあげているが、

どちらかと言えば「身代を食いつぶす」という言い回しを

耳にすることのほうが多いように思う。

事件を追っかけていた私などは

つい「身代金」という言葉が浮かび、

無理強いの営利誘拐を想起する。

劇場犯罪のはしりとなった「グリコ森永事件」の

“現金10億金塊100キロ”の要求には驚かされた。

 

『飲み代』という言葉。

NHK/毎日などマスコミの用語辞典を見ると

いずれも読みは「のみしろ」で「のみだい」ではない。

日本新聞協会から出ている『放送で気になる言葉』に興味深い指摘がある。

 「のみしろ」「のみだい」いずれも認めるべきと主張しており、

「のみしろ」は時代劇などせりふで出てくる古い表現で、

現代では「のみだい」のほうが一般的に使われていると指摘、

さらに辞書にないからと言って誤りとは言い切れないと主張している。

 

私は一時大阪の都島区に住んでいた。

いつも地下鉄で通っていた。

ちょっとアルコールが入って乗り越すとそこは『野江内代』、

「のえ・うちしろ」と読むのかなと思っていたが、

これは「のえ・うちんだい」が正解。

 

 

 


“圧倒的な熱量”半沢直樹

2013-09-25 | ことば

神戸新聞のベタ記事。

「半沢直樹」の原作者・池井戸潤さんが、

ドラマに対する感想を述べている。

TBSを通じて発表したというので

字句がそれほど変わっていることはないだろう。

「圧倒的な熱量を放つ、素晴らしいドラマ」、

まさに言い得て妙、こんなに短いフレーズで、

今回のドラマの本質を的確に言い表している。

とにかく、スカッと勢いのあるドラマだった。

最終回の平均視聴率は関西45.5%、関東42.2%

大ブレイクおめでとう。