『歌風土記 兵庫県』なる歌集がある。
詩人富田砕花が、戦後間なしの昭和24年およそ1年余りをかけて
「現地についての風趣感慨を盛るに当って、親しく山に登り、
峠を越え、野をわたり、家をたづね、更にまたそれらに繋がる古典、
土俗のたぐひをも・・・念には念を入れて」(朝倉斯道)調べ連載した。
鉄道・バスの交通事情は極めて悪く、道路事情など言わずもがな。
想像もつかぬ大変な作業を経て、摂津・播磨・丹波・但馬・淡路の
広い兵庫五国を396首で詠い上げた。
その冒頭の歌
しんとろり こはくいろの滴りの
澄めば澄むもの 音のかそけく
灘の酒蔵を訪ねて歌ったものだが、
とろーっと琥珀色をした灘の清酒したたりは
澄み切った色合いで、ほのかに音さえ聞こえてくる
といったような意味だろうか ‼
芦屋市宮川町の富田砕花旧居には歌碑もある。
こんな調子で兵庫を見事に謳い上げている。
それぞれの土地のその当時のありさまが手に取るよう。
いまや”天空の城”と呼ばれ大人気の竹田の城は、
山城の天守の址によぢのぼり
床尾は見つれ 大江山もすこし
鐘の音のひびきこもらひいつまでも
古城の址は花の雲の上
この歌集はとっくの昔に廃刊となっていて
県立図書館でも閲覧しかできません。
興味のある方はどうぞ・・・